2014年4月17日木曜日

2014.04.17 『作家の履歴書』

書名 作家の履歴書
発行所 KADOKAWA
発行年月日 2014.02.28
価格(税別) 1,300円

● 「21人の人気作家が語るプロになるための方法」が副題。作家になりたいと考えている若い人たちに向けてのもの。
 作家ってミステリアスな職業だと思っていた。今も思っている。音楽の演奏家なら小さい頃から楽器をいじってなければならない。その中の才能豊かな人がなるものだろう。長じてからでは遅い。将棋指しや碁打ちもそうだ。
 作家はそういうものでもない。作家になるための一般的なコースも存在しない。作文が上手だから作家になれるとは,もちろん限らない。どういう人がなるものなんだろうか。

● 病気や貧乏を経験してないとダメだとか,女遊びで身上を傾けたことがないと書けないとか,無頼であることが条件だとか,いろいろ言われた時代もあったのかもしれない。
 が,サラリーマンのように規則正しく仕事場に通っている作家もいるようだ。何が必要条件なのか。そもそもそんなものはないのか。

● 阿川佐和子さん。
 いろんな作家の話を聞くと,大変なものを背負っている方が多いんですね。そういう人と比べたら,私は(中略)何も背負ってないんです。(中略) じゃあ,そういう人間は小説を書いちゃいけないのか? って考えると,人間の物語はほとんどが本当に些細なことの積み重ねなんじゃないの? って思えてきて。些細なことで悲しんで,勇気づけられて生きてるんじゃないの? って。そう思ったときに,私は些細なことを何とか書いていこうという開き直りのような気持ちが生まれてきたんです。(p10)
● 石田衣良さん。
 作家には二パターンあると思うんです。みんなが見ているものを見る人,これは腕がよければ大当たりします。もうひとつがみんなと違うところを見る人。世の中全体の考え方感じ方に,もうひとつ別の見方を提示する人。(中略)これは作家の資質なので変えようがないんですけどね。(p19)
● 江國香織さん。
 私はほかのものにはなれなかったと思います。作家ってわりと性質だと思うんです。職業として成立するかどうかはまた別の話ですけど,性質としては私はもともと作家だった気がします。(p26)
● 大沢在昌さん。
 チャンドラーが自分にとっての神様になって,こういう小説を書きたいと思った。中学二年から三年にかけての一年で百二十枚の作品を書き上げて,それがすごくうれしくて,作家に,それもハードボイルド作家になりたいと思った。(p31)
● 北方謙三さん。
 (志望動機は)高校三年のときに肺結核と診断されたこと。「就学不可」って言われて,これではまともなところには就職できないと思った。(中略) 療養を兼ねて一年浪人しても治らなかったから,診断書を偽造して高校の保健室にもぐりこんで勝手にハンコを押して,なんとか大学に入った。(p55)
 中上が芥川賞をとった『岬』を読んだとき,おれだったらもっとうまく,流麗に鮮烈に書けると思った。だけどおれには書く材料がない。中上には血とか育ちとか,書く必然性がある。どんなに悪文でも,汚濁を書いても,汚濁の中に一粒の真珠がある。 自分は文学をやるために生まれてきたんじゃない,という痛切な自覚。これは言葉では表現できないな。 でもしばらくたって,おれにあって中上にないものがあるはずだって反問が生まれてきた。物語だ。物語を書こうって思った。(p56)
● 桜庭一樹さん。
 ヘッセの『知と愛』にもかぶれましたし,ガルシア=マルケス『百年の孤独』も読んでしばらくおかしくなった。異世界から帰ってこられなくなるような感覚はいまでもありありと思い出せ,それは書くときの感覚にも近い気がします。(p83)
● 誉田哲也さん。
 書いていくうちに自分なりの方法論ができました。まず最初に二千字で梗概をつくる。二千字にならなかったらまだネタが足りない。二千字に収まるように書くと,大事な部分だけが残るんです。プロット表もつくって,どこで誰が何を知るのかっていうところまで全部組み立てたうで書き始めます。(中略) 「今回,たまたま書けました」っていうのはいやなんです。創作をビジネスとしてやっていきたいので,どんなアイデアでも最低五十点は取れるように持っていくためのスキルが必要です。(p139)
● 道尾秀介さん。
 絶対条件が,やったことがないことをやる,使ったことのない主人公を書く,小説でしかやれないことをやる,でその三つをずっと守っています。いままでやったことがないって確信が持てるまで書き始めません。主人公を決め,全体のテイストが決まったら,昔なのか現代なのか,主人公は弱いのか強いのか,スタート時点で不幸なのか幸せなのかが,だんだん決まってくる。冒頭とラストが何となく浮かんだら,冒頭を書いてしまうんです。(p146)
 高校生のころ,ずっとバンドをやっていたので,ライブハウスに出入りするなかで,いろんな大人とつきあったんですよ。(中略) ひと言でいうならいろんな人生があるということを実感したんです。あの時,もし家で本を読んでいたら,ぼくは作家になれなかったと思うんですよ。(p147)
● 森村誠一さん。
 大学を卒業してホテルに勤めました。作家になるにはすごくいい職場でした。ホテルほど人間が無差別に集まる場所はありませんから。(中略)人間のライフスタイルすべてがわかる。そういう仕事ってほかにないんじゃないでしょうか。(p160)
● というわけだから,本書を読んだあともなお,作家という職業はミステリアスのままだ。

● ほかに,以下の作家たちが語り部として登場している。
 荻原 浩 角田光代 北村 薫 小池真理子 椎名 誠 朱川湊人 白石一文 高野和明 辻村深月 藤田宜永 皆川博子 夢枕 獏

● それぞれの作家たちが「編集者への要望」を語っているんだけど,これも千差万別。編集者にとっての“作家とのつきあい方”にも方程式はない。編集者も大変な職業だな。

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