2015年8月3日月曜日

2015.08.01 永江 朗 『「本が売れない」というけれど』

書名 「本が売れない」というけれど
著者 永江 朗
発行所 ポプラ新書
発行年月日 2014.11.04
価格(税別) 780円

● タイトルの「けれど」に続くのは,だからといって本当に読書離れが起きているのかという著者の疑問。
 本が売れなくなった,本屋が減少しているのは事実としても,だから本離れが進んでいると言ってしまうのは浅薄に過ぎないか,という主張のようだ。

● 街の小さな本屋には黒船の来襲が何度もあった。
 まず,コンビニの登場。街の零細店は書籍ではなく雑誌とコミックで食べてきた。その雑誌がコンビニでも扱われるようになった。
 次は,ブックオフとメガストア。特に,出版部数が減少している現在では,零細店にはベストセラーであってもわずかしか配本されないか,あるいはまったく配本されない。重版されてやっと店頭に並んだときには,ブックオフにも出回っている。
 で,最後がアマゾン。ネットで注文すれば翌日には配送される。スピードでまったく太刀打ちできない。

● ではどうすればいいのか。対策も書かれているのだが,ここは著者も考えあぐねている様子。主にはヴィレッジヴァンガードを例に出して,次のように言う。
 ヴィレッジヴァンガードが成功した理由はいくつかある。一つは雑貨と書籍・雑誌を混在させたことだ。それまで本屋と文具店の複合店はいくらでもあったが,ヴィレッジヴァンガードは複合店ではなくいわば「混合店」である。(中略)
 混合は思わぬ効果を生んだ。(中略)雑貨は値段の感覚を攪乱させる。(p197)
 菊地(ヴィレッジヴァンガード創業者,菊地敬一)の言葉でぼくが好きなのは「誰からも愛されたいと願う者は,誰にも愛されない」というもの。書店を取材して「どんな書店をめざしていますか」と質問すると,「誰からも愛される書店をめざします」と返ってくることが多い。しかし菊地は,だからだめなのだという。(p200)
● ほかに,いくつか転載。
 売れているものに群がるのは,出版界の問題というよりも,日本社会全体の風潮かもしれない。その結果,どの書店も似たような風景になっている。(p16)
 しばらくまえ「図書館栄えて物書き滅ぶ」などと騒いだ作家や出版社があった。(中略)だったら本屋のない街に本屋を作ってくれよ,自分が住む都会を基準にものごとを考えないでくれよ,と思った。(p31)
 アマゾンは販売する人の顔が見えない。機械で注文して機械が運んでくれるようなイメージなのだ。(中略) 他人と触れあわずにすむことがアマゾンの魅力である。ぼくらは本を買うとき,できれば他人にかかわりたくないと思っているのではないか。(p50)
 ブックオフで古本を買ったり,図書館で本を借りる人が増えたのは,「所有から体験/消費へ」という意識の変容も大きいけれども,バブル崩壊以降の長期不況で所得が減っているからということも大きいのではないか。(中略)しかも新刊書を買わなくても,読書欲を満たすものができた。それがブックオフであり図書館だった,ということではないのか。(p85)
 図書館やブックオフを利用するのは,たんにタダだから,安いから,ではないだろう。図書館やブックオフには新刊書店にはない本がある。新刊書店の店頭からはとっくに消えてしまった本がある。時間軸で考えたとき,新刊書店よりも図書館やブックオフのほうが豊かなのだ。(p199)
 かつて賑やかだったところが寂れると,たんに「静かだな」という感じにはならない。陰惨でおぞましい雰囲気になる。そてもそこでは客の回帰など望めない。(p132)
 本屋の給料は安い。(中略)安いのはアルバイトの時給だけではない。正社員の月給も安い。(中略) 仕事や人生の価値をおカネで計るのは下品だとわかっていても,自分の倍以上の年収を稼いでいる旧友の話を聞くと動揺してしまう。その差は今後も開くだろう。高校ではオレより成績が悪かったのに,オレより偏差値の低い大学に行ったのに,なんて考える自分がいやになる。(中略)こうして書店員を辞めることを考え始める。(p175)
 以前,筑摩書房の編集者で役員だった松田哲夫さんと話していて,「本の定価を倍にするだけで,出版界が抱える問題のかなりが解決する」と盛り上がった。値段が倍になれば,書店のマージンも倍になる。(中略)販売にかかる手間は同じである。しかし2000円になれば,1000円のときと同じ売れ行きは期待できないかもしれない。もしかしたら半減するかもしれない。でも半減すると販売にかかる手間も半分になる。売上額全体は同じだ。(中略) 値段が上がれば読者お購入には慎重になるだろう。(中略)出版社もそれを見越して企画を絞り込む。そうなれば出版点数も減る。(p187)
 「話題の新刊」やベストセラーを追いかけるだけなら楽なのである。何も考えなくていいから。汗だけかいてりゃいいから。(p204)
 「これさえやれば,すべての問題がたちどころに解決する」というような改善策はない。それは出版界に限らず,あらゆることに共通することだ。だけどぼくたちは,つい単純な答えを求めてしまう。(p217)
 週刊誌を近所の零細店で買っていた読者はどうするか。メガストアが都心にできたからといって,いままで零細店で買っていた読者がメガストアまで行くことはあまりない。近所の零細店がなくなると,読者はあきらめる。その週刊誌を買わなくなる。(p219)
 若くして亡くなった筑摩書房の営業部長,田中達治の声が耳元によみがえってくる。「永江は何かというと書店の主体性が重要だというけれど,それはお前さんが一部の優秀な書店員としかつきあったことがないからだよ。主体性にまかせていたら,日本中の書店がとんでもないことになるぞ」(p228)
● 図書館の利用に関して自分の意見をいえば,かつては図書館で本を借りる人たちを軽蔑していた。知に関して吝嗇な,下品極まる人たちだと思っていた。
 家計が大変だとかいろいろ言い訳をするけれど,食や洋服や旅行ではなく,ます本代をケチる。本は借りてすませる。こういうふうになったら終わりだと思っていた。
 図書館なんかに行くとバカがうつると思っていた。

● が,今では,読む本の8割は図書館で借りている。どうしてこうなったかというと,理由はけっこう単純で,ひとつは書庫が満杯になったこと。
 もうひとつは,東日本大震災で,その書庫がとんでもない状況になったこと。以後,不動産と本は所有しないほうがいい,という意見の持ち主にぼくはなった。

● さらにいえば,ぼくが買っていた本のほとんどは地元の図書館にもあることがわかったことだ。ぼくの読書はユニークでも個性的でもなく,ごく一般的なものだったってことがわかってっていうか。
 さらに,図書館から借りるようになると,読書ペースが上がったことだ。返却期限までに読まなければならないから,締切効果が働くようになった。

● 2割は書店で買っているけれど,読み終えたら処分することにしている。基本,手元には残さない。図書館にもある本を手元に残しておいても仕方がない。

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