2014年8月7日木曜日

2014.08.06 石田ゆうすけ 『いちばん危険なトイレといちばんの星空』

書名 いちばん危険なトイレといちばんの星空
著者 石田ゆうすけ
発行所 幻冬舎文庫
発行年月日 2010.07.10(単行本:2005.02)
価格(税別) 600円

● 自転車で世界を一周して,その紀行文を出す。そうして出された紀行文はけっこうあるんじゃないかと思う。その中で初めて読んだのが『行かずに死ねるか!』だった(と思う)。
 とても幸運だった。その後,いくつか読んでみたけれども,ぼく的にはこれが一番面白い。ここまで書かれてしまうと,後に続く人はなかなか大変だろうな。

● この本は,その自転車世界一周から,数々の世界一(だと著者が思うもの)を集めた。もちろん,何が世界一なのかはどうでもよくて,それらをめぐる著者の文章を味わえばいい。

● なぜ面白いのか。第一に先を急がないこと。おもうさま寄り道する。第二に自身が面白いこと。第三に,人見知りしないこと。面白い人は面白い人を引き寄せるのだろう。したがって,面白い出会いが次から次へと起こる。
 第四に,舌の感覚が優れていること。料理好きでもあるらしい。メシが美味いか不味いかは,訪れた先の印象の形成に決定的といってもいいほどに作用する。この食に特化した『洗面器でヤギごはん』も著者は書いている。明日,読むつもり。とても楽しみだ。

● 著者は高校では陸上部だったらしい。運動能力が高いんでしょうね。じつは,これが最も大事なことかもしれないな。これがないと寄り道を億劫がるかもしれない。
 っていうか,これがなかったら自転車で世界一周の旅に出るなんて,端から考えないだろうし。

● 以下にいくつか転載。
 握手をしたあと,彼はギコギコを音をたて,コートジボワールに向かって走り出した。けっきょくビザを持たずに。何度か説得したのだが,彼は「大丈夫大丈夫,なんとかなるよ」と笑って取り合わなかった。 おそらく,リーさんは国境で追い返されるだろう。そして,これからもさんざん無駄足を踏み,道に迷い続けるのだろう。でもぼくは,そんな彼に羨望のようなものを抱いていたのだ。 道の上に棒を立てて,倒れた方向に歩いていく。子どものことに抱いていた旅のロマンを,彼に姿に重ねて見ていた。情報収集に努め,効率的に旅をすすめようとするぼくなんかより,ずっとのびのびして,自由ではないか。(p218)
 旅の質を重視するなら期間は長くてもせいぜい一年が限度じゃないだろうか。 旅が長くなればなるほど,言い方を変えれば,毎日変化だらけの日々がつづけばつづくほど,感受性はすり減っていくように感じられる。(p273)
 これだけ空漠とした“無”の世界では,もしかしたらすべての感覚が崩れだすのだ。そして,脳は常識の枠から解きはなたれ,際限なく自由になる。そう。もともとこの世界には,“色”も“形”もないのだ。すべては自分の脳がつくりだしているのだ。だから,自然も,町も,人も,国だって,いくらでも形を変え,色を変え,そして,広がっていく・・・・・・。(p307)

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