2016年11月5日土曜日

2016.11.03 武田友宏編 『方丈記(全)』

書名 方丈記(全)
編者 武田友宏
発行所 角川ソフィア文庫
発行年月日 2007.06.25
価格(税別) 590円

● 行く河の流れは絶えずして・・・・・・,という「方丈記」の冒頭の部分は,たぶん知らない人はいないほどに人口に膾炙していると思う。が,その先は知らない人が多い。
 ぼくもその中の一人。で,今回,この文庫を読むことによって,その蒙が啓かれた。

● 何とも凄まじい時代だった。火災,飢饉,地震など度重なる天災で,都でも餓死する人が引きも切らず。死臭が都大路をも覆った時代。
 公家政権はなす術がない。たぶん,加持祈祷くらいはやったんだろうけど。まさしく,政治は祭事だった。
 武士(平氏)が台頭してくる時期でもあるのだが,これでは政治構造に地殻変動が起こるのも当然かと思われた。

● いくつか転載。
 人皆あぢきなきことを述べて,いささか心の濁りもうすらぐと見えしかど,月日かさなり,年経にし後は,ことばにかけて言い出づる人だになし。(地震(元暦の大地震)直後のしばらくは,だれもかれも,天災に対していかに人間が無力であるかを語り合い,少しは欲望や邪念といった心の濁りも薄らいだように見えた。だが,月日が経ち,何年か過ぎてしまうと,震災から得た無常の体験などすっかり忘れ果て,話題に取り上げる人さえいなくなった)(p88)
 それが人間というもので,そこを責めても仕方がない。今度の東日本大震災でも同じことだろう。こういう部分で人間は賢くなれない。
 永江朗さんが『51歳からの読書術』で,「『日本の歴史』と『世界の歴史』を読んでみて思ったのは,日本の歴史,人類の歴史というのは愚行の繰り返しだということ。人間はちっとも進歩していない。いつも下らないことで争い,つまらないことで人を殺す。(中略)歴史の本を読んでいると絶望的な気持ちになる」と述べている。そういうことなのだろう。
 (長明の方丈は)一見質素に見えるが,意外や大工に特注した高級な部材なのではないか。資産家の一員である長明ならばありうる。なにしろ後鳥羽院に琵琶を献上するほど裕福だった。(p110)
 歌人としても音楽家としても一流だった彼は,ついに風雅の道を捨てることはできなかった。彼は仏者である前に,風雅の人「数奇者」だった。(p115)
 ただ,我が身を奴婢とするにはしかず。いかが奴婢とするならば,もし,なすべきことあれば,すなわち,おのが身を使ふ。たゆからずしもあらねど,人を随へ,人を顧みるより安し。(p137)
 住む環境は危険な都心から郊外に移しながら,情報環境はしっかり都に残している(p145)

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