2014年7月31日木曜日

2014.07.31 斎藤 純 『ペダリスト宣言! 40歳からの自転車快楽主義』

書名 ペダリスト宣言! 40歳からの自転車快楽主義
著者 斎藤 純
発行所 NHK生活人新書
発行年月日 2007.12.10
価格(税別) 700円

● この本も八重洲ブックセンター宇都宮店のアウトレットコーナーにあったもので,320円で購入。

● 前半は面白く,後半はさほどでもない。なぜかというに,後半は話が大きくなってしまうからだ。天下国家を論じる趣になる。温暖化を防ぐだの,二酸化炭素を出さないだの,地球を救うだのっていう。
 自転車は個人的な動機で乗り始める。楽しいから,ダイエットしたいから,交通費を安くすませたいから,車では通れない道を走ってみたいから・・・・・・。
 その結果,ひょっとして温暖化防止にひと役買うことがあるのかもしれないけれども,地球環境の改善に寄与したいから自分は自転車に乗っていますっていうヤツがもしいれば,そういう人を指す言葉は“偽善者”だろうね。

● 身近な小さな動機から始めるのがまっとうで,大きなところから入ってしまうのは,そもそもが違うような気がする。それじゃ絶対間違えるでしょ的な。
 始めたあとも,できれば,大きな話のところには行かない方がいいように思う。小さな動機にとどまっているべきじゃないかなぁ。

● 以下にいくつか転載。
 古書店で石井柏亭の『我が水彩』(日本美術學院 大正二年)を手に入れたら,〈富裕でもない癖に道具立てを力める様な人に善い画の描けた例は殆ど無いと曰ってもいい〉とあって反省させられた。 石井柏亭の苦言は絵に限らず,自転車や楽器などあらゆることに当てはまるような気がする。(p77)
 将棋なんかでは,いい駒と盤を揃えると香車一枚強くなる,と言われたりするね。自転車でもたいていの入門書には,初心者でもある程度のものを買えと勧めるのが定跡のようだけどね。どうなんだろうかなぁ。
 岩手大学ママチャリ同好会の部員たちは,ママチャリで九州や北海道にさりげなく行ってしまう。本当にさりげないのだ。大冒険なのに,全然そんな気負いがない。そこが偉いと思う。(p130)
 ママチャリ同好会なんてのがあるんですねぇ。いろんなのがあるんだなぁ。しかもママチャリで岩手から九州まで行くってねぇ(サドルは上げているんだろうね)。こういう事実を知ると,ロードバイクだのランドナーだのと言ってるのが小さく見えてしまうなぁ。
 かっこよさとは無縁のママチャリ。そのママチャリの能力を最大限に引きだしてみせると,その行為がかっこよさの極に達するっていうね。その行為って力業だよね。
 自転車に乗ることは,高級車に乗ってふんぞりかえるのとは逆の体験を強いる。自分がいかにちっぽけな存在であるかを知らされるのだ。それは別の言い方をすると,たとえちっぽけであろうと僕は僕自身でしかないという自覚を与える。(p206)
 “自転車は美しくて,かっこいい”“自転車は大人の乗り物であり,自転車に乗っている大人こそかっこいいのだ”という言い方も本書に出てくる。自転車がかっこいいと思えるかどうかは,その人の感性にかかるんだろう。高級車にふんぞり返っていることのかっこ悪さも,また同じ。

2014年7月30日水曜日

2014.07.29 佐々木正悟 『ライフハックス-鮮やかな仕事術』

書名 ライフハックス-鮮やかな仕事術
著者 佐々木正悟
発行所 マイコミ新書
発行年月日 2006.11.30
価格(税別) 780円

● 八重洲ブックセンター宇都宮店のアウトレットコーナーに置いてあった。320円で購入。あまり期待しないで読んだんだけど,いやいや,とても面白かった。
 この手のものはけっこう読んでる方だと思うんだけど,読んで完結。それを自分に適用しようとする態度はあまりない。怠け者だから。
 だから,読みものとして面白いものであることが第一。読みものとして面白いためには,伝聞情報に満ちてたんじゃダメなんで,自身の体験がコアになっていてほしい。この本はそうなっているし,文章もいい。

● 2006年の出版だから,本書にはiPhoneもAndroidもEvernoteもTwitterも登場しない。PDAという懐かしい言葉が出てくる。著者が披露しているやり方の多くは,今ならもっと便利に実行できるのだろう。
 ところで,Gメールについて次のような紹介がある。
 Gメールには,他ではちょっと考えられないような気の利いたサービスがある。それが,「自分のアカウント+α@gmail.com」というサービスだ。(p101)
 で,「+α」を使ったいろんな利用法を紹介しているんだけど,ぼく,これ全然知りませんでしたよ。これは便利だ。っていうか,便利なんてものじゃない。これを使えば,情報の整理なんかGメールでほぼできちゃうんじゃないですか。ホルダーを作って整理するなんて,石器時代の遺物になりますなぁ。
 このサービス,今でも維持されているんですか。

● 以下にいくつか転載。
 ほどよい緊張感を得るためには,予定を立てるべきなのである。 予定表に何も書き込まず,ただ経験と記憶だけに頼って仕事を処理していると,危機感をまったく自覚できないか,反対にいつも不安でいっぱいになる。(p49)
 カレンダーに仕事の締め切り日を書き込み,その日までにやらなければならない他の用事を,日時などかまわずどんどん書き込んでみると,自分の自由時間などほとんど皆無に等しいことを知り,あっけにとられる。私は人が手帳を使いたがらないのは,この冷厳な事実を知りたくないという,無意識の願望の表れなのではないかと,フロイトのように勘ぐりたくなるほどだ。(p50)
 彼(エイブラハム・テッサー)の研究によると,「目標を立てる」とか,「仕事の優先順位をはっきりさせる」などといった時間管理の方法は,生産性とはそれほど強い関連がないが,自分は時間をきちんと管理できているという実感は,営業マンや学生の成績に強く影響するという。(p53)
 テッサーが指摘したもう一つの重要な点は,「時間に対する動機づけの強い人でなければ,時間管理の恩恵にはあずかれない」ということである。どういうことかと言えば,現実に時間管理をしようと思ってうない人が,あれこれとシステム手帳や電子手帳をいじり回してみても,生産性はほとんど向上しない,という意味である。 やる気がなくて,方法論ばかりに凝っていても意味がない。言ってしまえばそれまでであるが,私たちの周りには「あなたがうまくいかなかったのは,やり方が間違っていたからだ!」というキャッチ・コピーがあふれている。(p53)

2014.07.28 番外:“おもてなし”の心を感じる 日本の極上ホテル

書名 “おもてなし”の心を感じる 日本の極上ホテル
編者 新井邦弘
発行所 学研パブリッシング
発行年月日 2012.08.10
価格(税別) 838円

● 宇都宮駅ビルに入っている八重洲ブックセンター宇都宮店で購入。アウトレットコーナーにあった。360円。

● 昔は,ホテル=富裕層=憧れ,だった。こうした雑誌やムックを見ては,この空間に自分を置けたらなぁと思ったものだ。
 いや,今でも,基本は変わらない。お金を使ってする遊びでやってみたいことの筆頭にくるのは,都内のホテルでまったりすることだ。

● けれども,お金を使って遊びたいとあまり思わなくなっちゃった。もう充分というほどこの種の遊びを遊んだわけではないけれども,オウチがいいと思っているわけでもないんだけど,お金を使っても使わなくても,得られるベネフィットに大きな差はないなぁと思うようになっちゃって。
 スイートルーム,空港のエグゼクティブ・ラウンジ,銀製のカトラリー,and so on。べつにどうってことないよなぁ。

● っていうかですね,これらの環境に身をおいたとて,贅沢とか優雅とか上品とかっていう味わいを享受するのは難しいというのが,経験則の教えるところだ。なぜなら,結局のところ,そうした空間を完成させるのはお客であって,必ずそれに相応しくないお客が相当数入りこんでいるからだ。
 下品なお金持ちって,掃除機で吸いこみたくなるほどたくさんいる(と思われる)。教養のカケラもない上流階層の紳士淑女も,ごきぶりホイホイを仕掛けたくなるほどウロウロしている(と思われる)。
 そもそも無理をして来ちゃってるお客さんもけっこういる(と思われる)。早い話が,ぼくだってそうした場に何度かは出没しているんだから。

● とはいえ,そうした場の最新情報は気にならなくもない。ときどき雑誌やムックでチェックしたくなる。そうして,ビジネスホテルに泊まって,大衆居酒屋で飲み食いするのが,半分は負け惜しみなんだけど,賢さを具現するゆえんかと存ずる。

● ひとつだけ得心のいく文章があった。
 高級ホテルはひとつの舞台のようなもの。スタッフとゲストが互いに演じ合うことで場が成立している(村上実 p7)
 演じるって大事だよね。演じないで生きてる人なんていないはずだ。四六時中,演じている。時には思いっきり演じるのもいいんでしょうね。それをハシタナイとか,なにブッてんだよとか,思っちゃっちゃダメなんだろうなぁ。

2014.07.28 斎藤一人・柴村恵美子 『天』

書名 天
著者 斎藤一人
    柴村恵美子
発行所 サンマーク出版
発行年月日 2013.07.30
価格(税別) 1,700円

● 3巻シリーズの3巻目。「器」といい「運」といい「天」といっても,それぞれ別の3つのものが主題になっているんじゃなくて,同じものを3通りに言ってみたということ。
 強いて言うと,この『天』には前世や来世があるとか,魂は不滅で輪廻するとか,経験的には証明しようのない話も出てくるので,上級編として最後に持ってきたということかも。

● 著者ふたりが本当にそう思っているのか,説得の技術として使っているのか,それはわからない。前者ではないかと思われるけど。
 けれども,どっちでもいいやね。どっちが自分にとって都合がいいかで選択すればいい話なんでしょうね。

● 眠れない夜を過ごしたことのない人はいないと思うし,部屋の隅に座って朝までじっと考えごとをしていたっていう経験と無縁だった人も少ないのではないかと思う。
 そういうときに,溺れる者にとっての藁になるものが欲しい。いや,藁では困るから,何が支えになるものがほしい。この本はその支えになってくれるかもしれない。

● 以下にいくつか転載。
 問題が起こったときって八方塞がりで逃げ道がないように思うんだけど,上は空いているんだよね。つまり,魂を成長させて上に行けばいいんです。(p19)
 生きているものはすべて成長しています。 木にだって,今年は今年の葉っぱが茂るの。人は,今年は今年の言葉を話すの。昔の話ばかりをし出したら,その人は枯れ木と同じなんです。(p73)
 親の考えってだいたい,二〇年ぐらい遅れているんだよ。二十歳で子どもを産んだとしても二〇年だから,最近は晩婚が増えているから三〇年ぐらい遅れているんだよね。 それで,昔と比べて今は激動の時代なの。その時代に二〇年も三〇年も昔の教育をされたら,教えられた子どもは困っちゃうんだよね。(p79)
 占いをするのはいいけど,占いに頼ったりすがったりするのって,人生に必要な判断を他人に委ねているんだよね。 それで最初の何回かは占ってもらった通りにやって運勢が良くなったとしても,その後だんだん悪くなってくるの。なぜそうなるかというと,神は自分で考えることまで他人に委ねるのを嫌うんだよ。(p84)
 不幸は怠け者でもできるの。イヤなことがあったらイヤな顔をするって,だれにでもできることだよね。そこを明るくするっていうのは,努力と忍耐がいることなんだよ。だけどそれをやっているといい結果が出てくるんです。(p85)
 自分のことってそんなにかまわなくても大丈夫なんだよ。栄養が足らなかったらお腹が空くし,寒かったら服を着るよね。喉が渇けば水を飲むんだよ。 自分のことって,その程度のことをかまっていればいいんだよね。それよりも,まわりの人がうまくいく方法を考えていたら必ず自分もうまくいくから。(p104)
 「人生はきりひらく」と言って,“気”で“開く”ものなんだよ。だから,人生がうまくいかない人は気が弱く,気に勢いがないんです。 運もそうです。勢いよく運が流れている人もいれば,弱々しい人もいるの。 人間は気が大きくなる,気迫がつくと,今までの相手が小さく見えるんです。 それで,人は他人を変えようとするけれど,自分の気を大きくすれば,相手も変わっちゃうんだよ。気が弱くて負けているのに,自分がどれだけ正しいかを言ってもしょうがないの。(p106)

2014年7月29日火曜日

2014.07.27 花森安治 『社会時評集 花森安治「きのうきょう」』

書名 社会時評集 花森安治「きのうきょう」
著者 花森安治
発行所 LLPブックエンド
発行年月日 2012.03.05
価格(税別) 1,500円

● 時評の対象となっているのは,昭和29年,32年,38年の出来事だ。半世紀以上も前のこと。この半世紀の変わりようからすれば,大昔のことといっていいのだろう。

● 時評というものの難しさを思わされた。評する側が皮相であったり,巧く言おうとするゆえの勇み足があったり,当然,見込み違いもあったりするようだ。
 花森さんをもってしても,それがまったくないわけではない。この本を読んで感じたのは,巧みに文章を操れる人だなということ。

2014.07.26 斎藤一人・柴村恵美子 『運』

書名 運
著者 斎藤一人
    柴村恵美子
発行所 サンマーク出版
発行年月日 2013.02.05
価格(税別) 1,700円

● シリーズ2冊目。時々は読んで,生き方の基本に思いを致した方がいい。何も問題を抱えていない人なんかいないだろう。読めばホッとするかもしれないし,カンフル剤を打たれたようにエネルギーをチャージできるかもしれない。
 もちろん,こういうものを一度読んで,それでその先は人生ガラッと変わりました,とは行かないものだろう。ほとんどの人は元の木阿弥になるんだけど,目先をしのげる効果というのを軽んじてはいけないと思う。

● 以下にいくつか転載。別の著書から転載しているのとだいぶダブるんだけど。
 お金でもモノでも,そのもの自体が歩いてくるなんていうことはないんです。だから,お金も人が運んでくるものなので,人に空かれない限りはどうしようもないんだよね。 まず運のいい人って愛想がいいよね。(p19)
 運が悪いって簡単に言うと,我が強いってことなの。(p21)
 ブスッとしている人は,ブスッとしている人が好きなわけじゃないよね。ブスッとしている人でさえ,ブスッとしている人はイヤなんです。ということは,ブスッとしている人は,誰からも好かれないの。それで,誰にも好かれないことをしながら成功するのって無茶なんです。(p21)
 運のことばっかり言ってる人が成功しないのは,運に頼って行動しないからなんです。だから本当に運のいい人は,行動しないとダメだっていうことを知っている人なんです。(p25)
 ひとえに人の何倍も知恵を使い,人の何倍も気を使い,人の何倍も努力して,なおかつ顔に苦労が出ていない。こういう人を“運がいい人”と呼ぶんです。 運がいい人は苦労に負けてないの。苦労してないわけではないんです。苦労というのは誰でもしてるんだよね。ただ,苦労に負けてる人は,顔に出ちゃうんです。言葉に出ちゃうんです。でも,苦労に負けてない人は涼しい顔をしてるんだよ。(p27)
 運のない人って神様に「運をください」ってお願いするけど,あなたにないものを神様は与えられないの。 それで,「私に運をください」ってお願いするのって,「私は運がないんです」と言ってるのと同じなんです。だから,その人には運がないことが起きるんだよ。なぜかって,あなたの出したものが運ばれてくるんだよ。(p30)
 だから望もうが望むまいが,望んだものを与えてくれるんじゃないの。あなたが持っているものをくれるんだよ。わかるかい? 悲しみを持っている人には悲しみをくれるんだよ。そういう目で見てみると,しあわせな人にはさらにしあわせが与えられるの。なぜかって言うと,出した波動が返ってくるから。(p32)
 欠点を探し,イヤなことを探しながら運がよくなることってないんです。なぜかって言うと,それって神様に文句をつけてるのと同じなの。 マージャンでもポーカーでも,配られた手に文句を言って勝てる人はいないんです。配られた手で勝つことを考えるの。(p36)
 戦いにたとえると,そこに石しかなければ,その石を拾って戦うの。竹しかなかったら,竹やりで戦うの。それを機関銃があればとか,爆弾があればって言っちゃダメなんです。(p48)

2014年7月28日月曜日

2014.07.26 長谷川慶太郎 『2015年~ 世界の真実』

書名 2015年~ 世界の真実
著者 長谷川慶太郎
発行所 WAC
発行年月日 2014.07.31
価格(税別) 900円

● アベノミクスが功を奏して,雇用環境はかなり改善されてきた。パート社員がなかなか集まらなくなっているところもある。社員を定着させるために正社員化の動きも広まっている。
 当然,賃金も上昇傾向。賃金を上げることができるのも,円安が効いて国際比較で日本の賃金水準が低下してきているから。
 そうしたことが具体的に説明されていて,ああ今はこうなっているのかと納得。

● 中国が火種。北朝鮮は放棄せざるを得ない。その後,さほど経たないうちに中国自身が崩壊の道をたどる。最近の著書で繰り返している長谷川さんの主張だ。
 本年,七月三日,中国の最高指導者・習近平は,同盟国の北朝鮮よりも三十八度線の停戦ラインを隔てて北朝鮮と対立する立場にある韓国の首都ソウルを訪問して,言葉ではなく,自身の行動で「北朝鮮の放棄」を国際社会に伝えたのである。(p6)
 日本ではあまり知られていないが,中国は保有するアメリカ国債を売り始めた。その額は二〇一四年一月だけで三百四十六億ドルにのぼる。これを人民元買いの資金に充てた。それでも下落を止めることができなかった。(中略) 中国が保有するアメリカ国債は二〇一三年末で一兆三千二百億ドルだった。月に五百億ドルを売っていけば,二年強でゼロになる。為替介入をする実弾がなくなったとき,人民元は紙切れと化す。(p113)
 ジョークのような実話だが,重慶の石炭火力発電所が日本から四百億円のODAをもらって窒素酸化物や二酸化炭素を除去する装置を導入した。ところが,その装置を稼働させない。なぜか。稼働させれば部品を交換する必要が出てくるし,メンテナンスもしなければならない。そのお金がないから使わない。これが中国サイドの理屈である。 では,何のために設備をつけたのか,といっても始まらない。上がやるといったからやっただけで,環境対策などは二の次というのが社会主義体制下での発想である。(p118)
 アメリカの企業が中国に進出するときに国務省がアドバイスする。そのポイントは,アメリカ人を中国に出すな,ということだ。「中国に進出するのは差し支えない。その際に大事なことはアメリカ人の駐在員をできるだけ置かないことだ。その代わり,アメリカに留学した経験を持つ中国人を雇う。彼らは英語ができる。そして,あなたの会社の方針をきちんと理解し,忠実に執行するだけの実行力を持っている」。現実にいま,中国在住のアメリカ人は一万人程度に減った。日本人の十四万人前後と比べれば,その少ないことに驚かされるのではないか。(p139)
 日本の外務省はそういうことをばかばかしいと思っていて,中国進出の危険性を伝えたりはしない。しかし,日本企業はアメリカの国務省の忠告を我がこととして受け止めるべきである。 中国へ出たいという日本の企業経営者に対して,「アメリカに子会社をつくり,アメリカの子会社の名前で出なさい。そうすればアメリカ政府がカバーしてくれる。日本の名前で出たら外務省はカバーしてくれない。その違いをわきまえて行動されたらいかがですか」と私はアドバイスしているが,中国に進出しないことが一番の対策だ。(p215)
 安倍首相が集団的自衛権の解釈を変更しようとしているが,何を想定しているかといえば,中国の在留邦人救出である。たとえば,上海には約六万人の邦人がいる。これを救出するためにはアメリカの軍艦が上海に行き,収容するしかない。アメリカの軍艦が上海から日本人の避難民を乗せて帰るとき,海上自衛隊が何もしないで済むか。海上自衛隊の艦船がアメリカの軍艦とともに揚子江の河口まで行き,護衛して佐世保に帰るという行動が必要だ。それをいいたい。しかし,いえない。いまの段階ではまだ中国がつぶれていないからだ。(p140)
● アメリカは政治がモタモタしたとしても,シェールガス革命もあり,アメリカ経済は問題なし。もちろん,個々の企業を見ていけば,厳しい局面に入るところもある。
 携帯端末のアプリは個人や小企業が活躍している。そのほうが豊かな発想でおもしろいものが次から次へとできるのだ。逆にいうと,大企業の力をもってしなければできない仕事ではない。だから,マイクロソフトはアプリでも稼げない。(p77)
 冷たい戦争を熱い戦争に転化しないことが何よりも重要になる。朝鮮動乱がそうだし,ベトナムがそうだが,熱い戦争にすると失敗した。逆に,熱い戦争に転化しなければ自動的に東側はつぶれる。それをアメリカは確信している。だから,アメリカは中国にわざわざけんかをふっかけたりはしないし,現実にその必要もない。(p138)
 オバマの最大の欠陥は理想主義者ということだ。理想主義ではギリギリの選択を迫られたときに決断力が発揮できない。シリアもそうだし,クリミアもそうだ。決断力がないから,その程度の制裁を出した。(p186)
● 日本経済も順調に推移する。ソニーやシャープはダメになるとしても,日本経済の屋台骨は別のところにある。重厚長大産業だ。三菱重工であり,日立であり,東芝であり,新日鉄住金である。
 長谷川さんのこれまでの著書にも何度か登場しているエピソードが今回も語られている。
 アベノミクスの第一,第二の矢の財政,金融政策は成功した。では,第三の矢の成長戦略はどうかということを盛んにいう人がいるけれども,何が成長するかはやってみないとわからない。事前にわかるようなら不況にはならない。(p198)
 海部首相と会ったときに「ベルリンの壁は崩れます。ソ連も危ない」と伝えたら,「えっ」と驚いて言葉を失った。私に入ってくるレベルの情報を日本の総理大臣が知らない。いや,たとえそうだとしても,「なぜか」「根拠は何か」と問われなかったことのほうが深刻な問題である。(p217)
 あの人(大平正芳氏)は勉強家だった。紫檀の大きな机に本の山がある。本はすべて開いたまま積んであった。「これはどういうことでしょう」と聞いたら,「ここまで読んだとわかるようにしている。それを一番下に入れて,こんどは一番上のところをとって,また読みだす」という。そういう山が三つも四つもあった。 (中略)大平氏が田中内閣の外務大臣として中国との国交正常化に尽力したことは知られている。それは世界で起こっていることに注意を払い,勉強を怠らない姿勢があってなし得たことである。(p219)

2014.07.25 斎藤一人・柴村恵美子 『器』

書名 器
著者 斎藤一人
    柴村恵美子
発行所 サンマーク出版
発行年月日 2012.05.30
価格(税別) 1,600円

● 生き方論。斎藤一人さんは超有名人だし,ここ数年はどんどん本を出しているから,この本に書かれていることもすでにどこかで読んでいることが大半だ。
 問題は,読んでから,これどこかで読んだわと気づくこと。だから,読んで時間のムダにはならない。

● ここで説かれている生き方って,たとえば脳科学の茂木健一郎さんが説くところとかなり一致している。結局,登り口が違うだけで,頂上は同じということか。

● 以下に転載。
 私たちの脳は,スーパーコンピューター以上の高性能な能力を持っています。このすばらしい機能を使いこなすためには,実はちょっとしたコツが必要なのです。 そのコツとは,「おかしい」と思うことだと一人さんは言います。 たとえば,あなたがもしお金持ちになりたいのであれば,「自分がお金持ちじゃないのはおかしい!」と思えばいいのです。そうすると脳は,この“おかしい”と思う問題を解決しようとフルに働きだし,その解決策やアイデアを出してくれるのです。(p39)
 人がお金を持ったときって,その人の器量が問われるんだよね。それがどんな形で現れるかというと,その人のいちばん弱いところに現れるの。 たとえば地位や名誉に弱い人には,そうした心をくすぐるような投資話が来るんです。それで見栄をはったりすると,その見栄に転ぶんです。(p60)
 お金には法則があるんです。 自分の心にもない使い方をしたとき,お金を粗末に扱ったことになるの。そうするとお金が逃げていくんです。 自分が本当に納得しない使い方をしているとき,お金は逃げて行って,入ってこなくなっちゃうの。(p63)
 よくストレスを取りなさいって言われるけど,ストレスってなかなか取れないの。そこで,ストレスを取るのにいちばんいいのは動作なの。動作をゆっくりにする。だからゆっくり歩くの。(中略) ところが,ゆっくり歩く人って“とぼとぼ”歩くんだよね。そうではなくて,姿勢を正してゆっくり歩くと副交感神経が優位になるんです。(p152)
● 特に説かれるのは,機嫌よく生きることの重要さ。放っておくと,ヒトは不機嫌に傾くから,何があっても自分の機嫌良さを維持すること。
 自分の機嫌をとるということは,精神論のなかでもいちばん大切なことなんです。人間は機嫌が悪いよりも,機嫌がいいほうが絶対にいい。はたから見て,その人の器が大きいかどうかということよりも,その人の機嫌がいいかどうかのほうが大切なんです。(p116)
 私は自分の機嫌は自分でとれるから,別にちやほやしてもらわなくてもいいのです。(p124)
 この世の中でいちばん大切なことは上気元かどうかってことなんです。だから,あの人と会うと自分が不機嫌になるっていうのなら,会わなきゃいいの。ただそれだけなんです。(p133)
 私はどんなことでも自分のいいようにとるの。どんなことがあっても上気元にとれる解釈をしないとダメなんです。その解釈が正しいかどうかっていうことよりも,楽しいかどうか。自分が上気元になれるかどうかなんだよね。常に何が起きても上気元。(p148)

2014年7月24日木曜日

2014.07.24 堀之内九一郎 『お金持ちほど「捨て方」がうまい!』

書名 お金持ちほど「捨て方」がうまい!
著者 堀之内九一郎
発行所 青春新書
発行年月日 2008.07.15
価格(税別) 730円

● まず,いくつかを転載。
 経済的に豊かな層,世間でお金持ちとされている人たちが住む地域は,リサイクル業者にとって「こいつはおいしい!」という掘り出しものが出る,と思われるかもしれませんが,とんでもない。商売になるようなものはほとんど出ません。だいいち,ごみの全体量が少ないんです。 (中略)捨てるような物は,最初から買わないからです。(p11)
 経済的な中間層,いわゆる一般庶民は高価な物には手が出ないから,適当な値段でみてくれだけいい物を買います。(中略) だけど,いくらみてくれが良くても,付け焼き刃は,所詮,付け焼き刃でしかありません。(中略) 三万円,四万円で買った物を,一万円かけて直すなんてことはしやしません。愛着なんてものもないから,新しい物に買い替えて,ごみ集積所行き。ちょっと直せば使える物が,どんどんごみとして出てくるわけです。その新しい物だって,すぐ買い替えの対象になる。捨て方がムダだらけ。(p12)
 ホンモノ,いい物は満足感を与えてくれます。だから捨てない(乗り換える気にならない)。そういうホンモノ,いい物をほしいと思うこと,手に入れようと頑張ることが大事なんです。(中略)「百円均一でいいや」,「もったいないからカップラーメンにしとこう」というのじゃ,ダメなんです。(p14)
 巷は宝の山。それを,どう拾い,どう活用できるかがポイントなんです。「世の中すべての物が会社の在庫」というのが我が社の発想です。(p75)
 所有者が,まだ使える物でも,いらなくなったから粗大ごみとして出す。これは,誰でも「ごみ」だという。しかし,いらなくなったから「あなたにあげましょう」という場合はどうか。「ごみをあげる」とはいわない。(中略) 物自体がごみなのではなく,置いてある場所が集積所であれば,「ごみ」になる。あるいは“ごみ”としてみれば,「ごみ」になる。 ということは,物の価値観を見出すことができなければ,どんな物も「ごみ」になる。物の価値観を見出せれば,それは,「ごみ」ではない。(p76)
 イギリスにしてもフランスにしてもファッションの本場,イタリーといえばニットの国として歴史が違う,ということもあるにせよ,一番感じたのは,物をムダにして作っている。 そのムダに美しさ,「ムダ」をすることによって価値観の高いものができている。 日本は,ムダをしない。合理化,合理化,合理化でしょう。ムダがないゆえに,できているものに価値観がない。(p120)
 物をみる前に正札やブランドをみるからダメ。自分で,物を見極める力を養おうともしない。だから,日本人は「物を見抜く力」がない。(p172)
 どこと名前はあげませんが,国産品でも,いかにも環境を考えたように装った生活雑貨の店が繁盛しています。色やデザインがシンプルだから,いかにも環境にもよさそうにみえるけれど,実際は,そう装った商品。何十年ももち続けられる使い続けられるような材質,製法じゃないことは,「物を見抜く力」があれば,その場で分かることなんです。(p172)
● ゴミから見る社会論,生き方論。面白い。
 著者の半生も語られる。ぞくに“七転び八起き”というけれども,著者の半生はまさにそれ。その過程で,普通の人ならまず体験しないことを体験し,考えないことを考え,学べないことを学んだに違いない。バイタリティーも尋常ではない。

● その堀之内さんにして,自ら創業した「生活創庫」が倒産に至った。現実に機敏についていく,その先をにらむ,というのは相当な難事であるらしい。
 しかし,この本でも言っているように,原価率はとんでもなく低い商売のはず。倒産の原因は何だったのか。まさかネットオークションが普及して,店舗での実物販売が成りたたなくなったなんてことではないと思うんだけど。

● でも,本人に後悔はないと思いますね。まだ70歳にはなっていないはずだから,次があるのかもしれないけれども,もしないとしても,やるだけはやったという満足感があるんじゃないだろうか。
 そんなこともないのか。もっと貪欲か。

2014.07.24 番外:CREA Due TRAVELLER 極上ハワイを楽しみつくす!

編者 林 暁
発行所 文藝春秋
発行年月日 2001.06.25
価格(税別) 838円

● こういうものも買っていた。13年前。自分の興味がこういうところに向いてたんだなぁと,ちょっと感慨にむせぶところがある。
 というわけではなくて,この頃,わが家をハワイブームが覆っていたんだと思う。要するに,奥さんがハワイ好き。ハワイのみならず,白人の国はどこでも。ヨーロッパ,アメリカ,オーストラリア。中国系は香港とシンガポールを例外として,拒否される。
 この時期はハワイだったんだろう。

● ハワイのホテル紹介。部屋の調度や食事の写真。絢爛たるもので,当時はこういうものを見て目の保養をしていたんだね。
 巻頭を飾るのは,カハラ マンダリン オリエンタル。今ではマンダリングループを離れてますね。

● 現時点ではハワイに興味なし。第一,泳げないんだから,ぼく。南の島は基本的にパスしたいわけですな。泳げなくても楽しむ術はあるんだと思うんだけど,そうだとしてもわざわざそういうところに行かなくてもね。
 もうひとつは時差。東西に動くのはシンドイですよ。ハワイなんて,今日の夜に発って,夜通しのフライトで,着いたら今日の朝なんだよ。とんでもないでしょ。年寄りには体に毒だ。

● さらに,食事。ありていに言う。旨いものがない。おまえが行くようなところにはないだけで,あるところにはあるんだよ,と言われますか。
 ぼくとすれば,ぼくが行くようなところにしか行けないわけで,そこに旨いものがないっていうのは,つまるところ,どこにも旨いものはないってことになるわけね。
 唯一,果物だけじゃないか。何とか喉を通っていくのは。

● ホテルに関していうと,リゾート地よりも都市にあるホテルの方が居心地がいい。というのがぼくの経験知。マンダリンなんか泊まったことはないんだけど。
 リゾート地のホテルって場所に寄りかかっているような気がする。オペレーションに甘さがあるように思う。その典型が沖縄。
 ぼくの好みは都市のホテルだね。で,ホテルの中で過ごすんだったら,そもそもリゾート地に出向く必要がない。交通費分をホテル代につぎこんで,都心のホテルに泊まればハワイなんか目じゃないほどの贅沢を味わえるんじゃないだろうか。

● もっとも,リゾートだろうと都心のホテルだろうと,回数を重ねてしまえば,必ず飽きるはずだけど。一生の楽しみにはならないものだと思う。
 それを望むのであれば,お金に頼らないことだ(と思う)。体を動かすことだったり頭を使うことだったり,お金を使わずにできる遊びの方が,ずっと飽きることなく続く。

2014年7月23日水曜日

2014.07.22 番外:おとなの入門書 無料クラウドサービス

書名 おとなの入門書 無料クラウドサービス
発売所 インターナショナル・ラグジュアリー・メディア
発行年月日 2014.07.05
価格(税別) 980円

● 4月にも「クラウドサービスビジネス活用術」というのに目を通したばかり。似たようなものを何で買っちゃうのかっていうと。
 4月との違いは,こちらがクラウドをわずかながら使い始めていること。GoogleDriveを少し。で,使ってみれば,たしかに便利だと思うわけで(問題はデータをアップするのに時間がかかりすぎること)。
 で,GoogleDriveだけでこと足りそうではあるんだけど,マイクロソフトのOneDriveはどうだろうか,と。Officeを使うんだったらやはりマイクロソフトだろう,と。そのOneDriveの使い方が詳しく載ってるっぽかったので。

● 最近,Googleのトリセツがいくつかの出版社からほぼ同時に出た。ぼくはGoogleの信奉者なので,ビシバシと使っていきたいと思っているんだけど,実際にはGoogleが提供するサービスのほんの一部しか使っていない。
 もっと便利に使えるはずだし,Googleだけでもっと多くのことができるはずだ。しかも,Googleのサービスはどんどん更新される。一度,きちんとGoogleサービスについておさらいしといた方がよさそうだ。

● 願わくば,無料で使える容量が15GBとか7GBとかじゃなくて,1TBになってくれるとね。一切合切をクラウドに置いとけるんだけどね。
 バックアップ用の外付けハードディスクが要らなくなる。

2014.07.22 茂木健一郎 『本番に強い脳をつくる』

書名 本番に強い脳をつくる
著者 茂木健一郎
発行所 成美文庫
発行年月日 2014.05.20
価格(税別) 520円

● 受験生の豚児に読ませてみようかと思う。といって,豚児は勉強をしている気配はまったくなく,受験で追い詰められているという風ではない。
 もっとちゃんとやりなよと,あまりちゃんとやっていない父親が言うより,こういう本を読ませた方が効果があるかなと思ってね。
 ま,豚児はまったく本を読まないタチなので,はたして読んでくれるかどうかわからないんだけど。

● 以下にいくつか転載。
 そもそも人生はいつでも本番。練習やリハーサルを本番だと思って,自分の持っている力を出し惜しみせずに行動する。そういう人にだけ勝利の女神が微笑みます。(中略) もし持っている力の八〇%や九〇%の力しか使わないでいると,自分自身のポテンシャル自体も八〇%,九〇%に下がっていってしまいます。(p65)
 そもそも世間の価値観や常識は移ろいやすいものです。特に日本人は空気に染まりやすい国民性だけに,価値観や常識自体が案外変わりやすいのです。(p69)
 論理的・技術的に不可能だと思われることがあったとしても,脳に不可能はありません。不可能だと思うのは,それを可能にする回路がまだつくられていないだけです。つまり,可能だと思う回路を脳の中につくれば,それを実現するためのアイデアや行動が導き出されるのです。(p140)
 最後に言っておきたいことがあります。それは,「未来のために今を犠牲にする考え方は絶対に間違っている」ということです。(中略) 「今やっているこの仕事自体が楽しい」と思わなければ,その人は成長しません。ルーティンワークや誰がやっても同じという雑用にしても,同じです。「つまらない」と思いながら仕事をしても,脳にはちっともよくありません。単純作業でも案外,楽しめるものです。(中略) 何をするにせよ,今目の前にあることを楽しむ。それがあるから未来を楽しむことができるし,今を楽しめるから,突然,目の前に幸せが降ってくることがあります(p207)

2014.07.21 長谷川慶太郎 『長谷川慶太郎の心身寿命は歩いて延ばす』

書名 長谷川慶太郎の心身寿命は歩いて延ばす
著者 長谷川慶太郎
発行所 宝島社
発行年月日 2014.07.02
価格(税別) 1,400円

● 著者,86歳。書くものからは年齢は感じない。変化の激しい政治経済評論の第一線に立ち続けているという印象。
 本書では著者が決して頑健な身体の持ち主ではないことが,若い頃のエピソードとともに語られる。これまでまったく語られることのなかったことがらではないけれども。

● 62歳のとき,心筋梗塞で倒れ,それまで喫っていた煙草をやめ,歩くことを心がけた。といって,それ以前は不健康な生活をしていたというわけではない。酒は飲めない体質。
 ともかく,歩くことの効用が縷々説かれる。そこは長谷川流だから,類書とは違った味わいを楽しめる。

● 以下にいくつか転載。歩く効用を説いている箇所とは別のところから。
 情報というものは井戸と同じです。汲めば汲むほどいい水が出てきます。逆に,惜しめば井戸は腐ります。情報の出し惜しみは,これまでもしたことはありませんし,これからも一切するつもりはありません。 逆に最新の情報すべてを吐き出しても,井戸が涸れることは決してありません。出したら出した分,また新しい情報が入ってくるのです。(p167)
 情報と金はあるところに集まる,というのが私の持論です。 当然ですが,ないところにはずっとないままになってしまいます。情報を持つことが必要ですから,最初は自分で手持ちの情報を作らなければいけないということになります。そのための努力が必要ですが,逆にいえば,種になる情報さえを持っていれば,類が友を呼ぶように新たな情報が集まってきます。(p172)
 「情報はあるところに集まる」と先ほど書きましたが,「ある」ことを示すためにはどんどん情報発信しなければダメです。発信しないことには,そこに情報があることが誰にもわかりませんから,別の情報は集まってきません。(p179)
 健康維持のために意識するといいのは「使うこと」です。(中略)人間の身体は使えば使うだけそれに反応して機能が増すのです。それは年齢とはあまり関係がないのかもしれません。(p188)

2014.07.21 柴村恵美子 『天が味方する引き寄せの法則』

書名 天が味方する引き寄せの法則
著者 柴村恵美子
発行所 PHP
発行年月日 2014.07.08
価格(税別) 1,000円

● 斎藤一人さんの説法の集大成という感じ。それがコンパクトにまとまっている。
 説法というと宗教じみてくるけれども,斎藤さんの説くところに宗教臭はない。来世があるとか魂は不滅とか,そういう話が出てくるけれども,ひじょうに世俗的な来世であり魂であって,おどろおどろしさは皆無だ。
 要は,楽しく生きるにはどうすればいいかという功利的な内容。それが結果において道徳律にほぼ一致する。

● 古今にあまたある思想の出発点は,すべてこの点にあったのだろうと思う。それが右に向かったり左に向かったり,上を向いたり下を向いたりして,さらに枝葉がつき,その結果がおびただしい数の書物になって残っている。
 が,楽しく生きるにはどうすればいいかから離れないで,技法を洗練させていく方向に進むと,ここに行きつくのだろうな,という感じ。

● ひとつだけ転載。
 なかなかうまくいかないような難しいことや困難なことにチャレンジし,それがうまくいったときのよろこびや楽しさはひとしおです。 逆にいえば,最初から楽しいものは,本当の楽しさではないのかもしれません。(p190)

2014年7月22日火曜日

2014.07.20 呉エイジ 『我が妻との闘争』

書名 我が妻との闘争
著者 呉エイジ
発行所 アスキー
発行年月日 2002.11.26
価格(税別) 1,200円

● 12年前の発行。「マックピープル」に連載されたもの。連載は1999年から開始された。連載当時から人気を呼んでいたのは知っていたけれど,ぼくが「マックピープル」を買うことはなく(Windowsユーザーだから),単行本になってからもずっと読まずにいた。
 買ったのは6年前。ヤフオクで。それでも読むことなく,今日に至りましたよ,と。

● 「パソコンをめぐる夫婦のドタバタ日記」が副題。この当時は,まだまだパソコンは高価なものだった。金喰い虫だった。特にMacは。マッキントッシュはシャッキントッシュなんていう言われ方もしていた。
 ところが,その言い方が本書にも登場する。本書のオリジナルなのかもしれない。

● 呉エイジはもちろん,ペンネーム。クレージーのもじりでしょうね。姫路の県住に住んでいる30歳のサラリーマンで,こづかいは月2万円という設定になっているんだけど,これはすべてフィクションだろうと思った。名のある書き手が架空の状況を設定して書いたのではないかと思ったわけ。達意の文章なので。
 しかし,そうではないらしい。もともとは自身のホームページに書いていたものを,雑誌の編集者が見初めて雑誌連載を持ちかけたようだ。
 市中にここまで書ける人が潜んでいるのか。スラスラ書いているわけではないと思わせる文章だけれども,苦闘の跡は残すまいとしているように思われる。プロの書き手の態度ではないか。

● 奥さんが鬼嫁として登場する。しかし,彼女に落ち度は何もない。自身の職分を懸命に尽くしているだけだ。模範的な専業主婦だ。何だかんだ言いながらも,ダンナのMac三昧を許しているようだし。
 そうして,ダンナはここまで面白い読みものを残すことができた。何もかも奥さんのおかげ。呉さんは良い伴侶を得た。

● にしても。あの当時の,あるいはそれ以前の,パソコンの高価さは想像を絶するものだったな。逆にいうと,パソコンはとんでもない速度で安くなり続けた。
 当時,お金をクルマに投じた人と,パソコンに投じた人を比較すれば,笑えない格差が発生している。呉さんのように,その果実を得た人もいるけれど,そんなのは少数派。

● その頃からパソコンをいじっていたから,今の状況についていくことができている,などと考えている人はまさかいないだろうな。まるで関係ない。呉夫人も今頃はiPadを軽やかに操っているかもしれないではないか。
 MS-DOSの知識が,今,何の役に立つ? MacのHyperCardを勉強したことが,今,何かの役に立っているか。あの頃の未熟なパソコンに関わってしまったのは,幸運だったのか不運だったのか。

2014年7月21日月曜日

2014.07.19 番外:東京ディズニーリゾート ホテルガイドブック2012(その2)

書名 東京ディズニーリゾート ホテルガイドブック2012
編者 ディズニーファン編集部
発行所 講談社
発行年月日 2011.08.04
価格(税別) 952円

● すでに新版が出ている。これ,TDRのホテル群のカタログというか拡販誌だ。それをお金を取って販売しているわけだよな。しかも,そこそこ売れているんだろう。ディズニーはたいしたものだ。いや,皮肉でなしに。

● ディズニーホテルでは,ミラコスタにしか泊まったことがない。何度か宿泊したけれど,一度だけ,ポルト・パラディーゾ・サイドのテラスルームに泊まることができた。奥さんがディズニー大好き女だったのでね。パソコンの前に陣取って格闘して勝ちとったものだ。
 小さかった豚児が喜んではしゃぎまわっていたのを憶えている。ぼくも人の親なので,子供が喜んでくれるのは嬉しかった。
 朝食はルームサービスにして,テラスで食べるのが約束事でしょ。わが家もそのようにした。やはり豚児が嬉しそうにしてたのを憶えている。
 ただ,あれだね,朝食をルームサービスにすると野菜が少なくなるのが,難といえば難ですね。

● 以上は,一にも二にも,眼下にディズニーシーを見渡せるがゆえの効果。ホテル単体としてみた場合は,格別のこともないと思った。建物も意外に安普請ではないか。
 屋外プールもどうってことないと感じたな。オペレーションも普通じゃないですかねぇ。
 もっとも,ぼくらが泊まったのは,ディズニーシー開園5周年のときだったけど。要するに,昔のこと。

● あと,やっぱりね,ディズニーホテルはお高いですよね。ラックレートを比較すれば,ディズニーホテルもオフィシャルホテルも大差ないんだけど,ディズニーホテルはラックでしか泊まれない。
 オフィシャルはラックで泊まっている宿泊客などいないだろう。安い宿泊プランがいろいろある。

● 回数だけでいうと,わが家はシェラトンが圧倒的に多い。百泊までは行かないけど,数十泊はしている。スタンダードからプレジデンシャルスイートまで。義父母や義弟夫婦を誘って行ったり。パーク抜きで,ここに泊まるためだけに舞浜まで出かけたことも何度かある。
 初めてシェラトンに行ったのは,宿泊ではなく食事だった。「グランカフェ」で蟹の食べ放題をやっていてね。それを食べに行ったのが最初。その蟹が旨くてねぇ,それにあてられたのがキッカケといえばキッカケか。
 ただし,蟹フェアは赤字だったんだろうな。その後,二度と催行されることはないからね。

● 豚児が小さかった頃は,ペントン・クラブのサービスに乗った。何回か行くと,景品がもらえる。ホームページに豚児の名前が載る。すごいよ,豚,全国で何番目だよ,とか。今思えば,バカ以外の何者でもない。親が。
 クラブラウンジがあるのはここだけになった。以前は昼からビールが飲めた。ビーフジャーキーをかじりながら飲むビールは,なかなかけっこうなものだった。
 オープンスペースに揺り椅子が置かれているのもいいな。そこに座って持参した本をトロトロと読むのも乙なもので。

● プールとサウナが安い料金で使えるのもメリットだ。1,500円でパスを買うと,何度でも使える。ホテルクオリティのプールであり,サウナだからね。
 夏限定の屋外プールはやはり小さかった頃の豚児のお気に入りで,よく遊んでいた。ここでアルバイトの学生さんからオレンジスカッシュでも買って飲めば,充分にリゾート気分を味わえた。安あがりなリゾートだ。
 ただし,屋外プールは芋洗い状態。でもな,ハワイのワイキキビーチだって似たようなもんだろ。

● ネットカフェがあるのも何気に得点が高い。ネットで何するわけじゃないんだけど,ここで過ごす時間もけっこう長い。
 ホテルの中で過ごすことができるから,ここだとパーク抜きがあり得る。スイートだろうと何だろうと,部屋にずっといるのは苦行になるけど,ホテルのオープンスペースをわがものにできれば,必ずそのホテルはいいホテルになる。

● じつは,この頃,ヨメがSPG(スターウッド プリファード ゲスト)の会員になってて,プラチナ会員に登りつめたんですよ。だから,泊まるホテルはシェラトンかウェスティンに決まっていた。
 SPGのポイントはチェックインの回数がモノサシになる。1泊でも連泊でもポイントは同じ。だから,ポイントを稼ぐには連泊を避けること。
 加えて,同一都道府県内にあるホテルはどれかひとつしかカウントされない。幸い,舞浜は千葉県。なので,ここに1泊して恵比寿のウェスティンに泊まって,またここに戻ってくるなんてこともやってましたね。
 プラチナになると特典が大きいのは確かで,色々といい目に遇わせてもらったね(プレジデンシャルスイートなんぞに泊まれたのもそう)。ヨメのおかげだ。ただし,SPG加盟ホテル以外のホテルに泊まる機会と引き換えることになるけど。
 ちなみに,今のヨメは無印。こういうのは勢いでプラチナまで行くことは行けても,それを維持することはまず不可能としたものでしょ。

● オークラにもけっこう泊まった。ここの特長はハード面にある。群を抜いて素晴らしい。大理石がふんだんに使われている。
 香港の今はインターコンチネンタルになっているホテルを運営していたリージェントが,このホテルを手がけることになっていたと聞いたことがある。ところが紆余曲折があって,第一ホテルが入ることになった。さらに紆余曲折があって,今はオークラになっている。
 たぶん,オークラの稼ぎ頭なのではあるまいか。

● ここに来ると,まず風呂に入りたくなる。現時点でも水準を抜く設備といっていいのでは。いわんや,当時はちょっと驚愕ものでしたな。
 「コスタ デル ソル」の風呂もいいねぇ。浴槽が深くてね。

● 女性スタッフは美人揃い。呆れるほどだ。

● メインのレストランは「フォンタナ」。いつだったか,ここで蟹とステーキを前面に立てたディナーブッフェがあった。ところが,スタッフのシフトの問題があったようで,スタッフの数が絶対的に足りない。
 彼はよくやっていたと思うんだけど,お客を待たせる。待ちきれないお客が自分で動こうとする。結果,カオスが増大する。
 そもそも,「フォンタナ」って必ずしもブッフェに向いた造りになっていない。動線の問題で,普通であっても滞留が起きやすい。
 じつは,そのとき以来,オークラには行かなくなった。

● ヒルトン。二度しか泊まったことがない。二度目は最近なんだけど,改装して良くなったと思った。
 以前はスターバックスが入り口の近くにあった。が,スタバにとってもホテルにとってもあまり幸せな状態ではなかったろう。

● 市中価格で利用できるコンビニがあるのはありがたい。舞浜駅のニューデイズ,けっこう混んでるからね。あんまり寄りたくないもんな。
 屋内に立派な喫煙室がある。煙草を吸うお客さんやで出入り業者の営業マンにとっては,とてもありがたいはずだ。目下の一般的な状況は,結界を作って喫煙者をその外に追いだす方式だけれども,このやり方はそろそろ限界に来ていると見る。どんどん結界を広げてきたわけだけどね。
 煙草税は依然として重要な税収のひとつであるのだし,喫煙者も消費はする。ここまで迫害されている喫煙者をある程度まとめて捕獲できれば,美味しいお客になるだろう。

● 東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾートは,東急だった頃に何度か宿泊。手堅くまとめていたと思うんだけど,その分,突出したところはなかったかなという印象。

● 東京ベイ舞浜ホテルとサンルートは宿泊経験なし。

2014年7月19日土曜日

2014.07.18 指南役 『空気のトリセツ』

書名 空気のトリセツ
著者 指南役
発行所 ポプラ社
発行年月日 2008.07.10
価格(税別) 1,300円

● 「僕らは空気の前では極めて無力な存在。自分の意思で行動しているようで,その実,知らずしらずに空気に動かされているのです」(p242)というのが,この本のテーゼ。
 その具体的な実例が本書の内容になる。それらがすべてエンタテインメントに仕上がっているところが味噌。
 要するに面白いわけで,「指南役」のメンバー,ただ者じゃないな。

● いくつか転載。
 街の空気というのは,放っておけば段々と中央に--ひと塊にまとまろうとする性質がある。最初は市の方々に分散していた繁華街も,時が経つほどに中央に引き寄せられ,遂には巨大な繁華街に吸収される。(p107)
 そう,群雄割拠は長くは続かない。それは世界史を見渡しても同様である。空気の法則として,必ず統一へと向かうのだ。(p108)
 よく「昔はよかった」なんていう人がいるけど,断言してもいい。今の世の中のほうが絶対に暮らしやすい。思い出は美化されるもの。昔はとにかくモラル意識が低かった。 その昔,セクハラは日常茶飯事だったし,街中では煙草の吸殻や缶ジュースのプルトップが平気でポイ捨てされていた。ゴミの分別回収だって守らない人のほうが多かった。(p231)
● 最後のご指摘はまったく賛成。そこから次の結論が導かれる。
 すなわち。「昔」からの生き残りである年寄りよりも,若者や壮年者の方が一般的にマナーが良い。

2014年7月17日木曜日

2014.07.17 坂本 達 『やった。』

書名 やった。
著者 坂本 達
発行所 三起商行
発行年月日 2001.01.30
価格(税別) 1,700円

● だいぶ前に出た本。数年前にヤフオクで買っておいた。

● 「4年3カ月も有給休暇をもらって 世界一周5万5000キロを 自転車で走ってきちゃった男」が副題。そんな休暇を認めた会社はmikihouse。
 でも,誰でもそんなことを認められるわけじゃないんでしょ。坂本さんにそれを認めさせるだけの働きがあったんでしょうね。

● 自転車で世界一周し,それを本にしたものはけっこうある。その書き手としては,石田ゆうすけさんが第一人者だと思っているけれども,本書も面白い。
 こういうことをやるのは若い人だし,その体験じたいに希少性があるんだから,普通に書いても面白くなるはずだ。

● ただひたすら走るというところに行ってしまうと,平板になってしまうかもしれない。しかし,そこは移動手段が自転車。どうしたって途中でハプニングが起こる。現地の人たちとの交流が生まれる。
 それをそのまま書けば,それだけで面白くなるものだろう。

● とはいっても,現地の人たちとの交流といっても,それができない性格だとしょうがない。過剰に防衛や警戒に走ってしまい,騙されまい,損すまい,っていうのが勝ちすぎるとつまらなくなる。そういう人は自転車で世界一周しようなどとは考えないものかもしれないけれど。
 坂本さんのそのへんの闊達さが魅力的だ。人懐こさというか。

● 7歳から11歳までパリに住んだ経験を持つ。大学生のときに1年間のアメリカ留学も経験している。英語とフランス語は堪能だ。中学で自転車のロードレースを始めた。父親が勤務する商社の世界中の支点を連絡拠点として手配してくれた。
 というわけだから,自転車世界一周界(?)においてはサラブレッドかもしれない。が,そうしたことは些事に属するだろう。自転車のペダルをこぐというのはあくまで個の行為だし,刻々と変わる状況の変化に対応するのも徹底的に個の行為のはずだから。

● あとがきからいくつか転載。嘘はないと思う。
 どんなに強力に思えるコネやテクニックよりも,人の心から出た叫びや個性といった純粋でストレートなもののほうが,いつも結果的に説得力があり勝っていた。未開の村で受け入れられるためには,うわべの笑顔やお金よりも「気持ち」のほうが大切だった。そうして自分を信じる大切さを学んだ。さらに,弱点を弱点と思わずに,個性と考えればいいことも学んだ。(p229)
 学んだことは「感謝」であり,できないことをするのではなく,できることを見つけ,それを精いっぱいするというシンプルなことだった。(p232)

2014年7月16日水曜日

2014.07.16 山本敏行 『日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方』

書名 日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方
著者 山本敏行
発行所 ソフトバンク クリエイティブ
発行年月日 2010.12.06
価格(税別) 1,400円

● ヘーッと思うことの連続。経営の肝を実地で学んだ人だ。失敗を重ねながら実施で学ぶ以外に,学ぶ方法はないのだろうけど。
 本書を読むと,会社経営は最大の社会福祉だと思えてくる。もちろん,第一には従業員にとっての。次には顧客や取引先。波及範囲は広そうだ。
 お客様は神様ではない。従業員第一,顧客第二。歯切れがよくて気持ちがいい。

● 顧客第二と明言するのは業種によってなかなか難しいんだと思うけど。わが家の近くの某スーパーでは「お客様の声」を模造紙に貼りだしている。どう対応したか(あるいは,するか)も加えている。「声」はたくさんあるんだけど,特定の一人か二人がそのほとんどを書いている。クレーマーとしか思えない内容だ。
 そういうものに対応させられたのでは,モチベーションの維持も何もあったものではないと思える。むしろ,そういうクレーマーから従業員を守るのが経営者なり部門長の仕事であるべきで,やっていることが逆である。

● Googleの使い方がすごい。Googleのサービスを使うだけでここまでできるのか。個人でも応用が効きそうだ。
 私の場合は1998年に初めて友人に送った1通目のメールから,現在までの10万通のすべてのメールをGメールの中に入れています。大学時代の友人の名前で検索すると,友人の名前が入ったすべてのメールが約1~3秒以内で表示されます。もし10万通のメールをアウトルックで,また自分のパソコンで検索させたとすると膨大な時間がかかりますが,クラウド上に置いておくことでグーグルの複数のサーバーが高速演算処理をしてくれるため,非常に素早く検索結果が表示されるのです。(p146)
 Gmailはぼくも使っているけど,初歩的なというか,メールが登場した当時のメールとはこういうものっていう使い方しかしていない。メール以外のGmailの使い方をいろいろ工夫できそうだ。

● 企業のIT化って,お金がかかるものだとぼくも長らく思っていた。が,これも遅ればせながら認識を改めないといけませんな。
 今なら(けっこう前からなんだろうけど),コストをかけないでいろんなことができるんだ。たしかにGoogle Document(今はGoogle Drive)を使えば,高価なMS-Officeを導入する必要はないわけだし。

● イーブースターというソフトも初めて知りましたよ。ケチ根性から古いパソコンを使っているんだけど,たしかに立ちあがりを待つ時間が毎日ある。塵も積もれば損失時間はバカにならない。
 そこを改善するソフトらしいんだけど,試してみるか。

● ひとつだけ転載。
 情報というのは与えれば与えるほど,周りから新しい情報が入ってきます。自分が持っている情報を出しきると,乾いたスポンジのように新しい情報の吸収力が増します。お金や物と違って,情報は出しても出しても減りません。(p96)

2014.07.15 茂木健一郎 『幸福になる「脳の使い方」』

書名 幸福になる「脳の使い方」
著者 茂木健一郎
発行所 PHP新書
発行年月日 2013.02.01
価格(税別) 760円

● お金と幸福感は比例しないという話から始まる。高度経済成長の前と後で,幸せだと感じている人の比率は変化していない。なぜか。幸福感は他との比較によるからだ。
 では,幸福感を感じられるようになるためにはどうすればいいか,という展開になる。他人ではなく過去の自分と比較することだ,とか。

● 今まであまり語られることのなかった,著者の子供時代の苦悩が本書では詳細に告白される。腺病質だったようだ。
 中学生のときに『赤毛のアン』に出会い,高校生のときは原書で読破するという,傍目にはとんでもないことを著者はしているんだけど,その推進力になったのもその腺病質だったのかと,妙に腑に落ちた。

● 「パッシブなことよりも,アクティブなことの方が幸せには寄与する」(p105)。テレビを見るとか買い物をするというのが,パッシブ・レジャーで,釣りをするとか山登りをするというのがアクティブ・レジャー。
 読書は一見,パッシブ・レジャーに思えるけれども,じつはアクティブ・レジャーに属する。脳の活動としては決してパッシブなものではないということ。

● 以下にいくつか転載。知恵の宝庫といっていいものだと思う。
 人が貧困に陥ってしまう原因は,失業したり,収入が得られなくなることではなく,そのことによって人との絆が断ち切られることにある(p39)
 「勉強が苦手で・・・・・・」と言う人に限って,長時間根を詰めて勉強をしがちです。勉強時間が長ければ長いほど,頭がよくなると勘違いしているのです。 ところが事実はその逆で,短時間勉強に集中して,後はパッと気分転換をする人の方が,勉強や仕事の効率はいいのです。(p96)
 その問題自体が除去できない場合,「この問題が除去できないと,自分は幸せにはなれない」と思うことは,すでにその対象を過大視してしまっていることになります。(p104)
 飽きることは,実は脳の才能のひとつです。趣味に飽きる,勉強に飽きるなど,いろいろな「飽きる」があるでしょうが,その中でも「今の自分に飽きる」という感覚が大事で,「今の自分に飽きた」「自分はもっと変われるはずだ」と思うことが,その人を伸ばす意味で一番大切な感覚です。(p127)
 自分に忠告や批判をしてくる人に反論している時は,まだ自分に自信がない段階です。(中略)本当に自由な精神になれたら,あまり気にならなくなっていくものです。(p133)
 若さについては面白い研究があります。それは歳を重ねると,あまり後悔しなくなるというものです。人は残りの人生が短いと思うと,後悔しても意味がないと感じるからのようです。(中略)つまり,後悔は大いにすべしということです。(p146)
 将来の幸せを誰もが語りますが,「今,ここ」の幸せを感じられない人は,将来においても心の平安を手に入れることは難しいのではないでしょうか。(中略)一年後,二年後の幸せのために,今を犠牲にして人生を楽しまないのは本末転倒です。(p153)
 同じ場にいたAさんとBさんですが,Aさんは満足に思っていて,Bさんは不満を感じている。この二人の違いはどこにあるかというと,「こうでなければならない」という思い込みから自由になっているかどうかです。(p155)
 では,どうすればその縛りから自由になれるのでしょうか。 そのためには,自分の中に持っているこだわりや,美意識,欲深さを,ある程度手放すことが必要です。 私の場合でいえば,髪型や服装に関して「こうでなければならない」という縛りから完全に自由です。(p156)
 たとえば「将来こうなりたいという理想の自分像」と「今の自分」がかけ離れたいたとします。そう思うことも実は「こうでなければならない」という縛りのひとつです。焦って理想の自分を追求しようとしてもろくな結果は生みません。今,ここを楽しむことができて初めて物事は上手くいきます。 幸せであることと,何かを成し遂げられることとの間には,実は相関関係があります。今を幸せだと感じられなければ,本当には何かを成し遂げることはできないのです。(p157)

2014年7月14日月曜日

2014.07.13 『スティーブ・ジョブズ1995 ロスト・インタビュー』

書名 スティーブ・ジョブズ1995 ロスト・インタビュー
発行所 講談社
発行年月日 2013.09.10
価格(税別) 1,000円

● appleもの,ジョブズものはいくつか読んでいるけれども,apple製品を使ってみようと思ったことはなかった(iTunesだけは使っていたけど)。
 でも,今回,本書を読んで初めて,次のパソコンはMacにしてみようか,次のスマホはiPhoneにしてみようかと思った。タブレットを使うことがあれば,Nexus7ではなくiPad miniにしようかと思った。

● なんか,この本におけるジョブズの言い分がすっと入ってきた感じなんですよね。以下に,いくつか転載。
 私はこれまでのキャリアのなかで,もっとも優れた人材はコンテンツを理解できる人間だということ,同時に彼らはうんざりするほど扱いにくい人間だということを知ったよ。わかるだろう。それでも大目に見て受け入れるしかない。彼らはコンテンツに関してはきわめて優秀だからだ。だからこそ,優れた製品ができあがるんだ。プロセスじゃない。コンテンツなんだ。(p46)
 アップルに非常に大きなダメージを与えたのは,私が去った後でジョン・スカリーがかかった,ひどく深刻な病だ。私はほかの人たちがその病にかかるのも見てきたけれど,その病とは,すばらしいアイデアが仕事の9割を占めていて,そのアイデアをスタッフに示せば,スタッフは当然作業にとりかかってアイデアが実現すると考えてしまうこと。 問題は,すばらしいアイデアとすばらしい製品の間には,とてつもない職人技の積み重ねが必要だということなんだ。(p50)
 現在出荷されているマッキントッシュは,私が去った時点から25パーセントほどしか変化していない。毎年何億ドルもの研究開発費が使われているというのにだ。(p71)
 私はマイクロソフトが成功したことが悲しいわけではないんだ。彼らが成功したのはかまわない。大半が彼ら自身の努力の結果なんだしね。私が気に入らないのは,マイクロソフトが作っている製品が三流品だという事実なんだ。マイクロソフトの製品には魂がない。人にひらめきを与えるスピリットがない。じつに凡庸だと思う。 悲しいことに,顧客のほとんどもまた,そのような魂をあまり持ち合わせていない。人類が着実に向上するためには,最高のものを手に入れて,それを広めることだ。そうすれば,より良いものに触れてみんなが成長し,眼識を養えるようになる。(p75)
 たしかにそうなんだ。そうなんだけど,問題は価格なんだよ。ASUSの「Fonepad 7 LTE」は不細工で安っぽい感じなんだけど,SIMロックフリーでmicroSDXCカードを装着できるんだよ。それで3万円なんだよ。iPad miniは5万円を超えちゃうんだよ。
 ピカソがこう言っている。「優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」とね。私たちはすばらしいアイデアをいつも臆面もなく盗んできた。 マッキントッシュがすごい製品になった理由の一つは,マッキントッシュを作ったチームのメンバーが音楽や詩,芸術,動物学,歴史学の知識を持ち合わせていると同時に,世界有数のコンピュータ科学者でもあったことだ。 もしコンピュータ科学という分野がなかったとしても,彼らはほかの分野で活躍していただろう。彼らはそれぞれの知識をマッキントッシュに注ぎ込んだ。きわめて文化的な雰囲気だったよ。(p87)

2014.07.13 岡田斗司夫 『人生テスト 人を動かす4つの力』

書名 人生テスト 人を動かす4つの力
著者 岡田斗司夫
発行所 ダイヤモンド社
発行年月日 2000.04.21
価格(税別) 1,500円

● 世上の自己啓発本や宗教書,人生論を説いた本は役に立たない。素の自分を変えようとしたって変えられるものじゃない。そうではなくて,素の自分に合わせた方法論があるのだ。
 宗教なんて単なる人生訓の体系化です。心理学は「精神構造の解明」が目的であって,「あなたの幸福」なんて知ったこっちゃありません。書店に多数並んでいる自己啓発本なんてのは,成功者が高みから語り倒す,オッサンの根性論そのものです。
 女性向けに書かれている「素敵な恋愛が,あなたを綺麗にする」なんてのは,書いているほうも出版しているほうも,そんなこと信じちゃいません。ああいうのは「幸福のペンダントで奇跡が!」と同じ,坦あるコンプレックス産業です。(p2)
 素のままの自分,本来の欲求を押さえつけるためには,大変なエネルギーが必要なのです。しかしそこまで時間とエネルギーを投資しても,無理矢理デッチあげた人格にはたいした幸福感もやってこないのです。そんな効率の悪い方法が長続きするはずがありません。大切なのは,素のままの自分を我慢することではなく,その自分に合わせて,なりたい自分像や,行動そのものをかえることです。
 言い換えれば,素のままの自分が喜ぶように行動することだけが,あなた自身を根底から幸せにする方法なのです。(p33)
● そこで人間を4つのタイプに分ける。王様,軍人,学者,職人。タイプごとの相性や,どう対処すればいいかが縷々説かれる。
 で,これが面白い。ここまで面白くできるのは,相当人生に元手をかけているんだろうなと思わせる。

● ただ,では自分はどのタイプに属するのかというのが分明にならない。ぼくの場合だと,学者4割,王様3割,軍人3割のような感じ。
 そんなものがハッキリしなくても,本書を楽しむのに支障はないんだけれどもね。

● あとひとつだけ転載。
 この世は自分を幸せにするためにのみ,存在する。人類や歴史に意味はなく,あなた自身の幸福がこの世界を意味づける。
 大丈夫,思い切ってここまで決めつけてしまいましょう。「自分以外の一人一人も,こう考える権利がある」という部分さえ忘れなければ,この解釈で突っ走ってもOKです。(p219)

2014年7月12日土曜日

2014.07.11 永江 朗 『菊地君の本屋 ヴィレッジヴァンガード物語』

書名 菊地君の本屋 ヴィレッジヴァンガード物語
著者 永江 朗
発行所 アルメディア
発行年月日 1994.01.15
価格(税別) 2,200円

● 「菊地君」とはもちろん,ヴィレッジヴァンガードの創設者である菊地敬一氏のこと。本書は20年前に出版されたものだが,ヴィレッジヴァンガードは今も健在。というより,いよいよ隆盛を極めている。国内にとどまらず,海外にも展開。当然,FC展開なんだろうね。
 宇都宮にも4店舗存在する。ララスクエアの4階にあることは前から知っていたけれども,入ったことは一度もない。本書を読んで,進入を試みたが,はやりダメだった。ここは自分の場所ではないという感じね。

● 本書に出てくるのは発祥まもない頃の話だから,本拠地である名古屋が舞台になる。当時から主なお客は学生だったらしい。
 いい年こいたオッサンが出入りするのが憚られるのは,今も同じということ。無理して入って,店内の風景を乱しては申しわけないから,跳ね返されたままでいるのがいいかな。

● 菊地氏のインタビューが本書のメイン。20年の時差があっても,面白く読めた。

● 菊地氏が語る経営の肝や苦労話。
 グッズは基本的にぼくが興味があるモノを置く。本は興味というよりもやはりニーズで置く。だからこの店にはぼくが読みたい本は一冊もない。(p34)
 ヴィレッジヴァンガードの返品率は三〇パーセント台だ。返品率が一〇パーセントだ,二〇パーセントだと言って喜んでいる本屋は仕事をしているとは思えない。極論を言うと返品は出て当たり前。(p39)
 ヴィレッジヴァンガードの切り口そのものが飽きられてしまう心配はない。なぜなら大学は四年間だから。ヴィレッジヴァンガードの中心のお客は大学生。四年で客が一回転する。だから定番だけ置いても成り立ってしまう。(p44)
 グッズを仕入れる場合は,「○○さんなら喜ぶだろうな」なんてかなり具体的に考えながら決める。これを年齢は何歳,職業は,性別はというマーケティング的に考えていたんではダメだと思う。(p59)
 グッズを選ぶ時は,まず本が先にあって,その本と一緒におけるものを,と考える。(p68)
 たとえば澁澤龍彦のフェアなら,買ってくれるお客は一〇人いればそれでいい。一〇人が一〇冊ずつ買ってくれれば,それで一〇〇冊。小さなフェアはそれで成功だ。それを一〇〇人に買ってもらおうと力むから,大変なことになってしまう。(p71)
 情報収集は世間の半歩先を行くぐらいでいい。今街に出回っている商品で面白いもの,しかも,どこにでもあるものではない商品でいい。(p83)
 本屋の仕事ではある本の隣になにを持って来るのか,なにを持って来たいのかが一番大事なことだ。そのためにはインデックスをたくさん持たなければならない。(p84)
 小さい情報に大きな儲け口がある。大きい情報はだれでもやるから,注意するのは小さい情報だ。オートバイの雑誌でもクルマの雑誌でも,隅っこに書いてあるような小さな情報がいい。(p86)
 ぼくは営業の出身だからよくわかる。チラシを配るのだって大変。ぼくは経験があるから街でチラシを配っていると必ず貰ってあげる。全然受け取ろうとしない人が半分ぐらいいる。あれはものすごく辛い。貰ってあげればいいじゃない。捨てればいいんだから。(p105)
 ぼくの友達は万引き防止機を入れた。彼によると,とんでもない人が盗んで行くそうだ。いつも世間話している隣のオバさんや,昔バイトしていた人の弟が盗んで行ったりする。自分の母親の友達が盗んで行くこともある。どうせ盗むのならわからないように盗んでくれという気持ちになる。(p124)

2014年7月10日木曜日

2014.07.10 三浦 展 『しごと星座 女子のための天職ガイド』

書名 しごと星座 女子のための天職ガイド
著者 三浦 展
発行所 牧野出版
発行年月日 2011.02.07
価格(税別) 1,100円

● こういう遊びも楽しいかもしれない。著者が作ったのは,次のような星座だ。
 創造宮 天然座  パティシエ,お菓子屋
       じぶん座  漫画,アニメ,映像関係
       魔法座  ペットトリマー,ペットショップ店員
 芸能宮 いやし座  芸能人,タレント
       カリスマ座  女優,モデル
 女性宮 ギャル座  キャバクラ嬢,ホステス
       しゃべり座  ホテル,ブライダル関係
       モテ座  秘書,受付
 社会宮 マネー座  OL,一般事務
       リーダー座  弁護士,検察官,裁判官
       まじめ座  公務員
       プレゼン座  広告関係

● 自分の正確や好みをあてはめるとどの星座に該当するか,というゲームになるわけだ。こういうことをよく思いつくものだな。
 これ以外にも作れるはずだ。といっても,どうやっても二番煎じになってしまうわけだけど。

2014年7月9日水曜日

2014.07.09 松井忠三 『無印良品は,仕組みが9割』

書名 無印良品は,仕組みが9割
著者 松井忠三
発行所 角川書店
発行年月日 2013.07.10
価格(税別) 1,400円

● 無印良品には,店舗で使っているMUJIGRAMという2,000ページに及ぶマニュアルと,本部の業務をマニュアル化した,6,000ページを超える業務基準書がある(らしい)。
 なぜそれを作ったのか。きっかけは2001年の38億円の赤字を建て直すためだったという。

● そのなぜかについて,具体的には次のように述べられている。
 これほどの膨大なマニュアルをつくったのは,「個人の経験や勘に頼っていた業務を“仕組み化”し,ノウハウとして蓄積させる」ためです。 ではなぜ,個人の経験と勘を蓄積させようとしたのか。 「チームの実行力を高めるため」というのが答えの一つです。仕事で何か問題が発生したとき,その場に上司がいなくても,マニュアルを見れば判断に迷うことなく解決できる。たったこれだけのことでも,仕事の実行力が生まれ,生産性は高まるでしょう。(p14)
 当時のお店づくりは,個人のセンスや感覚に頼っていました。たしかに素晴らしい感性を持つ店長がいて,その店長のもとではいい売り場ができていました。 ところが,そういう“一〇〇点満点”のような店長は,一〇〇店舗のうち,二~三店舗ぐらいの割合でしかいません。半数以上の店は,標準以下の“六〇点の店づくり”をしている状態だったのです。(中略) 今まで個人のセンスや経験に頼っていたことを企業の財産にできるように,合理的な仕組みをつくることが有効でしょう。これが,MUJIGRAMをつくろうと思った瞬間でした。(p38)
● 無印良品はもともとセゾンの堤清二氏の創設にかかるものだった。が,著者はセゾンのやり方に批判的。セゾンの風土が経験至上主義だったとふり返り,また堤氏に企画を通すための準備作業の不合理さを嘆き,「セゾンの常識は当社の非常識」だと言う。
 「経営」はコミュニケーションの量とスピードで決まります。コミュニケーションを阻害する大量の企画書は,経営の実行力を著しく落としてしまうのです。(p192)
 時代の風というのがあるのかもしれない。今は著者のやり方がいいのだとしても,経験至上主義がフィットしていた時代があったのだろう。時代を超えた普遍的なやり方というものがあるわけではないように思う。
 実際,セゾンは一世を風靡したのち,時代の風向きが変わったのに,それに対応できなかったために,沈んだのだろうから。

● ぼくが組織に対して苦々しく思っていることが二つあった。ひとつは,やらなくてもいい議論が幅を利かせていること。もうひとつは,報連相をもてはやす風潮。
 そこのところをピッと指摘してくれているので,気分がよくなった。
 私は,「会社に議論は似合わない」と考えています。 社員同士で丁寧に議論して,方向性を決めるのではなく,方向はトップが決め,方向が定まったら,実行の全エネルギーを注ぐような身軽さをもっていなければなりません。 そのスピード感や判断力は,仕組みによって磨かれていきます。 卑近な例ですが,たとえば会議をペーパーレスで運営する仕組みにするだけで,会議の準備作業を大幅に省略できます。(p35)
 行き過ぎたホウ・レン・ソウは人の成長の芽を摘んでしまう行為さと,私は考えています。常に上司が仕事に絡むので,部下の自主性や自分自身で創意工夫しようとする意識が育たなくなるのです。(p177)
 行き過ぎたホウ・レン・ソウは社員の意識を自分の部署に縛り付けてしまうので,内向き思考になり,“部分最適”の温床となります。全体最適の視点を養うためにも,リーダーは手綱を握りすぎないことが大切なのです。(p179)
● マニュアルに対しては,創造性を殺すとか,受け身になるとか,自分で考えなくなるとか,わりとマイナスっぽい言辞が呈されることが多いと思う。そうではないと著者は言う。
 どんな作業にも「うまくいく法則」があります。それを見つけ,標準化するのです。(p16)
 「それぐらい,口でいえばわかるのでは?」と思われるようなことまで明文化する。これは“仕事の細部”こそ,マニュアル化すべきだという考えがあるからです。(p24)
 マニュアルは,仕事に潤いさえ与えてくれます。 無印良品のマニュアルは,現場で働くスタッフたちが「こうしたほうが,いいのに」と感じたことを,積み重ねることで生まれた知恵です。(p25)
 標準をつくらないうちに改善しようとしても,迷走するだけです。何事も基本なくては応用がないのと同じで,無秩序な創意工夫は力になりません。(p74)
 マニュアルは組織だけでなく,個人にも必要でしょう。マニュアルに沿った仕事をすると受け身になるといわれますが,それは他人がつくったマニュアルをそのままなぞっているからです。自分のマニュアルをつくれば,自分の仕事を俯瞰できるので,問題点や課題を見つけられます。(p198)
● マニュアルを作ってもうまくいかないことがある。それにはそれなりの理由がある。それはもちろん承知のうえだ。そのうえで対策を施す。
 仕事は「生き物」です。日々,変化し,進化していきます。「今の仕事のやり方」が,来月もベストなやり方であり続けることはありません。 ところが,仕事のやり方を一度決めてしまうと,それに満足してしまい,しばらくは見直しもしないケースが多いようです。(中略) これが,マニュアルが使われなくなる最大の理由でもあります。せっかく決めた仕事のやり方が,すぐにビジネス環境や仕事の現場に合わなくなってしまうからです。(p92)
● 業績が悪化すると,たいてい社員の危機意識が足りないからという声があがる。社員の意識を変えなければ,と。
 しかし,意識を変えることから着手すると巧くいかない。まず,仕組みを作って,それに沿って動くことによって,業績の改善を図る。そうすれば,社員の意識も変わってくる。意識が変わるのは最後。
 そもそも,言ったって通じないのが人というものなのだ。そのあたりを具体的に指摘するわけだが,このあたりは現場で体験した人ならではの説得力がある。
 社員,あるいは部下の意識をどう変えればいいのか。(中略) たいていは教育から買えようとして,外部からコンサルタントを招き,社員に研修を受けさせて,意識改革をしようとします。 しかし,それでうまくいく試しはありません。(p46)
 そもそも,ビジネスモデルが世の中のニーズと合わなくなっているから業績が悪化しているのであり,社員の意識だけを変えようとしても根本的な解決にはなりません。 ビジネスモデルを見直して,それから仕組みをつくっていく。 その仕組みに納得して,実行するうちに,人の意識は自動的に変わっていくものなのです。(p47)
 人は一度の失敗からは学ばない,二度失敗してようやく学ぶものなのだ(p60)
 言葉でいくら言っても,人は納得しないと動かないものです。(p61)
 私は無印良品の集会などで,本書でお話ししてきたことを,社員に向けても繰り返し伝えています。 ところが,一ヵ月ぐらいしてから尋ねると,九八%ぐらいの人が覚えていません。それは社員のやる気がないという話ではなく,人間とはそもそもそういうものなのです。 人はすぐに忘れるものであり,改善してもすぐに元に戻ります。 放漫経営で会社が傾きかけ,プロの事業再生屋の力も借りて必死で会社を建て直したものの,経営が安定してくるとまた余計なことに手を出すような中小企業の経営者は大勢います。(p216)
● 残業縮減の問題。特に,日本ではホワイトカラーの生産性が低いと昔から言われてきた。長時間働くけれども,そのわりに成果はどうなのか,と。
 たしかに,とぼくも思う。要は無駄なことをしているのだと思う。いや,会社側が無駄なことをさせているのだ。パワーポイントを使ってプレゼン資料を作るのに,フォントや図柄にこだわりすぎるとか。
 加えて,無能な上司が,無能でも口を出せるところ(=どうでもいいところ)に口を出して,部下に修正の手間を強いる。そういうことをやめればいい。
 働く側の問題もある。今までやってきたやり方を所与の前提と受けとめてしまって,それをなぞることに集中してしまう。
 それらを治していくのもなかなか大変,というか気が遠くなるほど大変なことだ。
 まずは,努力そのものを是とするのではなく,成果に結びつく努力であるかどうかを考えること。
 無印良品にも,「わかりました,頑張ります」と答える社員は少なからずいます。そのような人は,努力すること自体を重視して,「どのポイントを,どのようなステップで努力すれば結果を出せるのか」を考えない傾向があるようです。 当たり前の話ですが,結果を出して初めて仕事は成り立つものです。努力しても結果を出せないとしたら・・・・・・,やはりそれは,努力の方法が間違っているのでしょう。(p156)
 多くの経営陣や部課長は,部下に「努力をしてもらうこと」を喜ぶものです。連日徹夜をしている姿を見て,「頑張っているな」と評価する場面は,いまだに多くの企業で見られます。前項で述べた「努力の方法」を無視した態度です。 これではいつまでたっても生産性は上がらず,効率化は図れません。(p160)
● その他,いくつか転載。
 戦略や計画をいくら綿密に練っても,実行しない限り,絵に描いた餅にすぎません。多少の戦略の間違いは実行力で取り戻せます。まずは,第一歩を踏み出す決断が必要です。(p33)
 優秀な人を採用するためにコストをかけるのではなく,優秀な人材を育てるべく社内に人材育成の仕組みをつくるほうが,時間はかかっても組織の骨格を丈夫にします。(p57)
 上司が部下を「さん付け」で呼ぶのは,実行するのはたやすいでしょう。では,自分自身が「さん」で呼ばれるのはどうでしょうか。 部課長という役職につきながら,新入社員からも「さん」で呼ばれることに納得がいかないのであれば,自ら壁をつくっているも同然です。そういう心が組織の風通しを悪くし,ものを言えぬ風土を形成してしまうのです。(p123)
 無印良品で運用しているほとんどの仕組みは,他社の仕組みにヒントを得ています。オリジナルのものは,ほとんどないといってもいいかもしれません。 知恵の源泉は,徹底して他社に求めているのです。どうして,他社を参考にすることを基本にしているいのか。それは,「同質の人間同士がいくら議論をしても,新しい知恵は出てこない」という事実に尽きます。(p127)

2014年7月8日火曜日

2014.07.08 茂木健一郎 『金持ち脳と貧乏脳』

書名 金持ち脳と貧乏脳
著者 茂木健一郎
発行所 総合法令出版
発行年月日 2013.12.03
価格(税別) 1,300円

● ちょっと何かすれば,貧乏人も金持ち脳になって,幸せな人生を送れますよ,という話ではない。
 たとえば,運動やトレーニングが脳に与える効果や,これからは語学力(特に英語)が新しい通貨になり得るといった話が出てくる。

● まずは人間関係がひじょうに大事だということ。
 脳科学の知見からは,「お金は人間関係を目に見えるようにしたものである」ということがいえます。つまり,人間関係が充実している人にはお金も集まってくるというのが,脳科学者としての私の考え方でもあります。(中略) つまり,人間関係にお金を惜しむような人は,決してお金持ちにはなれないということです(p122)
 お金持ちの人間関係は「稼ぐ人」がたくさん集まっているからお金持ちだということであり,なかなか稼げない人の周りには稼げない人が集まっているので稼げないという図式があるのです。それが人間関係の本質だといえます。(p125)
 人間は自分のことを理解してくれる人を好きになります。(中略) 人間関係に悩む多くの人の共通点は,いくら相手のことを知識として知っていても,その知識を活用した行動をとっていないことが挙げられます。(中略) お金持ちになれない人,あるいは成功できない人というのは,素直に相手の喜ぶことをしてあげない場合があります。それは,思いやりや気配りにおいて「相手がしてくれないのに,なぜ自分だけがしなければいけないのか」という不満の気持ちがあるからです。(p140)
 人間関係の原則は,「自分が先に与える」です。その仕組みに気づいた人が人生の勝ち組になっているというわけです。(p142)
 私は,人との出会いや仕事ということにおいて,常に「楽しい感」の気配をつくることを心がけています。 楽しそうにしていると,自然に人が集まってくるのものです。(p178)
 「自分が先に与える」は多くの人が説いてきたはずだ。GIVE&TAKEだ,まずGIVEなんだ,と。しかし,あらためて言われてみると,そうだよなぁ,と。ほとんどの人(=貧乏人)はこれができないんだよな,と。オレもぜんぜんできてないわ,と。

● IT長者はそれまでの富豪のイメージと違っているという話。
 注目したいのが,最年少でマザーズに上場して有名になったリブセンスの創業者,村上太一さんです。 彼は,27歳ですでに150億円の資産をもっているといいます。 この村上太一さんのお金に対する価値観というのは一風変わっているようで,これほどのお金持ちにもかかわらず,すごく質素で,8畳一間で冷蔵庫もないという環境で生活をされているそうです。 つまり,最近のお金持ちは,見栄やプライドなどといった余計なものには,決してお金を使わないということです。(中略) おそらく,マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツが台頭してきたあたりからそのような傾向が出てきたと思います。(p97)
 IT長者といわれている人たちの共通点というのは,いい家を買ったり高級車を乗り回すといったことではなく,いかに有益な情報とつながっていられるかを重視するということです。そうなると,自然と身の回りは質素なものとなってしまうのでしょう。(p99)
● 幸せはお金で買えるか。否。お金よりも幸せが大事。とすれば,金,金と目の前にニンジンをぶらさげて生きるようなマネをせずに,自分のしたいこと,熱中できることをせよ,ということになる。
 ある調査によれば,自分の収入が10%上がったとしても,それによって幸せだと感じる人は意外にも少ないとのことです。 さらにいえば,年収が400万円から900万円までの人の幸福感にも,あまり差はないそうです。ところが,逆に年収が1000万円以上になると幸福度がさがるそうです。それは,仕事における責任や重圧が増すことによって,ストレスが蓄積されてしまうからです。 そう考えれば,年収1000万円以内でも,上手に生活のやりくりをしながら好きなことをやって暮らすということが,脳にも一番幸せな生き方なのかもしれません。(p74)
 一人ひとりの仕事の選び方においては,お金も現実的には大事ですが,それよりも自分が熱狂できることは何かということを基準にしたほうが,結果としていいことになると私は信じています。(p193)
● 他に,いくつか転載。
 お金を使って商品とかサービスを手に入れることができるということも,脳はうれしいのですが,それ以上にお金を使うということ自体にその人の群れ(社会)の中の地位の確認ということが行われるということは,ある意味においては重要なことかもしれません。(p40)
 「自分は貧乏だ」というように思っている人というのは,やはり心もネガティブになってしまうので,そういう人にはお金や人が集まらないというスパイラルがあるのです。(p70)
 「病は気から」とよくいわれていますが,景気に関しても「景気は気から」というのは本当にそうだと思います。「脳に根拠のない自信を植えつける」ことによって経済は動きだしていくのです。(p110)

2014年7月7日月曜日

2014.07.07 隈 研吾・清野由美 『新・都市論TOKYO』

書名 新・都市論TOKYO
著者 隈 研吾
    清野由美
発行所 集英社新書
発行年月日 2008.01.22
価格(税別) 720円

● 東京の都市シーンを5つ巡りながら,著者二人が都市論,建築論を展開する。その5つとは,汐留,丸の内,六本木ヒルズ,代官山,町田。最後にカウンターとして北京が登場する。

● 自分が当事者として都市再開発や建築に関わることは絶対にないという安心感と,東京に住むこともまずないという部外者意識から,読みものとして楽しく読むことができた。
 やっぱり頭のいい人っているもんだなぁ,ってなものだ。都市は失敗の集積で,失敗を抱えていない都市なんてつまらないというくだりがある。ほほぅと思う。

● 以下にいくつか転載。
 ネットショッピングか,さもなくば老舗の本店まで足を伸ばそうかという時代に,中途半端な店が集積した大規模商業施設は本当に必要だろうか。(p33)
 大きな都市開発プロジェクトほど,クリエイティビティではなくリスク管理が求められる。その意味では世界が日本化している,といえるんですね。(p44)
 ナポレオン三世がどうしてパリの大改造をなしえたか--それはパリに住んでいなかったからという説があります。(中略)都市計画なんて個人の生活や都合を理解したらできない。(p50)
 一つの企業の内部だけでなら,この国の潜在能力はきわめて高い。『プロジェクトX』程度の話は,実はそこら中の企業の内部にころがっている。しかし,複数の主体が調整に調整を重ねて大きな計画を実行するとなると,この国は個の企業の優秀さとは比較にならない未熟さを示すのである。(p69)
 いいにしろ,悪いにしろ,三菱は己をよく知っていますよね。突出したデザインなんて街区には無駄だと,ちゃんと分かっている。(p73)
 建築や都市再開発が成立するには,上に建てるハードだけではなく,そもそもそこにある「場所」の力が不可欠なんです。(p147)
 ある時期,日本人は必死になって都市から「村」を排除してきたわけですが,それがきわまった時代には,逆に「村」が持つノスタルジーこそが余裕の証となります。(p159)
 六本木ヒルズを悪く言う「良心的都市計画家」の,その良心っていうものをいざ実現させてみると,結局「良心的テーマパーク」程度のものでしかなかったりする。(p198)
 汐留は,バブル崩壊後というネガティブな時代に計画が進んでしまった不幸もあります。ネガティブな時代の計画は,結局,資産にならないんですよね。逆に,どんなに反感が多くても,ポジティブな時代の計画は成功する。(p223)
 街並みに対する感受性は,教養の中でも一番上位にくるものです。日本人は歴史的にもその教養,感受性が高い人々でしたが,ここにきていかにそれを失ったか。東京を歩きまわると,日本人の教養の断絶をひしひしと感じます。(p231)

2014.07.06 三浦 展 『スカイツリー 東京下町散歩』

書名 スカイツリー 東京下町散歩
著者 三浦 展
発行所 朝日新書
発行年月日 2011.10.30
価格(税別) 1,000円

● 押上・両国・錦糸町・亀戸,向島・曳舟・京島,北千住,西新井・梅島・五反野,日暮里・尾久・三ノ輪,堀切・青戸・立石,小岩・小松川・市川の7つに分けて紹介。地図と写真がふんだんに盛りこまれている。ちょっととんがった下町ガイドブックの趣。

● 下町のゴチャゴチャした有り様を好む著者の嗜好は,郊外のロードサイドに立地する大型商業施設を嫌うのとパラレルなんでしょうね。
 大型商業施設は消費を均質化するのみならず,コミュニティを破壊して,住民を匿名化すると指弾するわけだけれども,それを免れているところが下町には多いというわけだろう。

● この中で,ぼくがともかく足を踏み入れたことがあるのは,錦糸町,北千住,三ノ輪,青戸,小岩だけだ。面的に歩いたことがあるのは,錦糸町と三ノ輪くらい。
 山谷と吉原を1日かけて歩いたことがある。だいぶ前だけど。山谷は外国人バックパッカーの根城になっていた。吉原には朝から営業している店があった。客引きもいた。

2014.07.06 酒井雄哉・茂木健一郎 『幸せはすべて脳の中にある』

書名 幸せはすべて脳の中にある
著者 酒井雄哉
    茂木健一郎
発行所 朝日新書
発行年月日 2010.02.28
価格(税別) 700円

● 意外だったのは,比叡山で千日回峰行を二度満行した酒井さんが,仏門を叩いたのは40歳に近かったということ。30代で失業者の経験も味わっていた。僧侶のサラブレッドではなかったのだ。

● 滋味あふれる教えのいくつかを,以下に転載。
 ひとつ,なんかうまいこと見つけたとしたら,全部,うまくなるんじゃないの。いろいろなことがみんなつながって,うまくいくと思うな。(p41)
 縁を生かすということは,実行することですよね。そのままにしていたら,すべては通り過ぎていってしまうんですよ。(p56)
 失業しているから偉くない,行をしたから偉いっていうものじゃない。仏さんはもっともっと大きなところから見ているからね。頭を空っぽにして目の前のことをやるだけなんだな。(p112)
 やっぱり無心っていうのは,一つのことに集中していったその先のところにあるんじゃないかと思うがな。歩くなら歩くことに集中していれば,必ず何か見つけることができるんじゃないかな。(p136)
 ぼくらの世界では,あることをしたら,元に戻るにはかけた時間の三倍かかるといわれているんだよ。(p177)
 茂木 ぜひおうかがいしたいと思っているのが,幸せとは何かということなんです。どうしたら人間は幸せになれるのでしょうか。 酒井 簡単ですよ。今いるところが一番の幸せだなと思っていればいいんだと思います。 茂木 どんなところでも? 酒井 ええ,どこでも。(p184)
 茂木 酒井先生がやられてきた修行の場というものは,言葉だけでは意味がないわけですね。やらないと意味がない。 酒井 そう。言いわけなしなの。やるか,やらないか。やらないのだったら,何も言わないで知らん顔してなさいと。(p197)
 三〇点しか取れないなら,三〇点でなんとかものになるようにやってやろうって,あきらめずに勉強を続けたとする。ただひたすらに三〇点の道をずっと歩いていく。 一〇年たったら,必ず,自分の道ができているよ。(p200)

2014年7月6日日曜日

2014.07.05 三浦 展 『下流同盟 格差社会とファスト風土』

書名 下流同盟 格差社会とファスト風土
編著者 三浦 展
発行所 朝日新書
発行年月日 2006.12.30
価格(税別) 720円

● “ファスト風土”の定義と問題点。「日本中の地方の郊外農村部のロードサイドに大型商業施設が急増し,その結果,本来固有の歴史と自然を持っていた地方の風土が,まるでファストフードのように均質なものになってしまった」(p13)ということ。
 それをなぜ問題にするのかといえば,次のような価値観のゆえである。
 私は,世界が均質な消費文化によってのっぺらぼうになることを望まない。消費は私たちに豊かな多様性を与えるためにあるべきであり,貧しい均質性をもたらすべきではないのである。(p39)
● そうなる以前の郊外農村の買い物環境はどうだったか。ぼくの記憶にあるのは,あまり愉快な光景ではない。
 ま,大昔の,郊外のつかない純然たる農村の光景なんだけどね。大字(おおあざ)に一つか二つあったよろず屋的な店で,文具や棒アイスを買う。まだ物資が乏しい時代で,売る方が威張っていたな。売ってやるっていう感じ。二度と戻りたくない。

● そうした農村にもスーパーができて,かつてのよろず屋は店じまいをしちゃってる。そうなると,車がないと買い物ができない。
 これはこれで困ったことなんだけど,ここまでの農村になると,巨大商業施設による均質化以前に,人口減少によるコミュニティ崩壊を心配しないといけない。

● 地方のファスト風土化にどう抵抗するか。本書ではフランスの都市計画を紹介している。その中身は規制。専門家の児戯だろう。いつか来た道という感じがした。
 「ロードサイドに大型商業施設が急増」するのも車が交通手段の代表になったからで,原因の大元は車社会になったことだ。ここをそのままにして,規制をかけても実効があるのかどうか。
 規制はするけど,例外がたくさんある法律か条例になりそうだ。要するに,複雑で条文を読んだだけでは何を言っているのかわからない規則ができそうだ。

● 地方の側にまだ都会コンプレックスがあるのかも。都会を代表するのが大型商業施設で,それが自分の町にもできることは,都会に一歩近づくことであって,特に若い人たちには歓迎される。そいういう状況がまだあるんだと思う。
 そんなのはもうダサイんだよっていう気分ができるのが,最も有効な処方箋になるんだと思うんですけどね。
 首都圏に残っている活気ある商店街が,そのための広告塔になるかなぁと思ったりもするんですけど。

● 理想論をいえば,こういうのは青少年のゲームと同じで,さっさと通過してもらうのがいい。やるなと言ったって効果はないんだから,どんどんやらせて早く飽きてもらう。
 大型商業施設が地方に醸す都会的な空気に対しても,ガンガン利用して,さっさと飽きてもらうのが一番。
 そう巧くいくかどうかわからないけど。っていうか,そこしか買い物に行くところがなければ,飽きても行くしかないわけだからな。

● 早い話が,わが家でも宇都宮の北部にあるショッピングモール(ベルモール)にはけっこう行くもんね。もう10年以上になるけど,飽きる気配はない。
 よくできている。アミューズメント施設の趣もあって,映画を見るのも,スポーツ用品を買うのも,ケータイを買うのも,けっこうこちらを利用している。

● もっと郊外にはさらに規模の大きなショッピングモールがある。そちらの方が,本書に登場するだだっ広いモールに近いたたずまいだ。
 日本人の身体感覚からすると,とりとめもないといった感じになるのじゃなかろうか。ショッピングモールであっても適度な狭さがないと快適さを感じられない。
 本書に悪の代表として登場するウォルマートのような大きさは,なかなか日本では定着しないのではないかと思う。それを真似ているらしいイオンの将来は,あまり明るくないだろうと予想しておく。

● 以下にいくつか転載。
 東京のような大都市は,江戸時代から今日に至るまでずっと何百年も巨大な消費都市であり続けた。だから,今さら何ができても,東京に住む人々は大して驚きはしないし,精神的に影響を受けることもない。 それに比べると,それまで何もなかった地方の郊外農村部がファスト風土化する場合は,そこに住む人々に非常に大きな影響を与えるはずだ。それは人間観や倫理観にまで影響するのではないだろうか。(p25)
 製造業が減少し大型商業施設が増加し,そして非正規雇用者の増加した地域が,学力の低下,体力の低下,犯罪の増加などが見られる地域でもある可能性があるのではないかと見ている。(p47)
 コミュニティが崩壊するということは,人々が匿名化してしまうということです。それでは良き市民意識は育ちません。(p67)
 安いからといって,要らない物まで買って,金がなくなってサラ金に駆け込み,それで首がまわらなくなった人間は無数にいる。労働で搾取されるのではなく,消費することで搾取される。それが現代だ。(p237)

2014年7月4日金曜日

2014.07.04 波頭 亮・茂木健一郎 『突き抜ける人材』

書名 突き抜ける人材
著者 波頭 亮
    茂木健一郎
発行所 PHPビジネス新書
発行年月日 2012.02.03
価格(税別) 800円

● 本書の出発点となる問題意識は次のようなもの。
 かつて「工業化の時代」では,中産階級に属する標準的な能力を持ったワーカーが多く求められました。彼らがみなで揃って一生懸命,まじめに働くことで,価値を生み出していたからです。 ところが,「標準的な人が標準的な労働」で生み出す製品が世界に溢れるようになると,そこで付加価値を生み出すことが難しくなった。その結果,ごく一部の人が生み出す発明や発想やリーダーシップが,時代を切り開いたり,大きな価値を生む時代に変わってきたのです。(波頭 p20)
 時代が変わってきたのに,日本と日本人はそれに対応できていない。対応するためにはどうすればいいのか。そういうことなのだろう。

● が,かすかに違和感も感じる。本当にそうだったのか。かつての工業化時代においては,標準的な能力の集合が価値を生みだしていたのか。
 その時代であっても,「突き抜けた人材」がブレイクスルーをなしとげて,富の源泉を開いたのではなかったか。欧米のものまねだけでここまできたわけではないのではないか。
 だから,この整理の仕方が本当に正しいのかどうか,ぼくは一抹以上の疑問を持つ。

● 日本の現状を打破する方向も,本書で語られているのとはまったく違ったところから顕わになってくるように思う。根拠はまったくないんだけど。
 こういうのって,どうも,識者が語るようになった例しはないと思ってるんで。

● たしかに,価値の創造というか価値の転換という大業はグーグルやアップルが攫っていった感があって,日本のNECやSONYははるか後塵を拝してしまった。今や,存亡すら危ぶまれる有様だ。ゲーム機メーカーやカーナビの生産業者も,iPhoneやAndroidのおかげで商売あがったりだ。
 けれど,通信技術やITだけが価値ではない。NECやSONYがイコール日本ではない。インターネットやITでヘゲモニーを握らなかったことが,逆に幸いするかもしれない。部品供給に徹したことが将来の活路になるかもしれない。
 こういうのって,本当に塞翁が馬で,人知を寄せ付けないところがあるんじゃないかと思う。

● 以下にいくつか転載。
 日本が一九八〇年代に一億総中流化を達成した以降は,エリート層やリーダー層の意識までが中流化してしまい,挙げ句の果てには能力まで中流化してきているように思います。(波頭 p24)
 これまた,1980年代以前のエリート層やリーダー層が以後に比べて優れていたのか。そうでもないんじゃないか,と。
 日本の優秀な人たちは時代を切り開くリーダーではなく評論家なのです。具体的な解決策を見つけ,提言するような指向性に欠けていて,文句をつけることが仕事になってしまっている。(茂木 p27)
 いま日本の大学生は四年間で一〇〇冊しか専門書を読みません。一方,アメリカの大学生は平均で四〇〇冊。四倍違いますが,これはかなり実感に近い数字といえます。それどころか四年で一〇〇冊という数字は,日本の学生ではかなり優等生の部類に入るように思います。(波頭 p33)
 生きるか死ぬかの熾烈な競争がなければ,真のインテリジェンスも必要ありません。まさに日本のビジネス環境では,コモディティ化したインテリジェンスしか必要とされていなかったのです。(茂木 p39)
 新聞やテレビも,「変わらなくていい。変わらないほうが,この社会では得をする」というメッセージを一貫して出し続けています。このような日本の現状維持装置は,基本的に匿名性によって支えられている気がします。(茂木 p41)
 ザッカーバーグは日本にいたら,かなり初期の段階で絶対に潰されたでしょう。彼は社会的スキルは必ずしも高くなかった。しかしフェイスブックがあることで,アメリカがどれだけ助かっているかを考えると,彼のような人を排撃するのは,国家に対する罪です。(茂木 p48)
 手先の器用さや職人芸というのは,日本人固有のものではなく,どこにでもあるものです。(波頭 p51)
 日本大学芸術学部もそうですが,その組織が人材を輩出するのは,往々にして世間からの評価が定まっていないときです。評価が定まり,秀才たちがそこを目指すようになると,その組織の活力が低下するパターンが多い。 おそらく標準化されたテストでよい点を取る秀才と,「突き抜ける人材」とは相容れないのです。(茂木 p186)

2014.07.03 浅倉ユキ 『あな吉さんのハッピーコラージュ手帳術』

書名 あな吉さんのハッピーコラージュ手帳術
著者 浅倉ユキ
発行所 日本能率協会マネジメントセンター
発行年月日 2013.10.30
価格(税別) 1,300円

● 「お気に入りの雑誌の好きな写真をハサミでチョキチョキ切って,ペタペタ台紙に貼っていくだけ」(p2)。そうやって好きなもののコラージュを作り,そこに手帳術をセットしてやると,「がんばらなくても成功を手に入れる方法」(p38)になる。
 「モヤモヤをキラキラに変える!」が副題。

● 同じようなものはこれまでにも何人もの人が提唱している。中山庸子さんの「夢ノート」もそうだろうし,望月俊孝さんの「宝地図」もそうだろう。
 こうしたコラージュを作るのは,それ自体が楽しい作業だろうね。楽しい作業を楽しく楽しむ。ストレス解消に恰好だろう。

● ただし,そこから先,つまり,自分の願望が明確になって,やるべきことが見えてきて,したがって夢が叶いやすくなるというのは,どうなんだ?
 「強く念じよ,すべては叶う」的な成功哲学の日本バージョンのひとつだと思う。しかし,次から次へといろんなやり方が提唱されるということは,次の二点を意味するだろう。

● ひとつは,効果がないということ。効果があるのなら,願望を達成してハッピーに満ちている人ばかりになっているはずだから。そうなっていれば,こうしたものへの需要は細るはずだ。
 もうひとつは,懲りないやつが多いということ。この種のものを何度でも試みたがる。この場合の「懲りない」を言い換えると,楽して成功したい,できるのではないか,という安直な妄想を払いきれないということ。
 が,かく申すぼくもこうしてこのようなものを読んでいるわけで,人のことは言えない。

● ただ,こういうことは言える。こうしたものをやって束の間の安楽を得ることは,誰に迷惑をかけるわけでもないし,そんなにお金もかからないし,悪いことは何もない。

2014年7月1日火曜日

2014.07.01 土橋 正 『モノが少ないと快適に働ける』

書名 モノが少ないと快適に働ける
著者 土橋 正
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2014.03.06
価格(税別) 1,300円

● 副題は「書類の山から解放されるミニマリズム的整理術」。「快適最小限」を実現しようというわけ。
 「本当に必要なツールだけで仕事をしてみる。すると,それはとても心地よいのです」(p5)。多くの人が同じことを書いたり言ったりしてきていると思う。その意味では,別段,目新しい主張ではない。

● 目新しい主張ではないのに,あらためてこうした本が出版されるというのは,わかっちゃいるけどなかなかできないという証明のようなものだ。
 しかし,大事なことだとぼくも思う。モノは少なく持って,その少ないモノを使い倒すこと。本書では「本当に必要なツール」として著者が使用している道具が具体的に紹介されている。参考になるだろう。

● が,「本当に必要なツール」は何かについては,ラフに考えてもいいと思っている。少数精鋭というとき,まず精鋭を揃えるのではなく,少数にすれば自ずと精鋭になるのだという考え方。
 人だけじゃない。基本的な性能を満たしていれば,モノもまた同じだと思っている。

● 著者が仕事部屋として借りているマンションの室内の写真が載っている。机と椅子,打ち合わせ用のテーブル,一人用のソファ。ソファはリラックス用。
 机のうえに,iMacと最小限度の仕事道具(文具),アナログの置き時計。なるほど,スッキリしている。能率よく行けそうだ。
 ホテルが快適なのも余計なモノが置かれていないからだ。しかし,ホテルの場合はスタッフが掃除もベッドメイキングもする。それに必要な道具はバックヤードにある。
 著者の仕事部屋の場合,掃除はどうしているのだろう。

● 原稿は手書きで下書きをし,それをパソコンで清書するらしい。以前なら,そういうことはムダだと切り捨てたに違いない。
 けれども,今は自分もノートとペンを使うようになった。そうなると,それはそれでありだなと思うようになる。