2015年9月22日火曜日

2015.09.19 太田英基 『僕らはまだ,世界を1ミリも知らない』

書名 僕らはまだ,世界を1ミリも知らない
著者 太田英基
発行所 幻冬舎文庫
発行年月日 2015.06.10(単行本:2014.08)
価格(税別) 690円

● 本書もバックパッカーによる世界一周の記録といっていいんだろうけど,類書にはない大きな特徴がある。放浪記ではないということ。
 僕はまず,今回の世界一周の旅で取り組むテーマを決めた。二つ。(中略)20代の若者を中心に,世界を舞台に生きる魅力を伝えたい,世界を舞台に働くことは楽しいことなんだと伝えたい。そのために,世界各地でビジネスというフィールドで頑張っている日本人を訪ね,彼らのことをインターネット上でレポートしていくことに決めた。(中略) もう一つは,とにかくインターネットサービスをフル活用しながら,お! この人オモシロそうだな!と思う人がいれば,どんどんアポイントを取る。そうして世界中の人と交流すること,学ばせてもらうことだった。(p33)
● その結果どうなったかというと,放浪よりはビジネス交渉のような趣が前面に出るような旅になったようだ。 
 日によっては人と逢う予定が5件ぐらいあって,朝から晩まで観光そっちのけで様様な出会いを全力で楽しんできた。『どこへ行くか』よりも『誰と出逢うか』。僕の旅の醍醐味は人との出逢いだった。(p6)
● もうひとつ。出かける前に英語力を鍛えていること。フィリピンで3ヶ月間,英語漬けの日々を送った。マンツーマンでレッスンを受ける英語留学だ。その3ヶ月間,必死こいて勉強したらしい。あとは,旅をしながらさらに鍛えていった。
 『英語ができなくても旅は楽しめる』とはよく聞く言葉。それを否定はしないけれども,『英語ができれば旅はもっと楽しくなる』というのは間違いない。(p39)
 本当にシャイな人間は海外に出てこない。海外に出てきて,それでもシャイと呼ばれる人間は,きっと僕のように英語力が足らなくて,みんなが何を言っているのか見失ってしまった人のことなんだと思った。(p64)
 スペイン語についても同様で,スペイン語圏の中米に入ってまずやったことは,スペイン語の勉強だ。
 「なぜ僕は,アメリカから陸路で南下してメキシコに入るのではなく,グアテマラまで飛んだのでしょうか?」 その答えは,「スペイン語を学ぶため」だった。(中略)グアテマラは物価や人件費が安いため,スペイン語をマンツーマンレッスンで格安に習えるというわけだ。(p77)
● 何と周到で計画的か。20代の若者がここまでやれるのか。著者は学生時代に起業しているくらいだから,このあたりはお手のもの?
 で,そのフィリピン留学の一件を本にすることなって,この旅の間に原稿を書いてしまう。1週間くらいで書きあげたようだ。これも離れ業でしょ。
 旅の最中に出版される。編集者とは一度も顔を合わせないまま,出版に到ったというわけで,そういう時代になったのかと思った。

● では,そういう著者はどんな人なのか。
 僕は昔から,他の誰もしたことがないことをしたくて,ウズウズしてしまうタイプの人間だった。(p28)
● 日本人のこれが弱点だと言われていることも,著者は,そうではなくてそれを活かせばいいのだという意見。
 自己主張する能力は他国に比べると弱いのかもしれない。でも,僕らはその代わりに協調性という他国にはない武器を持っている。この協調性を最大限活かせば,世界を舞台にしても輝けるポジションがあるはず。(p285)
 僕は日本人ほど仕事熱心で頑張れる人たちを知らない。間違いなく日本人には『仕事ができる人』が多い。ただ,その能力を海外で発揮するために必要な語学力が世界水準に遠いのがネックだ。逆に言えば,そこを克服していくことができればチャンスはまだまだあるということ。(p332)
 日本には資源がないと言われているが,アフリカや中東に人たちにはない『雨』という資源を持っているんだ。(p272)
● その他,いくつか転載。放浪記ではないものの,痛快な世界一周記であることは間違いない。
 ジョージの方は,まさかのアメリカの名門カリフォルニア大学バークレー校の大学教授だった。僕は驚いて,「なんでここに泊まってるの!?」と発した。(中略) ジョージは答えた。「なんでって,そりゃ独りがつまらないからだよ。こういう場所ならいろんな人と出逢えるだろう? 僕は常に新しい出逢いを求めているんだ」(p92)
 けれども,とあるキューバ人が言っていた。「キューバは,生きるのは簡単なんだぜ」と。 この国の人はみんな,等しく貧しい。その代わりに,極めて貧乏な人はいない。(p104)
 ヨーロッパの中でも真面目な気風があるスウェーデンで働いている日本人女性は言っていた。「みんながあまりにも働かないから,私もダラダラ仕事をしてみたんだけれど,それでもどう考えても私の方が仕事しているんだから不思議よね」(p224)
 日本だと,高い税金を払っても『万が一』以外の日常の大部分では福祉を感じることが難しい。でも,ここスウェーデンはそこの見せ方がうまい。(p242)
 日本人宿には,やっぱりオモシロイ人が集まってくる。(中略)ヨーロッパからトルコまで自転車ではるばるやってきたチャリダー夫妻は,60歳前後だというからすごい。このご夫妻もすごいが,中東を旅してきた80歳の高齢バックパッカーの日本人男性がいたのだから驚いた。何歳になっても,本気ならできるんだ。ちなみに,その日本人宿の壁には熱いメッセージが書かれた紙が貼られていた。 「カメハメ波,なんで出ないと思う? 出そうとしないから出ないんだよ」(p262)
 旅の間に好きになった言葉があります。「The World is smaller than we think.(世界は,僕らが思っている以上に小さい)」。まさにその通りだなと。飛行機でどこへでも行ける時代に変わり,世界の物理的な距離感は大きく狭まりました。だからこそ,これからの時代は世界の『広さ』を知ることよりも,世界の『深さ』を知ることにみんなの関心が集まるのだと思います。(p338)

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