2013年12月31日火曜日

2013.12.31 養老孟司 『まともな人』

書名 まともな人
著者 養老孟司
発行所 中公新書
発行年月日 2003.10.25
価格(税別) 700円

● 「中央公論」に連載された時評をまとめたもの。連載は2001~2003年。今となっては昔。当時,大きな問題になっていたのは教科書検定,ニューヨークの世界貿易センタービルを舞台にした自爆テロ,オウムのサリン事件,地球温暖化など。
 が,そういうこととは関係なく,今でも面白く読める。

2013年12月30日月曜日

2013.12.30 番外:栃木の一流店大図鑑2012

編者 石川高恵
発行所 株式会社プロジェクト
発売年月日 2012.03.22
価格(税別) 648円

● 作成する側が,栃木県のこれが一流店だと考えたところを取材したのではなくて,広く声をかけて,応じてくれた店や会社を掲載したもの(だと思う)。当然,お金を取って載せているんだろうから,態のいい広告集のようなものだ。

● こういうものは他県の人が見るとは思えないから,栃木県限定販売のはずで,そうすると,読者は地元民に限られる。なんでこれが一流なの,おかしいんじゃないの,というところも,まぁ,ありますよねぇ。
 ちなみに,発行元は群馬県の会社。

● 結局,この種のもので,県域限定版を作るのは無理なのかもね。天鷹酒造,二期倶楽部,日光金谷ホテルといった地場モノもあるんだけど,そういったものだけで一冊を編むのはなかなか大変だろう。
 とはいっても,最近,2014年版が出たようだ。がんばってるなぁ,群馬県の会社。

2013年12月29日日曜日

2013.12.29 番外:美食倶楽部 日本一美味しい郷・栃木 心躍らせる珠玉の店50撰

編者 大兼一浩
発行所 新朝プレス
発売年月日 2011.11.25
価格(税別) 1,124円

● 宇都宮のタウン誌「monmiya」の別冊。2009年に初版が出て,2年ごとに新版を出している。最近,第3版が出たけど,ぼくの手元にあるのは第2版。
 「日本一美味しい郷・栃木」っていうのは,いくら何でも看板に偽りありだろうけどさ。

● このガイドブックに紹介されている店の中で,バカ高い料金を取る店はない。あたりまえだ。そんな店は栃木じゃ成りたたない。
 社用の接待だってあんまりないだろう。ゆえに,紹介されている店のほとんどは,個人が自分のお金で行くところだ。ほんのり大衆性をまとうことになる。

● ぼくが行ったことのある店もいくつかある。
 「オトワレストラン」の音羽和紀さんは,「オーベルジュ」の創設者。宇都宮では(たぶん)最も知名度の高いレストランだった。ぼくも高校の友人に教えられて,彼と行った。以後,何度か行った。ぼくが行くくらいだから,お安かったですよ。
 それ以前,同じ友人に「浪漫洞」に連れて行ってもらい,これが事実上,ぼくの遅いレストランデビューとなった。その「浪漫洞」はとっくになくなった。

● 烏山のはずれにある「ステーキハウス クローバー」は今でもお世話になっている。旨ければ辺鄙なところにあってもお客は来る,という典型例だね。
 ちょっと行けば茨城県という立地もあって,駐車場には水戸ナンバーの車も多い。

● 反面,ちょっとどうなのよと思った店も載っている。「テーブルのお客さま一人ひとりのことを思いながら,心をこめて調理しています」などと紹介されていたりする。ウソこきやがれ。

● 食べもの屋の難しいところは,どうしたって飽きられてしまうことだ。それ以前に,作る側が飽きてしまうこともあるようだけど。
 食材や味そのもののはやりすたりもあるだろう。たとえば,ラーメン。まだ濃厚なのが主流だけれども,以前のアッサリに戻りそうな気配も感じる。
 このガイドブックにある店のすべてが,現在でも健在なのかどうか。おそらく,そうではないと思う。

● ところで。自分のお気に入りは,こうしたガイドブックじゃなくて,自分の足で探すものだろう。
 そうしてできたお気に入りが,ぼくにもいくつかある。当然だけど,誰にも教えない。ただ,地元の人はたいてい知ってるわけだけどね。

2013.12.29 番外:自遊人2014年2月号-ラグジュアリーの再定義 「プライスレス」な宿

編者 岩佐十良
発行所 自遊人
発売年月日 2013.12.26
価格(税別) 743円

● 「ラグジュアリーを求める客層に,自宅を超す客質の快適性を提供するのには無理があります。霜降り牛肉も高級ワインもたしかにラグジュアリーかもしれませんが,それらは旅先でなくても得られるものです」(p22)といったあたりから,ラグジュアリーを考えてみようという特集。
 というよりは,編者らがこれだと思うものを具体的に紹介して,その経営者とインタビューを試み,それらを掲載している。

● 具体的に紹介されているのは次のようなホテルや旅館。
  二期倶楽部
  俵屋旅館
  星のや
  西穂山荘
  寝台特急トワイライトエクスプレス
  福地温泉

● 転載をふたつ。
 自然と戯れるには成熟した知性が必要です。(二期倶楽部・北山ひとみ p30)
 日本におけるラグジュアリーを考える時に“豪華”という西洋的な感覚は合わないのではないかと考えています。日本のホスピタリティ,おもてなしには“上質”という言葉がしっくりくる。星のや・星野佳路 p44)
● そういえば,「二期倶楽部」は栃木県那須にあるのだった。すぐ近くに,旅館の「山楽」もある。どちらも栃木県きっての“高級”ホテル,旅館だ。
 こうした“高級”というのは,それ単体では成立しないのじゃないかと思っている。いくらハードに贅をこらし,スタッフを教育し,腕っこきのコックを集め,金に糸目をつけずに食材を揃えたところで,たぶん,うまくいかないのじゃないか。
 それが建つ場所の問題がある。“高級”は場所を選ぶのだ。場の助けがあって,初めて“高級”が“高級”として存続できる。
 「二期倶楽部」も「山楽」も,御用邸があるエリアにある。御用邸あっての「二期倶楽部」であり「山楽」であるのだ。
 ここにあるから,「二期倶楽部」は「二期倶楽部」でいることができる。「山楽」が「山楽」でいられる。他所ではダメだろう。

● 「二期倶楽部」も「俵屋旅館」も憧れですね。一度は泊まってみたい。同時に,自分のような者が足を踏み入れてはいけないところだとも思うんだけど。
 料金はびっくりするほど高くはない。1泊2食付きで,「二期倶楽部」は4万円,「俵屋旅館」は5万5千円程度のものだ。どうにかできない額ではない。
 おそらくだけど,実際に行ってみれば,なんだこんなヤツも客になっているのか,って思うに違いない。自分で勝手に敷居を高くしててもしょうがないやね。

● とはいえ,勝手にイメージをふくらませて,それに相応しくなれるまで我慢しようというのも,イメージの使い方としては悪くはないかもしれない。

● 「自遊人」って雑誌,金沢倶楽部から出ていた「TOKIO STYLE」にテイストが似ているような気がする。

2013年12月28日土曜日

2013.12.27 清水玲奈 『世界の夢の本屋さん3』

書名 世界の夢の本屋さん3
著者 清水玲奈
発行所 エクスナレッジ
発行年月日 2013.11.21
価格(税別) 3,800円

● シリーズ3冊目。メキシコシティ,サントリーニ,ミラノ,ポルト,リスボン,パリ,ハンブルク,ベルリン,ヘルシンキ,コペンハーゲン,オスロ,ロサンゼルス,サンフランシスコ,ニューヨーク,オハイ,シアトル,アニック,ヘイ・オン・ワイ,ロンドンと,中北米・ヨーロッパの31の書店が紹介されている。
 本屋(の写真)を通して世界旅行するといった趣のガイドブックですか。パラパラとながめていると楽しい。

● いくつか転載。
 メキシコ人の平均読書数は年間一人0.5冊で,電子書籍の普及も遅れています。(カフェブレリア・エル・ペンドゥロ p13)
 一度読書の楽しさを知れば,あとはいくらでも読みたくなります。だから,子どもに本の世界を教えてあげるのはとても大切ですし,私は読書が苦手という人が店に来てくれたときこそ,何とか夢中になれる本に出会ってもらおうと,全力を尽くします。(アーノルド・ブスク p109)
 ぼくのムスコに教えてやってもらえないだろうか。まったく本を読まない子ども(っていうか,もうハイティーン)なのでね。
 これは親にはできなそうなんだよね。他人じゃないと効き目がない。
 お客さんは年齢層も階層も幅広く,1ドルの古本で真剣に悩む人も,どんな本でも値段を見ないで買う人もいます。僕が何よりも大切にしているのは,すべてのお客さんと友達になること。(ラスト・ブックストア p130)
 本好きだったら,たとえ値段は1ドルであっても真剣に選ぶよね。お金のあるなしにかかわらずね。

2013.12.26 養老孟司 『超バカの壁』

書名 超バカの壁
著者 養老孟司
発行所 新潮新書
発行年月日 2006.01.20
価格(税別) 680円

● 身の上相談を「編集部の人がまとめて,それに答える形で作ったのが,本書である」。

● 以下に転載。
 仕事というのは,社会に空いた穴です。道に穴が空いていた。そのまま放っておくとみんなが転んで困るから,そこを埋めてみる。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものであって,自分にあった穴が空いているはずだなんて,ふざけたことを考えるんじゃない,と言いたくなります。 仕事は自分に合っていなくて当たり前です。(p19)
 本当に大切なのは先見性ではなくて普遍性なのです。その人が普遍性を持っていたらいつか時がくる。その人に合った時代が来るのだと思います。無理やり新奇なことをやろうとするのではなく,できるだけ普遍性を目指したほうが,結果的に先取りになっていることがある。(p31)
 大事なのは脳をどういう状態に置いてやるかなのです。だから身体を変な状態に置いたり,極限状態に置いたりすれば,人間というのはすぐ狂うし,とんでもなかう悪いことをする。(p41)
 免疫学者の多田富雄さんは「女は実態だが,男は現象である」と言いました。これは男女の違いを実によく言い表した名言だと思います。これに尽きるといってもいい。 言い換えれば女のほうが無意識に基づいて行動するということです。身体に基づいているといってもいい。男の方が意識中心で,頭でっかちになりがちです。(p61)
 自分の筋というものにとらわれると損をします。自分に対する自分の意見なんて,自分に対する他人の意見よりもはるかに軽いことが多いのです。そんなことに深刻になっているのは,若い証拠です。そういうときなんか,自分はないと思っているのがいい。「私は人の言いなりです」でいいのです。(p185)

2013.12.24 養老孟司 『バカの壁』

書名 バカの壁
著者 養老孟司
発行所 新潮新書
発行年月日 2003.04.10
価格(税別) 680円

● 10年前に出版され,400万部のベストセラーになったことは,もちろん知っているけれども,それを初めて読む機会を得た。
 充分に面白かった。でも,「ああ,面白かった」で終わってしまうのが,読書というもの。

● 以下に転載。
 私自身は,「客観的事実が存在する」というのはやはり最終的には信仰の領域だと思っています。なぜなら,突き詰めていけば,そんなことは誰にも確かめられないのですから。今の日本で一番怖いのは,それが信仰だと知らぬままに,そんなものが存在する,と信じている人が非常に多いことなのです。(p21)
 サラリーマンというのは,給料の出所に忠実な人であって,仕事に忠実なのではない。職人というのは,仕事に忠実じゃないと食えない。(p160)
 意識的世界なんていうのは屁みたいなもので,基本は身体です。それは,悪い時代を通れば必ずわかることです。身体が駄目では話にならない。(p170)
 学者はどうしても,人間がどこまで物を理解できるかということを追求していく。言ってみれば,人間はどこまで利口かということを追いかける作業を仕事としている。逆に,政治家は,人間はどこまでバカかというのを読み切らないといけない。(p182)
 原理主義が育つ土壌というものがあります。楽をしたくなると,どうしても出来るだけ脳の係数を固定化したくなる。(中略)それは一元論のほうが楽で,思考停止状態が一番気持ちいいから。(p198)

2013年12月26日木曜日

2013.12.22 番外:文具自慢

編者 秋葉俊二
発行所 扶桑社
発行年月日 2014.01.01
価格(税別) 790円

● 文具を対象にする雑誌が増えたし,普通の雑誌でも文具特集をしばしば組んでいる印象がある。けれども,ぼく一個に関しては,文具への関心は薄れる一方だった。

● 理由ははっきりしていて,ワープロ,パソコンの普及にある。ペンでノートに何かを書くっていうそれ自体が生活から消えてしまった。
 文章はパソコンで書く。メールとかLINEも使っているけれど,それはスマホで書く。手紙なんかまったく書かなくなっちゃった。

● ところが,今年の6月からノート+ペンを復活させた。パソコンから少し離れてみることにした。こうしてブログなんか書いているんで,まったくアナログに戻ったってことではないんだけど。
 そうすると再び,文具への関心が少し湧いてきたような。

● 若い頃の文具ってのは,恥ずかしながら,ステータスシンボル的なものでしたね。モンブランやクロスの万年筆とかボールペンとか,とにかく飾るために持つ的な。アクセサリーとしての文具っていうか。
 その姿勢って,完全には葬り去れないと思うんだけど,只今現在は実用で選んでいる。

● といっても,ノートとボールペンだけなんですけどね。ノートは無印良品の「開きやすいノート A6・横罫・96枚」。300円。それにコレクトの1,100円のノートカバーを被せて使用。表紙が厚いのと96枚の厚さが気に入っている。つまらぬことをウダウダと書くので,ある程度のボリュームがあった方がいい。
 ボールペンは三菱のジェットストリーム。0.7㎜の黒。100円ちょっとの品ですよね。ペンはいくつか買ってためしてみたんだけど,ジェットストリームに落ち着いた。
 これだけ。あとは本を読むのに付箋を使うんで,百円ショップで購入。

● 高級品の実物をいろいろ見たければ,とりあえず伊東屋に行けばいいですな。文具好きなら豊かな時間が過ごせますよね。夢も見れるしね。
 女性が(たとえば)ティファニーを好む理由が実感できたりもする。

● 以下にいくつか転載。
 思考が残らないほうが良いものはパソコンでって考え方ですね。(中略)悩んだ軌跡が残せるのは手書きの良いところだと思っています。(宇田丸 p17)
 スクラップしても,いらないと思った時点でそのページは破って捨ててしまい,だいたい1~2週間で一冊使い切ります。その間に具体化しないということは,もうその企画は死んでいるということ。そのくらいのスピード感でやらないと,おもしろいものは生まれてこないんです。(テリー植田 p64)
 顔もファッションも完璧な男性がいても,文具がノベルティだったら何にもひっかかりません。別にモンブランのペンを揃えてほしいということじゃないんです。ほんのちょっとのこだわりが,その人の奥行きを感じさせるんです。(菅未里 p71)
 彼女は文具ソムリエと紹介されている人。職業がらそう言いたくなるのはわかるんだけど,ついでにいうとそういうことを言いたがる女の人ってけっこういるんじゃないかと思うんだけど,実用に徹すると,ノベルティを排除する理由はないことになる。
 ぼくの場合も,いくつか試してみて,最終的に残ったジェットストリームの0.7㎜はノベルティだったんですよ。最後に試せたノベルティ製品がとても良かったんですね。自分で買った0.5㎜と芯を入れ替えて使っているけどね。

● 文具が好きすぎてつくっちゃいました,っていう紹介記事もある。
 宮坂弥さんの「伊葉ノート」は面白いと思った。開くと四角ではなく扇形になる。人間工学的には合理的なんだろうね。でも売れないだろうな。保存に不便だから。
 佐川博樹さんの「スライド手帳」も工夫の一品。ページをめくるのが煩わしい,だったらスライドさせればいいじゃないか,と。でも,やはり売れないだろうな。これ,システム手帳なんだけど,スライドさえるためには,その都度リングを開かなくちゃいけない。ページをめくった方が早くないですか。

2013.12.22 番外:別冊宝島2105号-成果を出している人がやっている超手帳術2014

編者 井野良介
発行所 宝島社
発行年月日 2014.01.12
価格(税別) 933円

● 43人の手帳とその使い方をインタビューして掲載。かなりの力作だと思う。

● どんな手帳を使うか。どう使うか。人の数だけ答えがある。
 忙しい人と暇な人(正確にいうと,自分は暇だと思っている人はいないもので,忙しいと思っている暇な人,ということになる),男性と女性,営業職と事務職,学生と社長さん,その他,その他。それぞれ,違って当然だもんね。

● しかし,なんですね,手帳を使いこなすっていうのは,幻想ですかねぇ。ここに登場する人たちも,まだまだ工夫の余地があると思っているんだろうなぁ。
 完成形はないものでしょうね。むしろ完成を目指してはいけないものですか。ほどほどのところで良しとしておかないと,労力が効果に見合わないものになる。完全指向はストレスを産むだけでしょうかね。

● ぼくは,ずっと「Bindex」のウィークリーを使用している。管理を要するほどのスケジュールは抱えていない。いわゆるログを記録している感じ。
 いまどきだと,たいていのところでは,ネット上に自社用のグループウェアを用意しているだろうから,基本,それを使うことになるし。

● 手帳とは別にノートも携帯している。だったら,手帳は要らないかなと思うことはある。スマホも使ってるんだから,デジタル化しちゃってもいいよな。
 ところが,そうはいかない。紙の一覧性,取り回しのしやすさ,機動性は,たぶんデジタルをしのぐだろう(デジタル化したことがないから,比較はできないんだけど)。

● 紙の手帳で唯一心配なのは,生前に処分できるかってことだけだ。手帳,ノート,蔵書。そういうものは遺族に残しても迷惑なだけだと思っているので,生きてるうちに処分しなきゃいけないんだけど,どうもできる自信がない。

2013.12.22 番外:東京カレンダー2014年2月号-男を上げ,男を磨く 格上ホテル活用法

編者 大槻 篤
発行所 東京カレンダー株式会社
発行年月日 2013.12.21
価格(税別) 476円

● 日本最大の観光地は東京だ。京都でも奈良でも日光でもなく,東京。それは定期観光バスの乗客数に明瞭に現れる。「はとバス」はすごい。よそが束になってかかっても,足下にも及ばない。「はとバス」の営業努力ももちろんあるんだろうけど,舞台がすごいからだろう。

● のみならず,ホテルも東京に一極集中。であれば,日本最大のリゾート地も,おそらく東京なのだろう。
 ゴルフ三昧とかマリンスポーツとか,いろんなリゾートがあるんだろうけど,アーバンリゾートと称されるものがリゾートの大宗になっているっぽい。であれば,水準の高いホテルが集中している東京は国内リゾートのメッカだ。

● 香港,シンガポールは東京以上か。ぼくのわずかな経験によると,否。東京がいい。最大の理由は,日本語が通じることだ。
 それに,同じブランドのホテルでも,東京の方がサービスのきめが細かいように思える。こちらも日本人だからか,スタッフの気働きが素直にすごいと思えることが多い。

● その都内のホテルを特集。格上ホテル活用法と銘打っているけれども,格別の活用法が披露されているわけでもない。いくつかのホテルのいろんな場所をラグジュアリーな写真でご紹介。
 ついでに,それに合うような車や靴や服や腕時計をご紹介。当然,これらのメーカーからお金がでているんでしょ。
 それらの写真をパラパラとながめてため息をつくのが,本書の活用法。

● 美人ドックなんていうプランもある。美容クリニックの施術が受けられる。2泊3日で,363,450円。ぼくにはお金を捨てているとしか思えないんだけど。
 正月の高級おせちも,何だこりゃっていう値段。自家消費ではなくて,誰かとの会食で使うんですか。もっと活きたお金の使い方しろよ,って思うんですけど。世の中にはお金持ちがいるもんですな。
 っていうかさ,お金持ちってこういうところに行くんだろうか。行かないような気がするなぁ。お金持ちになってみたい貧乏人が行くんじゃないの。
 ホテルとか車とか,高級と名のつくものも,正真正銘のお金持ちしか相手にしないのでは,さすがに商売が成り立たないだろう。貧乏人にローンで買わせないと。商売は貧乏人を相手にした方が儲かりそうだし。

● というわけで,こういう雑誌を買うのも,一般大衆ということになる。高級なるものに対して,実態以上の幻想を抱きがちな人たちかもしれない。って,自分のことだけど。

2013年12月25日水曜日

2013.12.21 森 博嗣 『臨機応答・変問自在2』

書名 臨機応答・変問自在2
著者 森 博嗣
発行所 集英社新書
発行年月日 2002.09.22
価格(税別) 720円

● 一般人から質問を公募して,構成したもの。前著以上に面白い。
 こういう質問をする人ってちょっとどうなのよ,と言いたくなるようなところもあってね。応募してくれというから応募しただけだ,と言いたいだろうけどね。

● でも,読みものとして充分に面白いのがこの種の本の特徴で,読んで笑っているこちらも,質問者と同じ性向と頭脳の持ち主だってこと。見る阿呆だから,踊る阿呆よりダメポなのかもしれないけど。

2013.12.20 森 博嗣 『臨機応答・変問自在』

書名 臨機応答・変問自在
著者 森 博嗣
発行所 集英社新書
発行年月日 2001.04.22
価格(税別) 680円

● 著者は大学教員時代,学生に質問を書かせていた。その場で質問を受けて答えるのではなくて,紙に書かせて,それに対して文章で答えを書く。毎時間それをやって,次の講義でそのペーパーを学生に配る。
 とんでもない労力だと思うんだけど,すべての講義でそれを実行していたらしい。

● 本書は,その中から講義内容に特化したもの(それがほとんどだったろうが)を落として,ある程度一般的なものを1冊にしたもの。
 面白い読みものになっている。名古屋大学の学生だからといって,格別に賢いわけでもないと思って安心できたり。

● いくつか転載。
 意外にも,教えることのうちの九割方は自分が学ぶことだと気づいて,わりと楽しめるかもしれないな,くらいには思い直せるようになった。逆に,人にものを教えたい人ほど,教育者には向いていないのでは,とさえ思う。(p9)
 人は,どう答えるかではなく,何を問うかで評価される。 たとえば,就職の面接で,「何か質問はありませんか?」と面接員に尋ねられたとき,的確な質問ができるかどうか,そこで評価される。(p13)
 成功するために必要なもののうち,九十九%は努力で,残り一%は才能だといいますが,先生は才能というものが存在すると思いますか? 思います。努力できることが才能。だから,成功は百%才能だと思う。才能は持って生まれたものではなく,思い立ったときに,あるいは,やる気があるときに生まれるもので,いつでも消える。自分自身をどれだけコントロールできるかが才能です。(p111)

2013.12.20 森 博嗣 『大学の話をしましょうか 最高学府のデバイスとポテンシャル』

書名 大学の話をしましょうか 最高学府のデバイスとポテンシャル
著者 森 博嗣
発行所 中公新書ラクレ
発行年月日 2005.10.10
価格(税別) 720円

● 著者がまだ名古屋大学の助教授を務めていたときに出ている本。本書で述べられていることは,大学のみならずたいていの組織にはあてはまってしまうかもしれない。

● たぶん,昔から変わっていないのだろう。組織ができると,放っておけばそうなる。組織は自分で道を造って,その上を走りたがる。これを防ぐには,相当にキャラの立ったトップが必要になるんでしょう。組織改善委員会なんてのを作って議論したところで,実際になされるのは愚論になるんだろう。

2013年12月22日日曜日

2013.12.18 茂木健一郎 『欲望する脳』

書名 欲望する脳
著者 茂木健一郎
発行所 集英社新書
発行年月日 2007.11.21
価格(税別) 700円

● 『論語』にある「七十従心」を起点にして,人生の諸相を考察する。人生というか,人生に対する個々人の姿勢について,色々と考えてみるっていう趣向。
 ただし,相当ハイレベル。読みごたえのある新書だ。ぼくにはどこまで理解できたか心もとない。

● 本書は「生命哲学」の書というのが最も適当だ。
 たぶん,大学の文学部哲学科で高じられているのは哲学史(あるいは,「哲学」学史)であって,哲学そのものは生産されていないだろう。
 哲学の新たな胎動が出てくるとすれば,自然科学の分野からなのかもしれない。

● ワーグナーの「ニーベルングの指輪」への言及が二度ある。なるほどオペラってこういうふうに鑑賞するものなのかと思わされた。
 言われてみればごもっともで,要は,ストーリーを荒唐無稽だと思ってるだけじゃ,初心者以前だってこと。ストーリーのそちこちに,象徴的な意味っていうか,寓意っていうか,そうしたものが散りばめられているんだね。

2013年12月17日火曜日

2013.12.17 伊集院 静 『伊集院静の「贈る言葉」』

書名 伊集院静の「贈る言葉」
著者 伊集院 静
発行所 集英社
発行年月日 2012.10.30
価格(税別) 850円

● 1月の「成人の日」と4月の入社式の日に,サントリーが新聞広告を出す。そこに載せた伊集院さんの文章を集めたもの。第二の山口瞳というか。
 山口さんのはリアルタイムで広告を読むことができた。ずいぶん後の方だけだけど。切り抜いて保存してあって,それは今でも持っている。

● だいぶ前から新聞は取っていないので,伊集院さんの広告は見たことがない。すべて,今回初めて目にする。

● ひとつだけ転載。
 人はこの世に生まれてきた瞬間から何にでも,どんな人にでもなれる可能性を手にしている。このことはどんな時代でも同じだ。生きる上の普遍の可能性と言っていい。君たちの夢はかなうのだ。それを信じなくてはつまらない一生になる。あきらめた瞬間から真の幸福は遠のくものだ。(p6)

2013年12月16日月曜日

2013.12.16 NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ編 『見城徹 編集者 魂の戦士』

書名 見城徹 編集者 魂の戦士
編者 NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ
発行所 KTC中央出版
発行年月日 2001.12.27
価格(税別) 1,400円

● 以前,NHKで放送されていた「ようこそ先輩」を書籍化したもの。一気通貫で読了。落ちこんだときのカンフル剤としては最上のものでしょう。
 この本に登場するのは小学6年生の男の子と女の子たち。今は大学を卒業して社会人になったかどうかの年齢だ。今の彼ら彼女らに,このときのことを訊ねてみたい。

● だれもが見城さんのように生きれるわけではない。なぜなら,彼ほどの欠落を抱えている人は少ないだろうから。正確にいうと,欠落を欠落と認識できる人は少ないだろうから。
 あるいは,たいていの人は小器用に世間に合わせていけるだろうから。

2013.12.14 秋田喜代美監修 『本屋さんのすべてがわかる本1 調べよう! 世界の本屋さん』

書名 本屋さんのすべてがわかる本1 調べよう! 世界の本屋さん
監修者 秋田喜代美
発行所 ミネルヴァ書房
発行年月日 2013.11.25
価格(税別) 2,000円

● 児童向けに世界の本屋を紹介。本屋って,どこの国の本屋も同じようだし,その国をその国たらしめているものが濃厚に現れているようでもある。
 つまるところ,よくわからない。

● で,旅行ガイドとしてぼくはページを繰った。本が基本的には好きだってことがあるんだろう。海外にはあまり行きたいと思っていないけれども,もし行ったときにはこうした本屋を覗いてみたい。
 外国語は読めないわけだから,何が書いてあるのかはわからないけれども,それでもそこで1時間や2時間は過ごせるだろう。

2013.12.13 養老孟司・久石 譲 『耳で考える 脳は名曲を欲する』

書名 耳で考える 脳は名曲を欲する
著者 養老孟司
    久石 譲
発行所 角川ONEテーマ21
発行年月日 2009.09.10
価格(税別) 705円

● 世の中に博覧強記の人はいるものだと思った。養老さんは何ていうのか,基礎から知ってるっていうか,根っこからものごとを見ているという印象。

● 以下に転載。まず,音楽に関する発言。
 とくにクラシックは論理性に傾いている。数学と音楽,なかでも作曲の才能が,個人のなかでもしばしば重なることは,西欧でも古くから知られたことである。(p3)
 音楽がきちんと言葉で説明できるなら,音楽は要らないんです。言葉で表現できないものを表現するために,芸術というものがある。(p33)
● あとは雑学に属するもの。ただし,ここまでくると,雑学は諸学の王ですな。
 科学の研究者でも,外国に行くと業績が上がる人が多いんです。たぶん緊張感が高いことがいい効果をもたらしているんだろうと思います。最初からテンションが上がっている。生活しているだけで,いろんな障害がありますから。(p121)
 オリンピックなんかを見ていると,水泳選手が最後のラストスパートでテンポが変わったりします。それまで三拍子のリズムだった泳ぎが,二拍子半になっているとかいう。本人は必死で努力しているつもりなんですね。だけど,実際にはむしろ遅くなっている。(中略) おそらくそういう場面というのは,「もうすぐゴールだ」と思った瞬間に,動きが変わってしまうわけです。本人は頑張っているつもりなんだけど,脳みその方が「ああゴールだ,もう済んだ」と思って締まっている。(p124)
 論理は人と共通項を持つことだということは,たいていの人が納得できます。しかし,感情だって,実は共感性が大事なんです。共感しない感情を誰かが持っていたら気持ち悪くてしょうがない。(p162)
 実際に事故の調査なんかすると,大きな事故というのは,不幸が偶然重なるものなんです。なんでこんなことが重なるんだ? ということが重なって起こる。必ずそうなんです。 歴史も僕はそうなのではないか,という気がする。この前の戦争なんかも必然性がない。偶然がぶつかり合った結果,特攻隊や原爆までいってしまった。それを筋にしようとしても無理だということです。(p166)

2013年12月10日火曜日

2013.12.10 津田大介・牧村憲一 『未来型サバイバル音楽論』

書名 未来型サバイバル音楽論
著者 津田大介
    牧村憲一
発行所 中公新書ラクレ
発行年月日 2010.11.10
価格(税別) 840円

● 「USTREAM,twitterは何を変えたのか」が副題になっている。
 CDがかつての半分も売れなくなっている。が,ライヴは好調だ。昨今ではUSTREAMやYouTubeを使って,クリエイターが聴衆に直接,語りかけることができるようになった。ならば,それらを追い風にして,今までとは違ったやり方ができるのではないか。
 かつての大手レーベルやレコード会社は,ありていにいえば,クリエイターを搾取していた。そのくびきを脱して,クリエイターが音楽活動に回す資金を確保する方法があるのではないか。
 そうした姿勢で音楽の近未来について考えている。

● キーワードは「一人1レーベル」。巻末で牧村さんが次のように発言している。これが,本書の結論といってもいいかもしれない。
 ネットは「サロン」なのですよ。大昔はサンジェルマン・デ・プレやグリニッジ・ヴィレッジに行かなければ出会えなかったことが,ネット上では日常茶飯事に起きている。そのネットの中で自分にとってのサロンを確実に見つけて,それをどうリアルに転換できるか。その答えが大きな意味でのレーベルになるのだと思います(p247)
● ネットはサロン? 本当か? 中川淳一郎さんの『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)を読んで間がないので,しかもそこで言われていることにほぼ全面的に賛成なので,ネットにそこまで楽観的でいいのかと思ってしまう。
 ネットには上質な情報があまたあることは間違いないし,そこから何を引きだすかは使い手次第だと思う。けれども,ネットはコミュニケーションには向かない。もしコミュニケーションの質を普通以上に維持したいんだったら,参加者を制限しなければいけない。
 クリエイターと熱心なファンの間には,その巧まずともその制限がかかった状態になっているのかもしれない。ネット上にサロンができているのかもしれない。

2013.12.08 島村麻里 『ロマンチックウイルス』

書名 ロマンチックウイルス
著者 島村麻里
発行所 集英社新書
発行年月日 2007.03.21
価格(税別) 700円

● 副題は「ときめく感染症の女たち」。韓流にハマッた大量の中高年女性を素材にして,なぜハマッたのか,その背景にあるものや女性のライフサイクルを絡めて,考察していく。
 んだけど,特に目から鱗が落ちたというところはなかった。

● 当時,マスコミが面白おかしく報道した内容は,当然にして過激派に偏っていたろうから,それをもって全体を推測するわけにはいかない。
 たまたまハマッたのが韓流ドラマや韓流スターであって,まったく何にもハマッていないっていう人は少ないかもしれないしね。

2013.12.08 山之内 正 『ネットオーディオ入門』

書名 ネットオーディオ入門
著者 山之内 正
発行所 講談社ブルーバックス
発行年月日 2013.10.20
価格(税別) 800円

● 副題は「オーディオ史上最高の音質を楽しむ」。
 マスターテープと同じ水準のハイレゾリューション(ハイレゾ)音源が,主にネットを介して広がる動きがあり,それを紹介する内容。
 併せて,オーディオの歴史を概観し,最近の音楽配信を解説し,オーディオ器機の組み方やパソコンの使い方を指南する。

● ぼくのように予備知識をあまり持たない者でも,それなりに楽しめる内容だった。
 ぼくは音楽を聴く時間は多い方だと思うけど,オーディオ環境は貧弱を極めている。っていうか,そもそもオーディオと呼べる環境を持っていない。これからも持たないと思う。それでも,関心はある。

● こういうのって,ほかにもあって,たとえば実際に使っているのは百数十円のボールペンなのに,高級万年筆を特集した雑誌を見るとか(買うことは絶対にない),ダイソーで売ってるノートを使っているのに,モレスキンノートの売場をウロウロするとか。

2013.12.07 三浦 展 『妻と別れたい男たち』

書名 妻と別れたい男たち
著者 三浦 展
発行所 集英社新書
発行年月日 2012.07.18
価格(税別) 720円

● アンケートや調査を実施して,そこからどんなデータを取りだすかが,じつは調査者によって多様なのだろうし,データの解釈の仕方も人の数だけあるものだろう。
 本書では,『下流社会』で知られた著者らしく,離婚問題も階層の問題だと捉える。

● 以下に,ひとつだけ転載。
 男性は相変わらず仕事中毒だし,女性にも仕事中毒や社畜たちが増えてしまった。鼻息の荒い,男勝りの女性たちが活躍する時代になった。 まあ,それはそれでいいとしても,問題なのは,仕事中毒になる適性がない,あるいは仕事中毒に関心がない男女は,しばしば正社員ではない不安定な立場に置かれるようになったということだ。(p200)
● 著者はフェミニズムなんて薄っぺらいものと思っているらしい。ぼくも同意見。そんなに単純なものじゃないよなと思う。割りきりすぎだろうっていうか。
 だいたい,威勢のいい意見は捨ててかかれ,と思っている。逡巡がない意見もダメだ。

2013.12.06 茂木健一郎 『あるとき脳は羽ばたく』

書名 あるとき脳は羽ばたく
著者 茂木健一郎
発行所 中公新書ラクレ
発行年月日 2009.12.10
価格(税別) 700円

● このシリーズ最後のエッセイ集。なぜ最後になったかといえば,連載媒体の「読売ウイークリー」が休刊(という名の廃刊)になったから。
 が,著者のエッセイは,ほかにもたくさんある。読者として困ることはない。

● 脳は暗示に弱い。成功哲学でも説かれることが多いけれど。
 脳はさまざまな性質を持っているが,とにかく「暗示」や「思い込み」に弱い。現代の脳科学によれば,脳の働きがすなわち「私」であり,脳以外に「私」の居場所はない。その「私」が,脳についてどのようなイメージを抱いているかで,脳自体の働きが制約されてしまうのである。 「私の脳にできるのはこの程度のことだ!」と思い込んでしまえば,本当にその程度の脳になってしまう。「私には,まだまだ可能性がある」と多少強引でも暗示をかけていると,それに対応して「のびしろ」が増える。(p12)
● 「いま,ここ」に生きること。刹那に生きるという言い方で仏教者が説くところでもある。
 昨今は格差社会などというが,結局人間の幸せを決めるのは,自分の「いま,ここ」を引き受ける覚悟。そして与えられた条件の中で少しでも楽しく過ごそうという工夫ではないか。「今日のシャンパンの銘柄は何にしよう。キャビアはベルーガにしようか,それともオシェトラにしようか」などと迷っているお金持ちと,「今晩の発泡酒は何にしよう。つまみは,ポテトチップスがいいかな,それとも,海苔せんべいにしようか」と思案する庶民で,幸せの総量はさほど変わりはしない。(p64)

2013.12.06 茂木健一郎 『それでも脳はたくらむ』

書名 それでも脳はたくらむ
著者 茂木健一郎
発行所 中公新書ラクレ
発行年月日 2007.12.10
価格(税別) 700円

● 中公新書ラクレの3冊目のエッセイ。

● 意欲が大事なことはたぶん誰でも知っている。問題はその意欲の掻きたて方なんだな。それを教えてくれというのは,甘えるのもたいがいにしろ,ってことなんだろうけど。
 いやいややっても身につかない。これもたいていの人にとっては経験則のひとつになっているだろう。けれども,いやな勉強や仕事を楽しむ術がわからない。これまた,そこまで人に教えてもらおうというのは,論外の沙汰かもしれないけれど。

● ちょっとずれるかもしれないけれども,「人の行く裏に道あり花の山」っていう格言が相場の世界にあるらしい。大勢が行く道を行ってはいけない,と。これまた頭では理解できる。
 けれども,人の逆をやるというのは,犬が西向きゃ尾は東,というわけには行かない。大勢の誤りを自分が認知できるなんてことはまずないだろうから。
 誰もがそう言っている,テレビも新聞も雑誌もそう言っている,なおかつ自分もそう思う。そういうときに,大勢に付かないというのは,自分の考えの逆をやることと,ほとんどイコールだ。

● 英才教育というものに感じるかすかな胡散臭さ。その正体は次のようなもの。
 幼少期から数理系の専門的な訓練をするいわゆる「英才教育」を行った事例がよく知られているが,若くして大学に進むなどの成果はあるものの,その後伸び悩んでしまうことが多い。(中略) 総合的な教養,知性という「裾野」があって,初めて鋭利な専門的能力も立ち上がる。(中略) 人間としてのトータルな力がなければ,どんな専門性においても天才という名に相応しい仕事を残すことはできない。どうやら,それが真実であるようである。(p69)
● 信用されるためには正直であること。もちろん,建前を排して本音だけを言えということではない。
 他人に信用してもらうにはどうすればよいか。説得力のある人になるための秘訣は何か。 言い古されたことだが,「正直」になるのが一番である。他人が正直にものを言っているかどうかを判定することが,時に生死にかかわる重大事となりかねないから,脳も必死になる。(p86)
● 昨今は社会人大学院の隆盛で,大学院の学部化が進行しているように思ってるんだけど,学部にしたって,とんでもない人はいるものだ。
 大学で科学哲学を専攻した私の友人は,指導教官であった哲学者の廣松渉さんに「君,一日三〇〇〇ページ読まないとダメだよ」と言われたという。 当時,私はその話を聞いて「えっ,三〇〇〇ページ!」と絶句したが,学者というものは本来それくらいのテクストに向かい合う覚悟を決めなければならないという戒めなのだろう。(p109)
● お金を使ってする遊びは必ず飽きると思っている。飽きないのはタダでできる遊びだ。あるいは,ごく少額ですむ遊び。
 高級ホテルに泊まるのも,高そうなレストランでご飯を食べるのも,集中してやってしまうと短期間で飽きる。
 贅沢とは,絶対的に決まるものではなく,人それぞれが世界の中で置かれている立場によって変化するものである。一昔前の日本人だったならば,都会的な贅沢は希少なものだったかもしれない。しかし,今日ではむしろ自然のほうが贅沢である。(p128)

2013年12月7日土曜日

2013.12.05 茂木健一郎 『すべては脳からはじまる』

書名 すべては脳からはじまる
著者 茂木健一郎
発行所 中公新書ラクレ
発行年月日 2006.12.10
価格(税別) 700円

● 『脳の中の人生』の続編。

● いくつか転載。「ギャップ理論」に注目。日本では○○は人なりという言い方(文は人なり,書は人なり)が好まれるけれども,たとえばモーツァルトと彼の作品の関係は,そうではなかった。
 肉体の限界よりも,脳の限界のほうが先に来るものだ。脳のほうが「もう,これ以上はダメだ」という安全装置を作動させて,まだできるのにブレーキをかけてしまうのである。(p55)
 その「リミッター」をいかに外してやるか。清水(宏保)選手は,それこそが競技者にとっての課題なのだと語る。彼が取り組んでいるのは,限界に挑戦するすべての人間にとって普遍的な意味を持つ命題のように思われた。(p58)
 知性は開放性を持っているから,たとえ遺伝子で決まっていたとしても,その可能性を尽くすことはできない。だから,遺伝子で決まっていないのと事実上同じです。(p64)
 モーツァルトは,その作品と実際の人柄のあいだに「ギャップ」があったことで知られている。楽曲が天上的な完全さと優美さを備えているのに対して,その人柄は活気に満ち,冗談好きで,猥雑ですらあったと伝えられている。モーツァルトに限らず,天才的な創造者ほど,作品と人柄のあいだに距離がある。これが「ギャップ理論」である。ギャップ理論は,史実を調べれば調べるほど有力であるように思われてくる。(p120)

2013.12.04 茂木健一郎 『脳の中の人生』

書名 脳の中の人生
著者 茂木健一郎
発行所 中公新書ラクレ
発行年月日 2005.12.10
価格(税別) 700円

● 「読売ウイークリー」に2004年5月から2005年8月にかけて連載されたエッセイをまとめたもの。

● 偶有性を楽しめということ。元気が出る。いっ時のことで,これで明日からの自分の人生が変わるわけではないけれども,いっ時のカンフル効果を軽んじるべきではないと思う。

2013.12.04 森 博嗣 『創るセンス工作の思考』

書名 創るセンス工作の思考
著者 森 博嗣
発行所 集英社新書
発行年月日 2010.02.22
価格(税別) 700円

● 工作に関する著者のエッセイはほかにも読んだことがあるけど,本書は工作それ自体を語るのではなく,工作マインド?の欠如あるいは希薄がもたらす問題について,著者の存念を述べたもの。

● まず,設計図の不完全さ。実際に作ってみると,設計者が想定しなかった問題に出くわす。

著者は教育なんて不可能だという。
教えられるものがあるとすれば,自分の生き方を見せる以外にない。情報を教えることは,本でもビデオでも良く,人間から人間への伝達である必要はない。むしろ書物などの方が効率が良いくらいだ。しかも,いずれも,受け取る側に積極性がなければ伝わらない。 人間から人間へしか伝達できないものとは,その人間が持っている方向性であり,つまりは「生きていく姿勢」と,その要因となる,あらゆる行為のセンスである。(p138)
● 「抽象」の重要性も著者が力説するもの。
 目に見えるものの方が実はどうでも良い部分,つまり「装飾」であり,ものごとの価値は,その内部に隠れて見えない「本質」にある。(中略)「抽象」とは,見える「象」を取り除く,という意味であり,抽象したものにこそ本来の価値がある。(p130)
● まずやってみること。工作でも何でも。
 自分でなにかを作ろうと考えると,その対象に向かう観察眼が芽生える。作るためのプロセスを頭に描くようになる。これらは,作ることがない生活では,ほとんど死んでいたプロセスである。ものを見ているようで見ていなかったことに,きっと気づくはずだ。(p161)

2013年12月3日火曜日

2013.12.02 岡田斗司夫 『オタクの息子に悩んでます』

書名 オタクの息子に悩んでます
著者 岡田斗司夫
発行所 幻冬舎新書
発行年月日 2012.09.30
価格(税別) 940円

● 朝日新聞の人生相談の回答者を務めた経験から,人生相談に回答を与えるために必要なノウハウをまとめたもの。
 ってことになるんだけど,著者の思考技法をケーススタディ化して,具体的に見せてくれたものでもある。『あなたを天才にするスマートノート』の実践編。

● まず,面白い。次に,自分も賢くなれると錯覚させてくれる。さらに,人生をやっていくうえで,かなり大事なものを教えてくれる。
 福祉(とか教育)の現場でケースワークに携わっている人にとっても,助けになる本ではないかと思う。下手にその分野のケースワーク入門的な本を読むより,本書を読む方を先にした方がいいと思った。

2013年12月1日日曜日

2013.12.01 番外:GOETHE 2014年1月号-至高のホテル

編者 舘野晴彦
発行所 幻冬舎
発行年月日 2014.01.01
価格(税別) 714円

● 数ある男性誌のなかでも,「GOETHE」は作りが丁寧で,書店で手に取る回数が一番多い。お金をかけてる感じがする。
 ライフスタイル提案誌というんですか。この種の雑誌の中では出色のものだと思っている。

● 貧乏ゆえ,高級への憧れがある。憧れといってしまってはちょっと違うような気もするんだけど,自分の知らない世界を覗いてみたいというかね。
 もちろん,雑誌は現実をそのまま写しとっているわけではない。よくいえば編集が入っている。そのうえで楽しめる内容になっていれば,それで良しとしないとしょうがない。

● その「GOETHE」のホテル特集。ホテルを特集している雑誌がでるとわりと買うことが多い。のだが,泊まってみたいとは思っていない。
 っていうのはウソで(ほんとにそうなら,わざわざ雑誌を買わない),泊まれないと思っているだけだね。

● イメージキャラクターに中田英寿氏を起用。鍛え抜かれた細身にスーツが似合うこと。ファッションを云々するなら,まず体を鍛えないとダメだね。
 加えて,中田氏の場合,インテレクチュアルな雰囲気もある。ライフスタイルも独特だ。

● なんだけど,ホテルコンサルタントをやるのはちょっと無理じゃないか。宿泊経験だけでどうにかなるものでもなさそうだけど。
 ただ,彼が本腰を入れてやればほんとにやれちゃうんじゃないか,と思わせる程度のカリスマ性があるところはさすが。

● メインで紹介されているのは,グランドハイアット,パレスホテル,マンダリンオリエンタルの3つ。記事として面白かったのは,アンダーズ東京の紹介と,「ホテルに住むという選択」。歯科医の井上裕之さんを登場させている。

● が,「GOETHE」といえども,ホテルを扱うとこういう記事にならざるを得ないだろうなと思わせる。なんというか,陳腐といえば陳腐な内容だ。ただ,陳腐というのは,読者を満足させるためになくてはならないものなのかもしれない。
 世の中にはいろんな場面で鉄板というのがあって,鉄板は必ず陳腐さを内包しているようにも思うから。