2015年6月15日月曜日

2015.06.14 下川裕治・阿部稔哉 『週末沖縄でちょっとゆるり』

書名 週末沖縄でちょっとゆるり
著者 下川裕治
   阿部稔哉(写真)
発行所 朝日文庫
発行年月日 2014.08.30
価格(税別) 680円

● 最も印象に残るのは,波照間島で自殺した友人を語るくだり。編集者だった。ベストセラーを送りだした。下川さんが世に出たのとほぼ同じ時期だった。下川さんのデビュー作『12万円で世界を歩く』もヒットした。
 ので。友人の悩みの襞がわがことのように思われたのだろう。気が入っている文章が連なる。
 マスコミは怖い世界である。ヒット作がなければ見向きもされないが,一度,売れる本を作ると,それを超える本を暗に要求してくる。僕は出版社にいわれるままに本を書き続けたが,貧しい旅行者というイメージは強く,そこからはずれることは許されないようなプレッシャーを感じていた。(中略) 僕はそのなかでアジアを書きはじめた。そして,タイのバンコクに暮らすことになる。自分のなかでは,アジアをもっと知らなくてはいけないという思いはあったが,いまになって考えてみれば,ある種の逃避だったような気がしてしかたない。バンコクのとろりとした空気のなかに身を置くことで,次の本を書かなければいけないという息苦しさから逃げた気もする。それは一時的なことであることもわかっていたのだが。(p178)
● 以下にいくつか転載。
 沖縄病に罹った人たちの一部は,移住を決意する。(中略) 暮らしはじめると,沖縄はまた違った顔を見せる。(中略)蜜月はそう長くない。あれほど好きだった沖縄への思いに綻びが目につくようになる。それを呑み込んで生きていかなくてはならない。(p64)
 東京にいても,さまざまな祭りはある。しかしそれに加わる気にはなれなかった。ひねくれ者といわれればそれまでだが,少し離れた場所で,祭りを見ることのほうが心地よかった。 いつも客観視しようとすること・・・・・・そこに美意識を見いだしているようなところがあった。実際には手をくださず,周囲から眺めているだけという謗りを向けられれば返す言葉もなかった。(p87)
 沖縄の人の多くは,気がつくと手をあげ,カチャーシーを踊っている。彼らのなかにも,僕のような性格の男はいるだろう。しかしウチナーンチュのなかには,それを越える世界がある。それが彼らのアイデンティティなのかもしれなかった。 「笑顔ッ」 カメおばぁが何度となく口にした言葉の意味がわかった気がした。カチャーシーは踊りではなく,嬉しさを示す手段なのだ。(p88)
 ホテルのマネージャーをしている知人はこんなことをいう。 「リーマンショックのあと,観光客が一気に減ったんですよ。それでホテルは値段をさげた。そこから値段を元に戻せないでいるんです。(中略)新しくやってくる観光客は,すごくシビアなんですよ」 これもLCC効果というらしい。人は不思議なもので,安いLCCに乗ってやってくると,石垣島で使うお金も節約モードに入ってしまうようなのだ。それを島の人たちは見抜くことができなかった。(p126)

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