2016年10月28日金曜日

2016.10.28 角川書店編 『おくのほそ道(全)』

書名 おくのほそ道(全)
編者 角川書店
発行所 角川ソフィア文庫
発行年月日 2001.07.25
価格(税別) 680円

● 角川ソフィア文庫の「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズの1冊。『おくのほそ道』の冒頭,月日は百代の過客にして,行きかふ年もまた旅人なり,に初めて接したのは中学校の教科書だったか高校の教科書だったか。
 教科書に出てくるような古典を,ともかく全部読んだのは今回が初めてのことだ。

● この「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズ,かなり読みやすい。初心者向けの編集というか。
 このあとも,いくつか読んでいこうと思う。短いのがいいから,『方丈記』と『枕草子』あたりかな。

● 『おくのほそ道』は見たまんまを書いているのではなくて,芭蕉があえてフィクションを付与しているのだね。紀行文には違いないのだろうけど,それだけにはとどまらないようだ。
 驚くべき簡潔さ。ほんとに短い作品だ。何度も書き直しているんだろうか。いきなりこれができたわけではないのだろうな。

● 感情表現が大げさっていう印象も受ける。たとえばやたらに泣く。昔の男はこんなに涙もろかったのか。
 感激屋であることが,どの道においても大成するための第一条件であるのかもしれない,とも思うんだけどね。
 千住といふ所にて船を上がれば,前途三千里の思い胸にふさがりて,幻の巷に離別の涙をそそぐ。
 麓に大手の跡など,人の教ふるにまかせて涙を落とし,
 行脚の一徳,存命の喜び,羈旅の労を忘れて,涙も落つるばかりなり。
 「国破れて山河あり,城春にして草青みたり」と,笠うち敷きて,時の移るまで涙を落としはべりぬ。
● あるいは次のような表現。
 耳に触れていまだ目に見ぬ境,もし生きて帰らばと,定めなき頼みの末をかけ,その日やうやう草加という宿にたどり着きにけり。
 たかだか国内を歩くだけだろうがよ,とか思ってしまうんだけどね。この時代のこれだけの旅というのは,命を落とすことも普通にあり得たんだろうか。
 そのわりには,曾良という世話係を連れているし,先々に芭蕉を崇拝する人がいて,手厚いもてなしを受けている。それって,出発前に想定してたことだよね。
 お伊勢参りが流行して,庶民も大旅行をするようになるのはまだ先のことだけれども,芭蕉のこの陸奥行きも,そんなに悲壮な覚悟を要するものだったとは思いにくいんだけどね。

● 「かれは富める者なれども,志卑しからず」という表現もある。この時代から,富める者は志が卑しいものだという通念があったのかね。

● 「書に埋もれて推敲する詩人ではない芭蕉は,時間=旅人→旅=人生という真実を追究するために,書斎を捨てた。だから,その結果として生まれた『おくのほそ道』は,まさに行動の書にほかならない」と解説されている。
 たしかに,芭蕉はモノを持たない。一個所に定住しない。出家者のようでもある。が,案外グルメで,物見遊山が好きで,俗を愛していたのではないかと思える節もあるような。

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