2015年6月15日月曜日

2015.06.13 下川裕治・阿部稔哉 『週末台湾でちょっと一息』

書名 週末台湾でちょっと一息
著者 下川裕治
   阿部稔哉(写真)
発行所 朝日文庫
発行年月日 2013.08.30
価格(税別) 660円

● 読みだしたらとまらない。
 ひとつには文章。この人の文章はコントロールが効いている。すべて自分のコントロール下に置かずんばやまずといった気概(といっていいのか)を感じる。
 神経質といってもいい。これでは疲れるはずだと思う。

● 日本社会の神経質さかげんが嫌で旅に逃げる。一方で,文章に関してはここまで神経質。じゃなければ人に読んでもらえる文章にならないとしても,人はどこかで神経質のスイッチが入る分野を抱えているのか。

● もうひとつは,そこはかとなく漂うせっぱつまった感じ。タイトルどおりにはゆるみ切れない哀しさというか。
 それとユーモアだ。ひょっとすると狙っているのか。狙っているわけではないとしても,たくまざるユーモアというのではないような気がする。

● 旅をしてその体験をそのまま書けば事が成るというわけではないだろう。読者の気を惹くエピソードが必要だ。旅の場合,その多くはトラブルということになる。あるいは,現地人との心暖まる交流ってやつ。
 本書にはそのどちらもあまり登場しない。著者の内面の表出が過半を占める。それでも面白い。

● 台湾史については蘊蓄が溜まるほどの勉強をしたろうし,文献も読み込んでいると思う。が,勉強の結果を書いてもらっても,面白くも何ともない。
 著者の体液を通しているから,読むに耐えるものになる。

● 以下にいくつか転載。
 僕は,ドミトリーというスタイルが苦手である。もともと,陽気な旅行者ではない。自分から知らない人に声をかけることも少ない。そういう性格がわかっているから,ドミトリーに泊まると,ことさら陽気に振る舞ってしまうようなところがある。自分で笑顔をつくっておきながら,自分でその表情に疲れてしまうのだ。(p42)
 すっかり台湾庶民派食堂の心地よさが,薄味の台湾料理と一緒に刷り込まれてしまった。こういう店を覚えてしまうと,丸テーブルが並ぶレストランは宴会場に映り,四川や広東と銘打つ店は高級エスニック中華に思えてきてしまうのだった。(p83)
 清は台湾への移住を制限するために,女性の渡航を禁じていた。開拓民のほとんどは男だったのだ。(中略)しかし,この土地には平埔族という先住民族が暮らしていた。次々に漢民族の男性と,平埔族の女性のカップルが生まれていく。混血が進んでいく。移住した漢民族は世代を重ね,やがて平埔族は姿を消してしまうことになる。(中略) 本省人の体のなかには,北回帰線から赤道あたりのエリアに住む人々の血が流れている。ゆるい空気を共有していることになる。本省人のなかで,最も多いのは福建系の人々だが,大陸にいる福建系の人々とは違うのだ。(p236)

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