2016年12月8日木曜日

2016.12.06 小林惠子 『空海と唐と三人の天皇』

書名 空海と唐と三人の天皇
著者 小林惠子
発行所 祥伝社
発行年月日 2011.06.20
価格(税別) 1,400円

● 「あとがき」に著者が次のように書いている。
 私の著書はあまりに日本史の常識とかけ離れているので,特に日本古代史の専門家からは一顧もされていない。(p196)
 本書によると,桓武天皇とその跡を継いだ平城天皇は,新羅の国王にもなっている。日本列島,朝鮮半島,中国大陸を股にかけて,闘いを繰り広げ,政略をめぐらせている。
 じつにコスモポリタンであって,当時の日本は島国ではなく海洋国家というに相応しい。

● 別の著書(『聖徳太子の正体』)では,聖徳太子は突厥から海を渡ってやってきたのだということになっている。法隆寺の夢殿はモンゴルのパオと似ているというのだ。
 なかなか一般の賛同は得られないだろう。

● 著者のその「日本史の常識とかけ離れ」た見方を作ってきた元にあるものは,次のような信念(?)である。
 中国の周辺に位置する日本が,古代に遡るほど,民族の移住と共に中国や東南アジアからの影響をものに受けないはずはないのである。(p194)
 私は日本古代史を知るには,まず周辺先進国の中国史を知らなければならないと大学では東洋史を専攻した。しかし中国史の部分的な講義を受けても日本古代史とはまったく関連づけられないし,関連づける意思のない研究ばかりだった。東洋史=中国史で,周辺への広がりを持たない史観なのである。(p194)
● 日本と周辺国の関連,あるいは中国と周辺国の関連を追及した学者としては,江上波夫氏や宮崎市定氏がいるけれど(宮崎市定『アジア史概説』はダイナミックな概説書だと思う),著者の説くところは著者一人説であって,今のところ追随者は出ていないように思われる。

● 空想力を無尽に展開。史書を独自に解釈。その結果,悪くいえば荒唐無稽,よくいえば極めて斬新な日本古代史が組み立てられる。
 著者の作品群は,学術書としてではなく文芸書として読まれるべきだろう。文芸書としてはかなり面白いのだ。ひょっとすると,史実も著者のいうとおりなのかもしれないと思わせるほどに面白い。
 この点で,だいぶ昔に流行った,古事記や万葉集を古朝鮮語で読むというような,正真正銘の荒唐無稽とは一線を画している。

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