2014年12月22日月曜日

2014.12.20 上阪 徹 『職業,ブックライター。』

書名 職業,ブックライター。
著者 上阪 徹
発行所 講談社
発行年月日 2013.11.11
価格(税別) 1,500円

● 副題は「毎月1冊10万文字書く私の方法」。本を作るということがどういうことなのか,平明な文章で説かれている。
 著者自身の総括的な意味合いもあるように思われる。

● が,ここに説かれていることをそのまま実行できる人は,そんなにいないだろう。著者自身はどういう性向の人なのか。次の一文が参考になる。
 もともと“カオス”状態から何かを整理していくことは,個人的にはまったく嫌いではなかったことに後になって気づきました。 学生時代は飲食店でアルバイトをしていましたが,パニックになるほど忙しくなると,燃えてくるのです。 どうすれば最も効率よく注文がさばけるか。オーダー品を出していけるか。瞬時に考えて判断していく。(p134)
 そういう人じゃないと,ブックライター(かつてはゴーストライターと言われていた)の仕事は務まらないほどに,いろんな要素が入りこんでくるわけだ。
 私は,ただただ流されて今に至っているだけなのです。目の前にある仕事,いただいた仕事にとにかく向き合ってきた。ただ,それだけ。ところが結果的に,それが良かったのだと私は思っています。(p27)
 その一事がどれほど困難かは,並みの大人ならわかるはずのものだろう。

● ブックライターにとって,最も大切なのは文章力ではない。これはそうだろうなと思う。
 読者にとって注目に値する素材があるのであれば,それだけで十分,本になりうる。逆にいえば,本を書くのだから文章力が必要だ,などと考える必要はないと思っています。それより大事なのは,素材であり,素材を見つけてくる力です。(p95)
● その素材を見つけるために,著者に取材する。著者がすでに公にしている文章を,紙,ネットを問わず,目を通す。
 取材力をつけるには場数も必要ですが,私は基本的には好奇心の強さが何より重要だと思っています。読者の代わり,くらいのつもりで,強い好奇心を持って取材に向かえるか。(p200)
 私が心がけているのは,いっそのこと仕事を離れて取材を楽しんでしまうことです。自分自身の興味関心として,聞いてしまう。身を乗り出さんばかりに聞いてしまう。(中略) もうひとつは,読者の代わりに聞く,という姿勢を持つことです。「私」が聞こうとすると,なかなか質問が出てこないときも,「読者」を思い浮かべて,読者のつもりになってみると,するすると質問が出てきたりします。 だからこそ,読者の想定はきわめて重要なのです。(p105)
● 読者想定は,徹底して具体的であること。
 ぼんやりと「世間一般」というターゲットでは,誰にも刺さらない,なんてことになりかねません。逆に,メインターゲットを絞り込んだほうが,その周辺にいる人たちも興味をもってくれたりする。中途半端な読者像の設定が,一番危険だと私は思っています。(p84)
● これから本を作りたいと考えている人に,かなり有益ではないかと思われるアドバイスもある。編集者の習性について語っているところだ。
 彼ら(編集者)はネタを探してはいるものの,それを自分で探したいのです。ネタを求めているだろうと,横から「実はこんなネタがあるんですよ」と声をかけても,反応は鈍いことが少なくないのです。(p64)
 「意外に出版のハードルは低かった」という声が著者から聞こえてくることがあります。その理由はシンプルだと思っています。編集者に「見つけられた」からです。もし,その著者が自ら売り込みに行ったり,あるいは誰かに企画を持ち込まれていたとしたら,出版のハードルはかなり高くなったと思います。(p64)
● その他,いくつか転載。
 最近では,電子書籍も話題になっていて,中には「出版社や編集者を介さずに原稿をそのまま電子書籍にできる」などとうたっているものがあったりしますが,ブックライターとしてこれまで五〇冊以上の本を作ってきた私からすれば,「ありえない」の一言です。(p57)
 たくさんの人に取材をして教わったことですが,「人にお金を使ってもらうということが,いかに大変なことか」,認識をしなければいけないと私は思っています。ビジネスに成功した多くの人が,それを語っていました。(p59)
 面白いとは,すなわち独自性があり,その著者である必然性があるということだと私は思っています。(中略) そして独自性,必然性とは,経験や事実で語れるかどうか,ということだと思っています。だから,経験や事実をベースにした本にしなければいけない。(p87)
 書店に行くと,どういうわけか目に留まる本があります。(中略)本が自ら「買ってくれ」と叫んでいるかのような本。そういう本には,私も手を伸ばすことにしています。なぜなら,作り手の思いが間違いなくこもっているはずだから。(p91)
 文章などに関して法則性のようなものに関心を持つ人も少なくないようですが,私自身はまったく関心がありません。法則性から,びっくりするようなものが生まれてくることはまずない,と思っているから。そして,法則性に引っ張られることで,本来の感性が生きてこなくなる可能性があるからです。(p155)

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