2017年5月25日木曜日

2017.05.25 長谷川慶太郎 『トランプ幻想に翻弄される日本』

書名 トランプ幻想に翻弄される日本
著者 長谷川慶太郎
発行所 李白社
発行年月日 2017.05.31
価格(税別) 1,000円

● これまでの著書ではトランプ大統領に期待感を表明していた長谷川さんの様子が,本書ではだいぶ変わっている。
 オバマケア代替法案の提出ができなかったこと,その過程で大統領の手腕に疑問を抱いたことが理由であるらしい。
 また,欧州では右翼が台頭し,EUは解体するのではないかと予想ていたところ,フランスではその事態を免れる結果になった。右翼が政権を握れば,自国の利益を保護するため,保護貿易に走ることになる。各国が保護貿易に走れば,戦争を惹起しやすくなると警告する内容になっている。

● 以下にいくつか転載。
 もはや保護貿易主義の政治によって国内の国際競争力のない産業を守るべきではないし、守れるはずもないのです。(p23)
 安倍政権がTPP11を進めるのは,いずれアメリカをTPPに引き戻すという狙いがあるからですが,TPPに経済的な合理性があるからこそ安倍政権のトランプ政権への発言力も強く,まら,そのためにトランプ政権もいずれTPPに復帰せざるをえなくなるでしょう。(p24)
 円相場を中長期的に見るなら,おそらく円安になるでしょう。なぜなら,やはり軍事的に不安定な北朝鮮問題があるからで,それが重石になって円安傾向になっていくということです。(p26)
 アメリカは今のところ,まず中国に北朝鮮を抑えるように要求しています。この中国が北朝鮮に対して影響力を行使できないなら,アメリカが直接乗り出すでしょう。となると今度は中国の出る幕もなくなります。(p26)
 値段が上がった商品は消費者が買わなくなるため売れ行きがドーンと落ちます。典型的な例が,衣料品チェーンユニクロによる2014年夏の5%,2015年夏の10%という2年連続の値上げです。その結果,ユニクロでは全体の客数が急激に落ち込んで深刻な客離れが起き,当然ながら利益も落ち込みました。(p33)
 このままだと百貨店は青息吐息どころか,消滅していくでしょう。ネット通販で買えるような商品を店頭で高く売っていたのでは誰も寄り付かなくなります。(p34)
 自由貿易体制であるTPP撤退に象徴されるようにトランプ大統領の主張は,第2次世界大戦後70年以上にわたって集積された世界の経済政策を否定するものだといえまう。トランプ大統領が否定を貫こうとすれば世界の経済政策と戦って勝利しなければなりませんが,アメリカの1つの政権だけでそんなことができるはずがありません。(中略)トランプ大統領は追い詰められています。(p38)
 社会保障制度はいったん仕組みができ上がると変えるのが非常に難しいということです。既存の制度にはどれも既得権益層がしがみついています。(中略)社会保障制度の場合,しがみついている既得権益層も最も多いため,変更への抵抗もいちばん激しくなります。(p50)
 授業の中身がお粗末だったり時代に合わなくなっていたりする大学は本来なら淘汰されなければなりません。たとえ古い歴史を持つ大学であっても教育レベルが下がっているなら,整理・統合を進めていくべきです。現状のままで大学授業料を無償化すると年間3兆5000億円の費用がかかります。(中略)政治が現在の大学教育のあり方を見直さないで,安易に大学授業料を無償化をしてしまうのは税金の無駄遣い以外の何物でもありません。(p81)
 TPPが消滅すれば世界は保護貿易へと向かうことになります。保護貿易だと各国の国内経済は一時的短期的には活気づくとしても,貿易量の急減によってすぐに縮小に転じてしまうのです。その結果,各国の国内経済が大幅に落ち込んで,国家間の紛争を招きやすくなります。(p87)
 そもそもIRを成功させること自体が非常に難しいのです。バブル期に全国にできたリゾート施設がほぼすべて失敗したことからも明らかでしょう。(p108)
 有能な経営者は,第1に取引相手の選択に長けており,第2に決断が早い。(p123)
 アメリカは自由主義市場経済ですから,原油生産についても政府が口を挟むことはありません。(中略)一方,OPECでは原油生産をしているのは各加盟国の政府なので,だからこそOPECという形でカルテルを組むこともできるのです。しかしアメリカの自由主義市場経済の力強さにOPECがカルテルで対抗できるはずがありません。(p149)
● 株式投資に関する具体的な質問にも答えている。著者の推奨銘柄は,みずほ銀行,三菱自動車など。IT関連には懐疑的。重厚長大がよろしい。
 この部分からもいくつか転載。 
 今は北朝鮮情勢が緊迫しています。だから株式市場でも一時的には多くの株が下がることがあるでしょう。そのときに割安になった銘柄をキャッシュで購入すればいいのです。(p28)
 本来,大混乱を引き起こすような金融政策は絶対に取ってはいけないのです。その点をモディ首相はわかっていないようですから,モディ首相であるうちはインドへの投資は避けたほうがいい。(p127)
 ただ話題になっているとか,面白そうだというような株に投資するのはやめたほうがいいと思います。だいたいは,いわゆる「ちゃぶついた投資」に陥ってしまいがちだからです。(p156)
 結論から先にいうと,誰にもわかるような中小型の有望な銘柄はありません。(中略)伸びる企業は技術開発に成功するところなのですが,多額の投資をして技術開発に失敗した場合,それなりに規模の大きな企業でないと持ち堪えられません。(p161)

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