2014年11月10日月曜日

2014.11.10 松長有慶 『高野山』

書名 高野山
著者 松長有慶
発行所 岩波新書
発行年月日 2014.10.21
価格(税別) 880円

● 高野山の碩学が書いた高野山の案内書,といっていいものだと思う。興味深かったのは空海亡きあとの高野山の歴史。
 なかなか創業者の志は受け継がれないものだ。高野山に限らず,どの宗団でもそうだろうし,宗教に限らず,あらゆる組織体はそういうものだろう。
 ときどき,中興の祖と呼ばれる人物が出る。奇跡を見る思いがする。

● 比叡山との比較論も若干,展開される。比叡山は山頂から巷の様子を眼下にすることができるのに対して,盆地の高野山はそうではない。たしかに高度の高い位置にあるけれども,盆地なんだから地の底でもあるわけで。
 鎌倉時代に,この(比叡山の)山上で厳しい修行を積み重ねた僧たちが,やがて山を下り,斬新な宗教理想を掲げて宗派を立て,仏教を新しい形で発展させた。 それに対して八葉の峰に取り囲まれた高野山は,そこから新たな時代思想を生み出すことはほとんどなかった。それよりも戦いに敗れ,また生きることに希望を失った人々を,思想や宗教の差別を超えて受け入れ包み込む,癒しの場として民衆の間で受け入れられてきた。(p15)
● もうひとつ転載。最近は外国人の観光客が増えていると紹介しているところから。
 高野山ではじっくりこもって,むずかしい哲学的な思索を巡らし,独自の理論を構築するよりも,無心に五感を研ぎ澄まし,宇宙の果てから忍び寄る霊気の,声なき通信を体で受け止め,身につける。こういったことに時を過ごすのにふさわしい場所だということに,改めて気づかせてくれたのも海外からの旅行者だった。(p190)

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