2014年3月11日火曜日

2014.03.10 中川右介 『クラシック音楽の歴史』

書名 クラシック音楽の歴史
著者 中川右介
発行所 七つ森書館
発行年月日 2013.07.01
価格(税別) 1,500円

● 副題は「88の人と事件と言葉」。88の短篇読みきりで,原始時代から今日までの音楽を俯瞰する。もちろん,メインはバロック以降となる。
 ぼくとしては,まったく疎い20世紀音楽についての解説が新鮮だった。

● 「クラシックジャーナル」の編集長を務めている。職業がらか,文章が読みやすい。わかってもわからなくてもいい,わかる人だけがわかればいい,という書き方は排されている。
 音楽のみならず,その背景となる社会体制や人々の生活の仕方の変化も視野にいれて,解説されている。本書から推測される著者の読書量,渉猟している文献の質量には,目が眩む思いがする。
 当然,読んでるだけじゃなくて,CDも聴き,舞台に足を運んでいるわけだから,その活動量はちょっと想像がつかないくらいだ。

● 書く範囲もクラシック音楽に限らず,歌舞伎や現代のいわゆる芸能界など,多岐にわたる。そのすべてに付き合うには,こちらの器が小さすぎる。

● 以下にいくつか転載。
 バロックの革命とは何を否定したのか。ルネサンス時代に芸術において重要視されていたのは「均衡」と「調和」。それをバロックは否定したのである。当然,バロックの特徴は「不均衡」と「不調和」となる。そうなったとき初めて,それぞれの作曲家の「個性」が生まれた。「均衡」と「調和」を目指せば,結果的に誰もが同じようなものを作ってしまう。そころが,「不均衡」と「不調和」になると,人によって異なってくる。(p30)
 レコードというものが,単に「演奏されたものを記録し,大量に複製する」ものではなく,録音により新たな創造物ができあがることを,ビートルズとグールドは示したのだ。(p236)
 同世代の他の演奏家のCDが売れなくなっても,(カラヤンが)いまだに売れ続けているのは,そこに普遍的な美があるからだ。その美は,「表面的なだけ」「底が浅い」「あざとい」とも批判されたが,これだけ表面的に美しい音楽を造形できた指揮者は他にいない。それとも,美しくない音楽のほうがいい,と言うのか。 「精神性」という,わけの分からないものをありがたがる人には,カラヤンは評判が悪い。カラヤンを批判すれば,自分は音楽がよく分かっていると思い込んでいる人も多い。そういう意味で,カラヤンをどう評価するかでその人の音楽観が分かる。(p241)
● というわけだから,『音楽の友』なんかを愛読している真面目な音楽愛好家には,著者のものはあまり読まれていないかもしれない。

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