2015年8月17日月曜日

2015.08.12 知的生産の技術研究会編 『達人に学ぶ「知的生産の技術」』

書名 達人に学ぶ「知的生産の技術」
編者 知的生産の技術研究会
発行所 NTT出版
発行年月日 2010.04.19
価格(税別) 1,400円

● 各界の著名人に知的生産の肝についてインタビューしたもの。

● 以下に転載。
 関口和一
 記者は取材して記事にしたらおしまいで,その情報を蓄積するということをなかなかしません。同じ会社の記者でも,別の記者の取材記事をそのまま鵜呑みにすることはありません。そのため引き継ぎの際には,資料も残っていなかったりします。記者は自分でゼロから取材するため,取材される側はいつも同じことを話さなくてはなりません。(p6)
 私は人に会って取材することが好きです。自分の知らない話が聞けて自分の知見が広がる。これほど楽しいことはありません。(p14)
● 茂木健一郎
 我々がやっている脳科学の論文もインターネット上に公開されるようになり,最先端のものをPDFで無料で入手できます。直接自分でいろいろな学術情報を得られる時代では,「独学」という姿勢ができていないとお話にならないのです。大学が教えようとする「カリキュラム」自体がナンセンスになってきているのです。(p23)
 中学や高校の英語の授業では,先生の話は聞いていたものの,手元ではずっと英語の辞書を読んでいました。とにかく通常の刺激だけでは眠くなるのですね。大学の講義でもノートは書いていたのですが,授業内容を記録していたわけではなく,自分の思いついたことを書き留めていたのです。(p24)
 「昔はドイツ語を学ぶ時,アー・ベー・ツェーを初日にやって,翌日にはもうニーチェの『ショーペンハウエル論』を読まされていました。野蛮な時代でした」。これは音楽評論家の吉田秀和さんの言葉ですが,本来,知的生産の現場はそういうものだったと思います。(p26)
 ある組織の中だけで完結している人は,もはや本当に輝いていくことはできないと思います。(p27)
 創造性は,脳の前頭連合野に入ってくる様々な要素の組み合わせや結びつきで出てくるものです。要素が一〇と一〇〇と一〇〇〇あるのとでは組み合わせの数が大違いですから,自分の中にいろいろな要素を持たせないと駄目なのです。そして,何が創造性に役立つかは,ずっと後にならないとわからない。(p28)
 僕は現代の日本人に欠けているのは,偶有性に対する感覚だと思うのです。今のお母さんたちと話していると一つしかないのです。「どうやったらブランド大学に子どもを入れられますか」と。それは偶有性から逃げているのです。(p32)
 自分に余裕のない人は自分のことばかり考えるのです。けれども,プロフェッショナルといわれる人たちには皆,他の人のためにやるという意識がある。(p32)
● 軽部征夫
 世界で自分一人しかやっていないことを探せ,それが独創的な仕事であり,オリジナリティのある仕事なのだ(p39)
 そういう「人がやれないことをやれ」というのです。「やらないことではなくて,やれないことをやれ」と。これがチャンスを生みます。(p40)
 盛んに「Follower(追従者)になるな」とおっしゃっていました。「人の真似をするな,文献を読むな」というのです。それで,私が「文献を読まないで研究できるのですか」と尋ねると,「文献を読むからFollowerになるのだ。文献を読むということは人の真似をすることだ」とおっしゃるのです。(p45)
● 久米信行
 倒産する企業を見分けるのはなかなか難しい。感じのいい人は信用したくなるけれども,そういう人が会社をつぶしたりします。(p55)
 東京は,世界でいちばんクラシックコンサートが多い都市ですし,おいしいものもたくさんあります。ミシュランガイドを作ったフランス人の調査員が驚いたそうです。「東京はすごい。なんでこんなに美味しい店ばかりなのだ。世界の有名な都市でも星が付かない店まで紹介してやっと一冊の本になるというのに,東京は都心六区の星一つ以上の店だけで一冊の本ができてしまう。無名の店でさえウンチクがあるから驚きだ」と。(p58)
 国立博物館の年間パスポートは四〇〇〇円で見放題です。図書館で本はタダで借り放題です。一言でいえば,昔の王様と似たような贅沢を誰でも味わえるのです。 ただ,世界的にこんなに恵まれた素材があるにもかかわらず,自分で活用してどんどん創造する意欲のある人は案外,少ない。もったいないことです。(p59)
 多くの人はインプットを優先し,それが醸成されなければアウトプットなどできないといった錯覚にとらわれていると思います。しかし,よいネタがあれば,それが旬のうちにすぐに出すべきです。それによって頭のメモリが開放され,新たなインプットがしやすくなるのです。(p62)
 心が凝り固まらず,伸びやかになるには工夫が要ります。私は今ならツイッターをお勧めします。今ここで味わった感動を日々蓄積していく。(中略)それはいつしかストックとなって価値を増します。(中略)瞬間の感動を書き続ける行為は,「自分メディア」を育む知的生産そのものです。(p63)
● 勝間和代
 私は都内の移動や通勤には自転車を使っています。また,出張する時も,車の中や新幹線に折りたたみ自転車を積んで移動し,できるだけ自転車に乗る機会を増やしています。自転車に乗って街の中を走っていると,街の様子や人々の表情を絶えず観察できますから。そういうものを観察している時に,いろいろなことを偶然的に思いついたりすることが多いのです。(p76)
● 佐々木俊尚
 トヨタ自動車のレクサスのCMはテレビであまりやっていません。マーケットリサーチをしてみると,レクサスを買うような人はテレビを見ていないという結果が出ているからです。(p91)
● 土井英司
 小学生や中学生になると,僕は,職員室に遊びにいくのが日課のようになっていました。休み時間になっても同世代の仲間とは遊ばず,職員室に行くのです。各教科の先生を訪ねていって,何か面白い話がないかと聞くのが僕の趣味でした。(p98)
 この時僕は,エンターテインメントによって人の心を救えるのではないかと漠然と思っていたのです。 しかし,そんな思いはすぐに砕かれてしまいました。僕が最初に配属されたのはゲームセンターだったのですが,そこはいわばいろいろな人たちの感情のゴミ溜め場みたいな場所だったのです。成熟社会になって人の心が病んでいるからエンターテインメントが流行るのであって,エンターテインメントが人の心を救うわけではない(p100)
 グーグルやアマゾンが得意としている領域には絶対に手を出しません。あえて効率が悪いところをフィールドとします。効率が悪いことにこそ人間の活動の意味の本質があると思うのです。(p103)
 ほとんどの人が金に負けるのですが,ごく一部に金に負けない人がいる。僕はそれが純粋な人間ではないかと思うのです。各業界で一流といわれている人は皆そうだと思います。なぜかというと,損得で考えたらできないはずのことをするからです。(中略)多くの人も努力はしますが,損だと思ったらやめてしまうのです。(p103)
 これまでの仕事の中で僕が会って一流だと思った人は,エネルギー量が違うのです。巻き込まなければいけないと思う人の数が違う。自分が飯を食えて,まわりにいる一〇人くらいの人に満足を与えればいいという程度では気がすまないのです。(p104)
 僕は才能というのは興味があるかないかの違いだと思うのです。興味があるからそれだけの仕事量をこなすことができる。興味があることに投じた時間が,他の人と違うからすごいのです。(p104)
 本は情報を売っているわけではないのです。その本を書いた著者が持っている世界の見方を売っているのです。読者がその著者のフィルターを面白いと思い,それを手に入れたいと望んでいるからこそ,その人が書いた本がベストセラーになるのです。 我々が,なぜ,フィルターを手に入れようとするのかというと,生存的に有利になるからです。(p104)
 インターネットから得た情報など,しょせん二次情報にすぎません。人は,本当の「本当」はそんな媒体には書きませんし,本にすら書かないことが多々あるのです。(p107)
● 蟹瀬誠一
 今,英語の上達術とは何かと聞かれたら,私はこう答えるでしょう。書けば書くほど英語はうまくなる。これにつきます。手が第二の脳といわれているのもわかります。事実,書いているうちにみるみる上達し,話す力も上達しました。(p114)
 個人が活用できる情報の最適な量とはどのくらいか。その目安が一冊の手帳に記載できる分量ではないかと思います。(p117)
 人は,情報が多いほど最適な判断が下せる,あるいは幸福になれるというわけではないようです。極論かもしれませんが,情報が多すぎると人は往々にして道を誤るのかもしれません。(p118)
 インターネットによる情報収集は一日一五分もあれば十分です。見るサイトも限定して,そこしか見ないようにするのがよい。(中略)油断しているとその中に埋もれてしまい,何もクリエイティブなものを生み出せなくなります。(p119)
 多くの人は本の内容を全部覚えようとし,講師の話も残さず聞いてすべてメモを取ったりしますが,そういう必要は全くありません。情報を「キーワード」化することで,手帳の限られたスペースに密度の濃い情報を詰め込むようにするのです。限られたスペースというのが重要なポイントで,ノートであればそうはいきません。(p119)
 頭の中で九割以上原稿を書いてしまい,それをパソコンで転写していくといったことでしょうか。(中略)執筆に要する時間は長いものでも一時間で,コラムなどは一五分程度で仕上げてしまいます。(中略)それで始終,頭の中で文章を作っています。(p121)
● 久恒啓一
 それまで会議でいつも散々にやり込められていたのが,図解化したとたんによく通るようになったのです。その時,「秀才は図に弱い」ということがわかりました。(p131)
 例えば部長は七合目にいる人で,会社全体に近い景色を見ています。平社員は三合目にいる人で自分の現場しか知りません。ならば平社員も七合目の視点で見ることができるようにしてやればいい。情報を使って視点を上げてやればいいのです。同じ景色を見て違う判断をする人はほとんどいないはずです。(p136)
 住民は自分たちが参加する部分があれば納得します。自分たちの意見が少しでも通れば納得します。ですから完璧な仕事をしてはいけないということになります。むしろ少々穴の空いた,いい加減な仕事をした方がいい。そうすると相手は,そんなことも知らないのか,と教えてくれます。ありがとうございました,気がつきませんでした,といっておけばいいのです。(p137)
 勉強だけをして何かを成し遂げ,第一人者となった人はいません。自分の足元の問題を掘って掘って掘り抜いた人が名を残しているのです。(p137)

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