2017年6月15日木曜日

2017.06.15 野口悠紀雄 『知の進化論 百科全書・グーグル・人口知能』

書名 知の進化論 百科全書・グーグル・人口知能
著者 野口悠紀雄
発行所 朝日新書
発行年月日 2016.11.30
価格(税別) 780円

● グーテンベルクが活版印刷を確立したことは,中学か高校の歴史で習った。しかし,それが社会を揺らすほどの画期的なものだったことを知ったのは,もっとずっと後だった。
 グーテンベルク以前,知識は少数者の独占物であり,支配の資源になっていた。そういうことを本書であらためて認識した。

● 今は,書店にも図書館にも書籍が溢れていて,誰でも安価または無料で読むことができる。読み書きは義務教育で教えてくれる。
 ありがたいことです。それがなかったら,ぼくのような者は間違いなく社会の落ちこぼれになっていたはずだもの。

● 本書では百科全書の革新性,Googleの検索エンジンの画期性も説かれる。百科全書が採用したアルファベット順。もし,Googleの検索エンジンがなかったら,インターネットは行き詰まっていたかもしれない。

● 以下にいくつか転載。
 大学もまた,1つのギルドであると見なすことができます。(p27)
 16世紀の宗教改革に続いて,17世紀のピューリタン革命,18世紀末のフランス革命などが起こりました。これらは,活版印刷が生み出す活字媒体なしには起こりえなかったことです。(p36)
 知識の拡散について,印刷術の発明や俗語で書くことは重要な変化だったが,百科事典というのはそれほど大きなことではないように思われるかもしれません。しかし重要なイノベーションがあったのです。それは事項をアルファベット順に並べることです。(中略)各項目の配列を,編集者の価値観に秩序づけられる概念の関係によるのではなく,機械的で一律なアルファベット順に並べたことです(p56)
 「学問は,基礎から順に学ばなければならない」 いまでも学者や専門家の間には,こうした考えが強く残っています。例えば大学ゼミにおける研究発表で,「何を参考資料に使ったか?」と教授に問われたとしましょう。そのとき「経済学事典で調べました」と(正直に)白状する学生がいます。この答を聞いて黙っている教授はいません。(中略)教授がこのように反応する理由は,既得権益を侵されるからです。百科事典を用いれば,素人が簡単に専門知識を入手できます。そのため,専門家の役割が低下し,専門家は専門家としての優位性を主張できなくなってしまうのです。(p68)
 知識が必要だと考える第1の理由は,新しいアイディアを発想するためには,知識が不可欠だからです。既存の知識と問題意識のぶつかり合いでアイディアが生まれるのです。(中略)その場合,知識が内部メモリ,つまり自分の頭の中に引き出せていない限り,それを発想に有効に使うことはできません。(p104)
 知識が必要だと私が考える第2の理由は,質問をする能力を知識が高めるからです。何かを知りたいと思うのは,知識があるからです。知識が乏しい人は,疑問を抱くこともなく,したがって,探求をすることもなく,昔からの状態に留まるでしょう。(p104)
 あるIT関連事業者は,「グーグルは全能で,インターネットのすべてを支配している。それが,IT企業の繁栄や破滅を決めてしまう」と言っていますが,そのとおりです。「検索ランキングの下位では生き延びられない」のが事実なのです。(p129)
 検索機能の重要性は,情報に対する態度が受動的か能動的かで,大きく異なります。日本では,「プッシュ」された情報を受けるだけの人が多くいます。それは,テレビの視聴時間が長いことに現れています。(p136)
 情報技術の進歩によって情報や知識の価値が低下していますが,それは複製が容易にできるからです。これに対して,リアルな公演そのものは,複製することができません。したがって,インターネット時代になってから,その相対的価値が著しく上昇したということができます。(p160)
 豊かになるにつれて,「それまでは資本財であったものが消費財になる」ということがしばしば起こります。何かのための手段ではなく,それ自体が目的になることが多くなるのです。同じことが,知識についても言えます。というより,知識は,最も価値が高い消費財になりうると思います。(p241)
 知識が増えれば増えるほど,体験の意味と価値は増します。それによって,生活は豊かなものになるのです。(p242)
 シュテファン・ツヴァイクは,『マゼラン』の中で,次のように言っています。 「歴史上,実用性が或る業績の倫理的価値を決定するようなことは決してない。人類の自分自身に関する知識をふやし,その創造的意識を高揚する者のみが,人類を永続的に富ませる」(p244)

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