2014年5月31日土曜日

2014.05.31 小沢昭一 『珍奇絶倫 小沢大写真館』

書名 珍奇絶倫 小沢大写真館
著者 小沢昭一
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2006.10.10(単行本:1974.04)
価格(税別) 950円

● もう20年も前になるだろうか,放送大学に「芸能と社会」という講義があった。講師は小沢さん。テレビをよく知っている人が講師を務めるんだから,面白くないわけがない。
 オープニングで,学生に扮した小沢さんが先生の目を盗んで,早弁しているところが放送される。これが何とも味があって。
 現場の人に登場してもらって,小沢さんがインタビュー。終わりに,小沢さんが総括らしきことをする(昔のことだから,よく憶えてはいないんだけど)。

● 放送大学ならではの講義だと思っていた。講義じたいがひとつの芸だったし。今の放送大学にはそんな余裕はないようだ。
 講義は一切無視して,印刷教材だけ読んで単位を取っていくのが賢いやり方でしょ,今なら。

● この本を読んで,そんな昔のことを思いだした。

2014年5月30日金曜日

2014.05.29 小沢昭一 『雑談にっぽん色里誌 仕掛人編』

書名 雑談にっぽん色里誌 仕掛人編
著者 小沢昭一
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2004.03.10(単行本:1978.03)
価格(税別) 840円

● 小沢さんが,遊里で口を糊している人に寄り添い,「放浪芸」の発掘に力を注いだのは,自分もまた漂白民だとの思いがあったからだろう。
 売色は漂白民のなりわいであった。漂白民は土地を持たない人々である。わがニッポンは農耕社会であったから,支配者は,土地をはなれず農耕に励む定住者中心に社会のしくみを作りあげ,政治から道徳まで定住者の側の規範が確立した。だから,必然的にその規範から逸脱せざるをえない漂白民は,定着民より蔑視をうけることになる。その蔑視は今もって続き,はやいはなし,住所不定といえば,「社会的信用」はゼロなのである。(p11)
● 本書も4つの対談(座談)からなる。ひとつめは「銘酒屋」と呼ばれた私娼宿を経営していた人が登場。
 「籠の鳥」というのは実は公娼(吉原)をいうんで,私娼は籠の鳥じゃなかった。だから,面と向かって折衝するために女も新しい服装をし,うけこたえもうまかったんです。(p60)
 この分野でも官民が競えば,民の方がより良いサービスを客にも働き手にも提供するらしい。
 話の中に一見直吉という人が登場する。浅草でこの業界を仕切って,秩序を保った人。こういう人の名をとどめたのも,本書の功績のひとつだろう。史料としての価値だ。

● 戦争中,中支で従軍慰安所を営んでいた人。
 それからだんだん,中国人経営者とか朝鮮人経営者がふえてきまして,経営者がね。(p117)
 あの時分でね,日本人,朝鮮人,中国人のなかでね,まあ朝鮮のコがいちばん強かったと思いますね。体力的にも強かったし,それから金銭的にもね,非常に・・・・・・よし,どうしてもこのさい,儲けてやろうという・・・・・・。(p160)
 というような話を聞くと,朝鮮人女性を慰安婦として強制連行したという話は,にわかには信じがたい。

● 「世界の人類がね,消滅すれば別ですけれども,生きてる間はね,どうしても性のハケ口は,なんらかの形でもっているわけなんですよ」(p165)っていうのは,そのとおりだと思うんだけれども,吉原や玉ノ井が殷賑を極めていた頃に比べると,このへんの事情もだいぶ変わってきているように思う。
 カタギの女性たちの性規律がだいぶ緩くなっているのじゃないか。対して,男衆は大人しくなっている。ゆえに,こうした「ショーバイニン」に対する需要はかなり減っているのではないかと想像する。

● 昔だったら売色で喰えた女性たちの,食べていくためのフィールドが狭まりつつあるような気がしていてね。むしろこちらの方が問題ではないかと思ってるんだけど。
 もっとも,そうした女性たちもまた減りつつあるのかもしれなくて,そうであるならぼくなんかが心配する必要もないわけだ。

● ほかにいくつか転載。
 ショーバイ女が〈慰め職〉につくのは,「慰め」から見はなされた定めを背負っているからこそ,「慰め」が売れるのであろう。どうすれば慰めることができるかを,身にしみて知っているのだ。幸せうすき人が,幸せを売る側にまわる(p99)
 手練のショーバイニンならば,「身の上ばなし」の何通りかを用意し,客の好みを見抜いてから,それに応じて「身の上ばなし」を使い分けたりする。女たちが「身の上」を開陳しないのは,真実を語ったところで一文の得にもならないからであるが,さらにいえば,ショーバイニンの「身の上」が,所詮カタギとは,元来無縁であることを知っているからでもあろう。(p172)

2014年5月28日水曜日

2014.05.28 小沢昭一 『雑談にっぽん色里誌 芸人編』

書名 雑談にっぽん色里誌 芸人編
著者 小沢昭一
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2004.03.10(単行本:1978.03)
価格(税別) 840円

● 本書における色里は主として吉原。それも,戦前の。それについて,三遊亭円遊,高砂家ちび助,古今亭志ん好,桂枝太郎の4人の噺家が,小沢さんを相手に語る。
 吉原話だけではなく,芸談も登場するし,世相巷談的な話もある。今となっては,歴史の証言ということだろう。たぶん,その証言を残すことが,出版の動機のひとつだったろう。

● 単行本は昭和53年の出版だけれども,「やっぱり,なんですよ,むかしは私ら若い時分はね,どうもおもしろかったですからね。いまの若い方にはほんとにお気の毒ですけどもね」(p70)とか,「いまの噺家は,とにかくカレーライスで育ってきた。だから,ほんとの粋ということがわからない」(p179)と言われている。
 そのカレーライスで育った人が,今の若いもんはハンバーガーで育っているから,と言っているに違いない。

2014年5月27日火曜日

2014.05.26 ノーラン・ブッシュネル 『ぼくがジョブズに教えたこと』

書名 ぼくがジョブズに教えたこと
著者 ノーラン・ブッシュネル
    ジーン・ストーン
訳者 井口耕二
発行所 飛鳥新社
発行年月日 2014.05.06
価格(税別) 1,574円

● スティーブ・ジョブズがアップルを起業する前に働いていたアタリの経営者の,いうなら経営談義。いかにして「クリエイティブな人々」を採用し,存分に能力を発揮してもらえるか。
 痛快な読みものになっている。頭のいい人が書いたものは面白い。

● 「勤務中のウィキペディアを奨励せよ」という。なぜなら「クリエイティブな人というのは,会社が解決してほしいと思うクリエイティブな問題ひとつに集中しつづけられない人種だからだ」。
 こういうのは,自身も「クリエイティブな人」でないと言えないことかもなぁ。

● で,ここで思いだすのが,酒巻久『椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!』だ。たしか,抜群の実績をあげている女性社員が,じつは会社のパソコンを使って,勤務時間の半分を私的なことに充てていた,というエピソードが紹介されていたと思う。
 この女性社員はどうなったんだろう。もし,辞めてしまったのなら,キャノン電子の損失だろうと普通は思う。
 『椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!』で説かれていることは一理も二理もあるとは思うんですけどね。会社のパソコンで遊んでいるダメ社員(自称クリエイティブ)はかなり多いだろうし。

● ともあれ。いくつか転載。いくつかにしては,ちょっと多いか。
 創造的な社員が欲しいなら,こちらも創造性を見せなければならない。(p28)
 会社のやり方なら教育で身につけさせられるが,情熱をもたせることはできない。長い目で見ると,会社に一番貢献してくれるのは情熱をもつ人々なのだ。(p43)
 情熱のない就職希望者は,人生について語らせればすぐみつけられる。そういう人はたいがい文句言いだからだ。(p44)
 クリエイティブな人々をみつけたければ,「どういう本が好きですか」と尋ねるのもいい。読書の質問に体を乗りだしてこないのにクリエイティブな人というのは,会ったことがない。私は,いつもこの質問で採用候補者から雑草を取りのぞく。(p79)
 失敗を恐れる組織は,新しい着想を否定する組織となる。(p144)
 クリエイティブな人には仕事を任せることができず,常に監督しなければならないと考える会社が多い。この考え方を,私は「幼稚園型管理」と呼んでいる。(中略)この方針が役に立たないのは,監督者のほうが子どもであることが多いからだ。(p162)
 『アーティストのためのハンドブック』という本におもしろい研究結果が紹介されている。陶芸の授業で,学生の半分には「つぼをひとつ作ること。その出来栄えで点数をつける」と伝え,残りの半分には「作れたつぼの数で点数をつける」と伝える。すると,たくさん作れといわれたほうがいいつぼを作るというのだ。(中略)つぼひとつといわれたほうは,その出来栄えで成績が左右されると考えるため冒険ができず,無難でおもしろくないものを作ってしまう。(p177)
 管理しようという人間に魅力を感じる人はまずいないが,真剣に耳を傾けて学ぼうとする人間(上司)には,皆,好ましい感情をいだくはずだ。(p182)
 どんなあほうでも「ノー」の一言ならいえる。なにも考える必要がないからだ。(p188)
 残念ながら,創造的ではないが社内政治に長けている人がいるのだ。彼らは,いい仕事をするから出世するのではなく,出世の仕方を知っているから出世する。(p193)
 なんでもてきぱきと片付ける人が習慣としていることにクリエイティブなものはまずないし,判で押したような暮らしをする人が独創的な着想を得ることもあまりない。彼らは,予定したとおりの人生を歩きたいと思っているからだ。(p207)
 社外から幹部を登用すると,だいたい,元いた会社と同じ社内手続きを導入しようとする。それは不要で役に立たないと教えなければならないのだが,これが簡単ではない。社内手続きを減らそうとする人より増やそうとする人のほうがはるかに多いからだ。(p215)

2014年5月26日月曜日

2014.05.25 千田琢哉 『人生で大切なことは,すべて「書店」で買える』

書名 人生で大切なことは,すべて「書店」で買える
著者 千田琢哉
発行所 日本実業出版社
発行年月日 2011.08.01
価格(税別) 1,200円

● 『1日に10冊の本を読み 3日で1冊の本を書く ボクのインプット&アウトプット法』を読んで,この人の書くものはもう読まなくていいと思ったんだけど,もう1冊読んでしまった。

● 高校までまったく本を読むことのなかった著者が,大学に入ると4年間で1000万円分1万冊以上の本を買った。そのきっかけは,中谷彰宏『昨日までの自分に別れを告げる』との出逢いだったという。
 それかあらぬか,中身も体裁も中谷本と瓜二つ。

● いくつか転載。
 「納得できません」と言う人は謙虚ではありません。納得できない理由を他人に求めてはいけません。勉強しなければ納得できないことに気づくことです。(p42)
 読んだほうがいいかどうか迷う場合は,迷わず読むのをやめましょう。迷っている時点で好きではないのです。(中略)気乗りしない本はいっさい読む必要がないどころか,読んではいけないのです。(p66)
 会社という組織では,当事者意識の強いもの順にポジションが高く給料も高いのです。(p105)
 人生はゴルフ場と同じで,教わる人よりも教えたい人のほうが圧倒的に多いのです。(中略)社会では先生より遙かに成功している生徒がたくさんいます。正確に言えば,成功している人は生徒になることができる人だということです。(p112)
 僕は今まで1万人以上のビジネスパーソンたちと仕事をしてきましたが,本の買い過ぎで貧乏になったという人はただの一人もいませんでした。その代わり,本を読んだことがないという人には貧乏がたくさんいました。(p131)
 高級車は生涯要りません。住む場所なんて最低限でいいです。食べるものもすべて自炊で幸せです。身につけるものは最低10年大切に着用します。 これは学生時代から今日までまったく変わらない僕の価値観です。究極はすべての可処分所得を本代に費やすのが僕の幸せです。(p138)
 感動は期待の101%で,満足は期待の100%です。感動と満足はわずか1%の違いしかありませんが,その1%の差は圧倒的な差です。(p142)
 「最近の若者は活字が読めない」というのは退化しているのではなく,つまらないものにいちいち反応しなくなったという意味において進化しているのです。(p169)
 「外見よりも中身で勝負」という時代は終わり,「外見も中身の一部」という時代が定着しつつあります。(p174)

2014年5月24日土曜日

2014.05.24 美崎栄一郎 『iPhone買っちゃった!? けど,つかいこなせてないあなたへ』

書名 iPhone買っちゃった!? けど,つかいこなせてないあなたへ
著者 美崎栄一郎
発行所 ビジパブ
発行年月日 2013.10.25
価格(税別) 1,260円

● iPhoneでこんなこともできるんですよというのを小説仕立てで紹介したもの。普通のマニュアル的な解説書よりも面白いし,このアプリはこう役立つのかとストンとわかる。
 iPhoneをもっと使えるようになりたいと思ってこの本を読む人ならば,具体的な操作法についてはしかるべき解説書なりサイトなりを参照するだろうから,本書のようなナビゲートの仕方はありだ。

● 著者の美崎さんはiPhoneがほんとに好きなんですねぇ。常軌を逸した思い入れを情熱と呼ぶのだとすると,iPhoneに情熱を抱いている。それくらいじゃないと人を説得することはできないんでしょうね。冷静とか客観とかでは人を説得することはできない。

● でも,こうも思う。本書を手に取るような人は,そもそも説得されたがっている人たちに違いない。いかな情熱をもってしても,説得できるのは説得されたがっている人に限られる。当然といえば,当然のことなんだけど。


(追記 2014.05.27)

 最初に紹介されているアプリが「Sleep Cycle alarm clock」。「睡眠サイクルをiPhpneが計測し,眠りの浅くなったタイミングでアラームを鳴らしてくれる」アプリ。このアプリは知ってはいたけれども,面白そうだと思ったのは本書を読んで。
 ぼくはAndroidユーザーなので,「Sleep as Android」をインストールしてみた。今夜から使ってみます。

2014年5月23日金曜日

2014.05.23 村松友視 『銀座の喫茶店ものがたり』

書名 銀座の喫茶店ものがたり
著者 村松友視
発行所 白水社
発行年月日 2011.07.10
価格(税別) 1,800円

● 「私は,ゆったりと“銀ブラ”をこなすレベルでもなく,銀座に行きつけの喫茶店をもつコーヒー通でもない。銀座という呼称やグレードに対して,いささか腰の引けるタイプでもある」(p9)と書いているけれども,これはもちろんある種の矜持をこめたものだろう。
 行きつけの喫茶店はなくても,行きつけの鮨屋や料理屋や酒場はあるに違いない。本書の文章のそこここから,著者と銀座の長い関わりがうかがわれる。

● 46の喫茶店を訪れて,訪問記を「銀座百点」に連載。それをまとめたもの。各店の特徴や歴史,店構えや店内に漂う空気を捉えて,46通りのほめ方をしている。
 よくもこれだけ繰りだせるものだ。脱帽のほかはないプロの技だ。

2014年5月22日木曜日

2014.05.21 茂木健一郎 『脳科学者・茂木健一郎の人生相談』

書名 脳科学者・茂木健一郎の人生相談
著者 茂木健一郎
発行所 第三文明社
発行年月日 2014.03.16
価格(税別) 1,200円

● 質問者は小学生から高校生が多い。社会人でも比較的若い人たち。人生に多くの可塑性を残している人たちだ。
 それに対して,茂木さんがていねいに答えていく。

● 回答の中身は,茂木さんのこれまでの著書の中に登場していることがらだ。が,以下にいくつかを転載しておく。
 「もっとヘンになっていい」。むしろ「普通だったらつまらないぞ」。そんなさわやかな競争こそが,これからの日本を元気にしてくれるはずなのです。(p75)
 容姿や,家庭環境,学歴,社会的な地位。人間は,さまざまなことで劣等感を持ちます。劣等感のない人など,ありません。(中略) だからこそ,劣等感をユーモアのセンスで乗り越えた人は,ステキに見えるのです。他人の欠点を笑うのは,最低です。そうせ笑うなら,自分の至らぬところ,劣等感をこそ笑いたい。(p102)
 その人が,どれくらい「愛」を自身の中に育んでいるか。これは,芸術家として大成するための,十分条件ではないにせよ,必要条件ではあります。(中略) 「愛」を育む条件とは,自分から離れることです。「愛」というと,どうしても「自己愛」から入ってしまう。とりわけ,芸術家と自称する人,芸術家を志す人には,自己愛の傾向が強い。(p122)
 人間の脳は,楽観的でないと,うまく機能してくれません。「根拠のない自信」を持つことが大切です。(p138)
 「どこかに正しい答えがあるはずだ」と頑なに信じるほうが,脳の使い方としては問題があるのです。「自分が絶対に正しいと信じている人は,確実に間違っている」という格言もあります。(p151)
 数学者のバートランド・ラッセルは,自分が教えた学生の中で,ウィトゲンシュタインがいちばん優秀だった,と証言しています。その理由が,簡単には「わかった」というような顔をしないで,いつまでも「不思議だなあ」という表情をしていたからなのだそうです。 これ,世間の評価とは逆ですよね。世間では,往々にして,「わかった」「じゃあ,先に行こう」と,要領のよい学生を,「優秀」だといいます。でも,本当はそうではないのです。(p177)

2014年5月20日火曜日

2014.05.20 東京老舗研究会編 『銀座 創業100年を超える老舗の贈り物』

書名 銀座 創業100年を超える老舗の贈り物
編者 東京老舗研究会編
発行所 ダイヤモンド・ビッグ社
発行年月日 2014.02.20
価格(税別) 1,500円

● 甘味から弁当,菓子,果物などの食料品。文具,模型,絵本。鞄,洋服,風呂敷,アクセサリー。香炉,草履,雪駄。
 なるほど,これが銀座の老舗か。

● しかし,ちょっと手が出ない。何とかなりそうなのは,空也のモナカ,塩瀬総本家の饅頭,清月堂の豆大福,若松のあんみつ,木村家のあんぱん,といったあたり。要するに,バラ買いのできる和菓子系統。
 空也のモナカは,名声のわりに安い。何回か買って,自分でも食べ,人にも配った。栃木だと足利に「古印最中」というのがあるんだけど,正直なところ,どちらが旨いかぼくには判定がつかない。

● 老舗とのお付き合いにはお金がかかる。まして銀座とくれば致し方がない。
 であるからして,このような本で写真を見て,こういうものがあるのかと思っておくだけにしといた方が,精神衛生によろしかろうと存ずる。庶民を自認している人であれば,だけど。

2014.05.20 NHK「らいじんぐ産~追跡!にっぽん産業史」制作班編 『時代を変える発想の作り方』

書名 時代を変える発想の作り方
編者 NHK「らいじんぐ産~追跡!にっぽん産業史」制作班
発行所 アスコム
発行年月日 2012.03.12
価格(税別) 1,200円

● 取りあげられているのは,回転寿司,ウォッシュレット,クオーツ時計,自動販売機。
 たとえば回転寿司について,玉村豊男さんが「もともと寿司自体が,今まで食べられなかったものや流行っているものを取り入れたりとか,そいういうものだったんですよね。それが,変に硬直してきたのをぶっ壊して,寿司の持っているアバンギャルド性みたいなものを,もう1回取り戻したということかもしれませんね。後はやはり,子供がこれだけ喜ぶというのがね」(p59)と語っている。

● なるほどと思う。たいていのご家庭では,寿司屋=回転寿司になってますよね。わが家も同じ。たまには回らない寿司屋に行きたいよねとよく言っているけれども,豚児を回らない寿司屋に連れていくというのは考えられない。
 たしかに,回転寿司は寿司と家庭を近づけた。

● ただ,回転寿司が普及してすぐに目につくようになったのは,回っている寿司皿を取る人はあまりいなくて,たいてい注文して握ってもらっていることだった
 開店寿司に来て注文するなよと思ったこともあったんだけど,今ではぼくも普通にそうしている。店側もそれを慫慂するしね。第一,回っている寿司皿はそんなにないし
 もっというと,回っているのは捨て寿司。ずっと回っているから,ご飯なんか固くなっているしさ。

● だから,これからは回っている寿司の値段で,目の前で握って出すという形態になるんだと思うんですよ。レーンは撤去しちゃう(タッチパネルで注文して,注文品がレーンで流れてくるというのもあるけどね)
 回転寿司の最大の功績は,寿司を大衆化したってことですね。寿司をファストフードにした。寿司ってもともとファストフードだったはずだし。そこが,玉村さんが仰るアバンギャルド性の最たるものなのだと思う。

● ナビゲーターを務めている佐藤可士和さんの発言からひとつ転載。
 「快適」「楽しい」「新しい」という人間の欲求の「根源」に訴えるものがあったからこそ,多くの人から共感されたのだと思います。(中略) 特に,「新しい」が抜け落ちると,人間は反応しないと僕は考えています。なぜならば,人間は基本的に前に進むことを求めているからです。(中略)マンネリ化して止まってしまうと,ストレスを感じてしまうものなのです。(p11)

2014年5月19日月曜日

2014.05.19 倉下忠憲 『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』

書名 ソーシャル時代のハイブリッド読書術
著者 倉下忠憲
発行所 C&R研究所
発行年月日 2013.04.01
価格(税別) 1,400円

● 本書の新味は最終章にある。ソーシャルリーディングについての部分だ。SNSやEvernoteの共有ノートブック機能を使って,読書会をネットで実現するというのがソーシャルリーディング(という理解でいいのか)。
 しかし,これが上手くいくためには,いくつかの条件が必要だろう。参加者の水準がある程度揃っていることは最低限だ。発言の仕方が無礼でないことも大事だろう。
 で,そういったものをネットで求めるのはどうにも非現実的ではないかと思う。ソーシャルリーディングなどたちの悪い冗談だろうと,ぼくは思っている。

● ぼくはリアルの読書会とか勉強会にもネガティブだ。たとえ,自分の見方,読み方に偏って他の視点が入ってこなくなろうと,そこは潔く諦めて,その偏りに甘んじるのがよい。
 ぼくらがする読書や勉強は,どう言いつくろってみても楽業のひとつだ。楽して得たもので苦労している人を指導しようとか,世間や他人にモノ申そうなどと馬鹿げたことを考えなければ,好きなだけ偏っていればいい。
 読書の醍醐味って,むしろそういうことではあるまいか。

● ちなみに申しあげれば,社会人大学とか大学院で勉強している人の中に,ここで得たもので社会に何か貢献したいなどとほざく馬鹿がいると,むかっ腹が立つ。
 その程度で世間に貢献できるなどとなぜ思えるのか。世間をなめてるのか,おまえ,と思ってしまう。

2014.05.19 長谷川慶太郎 『長谷川慶太郎 アジアの行方』

書名 長谷川慶太郎 アジアの行方
著者 長谷川慶太郎
発行所 実業之日本社
発行年月日 2013.04.18
価格(税別) 1,500円

● 主には,中国が大変なことになっていると伝える内容。そのことについては,矢継ぎ早に著書を出して警告しているので,これもそうかと思って購入。
 が,発行は昨年だった。買ってから気がついた。

● 1年前と今とでは何が違うか。
 本書には人民解放軍が上で共産党は下という表現が出てくるけれども,シャドーバンキングの整理がらみで,習近平が人民解放軍を抑えることにとりあえず成功。瀋陽軍区も習近平にしたがう態度を示すようになった。
 韓国については,大統領に就いたばかりの朴槿恵氏に期待を表明しているが,その期待は虚しかったということ。1年前はサムスンがまだ勢いがあったけれども,今でははっきり陰りが見えるようになって,韓国経済の先行きについてはいっそう悲観的。

● 中国の現状がどうなのか。次の一文が最も多くを語っていると思う。
 日本の中国大使館にいた一等書記官でも多額の賄賂を貰っていることが明らかになりました。日本の公安当局が掴んでいるだけで8000万円もあったのです。実態はもっとあるでしょう。つまり,賄賂を貰わないと,一等書記官自身が大使館の中で,自分の地位を維持できないのです。金を集めて,それを上司に撒かないといけないわけです。このことは中国共産党が,どうしようもないぐらいに腐ってしまっている証拠です。(p98)
 その他,いくつかを転載。
 人民解放軍の幹部が一番,懸念しているのは,兵士の質です。最近,入隊する新兵が,一人っ子政策で,集団生活になかなか馴染めないのです。(p20)
 年金制度を見直して,充実させて,広く一般国民が安心して暮していけるようにするということは,今の共産主義ではできないことなのです。(中略) なぜか。国民を豊かにしてしまうと,共産党員になる意味がなくなってしまい,共産党の質が低下する恐れがあると考えています。(中略)共産党の権威を下げるようなことは絶対にしません。(p46)
 国際的に,みんな反日デモを見ています。中国人は日本人の旅行者に何をしたか,日本のお店で何をしたか,世界が見ていました。中国という国家のレベルが低いという認識,これは世界共通になってしまったのです。(p48)
● 対韓国では,従軍慰安婦についてひとつ転載。
 従軍慰安婦の問題は,一言でいえば韓国の甘えなのです。本当のところを徹底的に議論すればいい。(中略) 日本軍が慰安婦を強制的に連行したことはありません。そんなことをしなくても,いくらでも売り込んできたのです。いい方は,やや乱暴かもしれませんが,供給がドンドンあって,どうして強制連行をする必要がありますか。(p127)
● 国内でも直間税率の見直しを始め,やらなければならないことはいくらでもある。しかし消費税を上げるにしても,行政機構の簡素化とセットでなければならない。
 著者は次のような例をあげている。
 東大など国立大学の事務局に何人が働いているか。東大には約2000人います。これもコンピュータ化すればいいのです。それができれば,事務員は100人で十分に対応が可能でしょう。(中略)日本育英会の事務局は,全部コンピュータ化したことによって職員数は10分の1以下になりました。それで,支障をきたしたという話は聞いておりません。(p162)
● ほかにいくつか転載。
 日本では大学卒業生を幹部候補生として自衛隊に入隊をさせますが,ほとんどが旧帝国大学卒業生です。これは2012年の実績ですが,東大法学部の卒業生7人が入隊しました。一方,財務省の東大法学部卒業生の採用人数が4人にとどまりました。若者の意識が変わったのです。(p22)
 ソニーは潰れます。こうした企業が家電以外の新しい事業に進出しようにも,時間とカネがかかり,もう間に合いません。どうしようもない状況に来ているのです。(p139)
 冷静に考えてみてください。広島の原爆投下で被爆した人の最年長者は98歳となっています。被爆したら命が短くなるといわれていますが,本当でしょうか。(p167)

2014年5月16日金曜日

2014.05.16 伊藤まさこ 『軽井沢週末だより』

書名 軽井沢週末だより
著者 伊藤まさこ
写真 長野陽一
編集 奥田香里
発行所 集英社
発行年月日 2012.05.30
価格(税別) 1,500円

● 世界にあるものはすべて日本にもあり,日本にあるものはすべて栃木にもある。したがって,栃木を隅々まで味わえば,世界を味わったことになる。
 という,かなり無理めのテーゼを標榜したいと考えていたんだけれども,やはり無理が過ぎたかと思いましたね。

● この本ではレストランや食べ物屋をはじめ,軽井沢のそれやこれが紹介されているんだけれども,例えば冒頭に出てくる「キャボットコーヴ」はここで朝ごはんを食べてみたいと思わせるに充分。
 同じようなお店が栃木にあったけなと考えてみる。ぼくが知らないだけであるのかもしれない。けど,たぶんないんじゃないかな。あるとすれば那須か日光だろうけど,うぅーん,ないんじゃないかな。

● こういうお店って,人を選ぶだろうから(お高くとまっているという意味ではなく),出逢わない人はずっと出逢わないで終わる。どうもそういうところがある。
 自分の水準に合ったところに吸い寄せられるのだと考えておけばいいだろう。香港に行って食事が不味かったというやつもいるくらいだから。

● したがって,この本が面白いのは半分は軽井沢の功績で,半分は著者の功績ということになる。伊藤さんだから出逢えたお店たちなのだろう。

2014.05.15 鷲田清一・永江 朗 『哲学個人授業』

書名 哲学個人授業
著者 鷲田清一
    永江 朗
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2011.04.10(単行本:2008.02)
価格(税別) 800円

● 「〈殺し文句〉から入る哲学入門」というんだけれども,その〈殺し文句〉すら,何やらぼくには理解できず。わからなくても,その言い方をカッコイイと思える人は,哲学に向かう資格があるのかもしれない。ぼくにはカッコイイと思える感覚もなかったから,哲学には無縁の徒ということになるな。
 本書を読み終えたあとも,本書で紹介されている哲学書のどれかを読んでみようとは思えないでいる。

● ただ,引っかかったところはいくつかある。
 オルテガは「二〇世紀でいちばん大衆的な人は,何といっても科学者だ」と言っているらしい(p54)。「そのココロはというと,彼らは自分には知らないことがないと思っている」からだというんだけれど,本当かね。そんな科学者がいるのか。
 例として,「ノーベル賞をもらったらみんな急に文明評論をはじめるじゃないですか。教育論とかね。ぜんぜん知らない領域ですよ。(中略)それは大衆の典型じゃないですか」ということが挙げられる。江崎玲於奈さんのことですかね。彼はむしろ例外なんじゃないですか。
 どちらかというと,世間の側がノーベル賞をもらった科学者にそういう役柄を求めて,有無を言わさずやらせてしまうってことじゃないのかねぇ。

● 以下にいくつか転載。
 介護は絶対に肉親がしてはいけませんね。他人だったらビジネスとしてのサーバントですむけど,肉親だと存在そのものがサーバントになってしまう。これは耐えられませんよ。(永江 p100)
 何年か前に,「なぜ人を殺してはいけないのか」という議論があったでしょう。(中略)僕はあれを観てカチンときた。だってそんな質問はあらへんでしょう。言うなら「なぜあなたを・・・・・・」と言うべき。そして目の前で「なぜあなたを殺してはいけないんですか」と問われたら,僕はそんな問いには絶対応えへん。(鷲田 p117)
 レヴィナスはわざと日常用語を使っている。人間の日常というのはとても複雑で,哲学はシンプルなんです。生まれて育って結婚して子供を育ててみたいなことを全部哲学にすると,こんなになっちゃう。平凡な人間の日常について徹底的につきあって書くとこうなる。(内田樹 p119)
 臨床というと,「みんな苦労してはるな。助けにいこか」とか,「ケアしないといけない」とか思うかもしれないけど,僕はそういう臨床ってあんまり好きじゃない。そやなしに,「こんなもんや」と思っていた場所があって,助けにいこうと思って,そこに実際に立ってみると,いままでわかっていたはずのものが壊れていく。それが臨床やと僕は思う。(鷲田 p122)
 鷲田 思想家というのはブルドーザーみたいなものだというイメージが,僕にはあるんですよ。(中略)書斎で瞑想にふけっているのではなく,「こうでないとおかしい!」という衝迫が先にあって,それを証明するために論理的に考える。(中略)永井 緻密に考えを進めていったら結論が見えたというのではなくて,先に結論があって,そこに行く最短距離をどうやったら論理的に作れるかを考える。(p263)
 これは,科学者もそうだと思う。ひらめきのない人は哲学者にも科学者にもなれない。新商品の企画や開発もそうでしょう。市場調査をいくら積みあげたってダメだ。
 ハピネスって,ハプニング(happening)なんですよ。ハプ(hap)っていうのはもともと北ヨーロッパ系の言葉で,幸運とか,たまたま起こるっていうことを意味する語。これまでのハピネスのイメージって,がんばったらそのご褒美として達成できるっていうイメージだったじゃないですか。ところが二〇年ぐらい前からかなあ,女の子が「ラッキー!」っていうようになった。いいことがあったらラッキーなんですよ。これは幸福論にとって本質的なことです。(鷲田 p302) 

2014年5月15日木曜日

2014.05.15 伊藤まさこ 『伊藤まさこの台所道具』

書名 伊藤まさこの台所道具
著者 伊藤まさこ
発行所 PHP
発行年月日 2012.08.07
価格(税別) 1,500円

● こだわりの台所道具の紹介。何のための台所道具かといえば,当然,料理を作るため。
 結局,食べることをおろそかにしないってことですよね。食べることに手を抜かない。忙しい人なんだと思うんだけど,そういうことを言い訳にしない。日々の生活が仕事より上位にあると考えているのかどうかはわからないけれども,生活の彩りとか艶とか変化とか,そういうことを大事にしているんでしょう。そうして作られた料理はさぞかし旨いものだろう。

● 料理をすることそのものも楽しむ。楽しいことを楽しまなきゃね,っていう。そのためには道具は大切だ。書道のたしなみがある人は,筆や硯にこだわるものだろう。

● こういう本を読むと,自分が食べるという人生においてかなりの比重を占めるであろう大事を,相当以上にぞんざいに扱ってきたことを知らされる。
 旨いものは外で食べればいい,普段の食事は腹が満たされれば充分だ,という態度で一貫してきたかなあと思いますね。とても大事なものを捨て続けてきたかなと思う。

2014.05.14 堀江貴文 『金持ちになる方法はあるけれど,金持ちになって君はどうするの?』

書名 金持ちになる方法はあるけれど,金持ちになって君はどうするの?
著者 堀江貴文
発行所 徳間書店
発行年月日 2013.04.30
価格(税別) 1,200円

● 若くして成功し,ヒルズ族の代名詞となり,女優とつきあい,プライベートジェットを乗り回し,派手な買収劇で注目を浴び,ついには証券取引法違反で収監され,マスコミと世間からクソミソに言われ,しかしそれに潰されることなく,釈放後は(収監中も)鮮やかさを取り戻し,再び株をあげつつある堀江さんの近著。

● ビジネスの種になるんじゃないかと考えることを,惜しみなく開陳。見る人が見れば宝の山なのだろう。
 でも,ほとんどの人はなるほどと思っても,実行には移さない。だから堀江さんのような人が際立つわけで。

● 悩み相談も面白い。明快だ。これについては,著者自身が次のように語っている。
 相談者たちの全体的な傾向としては,イイ子ちゃんが世の中に多すぎて,必ず物事には正解があるとマジに思っている印象がある。(p236)
 暇なら暇らしく,本能に従って楽しく生きればいいと思う。その気になれば食欲,性欲,睡眠欲はいくらでも満たされて,新鮮な喜びを味わえるのに。貧しい時代の倫理に縛られすぎだ。ダラダラ遊んでりゃ,そのうち何かに出会える。(p237)
● 著者のようにスパッと動ける人と,そうではない大多数の人とを分けるものは何なのか。
 「買った株が値下がりしても中々損切りができなかったり,結婚した相手のことが好きではなくなったのに離婚をすることができなかったりする」(p247)のが,つまり大多数だと思うのだが,これ「自己暗示にかかって」いるからか。
 考えすぎない,思い切りがいい,度胸がある,といったことなんだと思うんだけど,なぜそうできるのか。プリンシプルがある,世間や常識にとらわれない,ということか。って,これは循環論になりそうだな。

● 以下にいくつか転載。
 人間のやる事だから,必ずコピれるはず。牛角創業者の西山(知義)さんは焼き肉をカットする職人の技をすべてマニュアル化してバイトにやらせて人件費を減らしたのだから。(p142)
 マスメディアとかを通して“いい人イメージ”が定着しすぎると,有象無象が寄ってくるのが嫌なんですよね。どうでもいい人には寄ってきてほしくないというか。そんな人のために努力をするのは嫌だというのがあります。(p178)
 親というのは先が読めないんですよね。介入しないのが一番です。(中略)親の介入は子供の将来のためには百害あって一利なしです。(p180)
 生活が苦しいと洩らす人でも,よくよく話を聞いてみると,実にくだらないことに悩んでたりする。(p241)
 この世には,いらないものに平気でお金を払っている人が多すぎる。例えば,手紙だ。(中略)伝えたい情報を特定の人に伝えるだけなのに,余計な手間と時間と料金の発生するこのシステムが,よく現代まで生き残っているものだ。(中略)日々,迷惑なダイレクトメールを配送し続ける日本郵便は,いってみれば世界最大のスパム業者だ。(p251)
 「人肌の温もり」とかいう一見聞こえのいい価値観で守られているものが,本来,重要とされるべき効率や技術革新の邪魔をしている。(p253)
● 夏野剛さんが寄稿している。その夏野さんの文章からいくつか転載。
 10人でできる仕事を100人かけてやっていたり,1000円で済むコストに10000円費やしていたり。世の仕事の大半は,そんなのばかりですけど(p93)
 日本のほとんどのルールは組織を維持させるため,ある意味での非合理性を守るために生みだされたものです。しかしネットによって「組織なんて入らなくてもいい」生き方が当たり前になってきました。(p95)
 これまで保険にしろ年金にしろ,組織にいた人を優遇する仕組みになっていましたが,ネットが発達することによって,組織を大事にする意味がなくなってきます。(p96)
 劇作家の寺山修司はかつて“若者よ,書を捨てよ町に出よう”と言いました。いまは違います。“若者よ,引きこもってググれ”です。 家にこもってググった方が,よっぽど新しい情報が入ってくるし,精力的に発信もできます。書は捨ててOK。街に出るのも無意味。あんな古くてデータ量の少ないアーカイブを頼りにしても,これからは役に立ちません。(p98)
 ネット社会の急成長によって,この10年でルールもモラルも変わってしまいました。10年前の常識を元に話している先輩の意見は,参考になるどころか邪魔なものでしかないことも十分にあり得るのです。先輩からのアドバイスは,礼儀上は聞いたフリをする,もしくは一意見として聞く程度にし,ネットに戻り,自分の信念に従いましょう。(p98)

2014年5月14日水曜日

2014.05.14 番外:一度は行きたい世界のホテル&リゾート

編者 高橋俊宏
発行所 枻出版社
発行年月日 2014.04.10
価格(税別) 1,500円

● 世界のリゾートホテルの紹介。まずはアマンということになる。本書でも巻頭を飾るのはアマン。
 創業者のエイドリアン・ゼッカが京都の俵屋にインスピレーションを得たっていうような記事を何かの雑誌で読んだ記憶があるんだけど,どうなんだろ。
 交通不便な辺鄙なところにあるのがアマンだったんだけど,近頃は都市にもできているんだね。数もだいぶ増えた。近く東京にもできるらしい。
 行くか? 行かないですよ。っていうか,行けないでしょ。お金どうするんですか。

● 「Home Away from Home」がアマンのテーゼらしいんだけど,だったらずっと家にいればいいじゃん,と悪態のひとつもつきたくなったりね。

● 若い頃は高級ホテルは憧れだった。もちろん,今でも憧れなんだけど,憧れる度合いはだいぶ低下してきた。アマンはとうてい無理だけれども,高級に分類されるホテルを何度か経験したら,もういいやとなってしまった。
 お金を遣ってする遊びは飽きる。短期間に集中してやってしまうと,あっという間に飽きる。あるいは,経験の度合いが浅かったからかもしれないけれど。

● そもそもが海外に行きたいと思わなくなっている。意欲減退気味。近くでいいよねと思う。海外のリゾートに行くくらいなら,近くにある那須の二期倶楽部とかね。まだ行ったことのないところが近くにたくさんあるわけで。
 それと,ケチ根性。お金がもったいない。飛行機や新幹線で遠くまで行くんだったら,その分を宿泊費に回して,それこそ二期倶楽部や都内のホテルで贅沢した方がいいんじゃないのと思ってしまうタイプ。

● というわけで,ぼくの注目は海外ではなくて,国内。しかも地元か近県。ほんとにねぇ,日光の金谷ホテルにも泊まったことがないんだからねぇ。

2014.05.13 喜多川 泰 『手紙屋』

書名 手紙屋
著者 喜多川 泰
発行所 ディスカヴァー21
発行年月日 2007.08.15
価格(税別) 1,500円

● 「僕の就職活動を変えた十通の手紙」が副題。若い大学生に生き方を説くという趣向。小説っぽい仕立て方。“手紙屋”がじつは大学生の兄ではないかというのは,途中からわかる仕組みになっていて,そのへんも親切(?)だ。

● この種の本って,どう分類されるんだろうか。精神世界? 自己啓発書? 成功哲学(のようなもの)?
 以下にいくつか転載。 あなたが出会った人すべてをあなたの味方にする魔法の方法を教えようと思います。 それは・・・・・・, 相手にこうなってほしいという『称号』を与えてしまうのです。(中略) 『相手を変えることはできない』『すべての人にあらゆる性格が備わっている』 このことがわかれば,あと必要なのは,あなたが相手の持っている性格の中で欲しいものを引き出してあげる存在になることなのです。(p60)
 自分本位に考えてみると,同じ金額がもらえるなら楽なほうが得だと思うかもしれません。でも,そういう過ごし方は,自分の力で生きていこうとする姿勢に欠けています。結局は会社の持っている財力や,他のまじめに働いてくれる人の頑張りがあるから,手を抜いても給料がもらえているという事実を忘れてはなりません。(p79)
 何かに必死になると楽しくなる。その感覚を僕は長い間忘れていた。(p84)
 大きな夢を持つということは,大きな壁を乗り越えなければいけないことと同義です。 誰よりも大きな夢を持つ人は,誰よりも大きな壁を何度も何度も乗り越えなければそこに到達することはできません。ところが,「大きな夢を持て!」と言われた若者は,「ハイ,そうですか」と言われたとおりに夢だけを持つ。けれども,夢を持った瞬間に現れる大きな壁を越える覚悟はできていないんです。(p189)

2014年5月12日月曜日

2014.05.11 小沢昭一 『日々談笑 小沢昭一対談集』

書名 日々談笑 小沢昭一対談集
著者 小沢昭一
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2010.06.10(単行本:2000.10.30)
価格(税別) 860円

● 芸能談義。吉原談義。遊び談義。食談義。面白いことは言うまでもない。今となっては,史料的な価値もあるだろう。

● まず,柳家小三治さんと。
 あの,うまく見せることは努力すれば誰でもできるんです。その上ですよ,落語でもねえ,うまいなあ,とかっていうのはねえ,これはまだ駄目なんですよ。その先に・・・・・・。 洗いあげてしまわないもの,ほんとうに素朴なもの,持っている魂だけで,漂ってくるようなもの。それがねえ・・・・・・。(柳家 p45)
● 松島トモ子さんとトイレのあれこれ。高山の蒔絵が施されたトイレの話には驚いた。贅沢さにおいてインドのマハラジャのトイレをしのぐという。なるほど。
 昭和の初めに育った人間は,戦争のこともあるけれど,働くことが尊くて遊ぶことは罪悪だ,遊び人というのは人間のクズだ,と。だから遊び下手なんです。ずいぶん僕も遊んだけれども,つねに一生懸命遊ぶ,というナサケなさ・・・・・・。その遊びがまた営業になったりするところがあって,なんにもならない。(p64)
● 金子兜太さんと戦中派の世代論。
 中学校に入ってからですけれども,クラスに一人,反戦的なことをいう男がおりましてね。僕なんかはそれを反戦とも理解できなかったんです。変人といいますかね。 そのような感覚でしかその男をとらえられなかったことをいま非常に恥じますが,しかし,そうであったことは事実ですね。(p107)
 金子 僕は俳諧をやっていてよく思うんですけどね,俳句仲間だとね,例の兼業農家,三チャン農家というやつですな。あおの兼業農家のおじさんとかおばさんが意外にしっかりしているんですよ。よき俳人なんですね。生活姿勢がしっかりしているし,句もいいわけです。 小沢 そういう方たちは,面白ければ面白い,つまらなければつまらない,ごたくは並べません。何もかもお見通しで,都会のモダニズムなんかにごまかされないというジトッとした怖い目で見据えられているという感じを僕はもっています。(p121)
● 高瀬礼文さんとそば談義。
 僕は,料理人っていうものに,僕らの立場と,とっても近い感じをもちます。一種の技芸人とでもいいますか。単に腕一本で,おいしい料理を出すとか,見た目美しく盛り付けるとかだけじゃなく,お客と勝負していく。どうだ,こういうものがおまえらにわかるか,わかんねえだろう。(p125)
 ふつう,名人っていうもののニュアンスのなかに,一道を貫くっていうことがありましてね。それはすばらしいこととされているんですが,あれには非常に,まやかしとか,胡散臭いものとかが混ざり込んでいる場合がある。少し乱暴にいいますと,あれはね,自分の人生を無反省に美化して,納得して,自分で自分の一生を安易に終わりにするような,そんな陶酔がありましてね。むしろ日本人の恥部というか,弱点ではないでしょうか。(p125)
 なんとかね,ここで一生懸命働いて,この店をものにしてやろうという若夫婦。子どもを育てている最中の若夫婦。人もやとわずに,二人で一生懸命やってる店って,たいていおいしいです。(p129)
 僕らの商売もね,売り出そうというね,恥も外聞もかなぐりすてて,今やらないことには芸能人として認められないっていうときが,一番使いごろ,おもしろい。そのうちに,やがてベテラン,功なり名遂げてくるとですね,あとはもうロクな仕事にならなくなってくるのが多い。(p130)
 ちかごろは感性ばやりですから,どんな感性でも感性なんでしょうけど,でも感性,感性って,何百年もかかって,大勢の人間が智慧を積み上げてきたものをね,昨日今日の感性で簡単にきらいだなんてね・・・・・・。(p134)
● 郡司正勝さんと吉原について。
 浅草の三社様(浅草神社)の境内に久保田万太郎先生の句碑と並んで,吉原の粧太夫の献碑がございますね。吉原を称揚するために敢えていうんですが・・・・・・万太郎先生のほうは独特の,クチャクチャした小さい字でよく読めない。粧太夫はすごい達筆で,大変な教養の持ち主であることが字からうかがい知れます。あれはびっくりする。(p141)
 太夫ってのは,書とか和歌とか句とか将棋,碁まで勉強した。大名の相手もできるという教養を身につけているのが,太夫の資格なんです。(郡司 p141)
● 網野善彦さんと被差別民と芸能の歴史について。
 周防猿まわしの復活は,お兄さんのほうもそうですけど,弟さんの猿舞座のほうも,猿まわしで食べていこうとしたところが,猿まわし復活のキー・ポイントでしたね。「保存会」というのは,やっぱり駄目ですね。 芸能に関しては,商売にしよう,稼ごうというのがないと駄目だと,かねがね思っていましたが,本当です。(p194)
● 清川虹子さんと浅草の笑いについて。
 やっぱり浅草がいちばん修行になった。だってあなた,浅草ではお客が吉原の帰りでしょ,遊び疲れてダレてるんですよ。 だから,ちょっとやそっとのおもしろさじゃ笑わないのよ。泣くのはすぐに泣くんですよ。だけど笑いませんよ。(清川 p223)
● 井上ひさし,関敬六さんと,渥美清を語る。
 もう,あの人(渥美清)にかかったら誰だって食われちゃうんです。僕が観たかったのは,藤山寛美さんが渥美さんに食われちゃうところだな。(p247)
● 阿川佐和子さんとの四方山話。
 テレビの機械っていうのは,映画のそれと違って何だか知らないけどみんな吸いとられてしまう。生きる力も精気も。 人間の生きている時間の何倍もの時間を吸いとってしまうバキュームです。あれでいい年して平気で出ている奴は,差し障りがあるかな,相当の神経してますね。根本のところが違ってないとダメ。(p283)
● ほかに,内海好江,バルタバス(騎馬劇団を主宰するヨーロッパ人),佐野洋子,小宮悦子,立木義浩,黒鉄ヒロシ,柴田政人の諸氏が登場。

2014年5月10日土曜日

2014.05.10 吉田友和 『めざせプチ秘境!』

書名 めざせプチ秘境!
著者 吉田友和
発行所 角川書店
発行年月日 2012.11.30
価格(税別) 1,500円

● 「行こうと思えば案外行けちゃう地球旅行」という副題。「プチ秘境」として紹介されているのは,モロッコ,イスラエル,パナマ,マダガスカル,スリランカ,ミャンマー,ウズベキスタン,ラオス,ブータン,隠岐。

● その中で特に面白かったのはイスラエル。ユダヤ人って,長い迫害の歴史をもつ一方で,西洋と資本主義を作ったっていうイメージがある。
 イエスもパウロもペテロもユダヤ人でしょ。世界の金融界で重きをなし,ノーベル賞を独占し,音楽や文学でもあまたの天才を輩出してきた。なんだかとんでもない人種だっていうね。
 というわけで,等身大のユダヤ人ってどんななんだろうと興味がある。
 インドを旅したことのある人なら想像がつくかもしれないが,あのインド人相手に対等以上に渡り合えるのはきっと彼ら(イスラエル人旅行者)ぐらいだろう。海外を旅しているラエリー(イスラエル人旅行者の愛称)の多くが,兵役を終えたばかりの若者たちだと聞いて,その押しの強さにも納得したものだった。(p44)
 中国人もビックリするぐらい並ぶということを知らない。けれどイスラエル人に比べたら,中国人なんてかわいく思えるほどだ。(p45)
● 本書に限らないけれども,著者の写真にも注目。上手いものだ。学校や先生について学んだことはないらしい。それでもここまでの写真を撮れるのは,なんていうか,いわゆるひとつの才能なんだろうか。

2014.05.09 和田茂夫 『かんたん3分!かしこい整理術』

書名 かんたん3分!かしこい整理術
著者 和田茂夫
発行所 日東書院
発行年月日 2010.07.10
価格(税別) 1,000円

● あたりまえのことが説かれている。のだが,あたりまえじゃない整理術があるとも思えない。そうしたあたりまえのことを時々は確認する必要がある。

● 整理の前に不要なモノを捨てる必要がある。仕事でもプライベートでも同じだ。たぶん,モノに限らない。しがらみや人間関係も本当は捨ててしまった方がいいのだろう。可能ならば,記憶や思い出も要らなければ捨ててしまいたい。
 ま,ぼくの場合はまず本で,少しずつ実行している。
 「捨てる」技術は整理の重要な要素なので,いろいろな本に多くの方法が紹介されています。しかしどの方法でも,ものを捨てるにはパワーがいることに変わりはありません。
 捨てると決める決断力,捨てるものを選び出す判断力,思い切って捨てる実行力などなど,かなりのパワーを消費するものです。(p59)
● 情報の整理についても説かれている。手帳については,デジタルではなく紙の手帳を推奨している。パソコン関係の雑誌の編集長も務めた人らしんだけど,紙に手書きすることの効用が説かれている。
 基本的には手書きでノートをとることに賛成です。手書きすると記憶が強化される働きがあるし,自分自身に向けたメッセージとしての効果もあります。(p118)

2014.05.08 伊藤まさこ 『伊藤まさこの雑食よみ 日々,読書好日』

書名 伊藤まさこの雑食よみ 日々,読書好日
著者 伊藤まさこ
編集 赤澤かおり
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2013.10.18
価格(税別) 1,500円

● 神田神保町の古書店や代官山のTSUTAYA書店,美術館の特別展など,本そのものではなく,本にまつわる風景の紹介が多い。
 『日々,是,一冊』は地方の風景が多く出てきたけれども,こちらは東京と伊藤さんが住んでいる松本がメイン。

● 代官山のTSUTAYA書店には一度は行ってみたいと思ってるんだけど,思ってるだけで機会を得ていない。何かのついでにとはなりにくい。そのためだけに東京に出なければいけない。

● 本では料理や台所道具に関するものをメインに,絵本やコミック,美術書など。伊藤まさこワールド。

2014年5月8日木曜日

2014.05.07 江沢伸一 『「はとバス」ヒットの法則23』

書名 「はとバス」ヒットの法則23
著者 江沢伸一
発行所 潮出版社
発行年月日 2013.10.20
価格(税別) 1,300円

● 日本で最大の観光地は京都でも奈良でも沖縄でもなく,東京だ。観光資源においてもそうだけれども,はとバスの奮闘も与って力があると思っていた。
 他の地域の定期観光バスとは質量において一線を画している。東京だからできるんだろうなぁとも思っていた。

● はとバスに乗ったのは1回しかない。横浜の中華街に行くコースのやつ。一緒に行ったメンバーが良かったので(ここが大切だ),満足度は高かった。
 以来,はとバスのパンフはけっこう見ている方だと思う。けれども,数年前には倒産の危機に瀕していたというのは,この本を読むまで知らずにいた。

● コースを企画するセクションの責任者の話。なるほどと腑に落ちるところが多々ある。が,人には言えない(したがって本書には載せられない)事柄がたくさんあるに違いない。
 以下にいくつか転載。
 企画の仕事とは不思議なもので,あきらめずに努力していると,次々に道が開けてくる。初心を失えば,人の心を打つことはできない(p80)
 二兎を追う者は一兎をも得ずで,万人向けの企画は,結局,誰の心にも響かない。ターゲットを絞ってお客さまのイメージを具体化し,「どうしたらこの人たちを喜ばせられるか」を徹底的に考え抜く。コースが終わったとき,お客さまの顔に浮かんでいるのはどんな表情か。そこまで具体的に想像できなければ,その企画が不発に終わる可能性は高い。(p105)
 お客さまが自分で行けるものを提供しても意味がない(p117)
 空前のスカイツリー・ブームに浮かれて,企画に手をかけず,バスの増便だけで対応しようなどと考えたら,はとバスは誰にも見向きもされなくなる。人気のコースであればあるほど,他品種少量生産でバリエーションを増やし,お客さまの多様なニーズにしっかりと応えなければならない。(p137)

2014年5月7日水曜日

2014.05.06 番外:八重洲ブックセンターのアウトレットブックコーナー

● 宇都宮駅ビルに八重洲ブックセンターが入っているのは,栃木県人ならたいてい知っている(いや,知らないか)。決して規模は大きくないんだけど,場所がら,ぼくはわりと頻繁に立ち寄っている。
 あの八重洲ブックセンターが宇都宮にあるんですからね。もったいなくて涙が出る。

● その八重洲ブックセンター宇都宮店にアウトレットコーナーができていた。新品の本が値を下げて売られているわけね。
 新書を3冊買ってみた。700円のが320円,780円のも320円,905円のが380円だった。ヤフオクと違って送料がかからない。ブックオフに行くともっと安いんだろうけど,こっちは正真正銘の新品だからね。

● でも,なんか複雑な気分。本も時間の経過とともに市場価値が下がるのは当然っちゃ当然。だとしても,それをまのあたりにすると,著者が見たらどう思うかなぁと思ったり。市場は厳しいものだ。
 車や住宅と同じで,買ったその瞬間に市場価値は下がる。だから,本は買ったらサッサと読んでしまった方がいい。サッサと読んでサッサと処分する。
 わが家にはツンドクのが膨大にある。一生かけてもとても読み切れない。しかも,駄本ばっかり。その大半は古本屋ももはや引き取ってはくれないだろう。どうしてこんなに買ったのか。ムダなことしちゃったな。

● といっても,そのときは読もうと思って買ってますからね。しょうがないね。しょうがないと思わないとしょうがない。

2014.05.05 伊藤まさこ 『伊藤まさこの雑食よみ 日々,是,一冊』

書名 伊藤まさこの雑食よみ 日々,是,一冊
著者 伊藤まさこ
編集 赤澤かおり
発行所 メディアファクトリー
発行年月日 2011.05.20
価格(税別) 1,500円

● 「雑食よみ」といっても,哲学やビジネス書や自己啓発本や法律・経済の本は登場しない。読んでいるのかもしれないけれども,伊藤さんのイメージや読者対象からそれないように編集されている。
 想定されている読者は,真面目な女性ってことでしょう。そうした女性たちに読んでもらえるようになっている。

● 話題は本だけではない。書店とかカフェも紹介されてて,栃木県からも2つ。いずれも黒磯にある。
 ひとつは「タミゼ クロイソ」。「那須の自然を楽しんでもらうために新旧とり混ぜた本や道具を集めたお店」とのこと。
 もうひとつは「1988 CAFE SHOZO」。名前のとおりカフェなんだけど,「お店のあちこちに本を置いていること。しかもたくさん」というのが特徴。

● 黒磯は自分的には近しい場所。「タミゼ クロイソ」は恵比寿の「antiques tamiser」の姉妹店で,営業は日月のみらしい。日曜日にやってれば不都合はない。
 「1988 CAFE SHOZO」は普通に営業しているのだろう。一度行ってみようかね。って言ってるやつはまず行くことはないんだよなぁ。

2014.05.04 吉田 浩 『本を出したい人の教科書』

書名 本を出したい人の教科書
著者 吉田 浩
発行所 講談社
発行年月日 2014.04.10
価格(税別) 1,400円

● 「ベストセラーの秘密がここにある」が副題。「本を出したい人」に限らず,ビジネス書,自己啓発本として,面白く読める。

● 以下にいくつか転載。
 私が本を作るときに一番大事にしている思いは,「その本はどれだけたくさんの人を幸せにするか」ということです。(p21)
 世の中を見渡すと,「みんなで考えました」という本だらけです。だから本が売れなくなっていくのです。(p42)
 否定はだれでもできますが,肯定は本質を知らないとできません。なぜならば,ダメな理由はたったひとつ提示すればいいからです。(p42)
 男性が好んで読む本は,「お金」と「成功」です。女性が好んで読む本は,「恋愛」と「美容」です。(中略) 受講生のひとりが手を挙げてこんなことを言いました。「先生,お金も,成功も,恋愛も,美容も,手を伸ばせば届くところにありますね」 私は「あっ」と思いました。売れている本は,すべて「身近なテーマ」だったのです。(p68)
 秋元(康)さんが話してくれたなかでとくにおもしろいと思ったのは,「1年に一度は,自分が嫌いな人と会うようにしている」という彼のルールです。秋元さんによれば,嫌いな人は自分そっくりなので,その人を見て慢心しないようにしているのだそうです。(p101)
 人こそ情報の塊です。情報を発信するのは人という生命体以外にありません。この場合の情報とは「相互に影響を与えるエネルギー」のことです。ネット上には無数のデータが散乱していますが,エネルギーの交換はできません。1冊の本はエネルギーの塊です。だから,多くの人に感動や影響を与えることができるのです。(p102)
 私はビジネス作家の知り合いが500人ほどいるのですが,だいたい3年後には5割が消え,5年後には7割がもう本を書いていません。 その理由は,間違った本作りをしているからです。「今すぐ書ける本」「今すぐ売れる本」を急いで書いてはいけません。(p119)
 これが,「潜在意識の底に落ちる」ということです。「本が出せる」と思い込むことではありません。「出せないはずがない」と信じ込むことです。「思い込む」と「信じ込む」は天と地ほどの開きがあります。信じ込むことです。(p225)

2014年5月6日火曜日

2014.05.03 番外:本の処分

● 読み終えた本をどうするか。保存しておくか,処分するか。仕事で使うとか二度三度と読みそうだというのは,もちろんとっておくわけですけど。
 たいていの人は保存しておく派だと思う。ぼくも長らくそうだった。

● ですけどね,本ってどんどん溜まる。必ず収納限度を超えて溜まる。ぼくの場合もそうで,書庫から溢れだした。
 そこへ東日本大震災。本はみな崩れ落ちた。足の踏み場もない。何だかどうでもよくなっちゃって,現在に至るもそのまま放置。

● ぼくの年代だと,本が消耗品だとは思いにくいところがある。ちょっと特別なもの。
 食べものは食べればなくなる。洋服は着れば傷む。部屋も使えば汚れる。けど,本は読んでも,読む前と同じ情報がそのままそこに残っている。
 これも捨てにくい理由のひとつ。使用後も使用前も情報の増減がない。情報を載せている器は汚れたりもするけれど,肝心な部分は目減りしない。

● 本って,ほとんどは一度読んだらそれで終わり。読み返す本ってそんなにない。だったら,保存しておく必要はないよなぁ。
 読み返さないんだったら,単なるブツにすぎない。当然だ。

● 基本的に本は汚さないで読む。線を引いたり書きこみをしたりってしない。だから,「BOOK OFF」に持っていけば引き取ってもらえるとは思う。でもね,わざわざ持っていくだけの手間にもならない値段にしかならないでしょ。
 ヤフオクに出すのも億劫だ。ヤフオクはよく利用するんだけど,買い専門。梱包して発送してなんて,面倒でやる気もしないや。

● で,古紙回収に出してたんですよ。ゴミステーション行き。でも,ひょっとしたら誰かが読んでくれるかもしれないなぁと思って。書店の新刊コーナーに並んでる本もあるわけだし。
 とまぁ,ケチな考えが頭に浮かんじゃって。

● そこでですね,地元の図書館のリサイクルコーナーに置くようにしたんですよ。この場所は図書館の本を放出するためのものなので,勝手に使っちゃまずいんでしょうけどね。
 なので,見つからないようにこっそりと。一度にゴソッと持ちこむわけにもいかないので,少しずつ。やっぱりまずいかなぁ,こういうの。

2014年5月3日土曜日

2014.05.03 伊藤まさこ・坂田阿希子・仁平 綾 『テリーヌブック』

書名 テリーヌブック
著者 伊藤まさこ
    坂田阿希子
    仁平 綾
撮影 ウガイタケヒト
発行所 パイ インターナショナル
発行年月日 2012.06.15
価格(税別) 1,600円

● テリーヌとはそもそもどういう料理のことか。著者たちも議論しているが,はっきりした定義はないようだ。
 もともとは「フランス料理で使う,釉薬をかけたテラコッタ製の蓋付きの土鍋,あるいは壺・鉢・深皿」のことを言う。それを使った料理もテリーヌと呼ばれるらしい。(wikipedia)
 その容器を使っていれば,ゼリー寄せのようなものもテリーヌと呼んでいいのかどうかは,ま,不明。

● 本書はそのテリーヌの写真集。定義をゆるく解釈して,いろんなテリーヌが登場。巻末にレシピも。
 家庭ではなかなか作られない料理に属するだろう。だいたいは外で食べるものだ。オードブルで出てくることが多いですな。
 それを自分で作ろうってんだから,著者たちはテリーヌに思い入れがあるわけだ。

● 料理って多くがそうなんだろうけど,思いとか工夫とか創造を込めることができるんでしょうね。それを込められるっていうのは,自分が食いしん坊であるにとどまらず,自分以外に食べさせたい人がいるからでしょ。
 愛情を豊富に持っていることが料理上手への第一条件なんでしょう。ぼくはまったく料理をしないので,想像で言ってるんだけど。

2014年5月2日金曜日

2014.05.02 立川談四楼 『一流の人はなぜ落語を聞くのか』

書名 一流の人はなぜ落語を聞くのか
著者 立川談四楼
発行所 KKベストセラーズ
発行年月日 2014.02.25
価格(税別) 1,429円

● たまたま手に取って読んでみたもの。人生論というか,処世論というか,修行論というか,立川談志紹介論というか。
 一気通貫で読めたから,面白かったのだ。それは間違いない。

● 以下にいくつか転載。
 いまの世の中,電車や地下鉄に乗ると,みんなスマホに没頭している。とはいっても私も含め,みんなロクな情報には接していない。江戸の人から見ると,揃ってみんな何のお札を読んでいるのだろう? 位牌か? ご先祖思いなんだなあなんて,思うかも知れません。(p18)
 通ぶる人がいます。落語家でもそう。そして,通ぶる客を喜ばせるために,噺をはしょってしまうケースもある。(中略)このような通ぶる客と通ぶるセンスは落語をダメにするのです。(p27)
 初心者だって,一流の初心者もいる(p28)
 「おもてなし」は「表無し」。つまりウラがあるんです。そりゃそうでしょう。誰彼かまわずもてなすはずはない。そこには利害がある。(p65)
 「囃されたら踊れ」というのも,談志の教えです。どのようなことがあっても,周囲が囃し立ててくれたなら,それに応えるのが芸人のつとめだというのです。くだらなくてもけっこう。ノセてくれるのなら,それに乗れというわけです。(p66)
 女はもとより強いのだけれども,弱いふりをしてくれたから男はこれまで威張ってこられたといわれます。ところが時がたつにつれて,女は本性を現しはじめました。(中略) では,男性としてはますます強くなっていく女性にどう対処したらいいのでしょうか。 その答えは,作家の渡辺淳一さんも言っているように,とにかく女性は褒めるに限るということです。(p88)
 私は「巧は拙を蔵す」という言葉を強調することにしています。(中略)つまり「巧いもの,きれいなものには,必ず拙いもの,あるいは不完全なものが含まれている」ということです。世の中,何でも完璧なもの,どこから見てもきれいなものは,かえって人の心を動かさない。どこかキズのあるもの,引っかかりのあるもののほうがむしろ印象を強く残すということです。(p138)
 ある程度年齢がいってから修行に入った人は大変です。並みの覚悟では勤まらない。努力はできる。でも,つい考え込んでしまうのです。わずかながらでも,自分が経てきた社会経験に照らし合わせてしまう。それなりの自我もある。だから「なぜこんなことをしなくちゃいけないのか」と,わだかまってしまうのです。このわだかまりが修行の妨げ。(p161)

2014.05.02 伊藤まさこ 『おくりものがたり』

書名 おくりものがたり
著者 伊藤まさこ
発行所 集英社
発行年月日 2014.02.28
価格(税別) 1,500円

● 「おくりもの」をもらったりあげたり。こういうのは文化なのだなぁと思う。で,自分はその文化をネグレクトしてきたなぁと思う。
 贈答って苦手。もらうのもあまり好きじゃない。今風の世相にどっぷりと浸かってしまっている。

● 贈答は社交表現の代表例で,その社交をできれば避けて通りたいと思ってきた。畢竟,面倒だからですね。
 あの人に何を贈ればいいかを考えるのが面倒だ。かえって邪魔になるかもしれない。迷惑かもしれない。そこを避けるには,相手の好みや生活の仕方を知悉していないといけない。
 ところがどっこい,そこまでの興味と関心を,自分以外の人間に抱いたことがない。それが贈答嫌いの究極の理由かも。

● 自分のために時間と手間を使ってくれたというそのことがありがたいじゃないかとは,なかなか思えない。要らないものをもらったとき,ぼくは腹立ちを感じてしまう方だ。処分の手間が増えたじゃないかって。
 自分がそうだから,人もそうなのだろうと思ってしまう。

● 結婚披露宴の引出物なんか,典型的にそうだ。新郎新婦の名入りの食器はさすがに使えないだろう。「寿」なんて文字が入ってしまったものもこれに準ずる。だいたいが,どの家にもモノが溢れてしまっている。もらっても置き場がない。
 ああいうものはモノが稀少だった頃の習慣だ,よろしく廃止すべし,みたいな風潮がくすぶっているだろう。

● お土産というのも買わなくなって久しい。もらってもあまり嬉しくない。海外土産もそうだ。エッジウッドのコーヒーカップをもらってみても,こちらにも趣味というものがある。
 その趣味を外さないためには,まさに針の穴を通すコントロールが要求される。つまりは,できないということだ。

● が,そういう間隙をぬって贈答が文化として成りたつことを,この本は教えてくれる。こうした文化を伝えるのは女性であることも。また,そうした文化に応えるもの作りを続けている人たちがいることも。
 ただし,そのためには相当以上のセンスとていねいさと心配りが必要になる。自分にもそれがあると安易に思わない方が身のためだ。

2014年5月1日木曜日

2014.05.01 小沢昭一・永 六輔 『平身傾聴 裏街道戦後史 遊びの道巡礼』

書名 平身傾聴 裏街道戦後史 遊びの道巡礼
著者 小沢昭一
    永 六輔
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2007.06.10(単行本:1972.04)
価格(税別) 840円

● これまた大変面白く読めた。殿山泰司に『三文役者あなあきい伝』という名作があるけれども,テイストが似ているように思った。軽くて飄々としている。飄々としていられるのは強靱でしたたかだからだ。あきれるほどのインテリジェンスも裏にある要素のひとつだと思う。
 こういうのが週刊誌に連載されていたんだから,日本の大衆文化というのはなかなか大したものだ。

● 「裏街道」というのは,いつの時代でもどこの国にでもあるものだろう。ところが,今の日本はどうなんだろう。裏といえるほどの裏があるんだろうか。
 風俗産業はある。数年前になるが,山谷から吉原あたりを歩いてみたことがある。いやいや,さすがは東京だと感じ入った。しかし,これは裏なのか。
 本書で登場するストリップなどはすでに崩壊したと言っていいような気がする。宇都宮にひとつだけあったストリップ小屋もとっくの昔になくなっている(ぼくが知らないだけで,場所を変えて健在なのかもしれないけど)。いわゆるエロ雑誌も売れなくなっているだろう。インターネットの影響だけではないと思う。
 裏が裏でいることが難しくなっているんだろうか。表に引きずりだされて,表とないまぜにされるようになった。そんな印象を持つんですけどね。

● ぼくは実直に(というと聞こえがいいけど,臆病に)生きてきたので,この世界はあまりよくわからない。しかし,今どきは表の世界の自由度がかなり上がっていて,それが裏の存立を難しくしているような気がしている。
 いい女っていうのも,表にいるじゃないか。ぼく一個は,裏に向かう動機を(怖いもの見たさ以外には)あまり感じることはない。

● 以下にいくつか転載。
 男性のほうが真剣味があるといいますか,薄情じゃないですね。ですから,薄情という言葉は女性に通じるものであって,男性に通用しないと思うんです。(p60)
 そりゃ,ホステスの世界では,わたしがお客と寝ようとなにしようと,自分のふところが大きくなって,いいものを着て,いいものをはめてりゃ,そのほうが勝ちなんですよ。でも,そういう人は絶対一本立ちはできない。一匹オオカミで終わりです。結局,お客さんが認めないわけです。あれはすぐ寝る女だからって。そうなったら終わりですね。(p64)
 警察の取り締まりがなくなれば,ストリップの客入らなくなる。取り締まりがあればこそ,客が来ると思うんですよ。(p112)
 彼女(一条さゆり)はふだんはおとなしいけど,なにかそういうほとばしるようなものが出るんですね。だから,踊り子仲間にピンと感じるわけです。それでイケズされる。 わたしは,よくイケズされますね。衣装を破られたり,先週は使っている傘をお便所に捨てられたり,靴のなかにガラスのびんを入れられたり,そういうことはしょっちゅうあります。(p114)
 男が働くのは女房以外の女とやりたいからですよ。これは断言できますね。女房とだけやるくらいなら,あたしゃ死んじゃうよ。(p222)
 でも格式が高いのっていうのは,疲れるだけで考えものですよ。やっぱり,遊びっていうのは馬鹿馬鹿しくなきゃいけません。(p230)
  テレビ以前では,恵まれた環境で育ち,恵まれた環境でスターになるということはあり得なかった。女をだますことぐらい平気でやってきた人の笑顔にこそ,共感を抱いてきたのである。正義の味方ぶるマスコミが,芸人の私生活をあばきたてる。そんなことではビクトモしない悪党であるべきだ。やっぱり芸の世界というのは,気の弱い奴のいられる場所ではないところでありたいと思う。(p285)