2015年7月21日火曜日

2015.07.14 長谷川慶太郎 『日経平均2万5000円超え時代の日本経済』

書名 日経平均2万5000円超え時代の日本経済
著者 長谷川慶太郎
発行所 ビジネス社
発行年月日 2015.07.10
価格(税別) 1,500円

● 「経営トップが代われば株価はもっと良くなる」と副題が付いている。いいほうの例としてIHIが,悪いほうの例として東芝があげられている。
 平成27年3月期の決算が終わって,日本経済はかつてない増収・増益を記録した。それを反映した株式市場で,きわめてはっきりした兆候がある。 そのひとつは経営者の腕前次第で,株価がいかようにでも上下するということ。すなわち腕前のいい経営者が率いる企業は,たとえ目先の業績が悪くても,さらに時期を重ねるにつれて業績が大きく回復すると判断される限り、市場では高く評価されて「買い」が集まる。 その典型的な実例としてIHIが挙げられるだろう。(p40)
 3大充電器メーカーのなかでも,もっとも株価水準の低い東芝としては,(粉飾問題は)きわめて大きなダメージだった。その結果,瞬間ではあったが一時300円台に落ち込むほど「失望売り」が集中したのである。(中略) こうした経営戦略の誤り,あるいはまた社内管理体制の不備を追求された場合,経営陣が率直にその批判に応える姿勢を示すということが,いかにも重要なその企業に対する「評価」を左右する要素として大きくクローズアップされるのが現在の日本経済であり,その反映としての株式市場なのである。(p42)
 筆者はこの問題は一過性のものではなく東芝の経営体質から生じた構造的なものだと判断している。したがって問題解決のためには東芝を変えなければならないし,経営陣を一新しなければならない。 6月の株主総会で経営陣の交代を宣言しなければならない。人事に手をつけないのであれば,また同じことが起こる可能性がある企業と思われてしまう。(p79)
● 著者の日本経済に対する見方は,これまでも別の著書で何度も説かれている。まさしく,これからは日本の時代。技術力の高さと現政権に対する信頼がその基礎にあるように思われる。

● 現政権に対する信頼といえば,安全保障関連法案の強行採決は世上の評判がすこぶる悪い。けれども,岸内閣の60年安保が典型的にそうだったと思うのだが,ときの政権が世評に逆らって,強行採決に訴えてでも大きな曲がり角を曲がったとき,あとから考えてあれは間違いだったというのはほぼないとぼくは思っている。
 大衆は情緒的であり,感情的であり,目先しか見えず,冷静に利害を計算して戦略を立てる能力はないものだ。それを先導する野党やマスコミは,そうすることが自己の利益に叶うからそうしている(のだろう)。
 ぼく一個は,安倍政権の決定を支持するけれども,与党議員の間からも批判の声が出ているという報道がある。支持率が下がって次の選挙が心配だということか。
 与党にいれば,今回の法案が焦眉の急であることくらいわかっているはずだ(そうでもないのか)。

● 以下に,いくつか転載。
 一般の消費者は次々に新製品が市場に登場することを期待している。そのなかから,自分の気に入ったものだけを買おうとする。またそれができるのである。(中略) この買い手のニーズに対応するためには売り手である企業経営者は必死の努力と研究開発投資を次々と拡大していくだけではない。それを今度は画期的な性能を備えた新製品というかたちで市場に提供する義務を負っているのである。この義務を怠った経営者は必然的に企業経営に失敗せざるをえないというきわめてはっきりした,同時にきわめて強固な影響力をもつ原則の支配下に置かれていることを認識しなければならない。(p55)
 株主は努力を怠らない経営者を選別する。また選別するだけではない。それは株式の売買という行動に結びつける。それはまた同時に株式市場にきわめて強い活力をもたらす。(p57)
 いま中国から日本に年々倍増というテンポで「観光客」が殺到している。 その観光客のなかで,日本に何度も観光旅行しているいわゆるリピーターの人たちの比率が高まっている。 2014年までリピーターはほとんど存在しなかった。それが2015年に入って,とくに3月以降,リピーターが急増している。3月の実績では7対3の割合でリピーターのほうが多数を占めている。 この「日本観光旅行」とは,じつは「担ぎ屋」の集団移動なのである。(p59)
 日本は技術水準の高さを誇る国というだけではない。端的に言うならば,日本人はすでに21世紀の初頭において「知恵で生活する」先進国に発展したのである。(p62)
 いまでは日本は特許を売って経済活動,社会活動に必要欠くべからざるエネルギーと原材料,食料を輸入することができる国に変化したと言ってもいいかもしれない。(p66)
 上場企業の経常利益の総額は29兆円で,そのうち3分の1弱の9兆円が配当になると見られている。にもかかわらずこの配当を受け取った株主はほとんど消費には使わない。なぜなら株を買っているのは個人であっても基本的には経済的に余裕があるから,配当を株への再投資へと向けているのだ。つまり9兆円の再投資の資金が自動的に生まれてくるのだから株価にプラスにならないはずがない。(p74)
 パナソニック,ソニーを含めて日本の軽電,とくにテレビメーカーはその分野での製品選択がみんなダメである。だから中国,韓国のメーカーにやられているわけだ。見ていると,商品を選ぶ力がないというよりは,惰性で決めている。だからどんなふうに状況が変わっているという経済分析ができていない。(p81)
 筆者がいままで会ってきた経営者のなかには何人もの大物がいる。その筆頭が松下幸之助氏であることは間違いない。彼のすごかったところは,自分で身銭を切って経営を考えていたことだ。経営といっても「松下」という私企業だけを考えて経営したのではない。すなわち日本国の「経営」をも我が事として行動したことだ。そのいちばんの典型が松下政経塾であろう。聞くところによると,億単位の自分の金銭を政経塾に投資したという。(p102)
 筆者は忘れられない現場に立ち会ったことがある。それは企業が倒産する瞬間だ。(中略)すなわち昭和40年に倒産した山陽特殊鋼の倒産現場に筆者は立ち会ったのだ。 (中略)そして午前2時。荻野社長が話している声がふすま越しに聞こえてきた。「とうとうダメです。朝8時に会社更生法の申請を東京地裁に出します。長い間,ありがとうございました。ご苦労様でございます」 これで同社はご臨終。だがこの後,筆者が控えている部屋にやってきて,姫路にあった自宅に電話をかけ始めた。相手は奥さんだと思われる。 「身ひとつで家を出なさい。タンスのなかのものは一切持ちだすな。全部,債権者に渡す」と言うではないか。筆者はその光景を目の当たりにして感動を覚えた。そしてご夫人も社長の言う通りに,着物一枚持ち出さなかったと後に聞いた。 荻野社長は元警察官僚。規律に厳しい一面もあったが,人間性は素晴らしい人だった。しかし経営者としては会社をつぶしてはならない。ご自身の家族もそうだが,社員が1万人いたら,その4倍以上の4万人の人間が不幸になる。取引先の会社のことも考えたらその数は膨大なものになる。すなわち会社をつぶす経営者は人格とは別に,人間失格であることは間違いない。(p118)
 日本もアメリカ並みに5年ぐらいでダメになる会社が増えた。またひと昔前は名経営者と謳われていた人物が時代の趨勢とともに,落ちぶれることも多くなると予想される。 カルロス・ゴーン氏も同様だ。あれだけ日産をV字回復に導いた救世主と言われた人物がいまや日産の弊害となっている。お荷物扱いだ。彼の首に鈴をつけ,ルノーとの提携を解消することが日産成長の鍵になるだろう。(p121)
 経営者は淘汰される時代である。しかし逆にそれは能力のある経営者はとことんのし上がる可能性を秘めているとも言える時代なのだ。(p123)
 この新浪(剛史)効果はすごいものがある。新浪モデルと称してもいいかもしれない。日本のサラリーマンに独立の機運を与えてくれたのは間違いない。経済の活性化としては,優良な選択であるように思えてならない。(p125)
 日本の製造企業は経営者が先頭に立って,もっと積極的に自社製品を売り込むという努力をしなければならない。日本人の製造業者の悪い癖に「誰かそのうち目をつけて買ってくれるに違いない」という楽観論がある。いいものをつくっていればそれだけでいけると思っているわけだ。市場へ売り込んで,開拓せねば道は拓けない。まだまだ工夫の余地はあるはずだ。いまや,ひとつの仕事をじっとすわってコツコツやるだけの時代は終わったのである。(p173)
 いつの場合でも株式投資に成功する秘訣は,圧倒的多数の投資家の意向あるいは判断と正反対の結論を導き出して行動するということが肝要である。つまり,徹底して「少数派」の立場に立てる投資家だけが,株式投資に成功することができると言って過言ではない。(p185)
 誰もがさらに「一段安」になると判断して,市場に売り気配が漂っている時に,逆に,「買い」を入れる。これには強い「決断力」を要するとともに,もしその「買い」を入れた銘柄が自分の思惑と裏腹に値下がりした場合,いち早く「損切り」するだけの勇気が求められる。(p189)
 日経新聞を読むにあたっては,必ず「下から読む」,つまり広告から読むことが大切である。初めに広告,そして雑報という順に下から読んでいくべきである。なぜならば,そうした記事は新聞社の手が入っていない生の情報であるからだ。(p205)

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