2014年6月12日木曜日

2014.06.11 永江 朗 『批評の事情』

書名 批評の事情
著者 永江 朗
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2004.09.10(単行本:2001.09)
価格(税別) 820円

● 「一九九〇年代デビュー,もしくはブレイク」した批評家を取りあげて,レビューしたもの。取りあげられた批評家たちは,次の44人。社会評論,文芸評論,芸術評論から自動車評論,美容評論にまで及ぶ。
 「不良のための論壇案内」が副題となっているが,当時,不良とか不良のためのという言い方が流行ったんだろうか。
  宮台真司(1959) :( )は生年
  宮崎哲弥(1962)
  上野俊哉(1962)
  山形浩生(1964)
  田中康夫(1956)
  小林よしのり(1953)
  山田昌弘(1957)
  森永卓郎(1957)
  日垣 隆(1958)
  大塚英志(1958)
  岡田斗司夫(1958)
  切通理作(1964)
  武田 徹(1958)
  春日武彦(1951)
  斎藤 環(1961)
  鷲田清一(1949)
  中嶋義道(1946)
  東 浩紀(1971)
  椹木野衣(1962)
  港 千尋(1960)
  佐々木 敦(1964)
  阿部和重(1968)
  中原昌也(1970)
  樋口泰人(1957)
  安井 豊(1960)
  小沼純一(1959)
  五十嵐太郎(1967)
  伏見憲明(1963)
  松沢呉一(1958)
  リリー・フランキー(1963)
  夏目房之介(1950)
  近田春夫(1951)
  柳下毅一郎(1963)
  田中長徳(1947)
  下野康史(1955)
  齋藤 薫
  かづきれいこ(1952)
  福田和也(1960)
  斎藤美奈子(1956)
  小谷真理(1958)
  小谷野 敦(1962)
  豊崎由美(1961)
  石川忠司(1963)
  坪内祐三(1958)

● このうち,ぼくが1冊でも読んだことがあるのは,田中康夫,日垣隆,岡田斗司夫,鷲田清一,夏目房之介,福田和也の6人に過ぎない。複数読んでいるのは,岡田斗司夫だけ。
 
● 「ちょうど10年間(1990年代)の真ん中には,阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件という大事件があって,「日本の土建技術や工業技術は世界一だ」とか,「日本の治安は世界一だ」という自信が一気に吹き飛んでしましました」(p13)という記述がある。
 こうした出来事の影響に敏感であることが,批評家の資質として大変大事なものになるのかもしれない。こういうものに鈍くちゃどうにもならないのかも。
 とはいっても,現在においても日本は世界でも例外的に治安のいい国であり続けていると思われるし,アメリカに対してもドイツに対しても特許収入は黒字だ。しかも,黒字幅は毎年増大している。工業技術は世界一なのではないか。

● そうした出来事は日本の致命傷にはならなかった。台風で大雨が降っても,その大雨が永久に続くと考える人はいない。必ずやむ。やめば旧に復する。それを知らない人が批評家になるのかとも思っちゃったりね。
 瞬間風速に生きる人たちなの,世間を微分しすぎなんじゃないの,とか思った。たぶん(というか確実に),ぼくが浅はかなんだと思うんだけど。

● 以下にいくつか転載。
 店による客の選別に怒るということは,同時に「カネさえ払えば何をやってもいいだろう」という驕り高ぶりとも表裏一体なのだ。いくらカネを積んでも得られないものはある。(p61)
 いいかげんなライターは,この基本取材の部分で手を抜いてしまう。いちばんありがちなのは,新書で出ている概説書を読んで事の全体像をつかみ,次に「Aは危険だ」という論調の本を読み,さらに「Aは危険だ,というのは間違っている」という論調の本を読む。そえから当事者や事情をよく知っている人に話を聞く。この程度で済ませてしまう。(p93)
 一時期,「母原病」などという無神経な言葉が使われたり,あるいは,いまでも精神疾患の理由を母親の育て方に帰したり,あるいは家庭環境に求めたりする評論家がいる。しかし,そんなものは「子育て論」の域を出ないし,精神病患者や心身障害者の母親や家族を追いつめるだけで,それで患者の病が癒えるわけでもなければ,障害者が生きやすくなるわけでもない。(p157)
 そもそも,〈普通の家庭〉〈普通の家族〉なんてない。一人親だったり,夫が失業していたり,息子が不良で少年院に入っていたり,娘が新興宗教にはまっていたりと,どこかしらに〈異常〉を抱えている家族こそが,実は〈普通〉だったりする。すべての〈異常〉,すべての〈特殊〉こそが〈普通〉なのであり,〈普通一般〉などというものは存在しない。(p265)
 この国は誰もが被害者を名乗り,弱者を装いたがる。なぜなら,弱者こそいちばん強いことを知っているからだ。もっとも,本当の社会的弱者は,声を上げることもできずに踏みつぶされていくのだけれども。(p336)

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