2016年2月20日土曜日

2016.02.13 長谷川慶太郎 『長谷川慶太郎の大局を読む2016-17 世界はこう激変する』

書名 長谷川慶太郎の大局を読む2016-17 世界はこう激変する
著者 長谷川慶太郎
発行所 李白社
発行年月日 2016.02.29
価格(税別) 1,400円

● 原油価格の下落が止まらない。ぼく的にはというか多くの人にとっては,ガソリンや灯油の価格が下がるわけで,じつにありがたい話なんだけども,元売りやガソリンスタンドの経営者にいわせればとんでもないことかもな。
 実際に大きく円安に振れていくなかで,国内の販売価格が下がっていったわけだから,これが民主党政権時の為替レートのままだったら,ガソリンなんて70円になっていたか。
 もはや中東の地政学的な要因は原油価格を左右する条件ですらなくなっている。その証拠に原油価格は,サウジがイランとの外交関係を断絶した後,上がるどころか,逆に下がっている。(p4)
 逆オイルショックの継続は,言い換えれば,国際カルテルとしてのOPECの機能が失われてしまったということだ。石油で稼げなくなれば中東の産油国はどうなるか。極端にいえば,元の砂漠の国に戻るだけである。もっとも,サウジは原油輸出だけに依存する体質を変えようと原油加工にもいち早く踏み切った。(p58)
● 中国については完全に見切りをつけている感じだ。しかし,中国に何が起きても,日本経済には影響がない。
 中国経済についてはもはやハードクラッシュしかない。問題はハードクラッシュの後で中国企業がデフレ時代に対応して生き延びていけるかどうかということなのである。(p81)
 アメリカのミサイル駆逐艦が人工島の12カイリ以内に入ってきたため,オバマ大統領を見くびっていた習近平主席は仰天したに違いない。習近平主席の面子も丸潰れになってしまった。残り1年ほどの任期になってオバマ大統領もやっと国際政治を動かしている力が何かということがわかってきたのだろう。国際政治ではときには力を誇示する必要があるのだ。(中略) オバマ大統領の決断の背景には,安倍首相による安保関連法の成立があったことも見逃せない。(p86)
 日本についても中国の隣国だから中国経済が崩壊すれば日本経済に悪影響が及ぶという錯覚を世界の投資家が持っているだけだ。(中略)中国のパニックで株価が下がれば,むしろ押し目買いのチャンスなのである。(p5)
● ヨーロッパもダメだ。唯一,ドイツだけは例外だったのだけども,フォルクスワーゲンの重大な不正が露見して,陰りが出てしまった。
 さらに,ISのテロがパリで起こって,観光客が激減。
 ヨーロッパで技術水準の低落と研究開発能力の低下がなぜ起こっているかというと,最大の要因は技術者人材を養成する能力の不足である。たとえばヨーロッパの冶金の専門学科を持つ大学が少ない。(p103)
● ISを作りだしたのはイラク戦争後のアメリカの不手際。
 もしイラクに安定した政権ができて国土全体をきちんと統治できていればISが存在する余地もなかっただろうし,シリアの内戦も長期化せずに収まっただろう。(中略)別の言い方をすると,アメリカのイラク占領統治に問題があったからISが生まれてしまった。(中略)その最大の原因はアメリカが旧イラク軍を解体して軍人を解雇するとともにすべてのバース党員を排除したことだといわれている。バース党員はイラクの行政を動かしていたから,イラクの政権は機能不全に陥ったのだ。(p118)
● では日本はどうか。基本的には問題はないのだけれども,個別に見ていけば課題は山積している。介護(高齢化),保育(少子化),医療,公務員制度改革などなど。
 介護職を担う人は増えるどころか,減っている。というのも給料が低いからで,(中略)全産業の平均よりも約11万円も低い。(中略)裏を返すと,給料が安いから虐待をするような質の悪い人材しか確保できないともいえるだろう。介護施設で入居者に対する虐待が起こるのも介護福祉士を安い給料で長時間働かせているからである。(p161)
 日本経済をさらに活性化させるためには財政支出を徹底的に減らす努力をもっと重ねなくてはならない。その点で第一に挙げられるのが公務員制度改革だ。具体的には公務員の身分保障を剥奪することである。役所で働いている公務員がクビになることもあるというシステムを導入して初めて公務員も民間の会社員と対等になる。(p163)
● 民主党は長期低落傾向。
 経済界に対して賃上げするようにと最も強く圧力をかけているのは労働組合ではなく安倍首相なのは明らかだ。しかも賃上げは労働組合や野党の民主党がいくら強く要求してもなかなか実現しないのに安倍首相がいえばすんなりと通ってしまう。安倍首相の圧力に経済界は弱い。(p171)
 労働組合との関係は民主党がスポンサーとして役に立たないから名目だけのものになってしまった。安保関連法案に対しても労働組合はほとんど反対に動かなかった。したがって今,労働組合は2016年の参院選でも本気で民主党を支援することはできないと判断している。民主党が次の参院選でも大敗するのは間違いない。(p172)
● 対して,安倍首相への評価は高い。
 参院選で勝つにはまず自民党に対する公明党の全面的な協力が不可欠なので,安倍政権も軽減税率に強くこだわった公明党の言い分を丸呑みしたのである。公明党には軽減税率で貸しをつくったのだから参院選ではその借りを返してくれということだ。安倍首相は譲るところと頑張るところのメリハリが効いている。(p176)
 臨時給付金についても,貧しい人だろうが大金持ちだろうが,選挙での一票の価値は同じだから低所得の年金受給者に3万円を配って歓心を買うのは当然だ。言い換えれば,臨時給付金も軽減税率も議会制民主主義におけるコストであって,安倍政権はそのコスト負担を惜しまないということなのである。(p176)
● 東芝問題。
 たとえ東芝が存続したとしても立ち直るまでに15年くらはゆうにかかるだろう。本来なら家電部門も半導体部門もすっぱりと諦めて潰してしまうべきだ。となると数万人規模のリストラを覚悟しなければならないが,それができないのなら経営陣を総入れ替えするしかない。(p181)
 2000年以降,カネボウ,ライブドア,オリンパスなどが株取引や会計処理での問題を引き起こしたが,東芝の粉飾決算の深刻度はそれらの企業の不正をはるかに上回る。だから,粉飾決算を主導した東芝の旧経営陣は全員,刑事訴追を受けて裁判で実刑を科されるのが当たり前だ。 東芝の旧経営陣にそのような厳しい処罰が科されればすべての日本企業の経営陣の気持ちも引き締まる。と同時に日本の企業経営の透明性,合法性も格段と高まっていくだろう。(p182)
● 人手不足が顕在化している。ブラック風評がたってしまうと,お客が減る以上に従業員が集まらなくなる。これが大きな痛手になる。
 訪日外国人の客が増えてホテル側は笑いがとまらないのかというと話はそう簡単ではない。(中略)いちばん苦労しているのがホテルの従業員の確保である。(p186)
 居酒屋業界で目を見張る成長を遂げていたワタミの転機は2008年だった。4月に入社した社員26歳の女性社員が連日の長時間労働を強いられ,同年6月に自殺したのである。2013年に女性社員の遺族が,自殺の原因は安全配慮義務を怠ったワタミにあるとして損害賠償1億5000万円を求めて提訴したのに対し,ワタミ側は裁判で「法的責任はない」と述べて争う姿勢を取った。ところが以後,インターネットの書き込みやマスコミ報道で「従業員に過酷な労働を強いるブラック企業」という風評が立ってしまい,それが客足が遠のく一因となってワタミは赤字に陥ったのだ。しかしワタミにとって客離れ以上に痛かったのはブラック企業というレッテルが貼られてしまい,従業員が集まらなくなったことだ。(p189)
● 雇用問題については,人手不足以前に考えなければならない問題がある。
 私は日本企業のなかで正社員と非正規社員という区別があること自体に問題があると思っている。同一労働同一賃金なら両者の区別は必要ない。(中略)それには日本の企業全体が職務給ベースの賃金体系に移行しなければならないのにもかかわらず,まだほとんど移行できていない。職務給ベースの賃金体系になれば労働者の流動性も高まる。(p194)
 実は日本企業の場合,今でも中間管理職の約9割は不要なのです。なぜなら,本来は不要な業務やセクションが多すぎるからで,不要な業務やセクションをなくして配置換えをすると人手不足もいっぺんに解消してしまいます。(p220)
● その他,ひとつだけ転載。
 「織り込み済み」は市場用語であって,「あてにならない」とか「よくわからない」という意味にほかならない。(p45)

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