2016年3月10日木曜日

2016.03.06 下川裕治・阿部稔哉 『週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分』

書名 週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分
著者 下川裕治
    阿部稔哉
発行所 朝日文庫
発行年月日 2016.01.30
価格(税別) 700円

● 下川さんの著作はほぼすべて読んでいる。朝日文庫の週末シリーズも読んでいないものはない。

● そこで思うのは,下川さんの真骨頂は,その国や地域の現在がなにゆえに今あるような現在なのか,そこを歴史を遡って素描する際に発揮される。
 本書では,プラナカン(海峡華人)やプミプトラ政策(マレー人を優遇するマレーシアの政策)について,鮮やかに切り取って見せてくれている。

● 貧乏旅行,お金を使わないでどこまでやれるか,という旅でデビューしているから,そっち方面についてのノウハウも膨大にお持ちのはずで,それも披瀝される。
 だけれども,それよりも文章の妙と,この歴史素描の冴えが,下川作品の魅力だと思う。

● 以下にいくつか転載。
 (シンガポールでは)少なくとも,タクシーに乗るときに,「運賃メーターを使え」などという必要はない。だいたい,客待ちをするタクシーもほとんどない。民度がここまであがるということは大変なことなのだ。(p18)
 シンガポールに限らず,窓のない部屋は少なからずある。台湾,上海,香港,カンボジアのシェムリアップ,マレーシアのマラッカ・・・・・・華人が多い街の傾向のようにも思う。(p42)
 宿の予約をすることが性に合わない。決められた日に,その街に着くことができるかどうかわからない旅が多いという事情もあるが,予約を入れてしまうと,そこに行かなくてはならないということが面倒なのだ。しかしシンガポールは事情が違った。ネットを通して予約したほうが安いのだ。(p45)
 シンガポールで節約すること。それは庶民の世界になると,セントの世界の攻防だった。バス運賃といい,ホーカーズといい,一ドル以下,八十六円以下の積み重ねが安くあげるコツだった。(p78)
 シンガポールの一日目は快適だ。堪えるのは物価の高さだ。そのなかで二日目,なんとか抗ってみた。しかし二日目の晩になると,収まりのつかないものがむくむくと頭をもたげてきてしまう。(p90)
 歩くのもままならないような人混みのなかを,ぐいぐい歩くのは,大陸の中国人の得意技である。(p154)
 国家という枠組みは,海峡植民地に生まれたプラナカンのおおらかさを削いでいくことになる。それは国家というものがもつ宿命でもある。(p165)
 (イスラム圏の)アルコールを禁止するという戒律は,かなり揺らいでいる。(中略)国によっての違いはあるが,アルコールは財力に結びついているようなところもある。国際社会で成功し,英語を口にするイスラム教徒というイメージには,アルコールがついてまわる。(p186)
 LCCは中距離や短距離では,目を疑うような運賃を導くことができる。しかし長距離になると,一気に精彩を欠いてしまう。LCCには運賃を安くするさまざまなノウハウがある。しかしその多くは,中短距離で機能する。(p268)

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