2015年6月22日月曜日

2015.06.19 疋田 智 『天下を獲り損ねた男たち』

書名 天下を獲り損ねた男たち
著者 疋田 智
発行所 枻出版社
発行年月日 2005.12.10
価格(税別) 1,400円

● 自転車で歴史の舞台を廻るという趣向だけれども,自転車は陰に隠れて,メインは歴史の話になる。大変な蘊蓄の持ち主と驚愕するよりは,個々の出来事に対する疋田さんの評価が面白いわけだ。
 それと文章の魅力。

● 巻末に高千穂遥氏との対談が収録されている。そこで,日本史に興味を持ったキッカケは「井沢元彦さんの本との出会いが大きかった」と言っている。

● 以下にいくつか転載。
 現代とかつての時代の違いはといえば,何が一番大きいと言って,やはり「日本は狭くなった」「地球は狭くなった」ということに尽きるだろう。距離というものが昔の人にとってどんなに障壁であったことか,そして,それゆえ「土着すること」というのが,どれほど大きな価値を持っていたのか,そういうことを知るのに「自転車で」というのは,実に最適なやり方であった。(はじめに)
 自転車ツーリングの場合,一日の適度な距離はどの程度だろうか。(中略) 私は,取材でなくとも七〇キロ程度が一番かなと思っている。一〇〇キロも二〇〇キロも走るのはそれはそれで悪くはないが,そうなると旅の思い出は「自分はいかにして自転車を漕いだか」ばかりになってしまう。(p45)
 自分のコダワリの地を設定し,そこここで必ず「ペダルを踏まない時間」を過ごす。すると,あら不思議,帰った後に,旅が印象に残っているとともに,自転車に乗っていた自分,というのをより鮮明に思い起こせたりもする。(p46)
 この幕末の両者を見つつ,私は常に感謝することがある。戦はどちらにとっても後のない,必勝の戦であったはずなのに,どちらの勢力も外国の物資に恃まなかったことだ。この時期,フランスもイギリスも「武器を貸しましょう」「借金のご用は」と,薩長や幕府ににじり寄ってきていた。だが,両者ともにそれをはねつけた。(中略) その選択は正しかった。日本はそれらの国々の支配下になることを避け得た。私は涙が出るほど有り難いことだと思っている。それが「民族自決」というものだろう。(p202)
 結局のところ,この山崎の合戦,そして,本能寺の変とは何だったのか。 私はやはり簡単に言ってしまうと「新旧の対決,そして,旧弊さの完膚無きまでの敗北」ということに尽きると思うのだ。(p216)
 信長は新しい時代のシンボルだった。旧態依然としたシステムを次々と破壊していった。(中略)各方面に軋轢を生んだのも確かだろう。実際に残しておきたい伝統やいい習慣が失われることも少なからずあったと思う。インテリ光秀は,きっとそれが許せなかった。この時代にインテリであることは,すなわち過去を学んできたことであり,結果として過去の文化や知識の蓄積,伝統といったものを大切にすることだからだ。(p216)
 現地に行くまでに情報収集とうものは必須作業だ。あらゆる旅で私はそう思うのだが,「まっさらな状態」で行くか「下調べをして」行くかで,旅の密度はまったく変わってくる。 時折「まっさらな状態」で行った方が,先入観なく物事を見ることができ,旅の印象は鮮烈に残るものだ,というようなことを仰る方がいるが,私はあまり賛成しない。(p222)

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