2016年8月31日水曜日

2016.08.31 たいみち 『古き良きアンティーク文房具の世界』

書名 古き良きアンティーク文房具の世界
著者 たいみち
発行所 誠文堂新光社
発行年月日 2016.05.18
価格(税別) 1,800円

● 古民家,古道具という言葉もあって,古きがゆえに価値を帯びるものがある。文房具もそうだったのか。閾値を超えて集めると,その集合体が価値を持ってくるんでしょうね。

● しかも,そのコレクションをコツコツと(だと思うけど)集めたのが女性なんだね。コレクションって男のものっていうイメージがあるんだけどね。
 女性は実利を取るから,古い文房具なんてゴミにしか見えないのだろうと思っていた。そうじゃない女性もいる。考えてみれば当然のことではある。

● 文具王,高畑正幸さんとの対談から,ひとつだけ引用。いよいよこの人の発想は男性的だと思える。
 個人やお店がつくったオリジナル品ではなく,量産品がいい。(中略)戦いに来たもの,というイメージがあるのね,量産品には。会社なり人なりが製品を大量につくって売り出すまでの苦労やコストがかかっているから。

2016.08.27 土橋 正 『仕事文具』

書名 仕事文具
著者 土橋 正
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2016.04.21
価格(税別) 1,500円

● 仕事で使う文具を,ありったけではないけれども,けっこう網羅的に紹介している。おそらくビジネスマンが通常使っているのは,職種を問わず,この本で紹介されている文具たちの数パーセントではあるまいか。
 なぜかと申せば,会社の支給品で間に合わせている人たちが大半だと思うので。

● 逆に,ほとんどのビジネスマンがノート代わり,メモ帳代わりに使っているであろうけれども,この本では紹介されていないものもある。それは何かといえば,A4コピー用紙だ。

● ぼくが使ったことがあるもので,この本で紹介されているのは次の6つだけだった。

 ポストイット スリム見出しミニ(3M)。1,000枚で240円と3M製品の中ではきわだって安い。読書のとき目印代わりに貼っておくのに便利。
 ただ,糊の付いていない部分が短いので,取り回しに若干の難がある。

 透明スリム見出し(3M)。これも読書のときの目印用。ポップアップ式で使いやすい。ただし,1回使っただけで,ダイソーの44×7㎜(180枚)のポップアップ式フィルム付箋に替えた。同じ枚数で使い勝手もほぼ同じ,それでもって値段は3分の1以下なのだから。

 ジークエンス360°ノート(ゼニス・エンタープライズ)。miniサイズを1冊使った。紙質はいいし,堅牢だ。中紙の枚数は100枚をはるかに超える。ファンが多いはずだと思う。
 が,ぼくは1冊使っただけで気がすんだ。108円のダイスキンに戻った。

 カバーノートSYSTEMIC(コクヨ)。本書で紹介されているのは,A5のリングノートタイプ。ぼくが持っているのは,A6の綴じノートタイプのやつ。
 痒いところを見事に掻いてくれる製品であることは,使わなくてもわかる。で,まだ使ってないんだよね。

 プレスマン(プラチナ万年筆)。昔からあまりに有名な0.9㎜芯のシャープペン。ビシバシと使っていこうと思って,2本買った。安いしね(216円)。
 速く書きたい,長時間使う,のであればこれは定番中の定番。自分もそうするであろうと思ったんだけどねぇ。そんな自分は実在しなかったのでありました。

 トラディオ・プラマン(ぺんてる)。和田哲哉 『文房具を楽しく使う 筆記具篇』にこのペンはモレスキンにピッタリなのだと紹介されていた。
 フォトエッセイストのカマタスエコさんはご愛用のモールスキン・ノートにはぺんてる株式会社の「トラディオ・プラマン」のインクがぴったりであると私に教えてくださいました。なるほどこのペンならクッキリとした筆跡にもかかわらず,モールスキン特有の裏写りのほとんどない,快適な筆記が実現しました。
 裏写りするという点では藁半紙に迫るのではないかと思われるモレスキン。そのモレスキンで裏写りしないというのが本当ならば,トラディオ・プラマンにはそれだけで存在理由がある。
 が,実際に使ってみると,これはにわかに信じがたい。かつてのモレスキンはそうだったということか。

● ひとつだけ,本文から転載。
 大半はデジタル化されているが,紙にしたほうが便利というシチュエーションはまだまだある。私の場合でいえば,未完成の資料や原稿は必ず紙にプリントアウトする。未完成でまだ手を加えるものは,「つかみどころ」のある紙にしたほうがコントロールしやすい。(p106)

2016年8月10日水曜日

2016.08.10 MdN編集部編 『新 手帳で楽しむスケッチイラスト』

書名 新 手帳で楽しむスケッチイラスト
編者 MdN編集部
発行所 エムディーエヌコーポレーション
発行年月日 2016.07.01
価格(税別) 1,200円

● ヨドバシカメラ宇都宮店の文具売場に2冊置いてあった。そのうちの1冊を三菱鉛筆の「創業130年限定セット プレミアムノートブック付」と一緒に購入。

● 内容はタイトルのとおり。18人の手帳を紹介。併せて,取材の様子を文章で載せている。
 紹介されている手帳の印象を一言で言えば,ひじょうに楽しそうな手帳だということ。実際にはいくらスケッチやイラストを描くのが好きだといっても,毎日飽かずに続けるのは大変なことだと思うけども,大変であっても続けられるのは好きだから,っていうのも事実だろうな。

● 彼らが使っている手帳は,「ほぼ日手帳」であったり,トラベラーズ・ノートであったり,モレスキンであったり,コクヨのCampusノートであったりと,種々様々。
 ただ,一人の例外もなく,複数の手帳(ノート)を使っている。描くためのものと仕事用。
 中には7冊も使っている人もいて,少々驚いた。ここまでになると,使い分けのルールがよほどシッカリしていないと混乱するんじゃないかと思うんだけど,逆にそのルールはラフにしておかないと使い分けなんてできないものなんだろうか。

● 手帳は仕事のスケジュール管理のために使うものというのは思い込みに過ぎない。それを広く知らしめたのは「ほぼ日手帳」の功績だと思う。
 「ほぼ日手帳」は手帳本体のインパクトもさることながら,「ほぼ日」のサイトや「ほぼ日手帳公式ガイドブック」によって,手帳は自由に使っていいのだ,こんな使い方をしている人がいるんだよ,という啓蒙(?)を継続した功績の方が大きい。
 結果,「ほぼ日手帳」のユーザーも増えたろうけど,「ほぼ日手帳」ではない手帳やノートを使って,「ほぼ日」が提唱する使い方を始めた人はそれ以上に増えたのではないか。
 もちろん,本書にも「ほぼ日」以前から手帳に絵を描いていた人たちが登場しているわけで,そうした自由な使い方は「ほぼ日」が創造したわけではないけれどもね。

● 絵心があれば,ぼくもやってみたいよ。小学校の夏休みの宿題の絵日記。その大人版。
 けどなぁ,ぼくに絵心はないんだよね。小学校の図工の成績は1か2だったしな。教師の教え方がぼくに合わなかったのかもしれないな,と思っておくことにしようか。
 ともかく絵を描くことについてはコンプレックスがあってね。

● でも,今,ぼくの目の前に「学習色えんぴつ 12色」っていうのがあるんだよなぁ。何でこんなものがあるのかなぁ。

2016.08.10 斉藤由多加 『街の冒険マック』

書名 街の冒険マック
著者 斉藤由多加
発行所 アップルコンピュータ
発行年月日 1995.10.25
価格(税別) 非売品

● この本は,今を去ること20年以上前,アップルジャパンがMacを売るための拡販用に作ったもの。Macを買ってくれた人にこの本をあげますよ,というわけだった(と記憶する)。
 何せ,当時はWindows95が出たばかりで,Macは青息吐息だったのだ。スティーブ・ジョブズがアップルに復帰するのはまだ先の話だ。

● ところがぼくはMacを買ったことは,今までただの一度もない。なのになぜこの本を持っているのか。謎である。
 いやいや,別に謎ではない。パソコンショップの一角にこの本が数冊積み上げられていたので,1冊もらってきただけのことだ。持っていってもいいですよオーラが出ていたのでね。

● ちなみに,そのパソコンショップとは,今はなきパソコンランド21。戸祭にあった。あの頃って,量販店のコジマを別にすると,宇都宮で唯一のパソコンショップだったのではないか。
 わが家からは不便なところにあったんだけど,車を運転して,あるいは電車とバスを乗り継いで,しばしば出かけて行った。暇だったのだ。しかし,そこしかないんだからね。

● 当時,ぼくは富士通のFM-TOWNSを使っていたんだけど,TOWNS用のゲームソフトとか,Officeとか,けっこう購入した記憶がある。
 今からでは考えられないほどに高価だった。お金を捨ててしまったという記憶になっている。

● ともあれ。今回,読み返してみたという次第。これが3回目になる。懐かしい言葉,用語に出くわす。当然だ。この世界で20年前の本なのだから。
 インライン変換,アイデアプロセサー,MIDIソフト,ゲートウェイソフト,NIFTY-Serve,PCMCIA,14400bps,PowerPCなどなど。
 「100MB以上のハードディスクなんていうのが3万円以下で手に入る」(p70)なんていう文章も出てきて,思わずニヤッとしてしまう。ぼくは去年,2TBのハードディスクを1万5千円で買った。

● 以下にいくつか転載。
 いろいろな旅先でマックを使うと,自室で使うのとはまったく違った楽しさを多く発見する。(p5)
 ちょうど作曲と楽器の関係に似ていて,よい道具に恵まれると創作というのは対話になる。ぼくにとってその道具がマックだった。(p9)
 僕の喰いぶちとしているゲームのアイデアというのはとても構造的なもので,言葉のように直接的には表現できない。だから,そのスケッチの形態もいろいろと多岐に渡る。時として文字というのは実に無力であったりするからだ。(p10)
 行き先がどこであれ,場所が変わるとそれまで煮詰まっていた発想が解き放たれるような感覚になる。そしてそこにマックがあればその感覚のまま仕事を進めることができる。これがいい。(p13)
 雰囲気を変えたり,時間を変えたり,条件を固定しないで自分の発想と対話する,それがモービルコンピューティングの楽しさだ。(p13)
 当時のPowerBookって,バッテリーはどのくらいもったんだろう。重さはまぁいいとしても。
 「相手の顔を見ないと会議にならない」,「生の声を聞かないと話が進まない」,といった意見もあるようだが,経験則的にいうとこういった会議の大半は目的が曖昧だったり,目的そのものが別のところにあるケースがほとんどである。(p16)
 グラフィックソフトでアイデアをスケッチするというと妙に聞こえるかも知れないが,実際ゲームのようなものを制作していると,そういった場面にしょっちゅう出くわす。(p34)
 僕がQuickTakeを買ったのは,この「安上がり感」への好奇心からだった。現像代を計算したら,フィルム30本分撮れば元が取れる計算になる。(p69)
 QuickTakeっていうのは,アップル謹製のデジカメ。その頃のデジカメの画素数ってどのくらいだったっけ。
 フィルム30本分撮れば元が取れる計算になるっていうのは,画質が同じならばという前提が付くはずだよな。

2016.08.10 堀 正岳・中牟田洋子・高谷宏記 『モレスキン 人生を入れる61の使い方』

書名 モレスキン 人生を入れる61の使い方
著者 堀 正岳
   中牟田洋子
   高谷宏記
発行所 ダイヤモンド社
発行年月日 2011.09.08
価格(税別) 1,600円

● モレスキンユーザーを取材して,それぞれの具体的な使い方を紹介したもの。3年前に読んだ。今回は再読。

● 前回はモレスキンに対して斜に構えてて,けっこう辛辣なことを書いた。この本に対してではなく,モレスキンに対してね。
 モレスキンを使ったことがない状態だったのにね。斜に構えてはいけなかったよね。価格だけは知っていたので,その価格に腹を立てていたのだろうな。

● その後,使ってみましたよ,モレスキン。一度だけね。一度で懲りた。この程度のノートが何でこんなにもてはやされるのか。しかも世界中で。まったくわからない。
 しかし,本書を読み返してみると,61人のユーザーがそれぞれ楽しそうに使っている。それでいいのだ。っていうか,こういうものにいいも悪いもないのだ。

● 以下にいくつか転載。
 何を書き込めばいいのか迷ってしまう,そんなときは必ず人生の壁にぶつかっているときです。興奮して眠るのも忘れて何かを書き込んでいるときは,きっと正しい選択をしたときです。(p13)
 昨日描いた絵,今書いた文章,明日貼る写真。モレスキンノートはバラバラだったモノやコトを連続してまとめて見せてくれる(p30)
 アイデアが湧かない,まとまらないという人は,(中略)まずモレスキンに線を引っ張ってみましょう。そして,1週間分のToDoリストを書き出してみるなど,手を温めることから始めてみて下さい。(p46)
 紙のノートを使いこなせる人こそが,パソコンの中でしか考えられない人の限界を超えていけます。(p78)
 叙述的に書くよりも,こうして断片を断片として並べることで,まだ形をとっていない思考がすべていったん外に出され,客観的な思考を可能にします。(p79)
 むしろ小さいという制限がさらにクリエイティブにノートを使うきっかけになることを,私は中世の細密画を見るたびに思い出します。(中略)箱庭のような世界にも,気づかれない自由があるのです。(p80)
 ノートの大きさが思考の大きさを決める的なことが言われるけれども,これはそれに対するアンチテーゼでしょうね。
 ただ,中世の細密画に比せられるようなノートの使い方っていうのは,あまりしている人はいないと思われるので,一般的には「ノートの大きさが思考の大きさを決める」でいいでしょうかねぇ。
 科学者であることは誰よりも難しい問題を考えることができるということではなく,問題に対して真摯であることができるかが実は問われます。妥協を許さない心の強さは,自分と向き合うことからしか生まれません。(p175)

2016年8月7日日曜日

2016.08.07 長谷川慶太郎 『2017年 世界の真実』

書名 2017年 世界の真実
著者 長谷川慶太郎
発行所 WAC
発行年月日 2016.08.07
価格(税別) 920円

● ヨーロッパ,ロシア,中国,アフリカ,アメリカ合衆国が抱えている困難や問題を指摘し,したがってこれから世界を引っぱるのは日本だ,という結論を提示する。
 世界でただ一つ,長期資金を貸せる余裕を持っている国が日本であり,その総理大臣である安倍の言うことは,みんな聞く。(p27)
● まず,ヨーロッパ。
 ヨーロッパの主要国は厳しい環境に置かれている。ドイツ,フランス,そしてイギリスも例外ではないのだが,上位クラスの銀行でさえ,日本のバブル崩壊後のようなありさまだ。(p4)
 最大手のドイチェバンクはこのまま行ったら,破綻するのが目に見えている。その大きな要因はフォルクスワーゲンだ。(p59)
 ドイツ外務省の中国課などは十一人しかいない。その中で中国語のできるのは三人だ。「大丈夫か」と言いたくなるほどお粗末な陣容である。ドイツのメルケル首相にしても,イリュージョン(幻想)でものを言っていることが少なくない。(p147)
● 次に,ロシア。
 ロシアの消費者物価上昇率は年間二〇%である。この物価高で,年金生活者はどうにもならないところまで追い詰められている。 それでも,プーチン大統領は八〇%ぐらいの支持率がある。これは現実でなく幻想によるものだ。幻想だから,いつ消えるかわからない。そのことはプーチンだって知っている。知らないわけがない。(p114)
 ここまでロシアが窮したのは,プーチンが突っ張り過ぎたのが一因ではあるけれど,結局,「ソ連時代の夢よ,もう一度」という思いが大きな原因である。つまり,アメリカと肩を並べる超大国になろうとした。それが認められないことを国際社会がもう一遍,強く主張しなければならない。(p118)
 ロシアの現状は本当に惨めなものである。インフラの崩壊にしても尋常一様ではない。一番劣化しているのが鉄道で,脱線事故があまりに多すぎて新聞ネタにもならないほどだ。それどころか,嘘のような実話がある。ウラジオストクとモスクワをつなぐシベリア鉄道の貨物列車は,盗賊が襲ってくるから携帯機関銃を持った護衛がつくのだ。まるでシベリア鉄道が国の統治下にない地域を走っているようなもので,馬賊が跋扈した満州事変直後の満州を彷彿とさせる。(p120)
● 北朝鮮,中国,韓国。
 円高が生じた最大の要因は中国からの資本逃避である。(p35)
 二〇一六年一月に北朝鮮は四回目の核実験を行なったが,三回目との最大の違いは,北朝鮮が情報統制に成功した点だ。中国への事前通告がなく,中国がまったく予測できなかった。(p91)
 二〇一六年三月,王毅外相は訪米してケリー国務長官と会い,北朝鮮への侵攻計画にOKを取りつけた。その後に習近平がアメリカへ行ったときは,オバマ大統領に直接打診してOKをもらった。こうして米中両国の合意はできている。ただし,「いつ,やるか」はわからない。 合意においてアメリカが条件に付けたのは,中国が長期間,北朝鮮を占拠しないことである。だから,習近平は金正恩を捕まえて権力を剥奪すれば,すぐに軍を撤退させるが,その前に中国の傀儡政権を北朝鮮につくる。(p102)
 最大の衛星国であり,第二次大戦の戦利品である東ドイツを捨てた翌年,ソ連は消えた。しかし,(中略)中国は北朝鮮を捨てず,金正恩を排除するだけだから,ソ連と同じ運命は辿らないだろう。(p144)
 金で買うときは「契約」「輸入」を手続きがいる。だいたい三ヵ月は最低必要で,通常は六ヵ月かかる。一朝有事の際にものを言うのは現物であって,契約ではない。「物」があれば即時にわたせる。「物」があるところは強いのだ。 北朝鮮がつぶれたとき,現物を握っている日本が隣にある。それが朴槿惠にもわかってきたから,「従軍慰安婦の問題は昔の話で,今さら蒸し返してもいかがなものか」ということになった。(p105)
 結局,韓国は日本に助けを求めることになるだろう。ただし,「助けて下さい」ではなく,「助けさせてあげよう」と偉そうな態度で言ってくるかもしれない。そういう感覚は中国も同じである。(p109)
 彼ら(韓国人)は日本人と同じ敗戦国民だけれど,自分たちは戦勝国民だと思っている。通州事件で殺された人の半分は朝鮮半島出身者であり,事実を振り返れば,敵は中国人のはずだ。しかし,自分にとって都合の悪いことは目をつぶる。都合のいいことだけを強硬に主張する。これは中国人や韓国人に共通する意識である。(p110)
 今後,パナマ文書の影響が出るのは新興国と共産国である。その一つが中国だ。これは大変だろう。習近平はどうするのかと思う。(中略)中国人は,習近平の姉婿が何をしているか,みんな知っている。(p155)
● アフリカ。
 アフリカについては難しい問題がある。人口が多い割りにレベルが低いことだ。白人以外の大学はエジプトとケニア,ガーナ共和国,モロッコの四つしかない。(中略)だから,すべてにわたって人材が足りない。その「穴」を外国人が埋めている。今,最も多くアフリカに入っているのはインド人だ。(p80)
 そういう政治情勢,社会情勢の不安定さは,外国人が行って解決しようとしても不可能だ。彼ら自身が必要に迫られ,行動する決意を固めてもらわないと,どうにもならない。(中略) これから何十年という時間をかけ,根気よく改善するしかあるまい。そころが,なかなか今期が持続しない。特に民間企業の場合,投資したらすぐ回収する方向に動くから,どうしても目先のことしかできない。(p83)
● アメリカ合衆国。
 アメリカの一般大衆は「世界の警察官」に飽き飽きしている。その背景には「世界は大きく変わった。もう戦争はできない。戦争にならないなら,なぜ,アメリカが世界の警察官の役割を果たさなければならないのか」という思いがある。(p33)
 アメリカではものすごい勢いで転職が進んでいる。逆に言うと,アイビーリーグの卒業生でも厳しい。昔は門前列をなすという状態だったのに,今は鼻も引っ掛けてもらえない。それほどアイビーリーグの権威が落ちてしまった。そのため,高い学費を払ってアイビーリーグを卒業してもいい就職先にありつけず,借金が残るだけの若者が増えた。こういう現実があるから,民主党で「州立大学の学費無料化」を打ち出したサンダース上院議員の票が伸びたのも無理はない。(p161)
 アメリカの製造業が辛いのは,労使関係の調整が難しいところだ。アメリカの労働組合は日本と違って手強い。(p172)
 アメリカが深刻に考えなければいけないのは,技術革新が遅れていることだ。一番遅れているのは薬で,特に効果の大きい新薬開発である。(中略)IT関連も空洞化が生じている。このままではグーグルでも厳しいだろう。グーグルはもっと研究開発に力を入れる必要があるのだが,それができないでいる。最大の理由は長期資金の不足だ。(p183)
 デフレ時代はものすごい経済競争になる。「武力を使わない戦争」と言ってもいい。それだけに,少しでも早く対応することがアメリカにとってプラスになる。 では,アメリカが何をすべきか。まず,リストラは避けられない。金融でも,製造業でも,企業が合理化され,労働組合は淘汰される必要がある。そこで見落としてならないのは,「リストラしなければ,新しい仕事ができない」ということである。「新しい仕事」の前提条件がリストラであり,リストラをやって初めて新しい仕事ができる。(p187)
● それでは,日本はどうすべきなのか。基本的には今の路線を進んで行けばいい。
 日本はGDPの三.五%を研究開発に向けている。アメリカは三%,ドイツは二%しか入れていない。他の小さな国はコンマ以下である。研究開発は今後も同様に続けていけばいい。(p194)
 戦後は財閥解体とともに財閥系企業も「個人保証のルール」が適用されるようになった。日本は企業のトップほど重い責任を背負う。だから,一生懸命に働く。それが日本の企業の生命力の源泉である。(p196)
 (自衛隊の)幹部の質はだいぶ良くなった。幹部候補生は防衛大学校の卒業生と同数を一般の大学から採用する。昔はほとんどが日東駒専だった。今は早慶が一人ずつで,あとは旧帝大の出身者である。(p198)
 エネルギー分野で急がなければならないのが二次電池である。この研究で先行しているのは東京電力だ。(中略) なぜ,東京電力が二次電池の開発をするのか。東京電力は現在の配電ネットワークを変えなければいけないと考えている。そのときに大事なのが二次電池だ。(p214)
 同時にやらなければならないのは設備の縮小である。(中略)手っ取り早いのはコンパクトシティだろう。人が集中して住めば水道だけでなく,医療にしろ何にしろ,コストを下げられる。 今,それを進めているのは青森市だ。(p218)
 特に理工系に顕著なのだが,技術水準が上がったので大学の四年間では足りず,最低でもマスターまで進んで初めて専門家になれる。中等教育の期間を減らし,高等教育の期間を増やすことが必要である。(p219)
● デフレは続く。しかし,デフレはチャンスである。
 デフレになればなるほど起こることは新産業の誕生である。例えば電力は十九世紀の第一次デフレで広まった。(中略)インフレには,そういう創造力がない。(p189)
 インフラ投資は額が大きい。しかし,デフレの時代は超すとが下がり,やりやすくなる。逆にいえば,大規模なインフラ投資はデフレの時代にしかできないのである。(p218)
● その他,豆知識。
 なぜ鈴木敏文会長がやめなければいけなくなったのか。創業者の伊藤雅俊との関係が悪化したからだ。私は鈴木とは面識がないが,伊藤とは面識がある。(中略)私の見るところ,伊藤は正直な人である。 伊藤からすれば,鈴木はセブン&アイを自分のオーナー会社のごとく,私物化した。そう捉える最大の理由は,鈴木が長男を役員にしたことである。あれは認められない。伊藤は子供をイトーヨーカ堂に入れていないのである。(中略) 成果を挙げた鈴木はそれに見合った形で報酬をとっている。あれだけ高い給料をとっている人はいないのだ。 そういう類の話は新聞には出ない。鈴木に遠慮しているのだ。(p39)
 都心のマンション売買が活況と言われるが,それは千代田,中央,港,新宿,渋谷の五区だけである。この五区から一歩でも出たらおしまいだ。いずれは都心の五区も,売れるところと売れないところが選別されるだろう。したがって,今,日本で不動産に投資しようと考えるのは,よっぽどおめでたい人に違いない。(p50)
 ドイツ人は動かぬ証拠を突きつけると,カエルをつぶしたみたいにペシャンとなる。(p98)
 このときの旅行は六ヵ月間,東ヨーロッパを回った。その間,日本食を一回も食べなかったのが自慢である。(中略)日本食にこだわっていたのでは視野が広がらない。これは本当である。(p122)
 舛添(要一)は学者として才能は豊かだが,政治家としては疑問符がつく。例えば,都知事になってから認知した子どもの養育費の減額を求めて訴訟を起こしたのはいかがなものか。二千六百万円の年俸をもらっていて,二十万円が払えないという話は通らない。だから,裁判で負けた。それ以上はやらなかったけれど,ケチなことを負けるまでやる。ちょっと特異な存在である。(p150)

2016年8月4日木曜日

2016.08.04 堀 正岳・中牟田洋子 『モレスキン 「伝説のノート」活用術』

書名 モレスキン 「伝説のノート」活用術
著者 堀 正岳
   中牟田洋子
発行所 ダイヤモンド社
発行年月日 2010.09.09
価格(税別) 1,429円

● 3年前に読んだ。今回,再読。

● その前回のエントリーを読んでみると,「前半の堀さんの執筆部分は,理が勝ちすぎていて読んでてあまり面白くない」なんぞと書いてある。
 「後半の中牟田さんの筆になる部分は,面白いっちゃ面白いんだけど,新味がない。なぜかっていうと,「ほぼ日手帳公式ガイドブック」にすでに書かれていることが多かったりするからなんだよね」なんぞとも。
 何と生意気な。まともに読めていなかったのかもしれないな。

● あと,モレスキンに対して反感があったのかも。が,その反感,今はない。
 モレスキンは1回使って,あまりの馬鹿馬鹿しさを体感した。反感を超えてどうでもいいと思うようになった。使いたい方はお使いになればよろしい。

● では,なぜ本書を再読する気になったかといえば,本書の内容はモレスキンに限らず,すべてのノートについていえることだとわかっているからだね。一度読んでいるんだからね。それを再確認しておこうと思った。

● 以下にいくつか転載。本書のキーワードは「ユビキタス・キャプチャー」ということになりそうだ。
 この「外部の脳」(ノート)を使いこなせるようになれば,もう大事なことを忘れることはありませんし,複雑な思考を紙の上に展開して考えをまとめることが可能になりますし,何よりも「大事なことはすべてノートが知っている」という安心感が生まれますので,頭をもっと創造的な作業に向かって解き放つことができるのです。(p2)
 アイデアやメモをしたい出来事はいつ,どんな形でやってくるかわかりません。メモを取りたいと思ったその瞬間にツールを選んでいる場合ではないのです。(p37)
 たまに,すべてを紙の手帳で一〇〇%管理しなければいけないとか,あるいはデジタルツールで一〇〇%管理しなければいけないと無理をしている人を見かけます。しかし身の回りの情報や,メモを取るときのシチュエーションはもっと混沌としていて,そのようにきれいにおさまるとは限りません。(p138)
 紙のノート・手帳でしか記録できないものは何でしょうか。それは一瞬のうちに浮かんだアイデアや考え,日々の記録や思い出,ちょっとしたイラストやダイヤグラムなどといった,デジタルツールにおさまりきらない創造性の高い領域です。(p38)
 モレスキンノートを活用するためには,(中略)大事な記憶をすべてノートに放り込むという習慣が必要になってきます。この習慣を,「ユビキタス・キャプチャー」といいます。(中略)この習慣を実践すると,これまで「重要なことだけ,意味のあることだけをノートに書き留めよう」と考えていたリミッターが外されて,急にノートへの書き込みが増えます。気になったことを細大もらさず書いていますので,あとで活用したくなったときにも,断片的な情報しか残っていないという困った事態にならずにすむのです。(p47)
 これについては,逆の方がいいという意見もありますよね。要点だけ書け,長々書くな,という意見。
 どちらがいいかといえば,本書の著者の意見でいいと思う。つまり,著者のいう「ユビキタス・キャプチャー」を経ないで要点主義に行くのは間違いであるように思える(根拠はない)。これを経てから要点だけを書くスタイルになるのは無問題だろう。
 アイデアは,それを常にメモしてとらえている人のもとに舞い降ります。(p50)
 キャプチャーするときには「こんな情報を書いても意味がないのではないか」と思ってやり過ごしたくなることがよくあります。しかし,(中略)あなたの興味をひいたということは,まだあなたが意識していない重要な何かが隠れている可能性があります。(p53)
 出来事の単なる記録は,実際に起こったことの表面をなぞっているに過ぎません。しかし,感情を記録することは人生をノートの中に保存しているのに等しいのです。(p67)
 大昔に読んだ梅棹忠夫『知的生産の技術』に,日記には感情より外形的な事実を書くようにするのがよい,といった趣旨のことが書かれていた記憶がある。
 このあたりはどうなんだろうかな。出来事を記録しておけば,読み返したときに,そのときの感情も甦ってくるようにも思うんだけどね。
 リチャード・ワイズマンは,つらい出来事を他人に打ち明けるよりも,言葉にして書くほうが痛みに耐えやすく,心を癒す効果があるという心理学の研究結果を紹介しています。(中略)職場で腹立たしいことがあったり,傷つく出来事があったりしたときは,その事実をいつまでも脳裏で繰り返し再生するのではなく,ノートの上にキャプチャーしてしまいましょう。(p68)
 ユビキタス・キャプチャーを実践する上で,私には何よりも大切にしていて,訪れるのを注意深く待っているものがあります。(中略)それは,不意にやってくる遠い昔の思い出や記憶の断片です。(p69)
 このあたりから,思い出したいことがあったら,ノートを開いて過去のページをめくるというスタイルも確立しますので,モレスキンノートに対する信頼感が強くなります。そしてこの信頼感が,さらにたくさんのことをノートに書き込もうという原動力になるのです。(p75)
 慣れてくると,過去にノートを活用した経験があなたにささやくようになります。「この情報はキャプチャーしておくとあとでいいはず」「よくわからないけれども,ここには何かがあるはず」,と勘が働くようになるのです。(p76)
 ノートを振り返ること,それは「過去の自分」を味方につけて今を生きることだといえるでしょう。(p118)
 無地のノートから自分に合った「手帳」を作り出せる人は必ず,自分の戦略を自分で考えることができる人間に成長しています。システム手帳でも,最も利用方法があざやかな人は,手帳のテンプレートが持っていた本来の用途を想像的に乗り越えている人です。(p123)
 私たちにはやるべきことが数多くあります。ときとして,やるべきことの量に頭がいっぱいになってしまい,身動きが取れなくなってしまうほどです。そんなときに,頭をいっぱいにしていることをすべていったんは忘れ,「次にやるべきこと」に集中することができれば,ストレスを大幅に減らすことができます。(p139)
 彼はこれからとりかかろうとしている作業を,すべてメモの中に非常にこまかく並べます。そして,その時点で見通せるすべての作業を書き留めると,それを上からひたすら実行していきます。 途中で何か取り組む必要のあるタスクと出会うと,そちらに気を取られる代わりに先ほどのリストの横に別のリストを作ってそこに書き加えていきます。そして,ひたすらにリストの中にあることだけを実行して下までたどり着いてから,そこでやっと先ほどから書き留めていた割り込みのリストに取りかかります。(p146)
 さまざまに,目標を管理する手帳や,夢をかなえる手帳というものが販売されていますが,そのどれもが簡単にいえば,自分が自分の目標から逃げずに向き合うための仕組みを提供しているものといえます。(p152)

2016年8月3日水曜日

2014.08.03 『深田恭子写真集 KYOKO TOKYO PIN-UP GIRL』

書名 深田恭子写真集 KYOKO TOKYO PIN-UP GIRL
撮影 三浦憲治
発行所 ワニブックス
発行年月日 2009.03.05
価格(税別) 2,600円

● 美女はどんなものにでも化けることができる。無垢な少女にもなるし,妖艶な娼婦になることもできる。
 蓮っ葉な女子高校生になるのなんかお手のものだ。やり手のキャリアウーマン(という言葉はもうなくなっているんだろうか)にもなる。

● 男性の上司を助ける秘書に化けることもできれば,男性の部下に一目も二目も置かれる管理職にもなれる。
 魔女にもなれば,天使にもなる。

● そのどれもがサマになってしまうのは,美女だからこそ。ただ,こうも上手に色んなものに化けられるとなると,自分が本当は何者なんだかわからなくなることはないんだろうか。ないんだろうな。

2016年8月1日月曜日

2016.08.01 長谷川慶太郎 『世界大激変』

書名 世界大激変
著者 長谷川慶太郎
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2016.08.11
価格(税別) 1,500円

● 北朝鮮が次の核実験をやれば,中国瀋陽軍区の人民解放軍が平壌を制圧し,金正恩を追いだして傀儡政権を作るという。
 この点について,米中で合意ができた,と。つまり,アメリカもそれを黙認する,と。

● 従来の長谷川説だと,北朝鮮が潰れればその数年後に中国も潰れるというものだった。東ドイツとソ連の例があるではないか,と。
 傀儡を作る話は出ていなかった。中国崩壊は遠のいたと見ているんだろうか。

● とはいえ,北朝鮮に政変が起こるのは激変であって,株価は下がるだろう(短期間で収まるだろうけれども)。今は持ち株を現金に換えて,キャッシュポジションを高めておくべきなのだろうか。

● 以下にいくつか転載。まずイギリスのEU離脱に揺れるヨーロッパはどうなるか。
 英国のEUからの離脱は今後の成り行きとして,残留に固執していたスコットランドが独立しEUに残ることになりそうである。そしてウェールズ,北アイルランドも独立することになり,島国イングランドだけが残り孤立する。(p4)
 多くの国民はそれを理解できない。どうしても過去の記憶に縛られてしまう。大英帝国だった頃の「古き良き時代」に回帰できるという期待を持ってしまうのだ。(p69)
 今後,欧州は混乱が起こる。これまでの方向性を進めるべきだという者と,変えるべきだという者との間で,激しい論争が起きるだろう。そして,変えるべきという者が多数になるのは明白である。なぜなら,各国の政府が経済的な行き詰まりを打開できないからだ。自身の生活が苦しくなっていけば,これまでの方向性を変えたいと思う者が増えるのを止めることができない。(p65)
 イギリスでは東欧,なかでもバルト三国からの移民急増に危機感を感じてきた。移民と言うと「貧しい人々」を連想することが多いが,バルト三国からイギリスへの移民には,理系の専門知識をもったエリートたちも多い。たとえば,医師や薬剤師,医療技術者たちである。 その結果,イギリスでは労働者階級の仕事だけではなく,大卒エリートたちも仕事を失う危機に直面している。イギリス人の半分の給料で喜んで働く医師たちが次々にやってくるのである。(p66)
 イギリスはEUに対して,もっと発言すべきであった。イギリスの主張をもっと押し通せていたら,今回のような国民の不満は高まらなかったかもしれない。しかし,それができなかった。なぜできなかったのか。資金力がないからである。資金力ではドイツに勝てなかった。(p67)
 欧州諸国は,伝統的に革新勢力が強く,「平等」を掲げた社会主義という思想が,自分たちを防御する一つのよろいかぶとのようになっている。しかし,それにこだわればこだわるほど時代から取り残されることになる。それは経済の上では敗者になる。(p75)
● というわけで,ヨーロッパは分裂に向かうと長谷川さんは予想する。その背景にあるのは,次のような基調だという。
 世界の各国・各地域で,分裂の様相を強めるが,それは地元住民のことを考えてくれという要求なのである。自分たちの権利と自由を拡大していきたいという意欲のあらわれであり,それが広まっていくのである。 デフレのなかで買い手,すなわち圧倒的多数の人間の意思が示されれば,受け入れざるをえない。(p5)
 アメリカのトランプ旋風も,「世界の警察官」であることの重荷を負い続けることへの民衆の鬱屈感が背景にある。(p5)
● 次にそのアメリカ。トランプが予想に反して共和党の大統領候補になった。が,トランプがもし大統領になったとしても,アメリカの外交政策に大きな変化はないだろう。
 国務省や国防省という官僚組織の力は絶大である。この官僚たちが世界中の情報を収集し,情勢を分析し,アメリカという国家の戦略を策定してきた。外交とは,それの積み上げであり,したがって,それを一挙に改変することなどできないのだ。 逆に言えば,巨大な官僚組織の意向を受け入れることができなければ,アメリカの大統領は務まらない。選挙に勝利すれば,トランプも彼らとある程度折り合いをつけて,現実的な政策へと転換していかざるを得ないだろう。(p84)
● 日本の「失われた二〇年」に対して,長谷川さんは積極的な意味を指摘する。
 日本だけが二〇年かかって金融の再建をしたのである。「失われた二〇年」と言われていたが,実際は懸命の努力をしてきたのである。都市銀行を一一行から三行へと統合した。ものすごいリストラをしたし,それに伴い不良債権の償却を行った。(p28)
 銀行は所有していた余剰不動産を大幅に売却した。これは著者が実際に一つのメガバンクのCEOから聞いた話であるが,その銀行は,かつて新宿駅を挟んで西口と東口に一一もの支点があったが,現在では二つに整理・統合したという。(中略)銀行の建物は鉄筋コンクリートのしっかりしたもので,地下には大金庫がある。その金庫と上物をつぶし,更地にした売却したのだ。(中略)ある支点の話では,金庫の取り壊しだけで一七億円かかったという。 なぜ,そこまで徹底して建物を壊したのか。それは,そのあとに他の金融機関,たとえば地方銀行の支店などが入ったりしないようにするためである。自行をリストラすることは,銀行業界ないしは金融業界全体のリストラでなければならない。跡地に他の金融機関が入れば元の木阿弥である。(p50)
 リストラも徹底して行われ,従業員を絞りまくったのだ。これも前述のメガバンクのCEOから,著者が直接聞いた話である。「失われた二〇年」のうちの一五年間,役員としてそのCEOのボーナスはゼロだったという。「よく住宅ローンを払えましたね」と著者が尋ねたところ,ボーナス支払いの分を退職金の前借りという形で銀行から貸してもらい,何とか返済できたということだった。(p51)
 アメリカは,徹底した膿出しは行わなかった。不動産の時価評価を徹底させることはせず,不良債権に「蓋」をしてしまった恰好だ。したがって,サブプライムの整理がいまだ終わっていないのである。(p55)
 欧州の金融機関のリストラは中途半端だと言わざるをえない。徹底してリストラをする覚悟がない。(p75)
● 中国はどうか。中国の何が問題なのか。
 仮に今,日本と上海が直接競争すればどうなるか。勝敗ははっきりしている。日本に絶対に勝てないということだけである。日本はそれだけ厳しい競争をやってきた。弱者を淘汰してきた。にせもの,手抜き,納期遅れなどは論外なのである。それからもう一つ大事なことはインフラである。日本では水道の水が飲める。(中略) 日本の場合は政府が信頼できる。社会インフラを十分整備した。それは共産主義か民主主義かの違いということである。それと同時に,大事なことであるが,民主主義の場合には有権者の意向が全ての政策に反映する。(p100)
 技術もどんどん日本,世界から,時には盗むような形で導入してきた。盗んだ技術というのは,その時点での最新である。ところが,盗まれたほうは,その技術よりもさらにスピードを上げて,新しい技術をつくる。あっという間に開きができてしまう。(p102)
 中国共産党のように言論統制で発言の自由を抑圧していたら,イノベーションが起こるはずがない。その意味で,中国共産党は自分で自分の支配の基盤を掘り崩している。(p113)
 東側では,計画経済の体制のもとですべての経済活動が,共産党の最高指導部の統制下に置かれている。経済そのものの活力が,不断に進行する「汚職と腐敗」によって急速に食い尽くされていくという悪循環の犠牲になっていった。(p113)
● 冒頭に書いた北朝鮮情勢について。
 この先の数ヵ月で,北東アジアの情勢は大きく変わる。金正恩が政権を追われる可能性は高い。金正恩の後に誰がトップに立つのかはわからない。(中略)いずれにせよ,完全に中国の傀儡政権であることは確かだ。したがって,新政権は,核開発の停止やミサイルの開発停止を宣言するだろう。(p122)
● 次は日本国内の産業動向について。まず,金融業から。
 「失われた二〇年」の間に,日本の都市銀行は徹底したリストラを断行して,世界で唯一,大型かつ長期のファイナンスに応じることのできる体力を備えるようになった。では,これからは平安一路なのかといえば,どうもそうでもなさそうだ。
 日銀はマイナス金利と並んで,日本国債の大量購入を続けている。新発債のほとんどを日銀が購入してしまう恰好となり,結果,国債の金利は下がりに下がっている。これは,収益の大きな部分を国債運用で賄ってきた多くの金融機関にとっては,まさに地獄の始まりである。銀行は当然苦しくなる。メガバンクはもちろんだが,国債依存という意味では地銀のほうが高い。したがって,地銀はこれから大変な時代がやってくる。統合・合併が相次ぐことになる。(p164)
 昭和三〇年代後半,「銀行よ,さようなら,証券よ,こんにちは」というフレーズが流行った時代があったが,現在はそれに近いような状況になりつつある。それを何もコマーシャルでながすのではなしに,誰もがそう感じとっている。これは大変化である。(p170)
 FT(ファイナンシャル・テクノロジー)の技術の飛躍は素晴らしい。ソニー銀行は窓口がない。それがこれからの日本の銀行の姿である。大銀行も新規採用を控えている。採用しても,仕事に慣れる頃には,多くの仕事場がなくなるからである。(中略)大銀行であればあるほど,支店の役割がなくなってしまう。(p171)
 銀行の行員,働いている人間は現在,全国で二五万人ほどであるが,おそらく五〇〇〇人以下になるであろう。(中略)日本全国の銀行すべてで五〇〇〇人である。(p172)
● 次に,自動車業界。
 (自動車業界には)上位四社しか残らない,と著者は見ている。四社とは,トヨタ,GM,フォード,それにあともう一社だ。そのもう一社の座をめぐって,熾烈な争いが行われることになる。今回,日産が三菱自動車を傘下に置くことによって,その最後の一社争いに顔を出した恰好である。(p177)
● 農業はどうか。現在の農業政策を改めることができれば,日本農業の前途は洋々たるものだ。
 日本ではイチゴだけで年間四〇種類も新しい品種がつくられている。少しでも甘いイチゴをつくってたくさん買ってもらおうと,農家は懸命に努力している。日本というのは,コメは別にすると,農業は競争し努力もしている。(p77)
 日本のイチゴは,摘み取りからパッキングまでロボットが導入されている。海外ではロボットで詰めたイチゴのほうが価値が高い。(p180)
 日本の農業は十分に富裕層ビジネスになるのだ。(p182)
 農作物というのはどうしても地理的な距離というのがこれまではハンディになっていたが,現在はそんなものは問題にならない。流通網は世界中に整備されている。付加価値が高ければ,海外でも飛行機で運べばいい。高く売れるので流通コストなど消し飛んでしまう。(p182)
 酪農でも機械化は進んでいる。搾乳は,今では乳牛を飼い主が連れていくのではなく,牛自身が乳が張ってくると,自ら歩いて搾乳ロボットのところへ行くようになっている。(p184)
 農地行政を変えて法人参入を認め,膨大にある無耕作地を法人に買ってもらうのが一番である。農業の機械化などは,まさに法人(=企業)ならお手のものである。農業を工業化することが喫緊の課題なのだ。日本は優秀な農業技術を持っているのであるが,それを活かせないのは規制でがんじがらめになっているからである。(p184)
 政治家や官僚たちは手厚い補助金を差配することで,農家を食いものにしている。(p185)
 農家は過剰すぎるほど保護されている。すべての補助金が悪いわけではないが,現在の日本の農業は,多額の補助金が自立の妨げになっている。安倍政権のねらいは,農協を事実上解体することで自立を促し,日本の農業の発展の芽をつくろうとしているのだ。(p166)
● その他。
 ビッグデータの解析やそのデータ保存のためには,巨大な電力が必要だということを忘れてはならない。現在,世界でビッグデータのために消費されている年間の電力の合計は,日本国内で使われる一年分の電力に相当すると言われている。したがって,このようなサービスは,技術の進歩だけでは実現が難しかったと言えるだろう。(中略)産業の発展,実用化とは,このように複数の要因がうまく組み合わさることで,はじめて実現されるものなのだ。(p155)
 パーソナルロボットや次世代自動車など,今後,技術の高度化にともなって不可欠となるのがセンサー技術である。(中略)急成長する市場の主役となるのは日本企業だ。六兆円市場のうち四割以上を日本企業が握るのではと予想されている。(p189)
● 結論はこうだ。
 世界の基調はデフレに定まった。デフレは買い手が売り手を圧倒する社会である。売り手とは政府や企業,既得権を持つ人々である。もはや売り手の意向に沿った社会を維持していくことはできなくなっている。それを強く認識し,新しい社会に適応した者だけが,今後の勝者になることができるのである。(p88)
 その勝者になるのは,日本とアメリカである。
 ものづくりで言えば,これから数年間は,人工知能(AI)や次世代自動車をめぐって,激しい覇権争いがくり広げられることになる。この二つの次代の技術競争に参加できるのは,日本とアメリカしかない。(中略)逆にいえば,これからは日米間で次世代技術をめぐる競争が行われるということになる。(p192)