2016年9月8日木曜日

2016.09.04 長谷川慶太郎 『「世界大波乱」でも日本の優位は続く』

書名 「世界大波乱」でも日本の優位は続く
著者 長谷川慶太郎
発行所 PHP
発行年月日 2016.09.15
価格(税別) 1,500円

● どの国でも,大方の予想を裏切る現象が次々に発生している。どうやら目に見えない潮流が生まれただけでなく,その影響が急速に強まってきたようである。(p1)

 世界のどの国も,必死の努力を払って危機対策に取り組んでいるが,最大の原因である「デフレ」の流れを阻止できない。
 その理由は,はっきりしている。どの国にも共通していることだが,現在の政治体制は「インフレ」時代につくられ,その維持に全力を挙げているからである。(p3)

 デフレの状況では,「買い手」が強くて「売り手」が弱い。「買い手」というのは,庶民であり,一般有権者である。一方「売り手」は官僚であり,企業経営者である。つまりエリート層だ。(p32)

● EU離脱後は,イギリス国内からEU諸国に製品を輸出する場合には関税がかかることになる。しかし,そのコスト負担を考えても,日本企業はイギリスにとどまったほうがいい。理由は三つある。
 一つは,英語である。(中略)語学の問題など大したことがないように思えるかもしれないが,実はこの問題が一番大きい。コミュニケーション能力はビジネスを左右する。(中略)
 二つめの理由は,文化的背景だ。(中略)日本人にとっては,フランスやドイツの文化を理解するよりも,イギリスの文化のほうが理解しやすい。(中略)
 三つめの理由は,イギリスの地形・風土だ。イギリスは山が少なく平野が多い。(中略)地震のない国であり,ハリケーンも少ない。(p22)

● ナチの負の遺産として,ドイツ政府は「移民の抑制」という政策をとりにくい。「ドイツは民族差別をする国ではありません。ドイツは開かれています」という姿勢を見せなければならない。(p35)

 伊勢志摩サミットで,安倍首相は「リーマン・ショック前夜の状況と似ている」と言って,リスクに警戒するように呼びかけた。それに対して,メルケル首相らが「そこまでのリスクとは言えないのではないか」と反論したとされる。
 当たり前だ。メルケル首相が「そのとおりです。実は,ドイチェ・バンクが危ない」などとは口が裂けても言えないし,また,政治家はそういうことを言ってはいけないのである。(p61)

 これまで,フランス一国でドイツに勝ったことはない。だから,フランスはドイツに対する潜在的な恐怖心のようなものを持っている。(p65)

 ロシア軍の軍人が民間の職を得られないのは,軍人の育成の仕方にも原因がある。ロシアの軍人は教えられたことだけを金科玉条のように守るので,融通が利かず,民間で働くのはかなり難しい。(p127)

 ロシア軍は,ソ連時代と同じように戦力の半分が核戦力だ。「核なき世界」が実現したら,核戦力がすべて必要なくなる。そこで働いている人間もすべて不要になる。(中略)「核なき世界」が実現した際に,一番ダメージを被るのがロシアである。アメリカはそれをわかっているから,「核なき世界」を進めようとしている。(p128)

● 上海電力は,江沢民系の会社だから,江沢民の了解なしに投資を決めることはできないはずだ。つまり,江沢民が了解したうえで,日本に資産逃避させているわけである。
 トップリーダーや国営企業経営者が信用していない国に日本企業がいつまでも期待をかけていても,仕方がない。(p84)

 中国の経営者たちが自国通貨を信用せず,売りに売っている。彼らが買っているのは,世界で一番価値のある国債,つまり日本の国債だ。(中略)極端に言えば,中国の経営者たちは,中国経済は破綻すると見ているのだ。だから,人民元を売って,目減りを覚悟で安全な日本円に換えている。その額は巨額だ。一ロット=一〇〇億円規模の「爆買い」まで出てきている。(p88)

 中国共産党の子弟たちがアメリカに留学し,中国には誰も帰ってこない。彼らはアメリカ国籍を取ってアメリカ人になりたいと思っている。自分の国に戻って,自分の国を良くしようという気持ちがない。(p112)

 中国は他の東南アジア各国に対しても,資金援助をすると申し出て鉄道建設の契約をとりつけた。しかし,中国には長期資金の余裕はなく,計画は実行に移されていない。
 ラオスだけでなく,タイもマレーシアもシンガポールも,「中国不信」に変わってしまった。文字どおり,「金の切れ目が縁の切れ目」ということだ。(p90)

 中国は国際裁判の判決にも従わないし,国際法も遵守しない。また経済協定に調印しても,まったく実行しようとしない。中国と約束を結ぶことは,ほとんど無意味になっている。
 その結果が世界に知られて,アメリカも東南アジア諸国も,中国をまったく信用しなくなった。(p93)

 中国リスクの最大のものは,中国の内部の対立だ。(中略)東シナ海,南シナ海への進出も,中央政府がやらせているというよりも,東海艦隊,南海艦隊が功を競って勝手にやっているだけだ。習近平には,それを止める力がない。(p96)

 北朝鮮から石炭を積んだ船が山東省や遼寧省の港に入ろうとしたが,中国は入港させていない。北朝鮮の生命線は鉱物資源の輸出であるから,中国の制裁によって北朝鮮は致命的な状況に陥っている。(p100)

● 一九七五年の第一回のフランス・ランブイエ・サミットから二〇一五年のドイツ・エルマウ・サミットまで,ずっとシェルパ(各国首脳の代理人や補佐役)による議論が主体で,首脳同士はほとんど議論していなかった。
 ところが,伊勢志摩サミットは違った。安倍首相がサミットそのものを思い切って改革したのである。(中略)先進国の首脳たちが積極的に議論をすることで,各国はより深い絆で結ばれるようになった(p115)

 なぜ,オバマ大統領が広島を訪問することになったのか。オバマ大統領の個人的な意向だといわれているが,それは違う。(中略)
 広島訪問が実現したのは,日本の地位が飛躍的に上がったからである。安保体制の正義で,日米関係はかつてなく緊密になっている。産業面でも,アメリカは日本頼みである。(p123)

 日本の部品は,大企業の製品から中小企業の製品に至るまで,世界中の生産ネットワークの中に組み込まれている。日本の力なくしては何も製造できない。
 日本で地震が起こるたびに,自国の製造業が工場を停止しているわけだから,世界の首脳たちもこの事実に気がついている。(P124)

 日本には技術力も長期資金も両方ある。世界を見渡しても,両方持っている国は日本だけだ。(p134)

● これからの世界平和の体制づくりには,三つのポイントがある。
 一つ目は,インフレ時代からデフレ時代への転換を制度面で行うこと。そこには税制も含まれる。
 二つ目は,デフレ時代に長期にわたって経済を発展させるにはどういう手段があるかを考えること。これにはインフラ整備しかないと言える。
 三つ目は,アメリカが世界の警察官の役割を降りたときに,G7が強調していかに世界の安定をつくりだしていくかという点だ。(p129)

 重要なことは,「熱い戦争」に至らないようにすることだ。それには,マーケットの力を使うしかない。路線転換をしなければ自国が滅びてしまうことがわかれば,彼らは宗旨替えをせざるを得なくなる。(p140)

 世界の趨勢を見ればわかるように,イデオロギーは影響力を失っている。もはやリベラルの時代ではなくなった。リベラルに固執していたら,国民の支持は得られない。日本だけでなく,アメリカでも同じ傾向が出ている。(p172)

● 治安を維持するには軍隊の組織ではなく,警察を使わなければならない。(中略)軍隊と警察の違いは,“地域密着度”だ。警察は地域に密着して仕事をするから,住民との協力関係を築ける。
 一方,軍隊は常に移動するという特徴を持っており,地域に根ざしてはいない。(p37)

● 米軍の建設大隊は,仙台空港をわずか二週間で完全に復旧させた。(中略)一方,松島の飛行場は自衛隊が精力的に復旧に取り組んだが,なかなか修復できず,結局,二カ月かかった。もちろん,これは他の国と比べれば非常に早いのであるが,アメリカには及ばない。(p160)

 残念なことに,日本海軍には土木技術的な知識があまりにも乏しかった。戦闘で戦うのが軍人だという考え方が強く,土木技術は軽視されていた。(中略)
 アメリカ陸軍の場合,ウェストポイントの陸軍士官学校の卒業生で,成績の良い人間はみな工兵科に入る。優秀な人間から順番に工兵になるという発想を,日本ではなかなかできない。(p162)

 日本海軍の場合は,兵学校の卒業生だけが幹部になって運営されていたから,いわば卒業生の仲良しクラブになってしまった。閉鎖的になるし,また勉強もしなくなる。(p166)

 第二次世界大戦で日本が負けた理由は,東アジアで中国と長期戦をやって,中国が屈服するまでにアメリカが参戦して太平洋戦争になったことだ。それをコントロールするだけの政治力がなかった。
 コントロールする政治力がなかった最大の理由は,明治憲法である。明治憲法では,内閣総理大臣は閣僚に対する任命権を持たなかった。(中略)
 第一次世界大戦の教訓だが,そういうタイプの憲法を持っている国はみんな敗れた。ドイツ,オーストリア=ハンガリー,ロシア,トルコ,みなそうである。
 そのときの教訓を日本は学ばなかった。(p175)

● 民進党の問題点は,政権の座にいた三年間で何を失敗したかについて,まったく言及していない点だ。(o173)

 民主党政権では,最後の野田政権はその前の二人に比べればまともなほうだった。というより,前の二人がひどすぎた。これは多くの国民の共通認識である。(p173)

● 災害時に一番重要なことは,「需給バランス」である。物資や人員が必要とされているところに,必要とされている量だけ供給されなければいけない。これが何よりも肝心だ。
 欲しいもの,足りないものと,支援物資の需給バランスを調整するんはコンピュータを使うしかない。(アメリカの)FEMAは,そのシステムを持っていた。(p181)

 筆者の働きかけがきっかけで,自衛隊員に災害出動手当がつき,それが制限されることなく支払われることになった。しかし現在では,筆者はこれは失敗だったと考えている。それは,自衛隊員に対して,働いたら働いた分だけの報酬を金で支払うのと同じだからだ。(中略)
 自衛隊を国防軍として処遇するとう観点が抜け落ちていた。自衛隊員には,金ではなく名誉で報いるべきだった。(p189)

0 件のコメント:

コメントを投稿