2015年2月15日日曜日

2015.02.14 長谷川慶太郎 『大波乱』

書名 大波乱
著者 長谷川慶太郎
発行所 李白社
発行年月日 2015.02.28
価格(税別) 1,400円

● “長谷川慶太郎の大局を読む緊急版”としての出版。今回は逆オイルショックがメインの話題。それと,ギリシャの政権交替に伴うユーロ危機の再燃。
 話の基調はこれまでと変わらず。アメリカが活気を呈しており,日本も伸びる。ヨーロッパではドイツの一人勝ち。
 石油と天然ガスしか売るものがないロシアは厳しい局面を迎えた。クリミアはウクライナに返上し,OPECに加入するしかないだろうと予想している。

● まず,逆オイルショックの大きな影響についての指摘。
 石油の供給不足の時代が終わって,今や石油の供給過剰の時代に入った。これもシェール革命によってアメリカという巨大な産油国がもう一つ出現したからである。(p22)
 サウジが生産枠を維持したのがシェール潰しではないとすると,その真意は何なのか。私の結論ははっきりしている。OPECに加盟していない産油国に大打撃を与えることで,具体的なターゲットはロシアである。(p25)
 イスラム教原理主義に基づく武装テロ集団であるイスラム国は占拠したイラクやシリアの油田から原油を汲み上げて密売し,それを主な資金源にしてきた。密売での収益は一日に約三億円に上ったといわれる。ところが,逆オイルショックによって原油価格が急落したため,密売の原油よりも正規の原油のほうが安くなってしまい,イスラム国の資金源が急速に細ってしまった。(p43)
 中国は二〇二〇年には現在のアメリカに代わって世界最大の石油消費国になると予想されている。だから,そのときに備えるという建前で中国の石油閥も世界各地の油田権益を買いあさってじつは自らの利権を拡大してきたのだが,今回の逆オイルショックは石油閥の建前も利権も吹き飛ばしてしまった。(p45)
● ロシアのプーチン大統領には次のように言う。
 どの国でも政治指導者がナショナリスト的に振る舞えば人気が出る。しかし民主国家においては政治指導者がナショナリスト的な振る舞いを引っ込めたとしても,それが国民のプラスになるなら政権が崩壊するほど国民の支持率が低下することはない。ロシアもすでに民主国家である。民主国家の政治指導者にまず求められるのは国民を食べさせるということだ。(p39)
● 逆オイルショックは日本には追い風。日本は安倍政権下で順調に伸びていく。が,問題点がないわけではない。
 「円安によって輸出に強い大企業だけが儲かっているのはおかしい」と批判する向きもあるが,現状の日本経済のシステムがそうなっている以上,円安で儲かる企業が儲かればいいのだ。その恩恵はいずれ国民全体にももたらされるはずである。(p76)
 これまで政治や行政も経営状態の悪い中小企業に対して資金の手当ても含めた救いの手を伸ばす傾向があった。それで経営が持ち直すならまだしも大半は経営状態の悪いままでどうにか生き延びるということになるだけだ。これをゾンビ企業ともいうが,ゾンビ企業はいずれ必ず潰れる。とすれば,潰れる企業をゾンビ企業として温存するのではなく,すぐに潰してしまったほうがいい。(p77)
 デフレ下の税制で間接税が中心となるのはインフレ下とは違って名目所得を急速に伸ばすことができないからである。(中略)デフレ下の日本でも今後,間接税中心に転換していかざるをえないわけで,その意味では,消費税を何%にするとか,消費税率によって景気がどう動くかなどということは些末な話なのである。(p99)
 国際的に日本の農産物価格は高いのだが,その最大の理由は日本の農家の体質および農法が古いからだ。農業の技術革新を邪魔しているのは何といっても農協である。その妨害をはね除けてLEDによる新技術を導入して農業改革を行うことができれば,日本の農業の将来は無限に広がっていくだろう。(p133)
● その他,いくつか転載。
 日本の個人投資家はこのムーディーズのような格付け会社を相手にしてはいけない。(中略)要するに格付け会社とはいっても金融商品に対する深い分析など何もないのに以前は深い分析ができるかのように振る舞って高い手数料をとっていたわけで,それがリーマン・ショックによって暴露されてしまったといえるだろう。(p102)
 日本企業にはこれからどんな人材が求められるかについて付言すれば,まずトリリンガル(三言語話者)である。すなわり日本語,英語,中国語の三ヵ国語を自由自在に操ることができなければならない。おもはバイリンガル(二言語話者)では物足りない時代になったのだ。そのほか,微分積分をきちんと理解したうえでコンピューターの操作ができる人材が必要である。しがたって学生も大学在学中に半端な勉強をしていたのでは間に合わなくなる。学生にとっても厳しい時代だが,そのような厳しさを前提にしないと日本企業もグローバルな競争で勝ち抜けなくなった時代が来たのである。(p119)
 平和な時代における内部の権力闘争は崩壊の第一歩であって中国共産党独裁体制ももはや長期間継続することはできない。(p198)

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