2014年6月16日月曜日

2014.06.16 ゲッツ板谷 『メタボロ』

書名 メタボロ
著者 ゲッツ板谷
発行所 幻冬舎文庫
発行年月日 2012.10.10(単行本:2010.04)
価格(税別) 648円

● 『ワルボロ』後の1年間。この話はほぼ実話に近いのだと思うんだけど,何とも濃い1年。高校1年生でこれかよ,っていう感じの。見過ぎ世過ぎといっていい暮らしを半ば強制され,半ば自分から飛びこんでいく。
 新たに登場する同級生の植木と鬼。テキヤ稼業で知り合う清美,ヤクザの叔父である猛身と満。いずれも(小説の登場人物としては)魅力的な面々だ。

● ヤッコがずっと奥に引っ込んでしまうのだが,鬼がその分を埋めて,物語が立体的になった。『メタボロ』で最も魅力的な人物を一人あげろといわれれば,この鬼でしょう。強くて影があって,しかし幼気を感じさせるほどに人情に厚い。自分に好意を寄せる人に弱い。
 主人公のコーチャンがまさしく主人公然としてくる。物語の中心人物になる。居場所のないところに居場所を作っていく。

● 進学した高校が違えば,中学のサークル仲間は容赦なく解体する。コーチャンの錦会も例外ではない。
 にしても。ヤッコはどうしちゃったんだよと読み手も思う。作者の他のエッセイふうの作品に,キャームはしばしば登場するけれども,ヤッコはまったく出てこない。
 たぶん,この小説においてもコーチャンとは別の世界に進むことになるんだろう。あるいは,ひょっとして死んでしまうのか。というようなことを考えさせる。

● 次作の『ズタボロ』はすでに出ている。だけども,宇都宮の本屋にはないんですよ(全部まわったわけではないんだけど)。幻冬舎は文庫化するのが早いから,もうすぐ文庫で登場するのかもしれないけど。
 このシリーズは4部作になるらしい。完結すれば,他に例のないピカレスク・ロマンがこの国にそびえ立つことになる。大げさなもの言いですか。いや,そんなことはないと思うんですよね。

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