2015年11月27日金曜日

2015.11.16 外山滋比古 『思考力』

書名 思考力
著者 外山滋比古
発行所 さくら舎
発行年月日 2013.08.06
価格(税別) 1,400円

● 本書で説かれていることは,すでに読んだ著者の中でも言われている。学歴有害論というか,知識有害論である。
 と書くと,著者は,いやそこまでは言っていないと仰るだろうけど。

● 自分が習う知識はすべて借りものである。借りもので頭の中をいっぱいにすると,自分で考える思考力は落ちざるを得ない。
 だから,憶えたら忘れることが大事で,忘れることによって頭の中に空きを作ららなけれならない。そういうことが説かれている。

● 以下にいくつか転載。
 知識を教えるのは簡単だが,思考力というものは,知識のようにうまく教えられない。だから,趨勢としては,依然としてベーコンの「知識は力なり」という考えがいまもつづいている。(p9)
 知識とは,いろいろとある雑多なものから抽出した究極の形だから,不純物を含まない。○か×,白か黒しかない。しかし,人間の実際の経験では,白と黒のどちらかわからない,灰色の中から,白ができたり,黒ができたりしているのに,いまの人は経験が乏しいから,はじめからこれは安全,これは危険,これはいい,これはいけない,と善悪を決めてしまう。(p10)
 実行力がある人は,教養をあまり重んじない。昔から「インテリは使いものにならない」といわれるのは,経験に乏しいから知恵がない,応用がきかない,という意味である。こういう人が,一人でなにかをしようとすると,たいてい失敗する。(p20)
 自分で論文を書くには,まがりなりにも頭で考えなければならない。ところが,とくに学校の成績がいい学生ほど,途方にくれる。(p25)
 我流というものは,しぶとくてなかなか滅びない。 一方,借りてきたものは,すぐに賞味期限が切れてしまう。その代わりを自分でつくれないから,また借りてくる。(p33)
 人間としての存在価値は,「忘れる」ことでしか発揮できない。記憶と忘却が共存し,記憶したものの中で不要なものを忘れ,忘れたあとに新しいものを記憶し,忘れてさらにその先を考える・・・・・・忘却は睡眠中だけではなく,覚醒時に意識的にできるところまでいけば,コンピュータにも負けない。(p36)
 思考力低下の最大の原因は,知識偏重の風潮である。他人の論文などは,必要以外ほとんど読まなくてもいい。(中略)知れば,それにとらわれて,そこから抜け出せなくなる。(中略)自由な発想のためには,すぐれたものをごく少数だけ読んで,あとはよけいなことは知らないでおいたほうがいい。(p42)
 日本で,学問のあるバカの存在を最初に指摘したのは,おそらく菊池寛だろう。「学術的根拠をもっているバカほど始末が悪いものはない」というようなことを述べている。(p46)
 ものを吸収したい,勉強したいという気持ちをおこすには,頭は空腹の状態でなければならない。満腹状態でいくら勉強しても,それ以上は入りきらない。(p55)
 女性にくらべ,男性は指をめったに使わないが,パソコンのキーボードを打つのは有効な運動になるかもしれない。(p62)
 手の散歩のほかに,口の散歩も有益である。 散歩で足を使うのと,口でしゃべるのとでは,使うエネルギー量は後者のほうが多いという学者もいる。人によってもちがうが,発声にはおどろくほどのエネルギーが必要だ。(p62)
 坊さんが概して長生きなのは,年をとってからも読経という運動をしているからかもしれない。後継者ができて,自分ではあまりお経をあげなくなると,すぐに老けこんでしまうことが多い。(p65)
 小学校で,体育の次に軽視されているのが,理科である。その理由は,女性教師の割合が圧倒的に多くなったことだ。(p68)
 知識というのはすべて借りものである。自分で考えた知識を,われわれはほとんどもっていない。(中略)そもそも,「学ぶ」の語源は「まねぶ」,つまり,まねることである。 したがって,勉強を長くしていると模倣性が強くなり,それにつれて,自分のオリジナルなものを考え出す力が低下していく。日本で高等教育を受けると,能力の低い専門家が増えてしまう。(p73)
 ぼんやりとしか目標にしていなかったものに失敗すると,とたんに自分の目標がはっきりとすることがある。落ちれば,たいていの人はそこでいやでも考える。考えて,新しい発見をすることもある。これは貴重な機会である。(中略) いま日本人がもっとも嫌っているのは,「落ちる」ということだ。入学試験に落ちる,就職試験に落ちる・・・・・・。とにかく,多くの人は落ちることを頭からおそれ,極端に嫌っている。これが日本人を弱くしているということに気づくべきである。(p85)
 いまの家庭は,いいことばかりをやろうとしている。それが,子どもにとって理想的な環境だと思っている。しかし,いいことばかりやっていると,悪いことに弱くなる。ある種の危険は,次の安全に向かっての大事な訓練である。(p87)
 たとえば,本田宗一郎とか松下幸之助といった人は,学歴といえるものがない。この人たちがもし大学を出ていたら,あれだけの仕事はできなかったのではないだろうか。(中略) 学校を出ていない人は,知識が不足しているので,ことを為すのに苦労をする。けれども,天賦の能力がつぶされないまま残っているところが多いから,いったん動き出すと,目ざましく伸張する。(p106)
 いまの少子化の最大の問題は,マイホーム主義だ。こどもを自分の家の中に囲いこんで,大人が一生懸命に世話をすれが,いい子が育つ,というまちがった考え方からは,できるだけ早く脱却しなければならない。(p110)
 人がやることは,あらいざらい,やらなかった。人がやらないことばかりを,やってきた。意識的に人のやらないことだけをやろうと考えていたわけではないけれど,あまり常識的な生き方ではつまらない,とは思っていた。(p154)
 当時のサラリーマン,先輩教師などを見ていると,定年になると,口では悠々自適などと言うものの,とたんに元気がなくなってしまう。その原因は,どうもお金の問題らしい。(p155)

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