2014年5月12日月曜日

2014.05.11 小沢昭一 『日々談笑 小沢昭一対談集』

書名 日々談笑 小沢昭一対談集
著者 小沢昭一
発行所 ちくま文庫
発行年月日 2010.06.10(単行本:2000.10.30)
価格(税別) 860円

● 芸能談義。吉原談義。遊び談義。食談義。面白いことは言うまでもない。今となっては,史料的な価値もあるだろう。

● まず,柳家小三治さんと。
 あの,うまく見せることは努力すれば誰でもできるんです。その上ですよ,落語でもねえ,うまいなあ,とかっていうのはねえ,これはまだ駄目なんですよ。その先に・・・・・・。 洗いあげてしまわないもの,ほんとうに素朴なもの,持っている魂だけで,漂ってくるようなもの。それがねえ・・・・・・。(柳家 p45)
● 松島トモ子さんとトイレのあれこれ。高山の蒔絵が施されたトイレの話には驚いた。贅沢さにおいてインドのマハラジャのトイレをしのぐという。なるほど。
 昭和の初めに育った人間は,戦争のこともあるけれど,働くことが尊くて遊ぶことは罪悪だ,遊び人というのは人間のクズだ,と。だから遊び下手なんです。ずいぶん僕も遊んだけれども,つねに一生懸命遊ぶ,というナサケなさ・・・・・・。その遊びがまた営業になったりするところがあって,なんにもならない。(p64)
● 金子兜太さんと戦中派の世代論。
 中学校に入ってからですけれども,クラスに一人,反戦的なことをいう男がおりましてね。僕なんかはそれを反戦とも理解できなかったんです。変人といいますかね。 そのような感覚でしかその男をとらえられなかったことをいま非常に恥じますが,しかし,そうであったことは事実ですね。(p107)
 金子 僕は俳諧をやっていてよく思うんですけどね,俳句仲間だとね,例の兼業農家,三チャン農家というやつですな。あおの兼業農家のおじさんとかおばさんが意外にしっかりしているんですよ。よき俳人なんですね。生活姿勢がしっかりしているし,句もいいわけです。 小沢 そういう方たちは,面白ければ面白い,つまらなければつまらない,ごたくは並べません。何もかもお見通しで,都会のモダニズムなんかにごまかされないというジトッとした怖い目で見据えられているという感じを僕はもっています。(p121)
● 高瀬礼文さんとそば談義。
 僕は,料理人っていうものに,僕らの立場と,とっても近い感じをもちます。一種の技芸人とでもいいますか。単に腕一本で,おいしい料理を出すとか,見た目美しく盛り付けるとかだけじゃなく,お客と勝負していく。どうだ,こういうものがおまえらにわかるか,わかんねえだろう。(p125)
 ふつう,名人っていうもののニュアンスのなかに,一道を貫くっていうことがありましてね。それはすばらしいこととされているんですが,あれには非常に,まやかしとか,胡散臭いものとかが混ざり込んでいる場合がある。少し乱暴にいいますと,あれはね,自分の人生を無反省に美化して,納得して,自分で自分の一生を安易に終わりにするような,そんな陶酔がありましてね。むしろ日本人の恥部というか,弱点ではないでしょうか。(p125)
 なんとかね,ここで一生懸命働いて,この店をものにしてやろうという若夫婦。子どもを育てている最中の若夫婦。人もやとわずに,二人で一生懸命やってる店って,たいていおいしいです。(p129)
 僕らの商売もね,売り出そうというね,恥も外聞もかなぐりすてて,今やらないことには芸能人として認められないっていうときが,一番使いごろ,おもしろい。そのうちに,やがてベテラン,功なり名遂げてくるとですね,あとはもうロクな仕事にならなくなってくるのが多い。(p130)
 ちかごろは感性ばやりですから,どんな感性でも感性なんでしょうけど,でも感性,感性って,何百年もかかって,大勢の人間が智慧を積み上げてきたものをね,昨日今日の感性で簡単にきらいだなんてね・・・・・・。(p134)
● 郡司正勝さんと吉原について。
 浅草の三社様(浅草神社)の境内に久保田万太郎先生の句碑と並んで,吉原の粧太夫の献碑がございますね。吉原を称揚するために敢えていうんですが・・・・・・万太郎先生のほうは独特の,クチャクチャした小さい字でよく読めない。粧太夫はすごい達筆で,大変な教養の持ち主であることが字からうかがい知れます。あれはびっくりする。(p141)
 太夫ってのは,書とか和歌とか句とか将棋,碁まで勉強した。大名の相手もできるという教養を身につけているのが,太夫の資格なんです。(郡司 p141)
● 網野善彦さんと被差別民と芸能の歴史について。
 周防猿まわしの復活は,お兄さんのほうもそうですけど,弟さんの猿舞座のほうも,猿まわしで食べていこうとしたところが,猿まわし復活のキー・ポイントでしたね。「保存会」というのは,やっぱり駄目ですね。 芸能に関しては,商売にしよう,稼ごうというのがないと駄目だと,かねがね思っていましたが,本当です。(p194)
● 清川虹子さんと浅草の笑いについて。
 やっぱり浅草がいちばん修行になった。だってあなた,浅草ではお客が吉原の帰りでしょ,遊び疲れてダレてるんですよ。 だから,ちょっとやそっとのおもしろさじゃ笑わないのよ。泣くのはすぐに泣くんですよ。だけど笑いませんよ。(清川 p223)
● 井上ひさし,関敬六さんと,渥美清を語る。
 もう,あの人(渥美清)にかかったら誰だって食われちゃうんです。僕が観たかったのは,藤山寛美さんが渥美さんに食われちゃうところだな。(p247)
● 阿川佐和子さんとの四方山話。
 テレビの機械っていうのは,映画のそれと違って何だか知らないけどみんな吸いとられてしまう。生きる力も精気も。 人間の生きている時間の何倍もの時間を吸いとってしまうバキュームです。あれでいい年して平気で出ている奴は,差し障りがあるかな,相当の神経してますね。根本のところが違ってないとダメ。(p283)
● ほかに,内海好江,バルタバス(騎馬劇団を主宰するヨーロッパ人),佐野洋子,小宮悦子,立木義浩,黒鉄ヒロシ,柴田政人の諸氏が登場。

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