2015年9月23日水曜日

2015.09.20 川内有緒 『バウルの歌を探しに』

書名 バウルの歌を探しに
著者 川内有緒
発行所 幻冬舎文庫
発行年月日 2015.06.10(単行本:2013.02)
価格(税別) 690円

● 副題は「バングラディシュの喧噪に紛れこんだ彷徨の記録」。
 たった12日間の旅を1冊の本に仕立てるのか,美味しすぎないか,と思って読み始めたんだけど,あたりまえのことながらそうではなかった。前後にたっぷり元手がかかっていた。

● まず,転載から。
 もう十年以上も国際協力の仕事をしてきて,南米やアジア,アフリカでホームレスや病気の子どもを大勢見てきた。そういう人のために役に立ちたいと思って就いた仕事だったが,いつの間にか何も感じなくなっていた。たぶん辛すぎる現実を前に,ずっと思考を停止させていたのだ。そのせめてもの免罪符が国連で働いていることだった。 しかし,自分はただの旅人になり,今日,見てしまった。 あの(新聞売りの)少年の目。 カメラを向けた時の少し緊張したような,照れたような,悲しそうな目。まっすぐな背中。新聞を握りしめる小さな手。汚れたTシャツ。 彼は小さな体で,このバングラディシュという国が背負ってきた業,貧困,差別というすべてを背負っていた。少年は写真を撮った私に,何も求めなかった。言葉も発さなかった。ただレンズの向こう側からじっと見つめ返した。(p332)
● こういう視点を持てる人が書いたものが面白くないはずがないじゃないか。同時に,こういう視点を持ってしまった人は,もの書きになるしかないんだろうなとも思う。
 ものを書くことを業とする人は,なるべくしてそうなるのであって,努力とか修練とか,そうした人工的な作為でもって道をつけるのではないようだ。
 文章力や構成力も舌を巻くしかないもので,やはりもの書きはなるべき人がなるのだろう。

● バングラディシュが好きになった。バングラディシュに行ってみたくなった。
 自分が行くと,本書の世界はまったく見えなくて,人いきれの中でたんに疲れて帰ってくることになりそうだけど。

● ノンフィクションだから量産は利かないだろうし,量産できるタイプの文章ではないと思われる。その分,フォローしやすいかもしれない。
 宇都宮の書店では,本書以外の著者の作品はなかったので,東京に出るときに大きな本屋を覗いてみることにする。アマゾンでもいいんだけど。

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