2016年9月23日金曜日

2016.09.22 茂木健一郎 『頭は「本の読み方」で磨かれる』

書名 頭は「本の読み方」で磨かれる
著者 茂木健一郎
発行所 三笠書房
発行年月日 2015.07.05
価格(税別) 1,300円

● 本書を読んでまず思ったことは,自分はほとんど読んでいないということだ。数はそれなりに読んできたはずだと思うんだけど,もっとほかの読むべきものを読んでいなかったなという後悔のようなものを感じた。

● 茂木さんといえば,TwitterやFacebookなどのSNSもその初期に使い始めた人で,現在も精力的に発信を継続している。インターネットは全面肯定と書いていたのを読んだ記憶もある。
 その茂木さんが,ネットの弱点を指摘しているのを指摘しているのを本書で読むと,なるほどなぁと一層思うことになる。

● 以下に転載。
 インターネットの到来で紙の本は淘汰されるかもしれないと言われましたが,結局,本の価値は変わりませんでした。ものすごい量の情報が毎日流れてくる時代だからこそ,流されないための「アンカー(錨)」としての本が必要とされているのでしょう。(p1)
 映画や映像,音楽などもいいのですが,本がいちばん「情報の濃縮度」が高いことは確か。脳に一刻一刻膨大な情報が入ってくるのを,最後に「要するに、こういうことだよね」という形にまとめ上げるのが「言語」です。つまり言語は,脳の情報表現の中でもっともギュッと圧縮されたものなのです。(p3)
 一冊の本の中には,一人の人間と何回も食事をともにして,仲よくなって初めてわかるような深い思考が披露されています。(中略) すごくないですか? 本を読むということは,太宰治やドストエフスキーと何度も夕食をともにするようなものなのです!(p22)
 たとえて言うならば,本という一つの形になった文章を読むのは,ボクシングジムに行って,気合を入れてスパーリングをするようなもの。 それに比べて,メールや,フェイスブックやツイッターの文章を読むのは,普通にフラフラと街の中を散歩しているような状態でしかありません。(p33)
 ネットの注意点は「負荷が少ないこと」にあります。(p188)
 本当は好きなことにのめり込んでしまうことが,充実した学びを得られる一番の近道なのです。「情熱」は「優等生」であることよりも,ずっと重要だとぼくは考えています。(p63)
 自分が楽しめることばかりにのめり込んでいると罪悪感を抱く人もいるようですが,むしろ堂々とつづければいいのであって,それこそが自分を輝かせるコツなのです。(p64)
 今までは,サービスの規模が広がれば広がるほど,それを生み出す企業で働く人が増えていきました。しかし,今は非常に少ない人数で大きなシステムをつくり,それを世界中の人が享受するという構造です。(p73)
 インターネットでゼロから,自分で検索窓にキーワードを入れて勉強するとなると途方に暮れてしまいますが,世界最高峰の知識を持った人が書いた一冊の本であれば,ある意味気軽に,まとまった知識を手に入れることができるのです。 かしこい人の一万時間の経験が,たった一時間の読書に凝縮されているのです。(p76)
 グラッドウェルが挙げる例を見ていくと,彼は一貫して,生まれ持っての能力に関係なく,どんな人でも,天才的な業績を達成しうるのだという信念を持っているように思われます。(p87)
 あるとき,自分は「わざと無力感を覚えるために,TEDに行くのだな」と思いました。世界でいちばん強い“ラスボス”の姿を見て呆然とする。「これが,世界の第一線なのか。自分はまだまだだな」 そう思って,自分の小ささを思い知る。本でも同じなのです。(p104)
 普通の書き手は,小さなところにこだわってしつこいほどに理屈を書いてしまうものですが,漱石は頭がよすぎてサラッと書き流してしまうようなところがあります。 あまり作家の思いをていねいに解説したりしないので,そこにいかに多くの思考が凝縮されているか,読者が気づかないことが多いのです。(p123)
 これは恐ろしい事実なのですが,文章を見ると,その人の頭の良さがわかります。(中略) 本当に頭がいい人しかたどり着けない-たくさん考え,苦しみ,悩み抜いた人しか書けない-文章というものがある。(p128)
 ある映画がヒットするかどうかは,公開前にその映画について,何人の人がネット上の情報を編集したかで予測ができる。つまり,人びとが会話したくなるようなものがヒットする。(中略) まだ誰もその映画を見ていないから,その映画がいいか悪いかわからないのに,「あの映画,どうなんだろうね?」と,なぜか話題になってヒットにつながっていくのです。(p132)
 人間の共感能力の高さと,グループ内での人気の高さは歓迎があって,人の気持ちがわかる人ほど人から好かれて,友だちの数が多くなるという研究結果が出ています。(p144)
 以前,養老さんの電子書籍リーダーを見せてもらう機会がありましたが,英語の本が千冊くらいズラ~ッと入っていました。 何と英語のミステリー小説一冊程度であれば,飛行機の国際線に乗っているあいだに読み終えてしまうのだと言います。(日本からヨーロッパまでなら十時間ほどということですね)。これは英語の原書が読める日本人の中でも,驚くべきスピードだと思います。(p155)
 意外に思うのが,佐藤(優)さんの著書の中に,たとえば綿矢りささんの小説や流行のテレビドラマが頻繁に登場することでした。第一線の外交問題のリサーチに忙しく,日本の流行小説やテレビ番組をチェックする時間などなさそうだと思っていたら,そういうものこそ時代の流れをつかむのに重要なのだとおっしゃる。 頭のいい人は分厚くて難解な本ばかり読んでいる,というのは完全に間違ったイメージなのだと思いました。(p155)
 手軽さではネットの情報に負けるけれど,信頼性という意味では,はっきりと紙の本に軍配が上がります。手軽に情報を集める技術としても,まず紙の本で調べるようにしてみましょう。(p181)
 電子書籍は目的がはっきりしている場合は使いやすく,紙の本は広く見渡したいときに便利。どうも役割の違いがあるようです。(p184)
 ぼく自身,「今すぐ返事をしなくちゃ!」と体が動いてしまうような,説得力にあふれた仕事の依頼メールをいただくことがあります。ツイッターでも,たった百四十文字足らずの文書にハッとさせられ,まったく知らない人でも即時フォローすることがある。 たった一つのことをどう言うかで,相手の心を大きく動かすことができる。文章の持つ力をないがしろにする人は,実はとても損をしているのです。(p191)
● 最後に,これは自分のことを言われているのではないかと思ったことを。
 華やかな成功だけを盲目的に信じていると,人の弱さに対して残酷な対応しかできません。自分や他人の暗黒面から目を背けてしまうのです。(p223)

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