2015年10月9日金曜日

2015.10.09 藤谷 治 『あの日,マーラーが』

書名 あの日,マーラーが
著者 藤谷 治
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2015.08.30
価格(税別) 1,500円

● 「あの日」とは2011年3月11日。「マーラーが」とは,その日の午後7時半,新日フィルが予定どおりにマーラーの5番を演奏したことに基づく。
 東日本大震災の当日の夜,予定どおりに演奏会を開いたところがあったという事実。

● その事実に絡めて,何人かの登場人物を設定し,それぞれにこの日の様子,大震災の衝撃を語らせる。全体的にアンニュイが支配しているようでもある。

● 第5章は,登場人物がマーラー5番の演奏について語る。作者のマーラー観,音楽に関する蘊蓄が存分に披露されているといっていいだろうか。
 ここまで語れる人はそうそうはいないように思う。作者はかなり聴きこんでいるようだ。当然,文献も渉猟している。
 ぼくは聴き手としてその方向に行ってはいけないと思っているところがある。優秀な評論家になるのは避けたい。なれもしないだろうけど。

● 以下に,いくつか転載。
 どんな人間にも個性があるように,どんな人間にも凡庸さはある。社会的動物である人間にとって,凡庸さは生存に欠かせない一種の「機能」である。(p33)
 凡庸に依存するようになり,何が凡庸かを判断できなくなれば,芸術はどこかの専門家から下賜された,ありがたいお品物でしかなくなる。(p33)
 いつか何かの本で読んだことがある。人生のピークが来るのは,遅ければ遅いほどいい。(p79)
● 新日フィルを模していると思われる「新世界交響楽団」には「清楚で知的な雰囲気の,ショートカットで隠れ巨乳の,兵藤みのりさん」(p137)というセカンドヴァイオリンの奏者が登場するんだけど(当日は対抗配置だったんだろうね),新日フィルの奏者の中に「兵藤みのりさん」のモデルがいたんだろうか。
 だとしたら,ぜひ新日フィルのコンサートに足を運んでみたいぞ。

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