2016年11月27日日曜日

2016.11.27 吉田友和 『ハノイ発夜行バス,南下してホーチミン』

書名 ハノイ発夜行バス,南下してホーチミン
著者 吉田友和
発行所 幻冬舎文庫
発行年月日 2016.06.10
価格(税別) 580円

● 吉田友和さんの作品はほぼすべてを読んでいると思う。完全にすべてかどうかは自信がないが。今のところ,吉田さんと下川裕治さんのものは出れば読む。

● 吉田さんは淡々と行跡を記していく。下川裕治さんのように,その地の歴史や政治の変遷について調べて蘊蓄を語ることはしない。
 その場で感じたこと,考えたことを述べるんだけど,さほどに深く考えているふうでもない。少なくとも,文章からはそう感じる。
 のだけれども,不思議に面白い。なんなのかね,このテイストは。ノンポリの魅力とでもいうか。ノンポリでここまで読ませるのだとすると,文章が凄いのか。

● 吉田さんはカメラも好きなようで,本書の表紙も自身が撮った写真を使っている。腕前は相当なもの。
 
● 以下にいくつか転載。
 この国(ベトナム)の旅では,正直者が馬鹿を見ることがままある。タイやシンガポールなど,ほかの東南アジアの国々に比べると,まだまだ油断ならない瞬間も多い。(p28)
 旅をしていると,各地で日本人の旅行者にももちろん出会う。(中略)けれど,一緒になる旅人の傾向としては,女性だけのグループか女性の一人旅,あるいはカップルがほとんどである。たまたまなのかもしれないが,男性の一人旅というのはレアケースで,滅多に見られないのだ。(p42)
 アジアの大衆食堂のいいところは,安くてウマいだけでなく,早い点だ。(p92)
 怒りを通り越して,呆気に取られる。お金へ対する並々ならぬ執着心に閉口してしまう。別れ際だから揉めたくないとか,そういう発想は皆無らしい。(p117)
 基本的には善人を装いつつも,隙あらば果敢に攻めてくるこの感じ。いやはや,ベトナムの旅は油断ならない。(p118)
 ボートツァーの客引きから何度か声がかかった。といっても,あまりやる気はなさそうで,断るとそれっきり。しつこくつきまとったりはしない。 市場で商いをしていたのは女性だったが,こちらは男性である。市場のおばちゃんたちがアグレッシブなのと比べると,対照的だなぁと感じた。なんというか,どことなく勤労意欲に欠けるというか。(p128)
 ベトナムは朝ご飯が美味しい国だ。そして朝ご飯が美味しい国は,豊かな国だと思う。忙しい朝にもかかわらず,食べ物に妥協しない姿勢が立派ではないか。(p157)
 ベトナムの人たちはせっかちらしいと,この旅を通して僕は学習していた。とくにこういう移動のシーンになると,先を急ぎたがる傾向があるのだ。(p191)
 食べ終わってトイレに行こうとすると,運転手や車掌さんたちのテーブルの前を通りかかった。チラリと覗き見ると,テーブルの上には食い散らかしたお皿がズラリと並んでいた。「あんなに食べたのか・・・・・・」と絶句する。この短時間で食べるには,ちょっと過剰とも言えそうなほどの量に僕は度肝を抜かれた。(中略)ベトナムの人たちは早食いなのかもしれない。少なくとも,時間感覚が僕とは明らかに異なる。(p192)
 ベトナムのホテルが特別コストパフォーマンスが高いということも,今回の旅を通して実感させられたことの一つだった。安宿であっても,クオリティが高く,値段以上の内容という感想を何度も抱いた。(p195)
 いよいよベトナムも本格的に新時代へ突入しそうな予感を抱く。それは近隣諸国が通ってきた道でもある。変わりゆく街並みに置いていかれないように,旅人も進化していきたいところだ。アジア通いを続けるのならば,いつまでも懐古趣味にばかり浸ってはいられない。(p214)

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