2014年6月5日木曜日

2014.06.04 木村俊介 『仕事の小さな幸福』

書名 仕事の小さな幸福
著者 木村俊介
発行所 日本経済新聞出版社
発行年月日 2014.04.25
価格(税別) 1,500円

● インタビュー集。インタビュイーは次の18人。小説家が多いのは,著者の嗜好だろうか。
 箭内道彦(クリエイティブ・ディレクター)
 角田光代(小説家)
 津村記久子(小説家)
 山口絵理子(デザイナー・起業家)
 池井戸潤(小説家)
 古賀絵里子(写真家)
 慎泰俊(投資家・NPO法人理事長)
 木原直哉(ポーカープレーヤー)
 安部龍太郎(小説家)
 柳川範之(経済学者)
 三上延(小説家)
 きたみりゅうじん(イラストレーター・漫画家)
 新海誠(アニメーション映画監督)
 伊集院静(小説家)
 高井研(地球生物学者)
 中村文則(小説家)
 為末大(元陸上選手)
 佐藤真海(陸上選手)

● 「取材者の発する,インタビューの触媒としての言葉はひとことでも削りたい」(p5)という方針で,インタビューの結果を文章化している。それがいいのかどうかについては,たぶん異論があるに違いないけれども,この方法において著者は巧みだ。

● こういうものから転載するのは,あまりというかまったく意味のないことかもしれないが,以下にいくつかを。
 会社で弱い立場でいるとは,仕事に魂を売らないでいいということでもある。(津村記久子 p41)
 デザインも全くの素人としてはじめたのに,なぜ,今は「温もりが最も大事」と言い切れるようになったのか,ですか。それは・・・・・・自分で出した答えだからです意思決定の場面で若いスタッフたちに問うのも,ほんとうに自分で考えてそう思うのか,なんですよ。(山口絵理子 p47)
 なぜ,そこまで時間をかけて仕事をするのかと言うと・・・・・・こちらが本気にならないと,向こうも本気になってくれないからです。(古賀絵里子 p68)
 ぼくが他人に勝ることって黙々と続けることぐらいなんですが,それを実現するには結果に一喜一憂しないことだと思っています。(慎泰俊 p78)
 フリーでやってきた身からすると,いわゆるメディアでよく見かけるような言説は「ものすごく無責任だな」と思いますね。とくにビジネス関連の本ですよね。(中略)それなのに信奉者たちはそのつどあおられて,また大きな声でその演説を増幅させる・・・・・・。書いている人はそれで食っているだけで,きみたち信奉者がいなくなったらやっていけなくなるような人なんだよ,とは思うんです。(きたみりゅうじん p138)
 もうひとつ大事なことは,若い時には,物事をトータルで考えないほうがいい,という姿勢かな。(伊集院静 p166)
 色川武大先生は,昔,コンピュータゲームが流行って「ひとり遊びの子どもが増えた」と社会問題になった際に,いいことを言ったんです。あれはひとり遊びじゃない,と。「夜に日本の家々の屋根を開けて空から各家を見てみたら,全員,同じことをやっている。全員遊びなんだ。(中略)」とおっしゃった。その通りで,コンピュータをやることの欠点は均質化にある。(伊集院静 p169)
 誰もやれない分野を切り拓くことだけが研究者の存在意義なんです。リスクを取らなければゲインはありません。安易な道からは大成功はないのに,今は役人だけでなくあらゆる人がリスクを冒そうとせず,自分だけは小さな成功をとろう,あるいは難を逃れようとしますね。(高井研 p178)
 欧米では研究者が一般の方の前で話す際,明らかに専門家にしかわからない単語や議論も訊き直されませんから。科学を楽しむのは限られた上流階級という前提で,意地悪な見方をすれば知ったかぶりを楽しむサロンみたいになっているのが欧米における科学のアウトリーチ(専門知識を伝える活動)の現状なんです。(高井研 p181)
 これだけ科学に興味を持つ国民が多い国もあまりなくて,アウトリーチの多様さに関しては,ぼくが日本が世界で最も素晴らしいと思います。(高井研 p182)
 天才的な人って答えを先に持っているんですよね。考えてみれば当たり前で,人の脳は無意識学習が大半で,直感は無意識が出した結論だから,「わかっちゃうけど,なぜわかったのかはわからない」状況も充分に起こり得るというだけのこと。(高井研 p182)
 トップアスリートというのはダイエットをしようと思ったら絶対やり抜けるからすごい,みたいな人ではなく,むしろあう方法でダイエットをせざるを得ない環境を作って場所や時間を制御できるみたいな優秀さがある場合も多い(為末大 p200)
 しあわせにも飽きるし,どんなすばらしい人と一緒にいられても孤独はある。(為末大 p207)
 実は海外に遠征をするようになってから練習の量は減らして,それで記録が伸びているんです。それも海外で量を追って練習した際,「本番でそんな跳び方はしないだろう?」と言われ,練習も一本ずつ試合のような走り幅跳びにしたからで。跳躍フォームを変えたのもやはり,同じ練習では同じ結果しか出ないと海外で言われたことをきっかけにして,です。(佐藤真海 p214)

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