2013年9月30日月曜日

2013.09.30 「世界の歴史」編集委員会編 『もういちど読む山川世界史』

書名 もういちど読む山川世界史
編者 「世界の歴史」編集委員会
発行所 山川出版社
発行年月日 2009.08.30
価格(税別) 1,500円

● 高校では劣等生の悲哀を相当なところまで味わった。それだけが理由ではないけれども,高校に関しては愛校心ゼロ。
 人生は苦だというのは本当だなとしみじみ思ったことは何度もある(誰でもそうだろうけど)。ウツ症状を呈したこともある(朝,強い酒を入れないと,足が外に向かわない。休まなかったけどね)。それで家族に大いなる迷惑をかけてしまった。身体がSOSを発したことも,何度もある。甲状腺が切れたり,皮膚潰瘍ができたり。
 なんだけど,今までの人生の中で,最も辛かった時期は,高校の3年間だったと思っている。あの先の見えない閉塞感というのは,じつにどうも始末が悪いものだった。

● そのような次第で,高校の3年間は捨てたも同然で(ぼくの中では空白の3年間ということになっている),高校で学んだことなど何ひとつなかったと思っている。友だちもいなかったから,友人間での遊泳術なんてのも学ばなかった。部活も不参加。
 だから,中学から直接,大学に入れてくれてればと夢想したりもする。中間省略の美学っていいますか。

● ま,よろしい。
 で,そんな劣等生のぼくでも世界史だけは(あと,日本史も)好きだった。授業はしごくつまらなかったけど。
 ぼくの時代は,1年で地理(この授業も死ぬほどつまらなかった),2年で世界史と倫社,3年で日本史と政経(この政経の授業の記憶が完璧にない),という配分になってたんだけど,地理の授業のときは世界史の参考書を読んで過ごしていた。

● 山川の『詳説世界史』は当時も評判で,教科書の中では最も「詳説」だと言われていた。この教科書にしか書かれていないことが,某大学の入試問題に出てた,とかね。
 ぼくが通っていた高校では某社の教科書だったんだけど,何で山川じゃないんだよ,とか思ってましたね。

● 本書の元になったのが『詳説世界史』かどうかは知らないけれども,読みごたえがありましたねぇ。
 「1848年は19世紀ヨーロッパの転換点であった」で始まる167ページのコラムなんか,ほんとにもう目から鱗を落としてくれるっていうか。

● 先日読んだ『倫理』でも同じことを感じたけれど,高校生って,高度なことを勉強してるんだなぁ。世界史に関してここまで行ってれば,もう十二分だよねぇ。考える素材は充分以上に備えたことになる。基本,これ以上は要らないと思う。
 山川出版社から出ているこのシリーズは全部読むつもりでいるけれど,残念ながら社会科だけ。理科の教科書も読んでみたいものですな。読んでも歯が立たないだろうってのは,目に見えてはいるんだけど。

2013.09.29 杉浦日向子 『憩う言葉』

書名 憩う言葉
著者 杉浦日向子
発行所 イースト・プレス
発行年月日 2011.05.20
価格(税別) 1,000円

● 杉浦さんのアンソロジー2冊目。

● いくつか転載。
 仕事に忙殺される人生ではなく,その日その日を,いかに楽しみ,いかに遊ぶかです。(p11)
 酒は,楽しく,ほどよく。天の美禄は,溢れると一気に涸れる。寸止めに妙あり。(p41)
 とかく,酒と女は誉めるべし。批評すべからず愉しむべし。(p52)
 ソバ湯だけを合いの手に,酒を呑むのは,年を重ね,盃を重ねたものの到達する,枯淡の境地であろう。ここまで来たら,いつ死んでも惜しくない命と悟るがいいと(個人的に)思っている。(p79)
 医者にはなるべく近づかない。ポックリ逝くためには,心臓は弱いほうがいい。(p116)
 体にいいことはしない。それから体に悪いもの,とくにアルコールは積極的に取るようにしています。(p117)
 なんか,ちゃんと考えるとダメで,いい加減にしているほうが,ヒューっと描けちゃうんですよねえ。苦労すると苦労しただけ,悪くなっちゃう。(p161)

2013.09.28 杉浦日向子 『粋に暮らす言葉』

書名 粋に暮らす言葉
著者 杉浦日向子
発行所 イースト・プレス
発行年月日 2011.05.20
価格(税別) 1,000円

● 杉浦さんの作品群から編んだアンソロジー。

● こういうものから転載するのは阿呆の極みながら,特に心に残ったいくつかを。心に残ったというと,なんか格好いいけれども,要は自分に都合のいい言葉ってことですね。
 江戸っ子の基本は三無い。持たない,出世しない,悩まない。(p14)
 私たちは真・善・美だけを正しいものをして,そっちだけを抽出したいと思い続けていたのが,そもそも違っちゃったような気がします。偽・悪・醜を取り戻さないといかんですね。(p23)
 なんのために生まれてきたのだろう。そんなことを詮索するほど人間は偉くない。三百年も生きれば,少しはものが解ってくるのだろうけれど,解らせると都合が悪いのか,天命は,百年を越えぬよう設定されているらしい。(p63)
 江戸の人々は「人間一生,物見遊山」と思っています。生まれてきたのは,この世をおちこち寄り道しながら見物するためだと考えているのです。(p69)
 自分が没落しようが,乞食になろうが,それも自分で請け負って楽しむというぐらいの気概がないと。「社会が悪いから失業した」じゃ,江戸はやれないですよ。(p82)
 江戸の頃の豊かさというのは,天才とか,才のある人が,企業や大組織に取り込まれないで,遊びの中で才能を開花できたところにある。(p141)

2013年9月28日土曜日

2013.09.28 『世界のホテル』

書名 世界のホテル
発行所 パイ インターナショナル
発行年月日 2013.07.27
価格(税別) 1,800円

● 78の「世界のホテル」を写真で紹介。外観を俯瞰した写真が多い。日本からは「星のや 軽井沢」が紹介されている。
 この「星のや」も含めて,ぼくが泊まることはまずないと思われる。写真を見て,こういうホテルがあるのかと思うだけ。

● 半ばは負け惜しみでいうんだけど,泊まりたいとも思わないんですよ。ホテルから世界遺産アクロポリスが望めるとか,タージマハルを眺めることができる,と言われても,それがどうしたと思ってしまう方なのでね。

● アマン水準のホテルが,アマン以外にもできてるようなんですね。必ず同業他社が登場するものですね。オンリーワンとはなかなかいかない。

2013年9月27日金曜日

2013.09.27 橋本淳司 『瞬時に「話す」「書く」技術』

書名 瞬時に「話す」「書く」技術
著者 橋本淳司
発行所 すばる舎
発行年月日 2011.01.27
価格(税別) 1,400円

● 「情報メモ」と「パノラマメモ」。「情報メモ」はメモというより仕様書っていう感じで書くことが多くなるかもしれない。要は,予想される議論の論点のそれぞれについて予めブロックを作っておくということ。そうすると整理しやすくなる(と著者は言う)。
 「パノラマメモ」はA3コピー用紙を使って,議論をメモするために使う。マインドマップ(自分で書いたことはないけど)的に流れを表現しておいて,つながりや広がりを見えやすくしておく。

● いくつか引用。
 自分がそのようなアウトプットをしたいのかを考えたうえで,必要な情報をあらかじめ予測し,その情報を積極的に取りにいくのです。(p52)
 リサーチの前に結論を出しておいて,それに合うデータだけ集めろ,ということではない。これは取材に関してのアドバイスだから,書きたい論点を整理しておいて,そのためには何を訊けばいいか,あらかじめ書きだしておけといった程度の意味だ(と思う)。
 それまでは相手が話すのを黙って聞き,相手の言葉をしっかりメモすればいいと思っていました。「相手は立派な人なのだから,失礼のないようにしなくては」などと腰の引けたところもありました。「話し合い」という同じ土俵にのっていなかったのだと思います。(p86)
 真面目で行儀のいい人ほどそうなりやすいだろうな。真面目で行儀がいいって,気が小さいってことでもあるから。ぼくもずっとそうだった。機嫌を損ねないことを第一義にしてしまってきた。
 警官への取材で聞いたことですが,取調室で被疑者と初めて対面するとき,刑事は自己紹介するのだそうです。自分はどこに住み,どんな趣味をもっているかなど,自分がどんな人間かを示すと,被疑者は口を開きやすくなるそうです。(p143)

2013年9月26日木曜日

2013.09.26 岩崎かおる 『頭のいい人がしている アイディア実行手帳術』

書名 頭のいい人がしている アイディア実行手帳術
著者 岩崎かおる
発行所 ぱる出版
発行年月日 2010.10.26
価格(税別) 1,400円

● 手帳術というタイトルだけれども,本書が提言するところは,スケジュール管理はケータイ(スマホ)で行い,メモは手書きでというもの。手帳はいらないよ,と。
 したがって,持ち物はケータイ(スマホ)とメモ帳にしなさいってこと。

● これ,理に適っているかもしれない。メモだけはデジタルにできない。これはどうあっても紙に手書きでなければならない。
 のだが,スケジュールはGoogleカレンダーに移した方が世話なしかも。パソコンで入れて,見るのはパソコンでもスマホでも。
 これなら,著者のいうとおり,手帳が汚くなることもないしね。

● だが,しかし。理に適っているかもしれないけれども,ぼくがその方式を採用することはない。
 理由はしごく単純で,手帳の役割はスケジュール管理だけではないからだ。っていうか,ぼくの場合は,スケジュール管理なんて手帳の主たる役割になっていない。そんなに予定なんてないから。管理しなければならないほどのスケジュールは抱えていないから。

● では手帳で何をしているのか。流行の言葉でいえばライフログを残すということ。ま,ログというと大げさに過ぎる。生活のどうでもいいような部分を切り取っておくことだ。
 たとえば,会社の女子社員にお菓子をもらう。その包装紙を手帳に貼っておく。面白かったテレビ番組を記録しておく。どうやって記録するかというと,新聞のテレビ欄から該当箇所を切って手帳に貼る。こうしたことはデジタルではできない。

● ぼくは手帳とメモ帳の2冊持ち。つい最近までは手帳のみだった。これには理由があって,2月まで日記を書いていた。パソコンで。3月からそれをやめてみた。読み返すことがほとんどないのでね。
 その代わりにメモ帳を持ち歩いて,チョコチョコと書きこむことにした。ちなみに,そのメモ帳はダイソーで買ったA6版の百円ノート。筆記具はタダでもらったボールペン。街で何かの販促に配っていたもの。

● メモを上手に取るコツは,とにかくたくさん書くこと。選別しないで書く。片面のみ使用だの,あとで書き加えることを考えてページの右半分は空けておくだの,つまらないことは考えない。
 ガシガシ書けばいい。で,そうするためには,本書でも述べられていることだけれども,安いノートがいい。惜しみなくかつラフに扱える。

● それとペンホルダーは必須でしょうね。この点でも,ダイソーで現在販売中の「ペン差しカバー付A6ノート」は相当以上の優れものだと思う。
 すでに生産中止になってしまったけれど,ダイスキンを使うのであれば,やはりダイソーで売っている「クリップペンホルダー」を買って取り付けることを推奨。ボールペンはノック式に限ることは言うまでもない。

● ノートに手書きでメモするようにしたら,読み返す機会が結果的に増えた。実際のところ,読み返すほどの価値あるメモなどほとんどないんだけどさ。
 あと,備忘的なメモは用済みになったら,バーッと斜線を引いておく。この備忘的メモは別にメモ用紙を用意して,そちらに書いておこうなどとも考えない方がいいと思う。1冊に集約。それで何の問題もない。
 手帳とノートの役割分担は最初から問題なかった。長年の間に手帳に何を残すかは定まっているので,それ以外をノートに回せばいいだけだったから。

● 時間の使い方を説いた本の多くは,頭が冴えている午前中に重要な仕事をやるのがいいと説いている。あるいは,80:20の法則を持ちだして,2割の重要なことを終えれば全体の8割を終えたことになる,などという。
 けれども,本書の著者は「簡単な用件を先にツブしていくのです。時間がかかりそうな作業やじっくりと考えをまとめなければならないことは午後にまわして,簡単で単純なことをはじめに終わらせてしまいます。(中略)まずは簡単な用件を先にこなして,TODOリストを一気に減らす。リストをツブしていく快感を信じましょう」(p70)と提言する。
 著者の説が的を得ていると思う。自分の体感に合致する。
 ひょっとすると,ビジネス書の多くはけっこういい加減。実際に働いたことのない人が,頭のなかで捏ねくりまして書いているのかと思ってしまいますな。

● 転載を2つ。
 実務は,目の前にある「次にやること」をしっかり処理していくだけです。(p147)
 そうなんだよね。ここまでピシッと言ってもらえると,ストンと腑に落ちますね。この人,プロなんだなって思う。
 ことの成否は周りの人や仲間,ひいては世間に甘えられるかどうかにかかっています。甘えていいんです。もっと気楽に考えていけばいいんです。(p195)
 これもそうなんでしょうね。ここは女性にアドバンテージがあるんでしょうね。甘えるという才能がない人って,男のなかには相当いるもんな。わかっていても甘えられない,っていう。
 ここは,たぶん,教育とか文化背景とかでは説明しきれないところがあって,男性はもともと甘え下手に作られているんだろうねぇ。最後にどうにもならなくなって,周囲にとんでもない迷惑をかけてしまう。そうなるまで甘えられない。
 逆に,それができる男は,けっこうモテるんじゃないだろうか。うん? となると,いずれはすべての男性が甘え上手になるか。じつは,甘え下手には作られていなかった,ってのが判明することになるのかなぁ。

2013.09.25 山内太地 『下流大学に入ろう!』

書名 下流大学に入ろう!
著者 山内太地
発行所 光文社
発行年月日 2008.12.25
価格(税別) 952円

● 冒頭で,三浦展『下流大学が日本を滅ぼす!』(ベスト新書)を槍玉にあげて,下流大学を擁護。なるほどタイトルどおりの内容なのかと思って読み進んでいったのだが,どうもそうでもない。そうじゃなくもない。印象が定まらない内容だ。

● 著者はアジりたかったのかもしれない。自分の人生観や価値観をアジテーションにして,読み手にぶつけたかったのかも。
 が,それにしては,そのアジテーションが場当たり的というかご都合主義的というか,まだ人にぶつけるほどには熟していないのではないかと思った。

● ひょっとすると,著者は世間を直接見ていないのかも。巷間に流布しているイメージをそのまま受けとめているのじゃないかと思われるところもあった。たとえば,次のような。
 日本ではエリートと呼ばれる人間ほど,依存心が強く,何事もお上頼みで,もろい。つまり,乱世に弱い。 この点,下流大学の出身者は,はなから「勝ち組」コースに乗っていないから,かえってたくましい。(p33)
 学問だけが,あなたの人生の行きづまりを突破してくれる,唯一の武器なのだ。(p34)
 この程度の認識で人を煽っちゃいけないよ,世間をなめてるのか,おまえ,と感じてしまったんだけどね。
 本書を書いた時点で,著者は30歳か。しようがないのかなぁ。30歳にしてはちょっとお粗末なような気もするんだけど。

● ただし,大学のルポとしてはそれなりに読める。著者は国内の大学すべてを訪問したそうだ。この部分からいくつか転載。
 彼(東京農大の学生)によると,国際農業開発学科の特性として,入学時は青年海外協力隊にあこがれる学生がとても多いという。しかし「わずか数カ月の研修と2年間の派遣で,目に見えて効果が上がっているかどうか。結局,経済大国としての負の側面の贖罪という形式的なものでしかないという実態を知り,多くの人は目指さなくなる。学科でも年に数人でしょうか。海外協力隊志望の人には,遊び感覚の人も多いそうですよ」とのこと。(p81)
 かつて専門学校時代,働きたくない,大学にも入れないという学生を相手にしてきましたが,それがいまは大学にも広がっています。しかし私(東北文化学園大学の先生)は,すべての学生には潜在的な可能性があると考えています。私たち職員も,学生を育てているのです。(中略)大学は学生あってのもの。学生のために何かをしてあげなくては。こうした意識のない先生は,つまらない授業しかしない。それでは学生は寝ますよ。(p96)
● しかし,何を言いたかったのかはわからず終いだった。
 「現在の大学は,(中略)大学生を勉強させる方向に変化している。いろいろな大学を見学しても,おおむね大学生は勉強熱心になってきていると感じる」(p38)と書いたかと思えば,「多くは,高いお金を出して大学に行かせてもらいながら,大学という場を生かせず,学ぶ喜びも知らず,自らを高めることもできないまま卒業していく」(p115)とも言う。どっちなんだよ。

● 大学を見て歩く暇があるんだったら,世間を見たら,って気がしなくもない。
 が,著者はここに飯の種を見いだしたようでもある。人の商売の邪魔をしちゃいけないよな。

2013.09.24 松浦弥太郎 『さよならは小さい声で』

書名 さよならは小さい声で
著者 松浦弥太郎
発行所 清流出版
発行年月日 2013.06.27
価格(税別) 1,300円

● 著者は多くの女性といい出逢いをしているようだ。本書の1章では,それら「すてきな」女性たちから学んだ,生き方,生活の仕方,仕事への取り組み方,情報とのつきあい方を披瀝。
 2章は,半分小説のような形の恋愛体験記。

● いくつか転載。
 彼女が言うには,IT業界で働いているからといって,デジタルメディアに特別詳しいわけではなく,それはひとつのコミュニケーション形態であって,仕事の根本はいたって手仕事に近く,結局は働く人の人間味がものを言う世界であるとのことだ。(p65)
 彼女は,余程のことがない限り,携帯電話でインターネットに接続することはせず,自宅でパソコンを開くのもまれだという。要するに,彼女は自分と情報との心地よい距離感をきちんと守っているのである。(p66)
 値段で迷っているなら無理してでも買うようにしているわ。でも,値段以外で悩んでいるのなら絶対に買わない。(p70)
 これ,かっこいいね。買うべきか買わないべきかの基準として,簡にして要を得た最上のものかもしれないね。

2013.09.23 新潮社編 『私の本棚』

書名 私の本棚
編者 新潮社
発行所 新潮社
発行年月日 2013.08.30
価格(税別) 1,300円

● 次の23人が,書棚を素材にして,自身の読書遍歴や蔵書への愛憎を語る。愛憎の「憎」は,メカニカルに増えていくかに思われる蔵書の始末に関するものがほとんどだ。
  小野不由美
  椎名 誠
  赤川次郎
  赤瀬川原平
  児玉 清
  南 伸坊
  井上ひさし
  荒井良二
  唐沢俊一
  内澤旬子
  西川美和
  都築響一
  中野 翠
  小泉武夫
  内田 樹
  金子國義
  池上 彰
  田部井淳子
  祖父江 慎
  鹿島 茂
  磯田道史
  酒井駒子
  福岡伸一

● 増えすぎる本に手を焼きながらも,どこか楽しそうでもある。これ,本当にいやになったら,仕事で必要だろうが何だろうが,放りだしちゃうだろうからね。
 どこかで容認しているというか満足している部分がありますよね。

● 引用をふたつ。
 ずっと仕事をしてきて,わかったことのひとつ,それは「ほんとうに必要なものならば,かならず探し出せる」ということだ。自分の手元に,いつ読むのかわからないまま,何百,何千冊という本を置いておくよりも,ネットにつながったノートパソコンがあればいい。一生かかっても追いつかないほど,行きたい場所がたくさんあって,会いたいひとがたくさんいて,作りたい本がたくさんある。そういう自分にとって,いちばん必要なのは資料の山じゃなくて,いつでもどこへでも,いま住んでいる場所を捨てて移動できるフットワークだ。(都築響一 p96)
 けっこういろんな人が同じことを言っていると思う。たしかに資料についてはそのとおりなんだろう。わかっていてもできる人とできない人がいるだけなんだろうな。
 この棚は,「ピノッキオ」専用本棚になっている。僕は,どうも同じ本ばかり並べるのが好きで,他にも「坊っちゃん」専用や「南総里見八犬伝」専用もある。(祖父江慎 p144)
 これにはハッとさせられた。そうか,こういう読み方をしている人がいるのか。祖父江さんはブックデザイナーだけれど,こういう指向の持ち方が,彼のクリエイティブを支える柱のひとつなのかもね。

2013年9月24日火曜日

2013.09.23 長谷川慶太郎 『2014年 長谷川慶太郎の大局を読む』

書名 2014年 長谷川慶太郎の大局を読む
著者 長谷川慶太郎
発行所 李白社
発行年月日 2013.09.30
価格(税別) 1,500円

● 副題は「世界経済明と暗の潮目」。
 歯切れの良さが快感をもたらしてくれる。曖昧さを排する。ここまで具体的にしあげると,予想がはずれる可能性も高くなる。それでいろいろ言われる。しかし,そんなことは歯牙にもかけない。

● アメリカと日本とドイツについては楽観。中国と韓国とフランスについては悲観。これまでどおりの見方を開陳している。国際関係の様とその理由もくっきりと描く。
 安倍首相とドイツのメルケル首相を高く評価。対して,フランスのオランド大統領,韓国の朴槿恵大統領については,その資質に疑問を呈する。

● 中国のシャドーバンキングの話は,息が詰まるような具体と迫真。「九月二六日に四〇兆元の理財商品の決裁ができなければシャドーバンキングが潰れてしまうから中国ではシャドーバンキングに依存してきた企業の大量倒産が起きる」(p134)。
 シャドーバンキングは人民解放軍の幹部が経営しており,人民解放軍と習近平(共産党)は対立関係にある。最近は,習近平が攻勢に出ているが,さてどうなるか,と。

2013.09.23 南 伸坊・糸井重里 『黄昏』

書名 黄昏
著者 南 伸坊
    糸井重里
発行所 東京糸井重里事務所
発行年月日 2009.10.07
価格(税別) 1,400円

● 「ほぼ日」の連載時に読んでいる。書籍で読むと味わいが違ってくる。電子書籍は試したことがまだないんだけど,紙っていいものだ。

● 内容はたわいもないお喋り。なんだけども,そのたわいもないお喋りが,ちゃんと読ませる内容になっているところがすごい。芸になってるっていいますか。普通の人がこの種の話をしたのを文章化したって,どうにもつまらないものにしかならないだろうからね。
 相手の話をどう受けるか。背面キャッチがあったり,いったん素手で受けてから自分のグラブに入れてみたり,っていう。反射神経が並みじゃないってことですね。

● あと,やっぱりね,蓄積があるんでしょうね。人生の振幅が大きかったんでしょう。いろいろあったんだろうなぁって思わせる。

2013年9月22日日曜日

2013.09.21 浅見帆帆子 『あなたの感じる伊勢神宮』

書名 あなたの感じる伊勢神宮
著者 浅見帆帆子
発行所 世界文化社
発行年月日 2013.04.01
価格(税別) 1,200円

● 副題は「いつでも宇宙につながっている」。著者が伊勢神宮を素材に自分の人生観,人間観を語るという趣向。たとえば,次のようなもの。
 あなたが神社を訪れるとき,そこでなにを感じるかに正解はありません。 こういうことを感じたから素晴らしい,感性がある,というようなことではなく,あなたの自由です。 もしかしたら,その場所(神社)ではなにも感じないかもしれないし,日常生活に戻ってからふと思いつくことがあるかもしれない・・・・・・そのすべてに意味があり,今のあなたに必要だから「そう感じている」のです。(p16)
● 著者自身がモデルになったグラビアページも多数あり。著者のファンが多数いる。そのほとんどは女性だと思うんだけど,このグラビアも需要があればこそ,掲載されているわけだろう。

● 伊勢神宮のあれこれについても手際よくまとめられている感じ。神宮のガイドブックとしても充分に参考になるもの。
 著者の言っていることが荒唐無稽だとは思わない。真偽の証明はできないけれども,これを荒唐無稽とするなら,伊勢神宮も神道もキリスト教も荒唐無稽と断じなければならない。たとえ偽であっても,人間の脳はそういうものを欲するようにできているのだと考えた方が腑に落ちる。

● ただね,自分の過去世について,具体的にこうだったと書かれているところがあって,こういうのを読むと,さすがにちょっとなぁと思わないでもない。
 あとから,私の過去世がエジプトにあることを知り,どうしてエジプトに心惹かれるかがわかりました。(p26)

2013.09.21 上大岡トメ 『開運! 神社さんぽ』

書名 開運! 神社さんぽ
著者 上大岡トメ
発行所 アース・スター エンターテイメント
発行年月日 2012.01.01
価格(税別) 1,200円

● 伊勢,出雲,高千穂,奈良,京都の神社を巡る。パワースポットなんてのが流行りだしたのは,本書の出版時期よりけっこう前からでしたかね。

● それを上大岡さんのマンガで紹介。ガイドブックでもあり,日本神話の簡にして要を得た解説書でもある。
 ちなみに,副題は「古事記でめぐるご利益満点の旅」。

2013年9月20日金曜日

2013.09.20 上大岡トメ・池谷裕二 『のうだま2』

書名 のうだま2
著者 上大岡トメ
    池谷裕二
発行所 幻冬舎
発行年月日 2012.07.25
価格(税別) 1,200円

● 副題は「記憶力が年齢とともに衰えるなんてウソ!」。これは,最近よく言われるようになってて,池谷さんはその先鞭をつけた研究者のひとり。

● しかし,記憶についての重要なことは,本書の末尾に登場する。
 記憶は正確では役に立たないのです。あいまいであることが必要なのです。それは,覚えたい内容の特徴やルールなど,「パッと見」の下にひそんでいる共通項を自動的に選び出すためです。(p148)
 進化上で原始的な動物ほど,記憶は正確なようです。つまり融通が利かないのです。さらに都合が悪いことに,一回覚えた記憶はなかなか消えません。「スズメ百まで踊りを忘れず」という言葉を聞けば,「うわぁ,すごい記憶力だなあ」と尊敬に近い気持ちが生まれるかもしれませんが,そいういう記憶は応用が利かないため,基本的に役に立たないと思っておいたほうがよいでしょう。(p149)
 ヒトの脳は記憶のあいまい性を確保するために,どんな工夫をしているのでしょうか。それは,ゆっくり学習することです。ものごとの特徴を抽出するためには,学習の速度がある程度遅いことが重要です。(p150)
 学習のスピードが速いと,表面に見える,うわべの情報だけに振り回されて,その奥にひそんでいる重要なものは見えてはきません。(p151)
 いわれてみれば,ぼくらの経験則に符合する話ではあるまいか。

● それともうひとつ,有益と思われる情報。これまた,言われてみればそうだと合点するものだけど。
 つい数年前までは,復習の回数が基準となっていました。ところが(中略)復習ではなく出力が大事ということがわかりました。つまり,教科書や参考書を見直すより,問題集をどんどんやったほうが効果的! テストで記憶増強がなぜ生じるのか? それは,解答を導くためのヒントも同時に脳内で作るカラなんです。テストと言えば,「覚えているかどうかのチェック」という認識しかない人が多いようですが,脳にとってはテストを行うという行為自体にとても深い意味があるのです。(p142)

2013年9月19日木曜日

2013.09.19 YUZUKO 『暮らし便利ノートの作りかた』

書名 暮らし便利ノートの作りかた
著者 YUZUKO
発行所 メディアファクトリー
発行年月日 2010.12.03
価格(税別) 1,200円

● これは要するにスクラップ帳。文字による書きこみも,ノートにじかに書くのではなくて,メモ用紙に書いてから,ノートに貼る。
 そのメモも,文字よりはイラストが多い。ポップであとで見直すのが楽しくなる。

● こういうのはどうしたって男より女の方が得意でしょ。男は女に学ぶべし。
 なんだけど,こういうことをやっている男子を,女子はどう思うのかなぁ。

● 「雑誌の切り抜きは中学生からの習慣」だという。学生の頃からやっていることで,いうなら年季が入っている。三つ子の魂百まで的なことって,こういうところにもでるんですかねぇ。

2013年9月18日水曜日

2013.09.17 小寺 聡編 『もういちど読む山川倫理』

書名 もういちど読む山川倫理
編者 小寺 聡
発行所 山川出版社
発行年月日 2011.04.20
価格(税別) 1,500円

● 高校の教科書を一般向けに補整して出版されているシリーズの中の1冊。ぼくもはるかな昔,高校で「倫理社会」の授業は受けている。その当時の教科書よりだいぶ厚いような気がする。

● 内容は哲学史ですよね。相当に高度で盛りだくさん。高校でここまで教えているのかと,ちょっと以上に驚いた。
 レイチェル・カーソン,レヴィナス,ハンナ・アーレント,ロールズなど,ぼくが高校生だった頃の教科書には載ってなかった(と思う)人たちも登場しているのは,生きた時代の違い。ポパー,ハーバマス,フーコー,レヴィ・ストロースやアメリカのウィリアムズも,昔の教科書には登場してなかったと思う(これは記憶の脱落の可能性も大)。

● 半ばは戯れ言として言うんだけど,並みの大学の文学部哲学科の学生なら,これ1冊で卒業できちゃうんじゃないか。
 自分が高校で受けた授業もこういうものだったのだろうか。当時の記憶なんて残っているはずもないけれど,たぶん違ったろうな。万が一,このレベルだったとしたら,とてもじゃないけど消化できなかったことは確実。

● 現在の政治や社会のありようについて批判を展開する場合も,その切り口のほぼすべてを,この本から拾えるのではないか。ま,そんなことをしたければ,だけどね。
 考えるための素材集めも本書で充分。あとは自分の頭で考えなさい,ってところかなぁ。

● 最初に次のような説明がある。
 「倫」とは「なかま」のことであり,「理」とは「筋道」のことをさしますから,倫理とは要するに人びとの永年の経験が積み重なってできあがった,人間集団の規律やルールのことをさすと説明できます。
 どういうわけか,この説明に感動。そうか,そうだったのか,って。

● カントとヘーゲルの解説は特にありがたかった。カントとヘーゲルが何を言っていたのか,ようやく少しわかった気がしている。かなり朧ではあるんだけど。
 法然と親鸞の違いも,わかりやすく教えてもらえた。ずっとモヤモヤしていたのでね。

● ベルクソンについて,次のように紹介している。
 フランスの哲学者ベルクソン〈1859-1941〉は,進化論を背景にして,宇宙に生まれた創造的な生命の流れの中に人間を位置づけた。ベルクソンによれば,宇宙に発生し,進化しながら展開する生命の躍進力こそが,真の実在である。その生命の躍進力がゆるむと固定した物質となり,高まると生命や意識の生き生きとした活動になる。(p168)
 おいおいおい,オカルトっぽくないか,これ。こういうのがちゃんとオーソライズされて,教科書に載るんだねぇ。
 でも,なにがなしホッとする。ひょっとしたらそうなのかもしれないと思ってみるのも楽しい。「生命の躍進力」については,ベルクソンの原著にあたってみる必要があるんだろうけど。

 まぁ,今の高校生はすごいことを勉強しているものだ。これだけのものを週に1回か2回の授業で伝えなければならない教師も大変だな。いや,そんなことができる教師がいるのか。

2013年9月16日月曜日

2013.09.16 梧桐書院編集部編 『全国大学案内2013年版』

書名 全国大学案内2013年版
編者 梧桐書院編集部
発行所 梧桐書院
発行年月日 2012.03.19
価格(税別) 2,300円

● 現在,日本にはどんな大学があるのか。ふと気になったので,本書で確認。電話帳ほどの厚さの本。ざっと見ていった。

● ふた昔ほど前に,「国際」とか「総合」とか「情報」といった名前の学部がどんどんできて,そういう時代なのかと思ったことがあった。不動産学部といったちょっとバブルチックなものもできたな。

● ところが,今や,そんなものではないんでした。以下のような学部があるのだよ。何を今更と言われるかもしれないんだけど,年寄りにはへぇぇと思えるものばかりだ。
 感性デザイン学部
 システム科学技術学部
 食産業学部
 共生システム理工学類
 コミュニティ振興学部
 スポーツプロモーション学部
 英語情報マネジメント学部
 危機管理学部
 プロジェクトマネジメント学科
 ホスピタリティ・ツーリズム学部
 グローバルエンジニアリング学部
 グローバル・メディア・スタディーズ学部
 社会イノベーション学部
 ネットワーク情報学部
 映画学部
 知的財産学部
 
● 看板のかけ替えもあるだろう。大学が学生を集めるために,必死に世相を追いかけているようにも思えるし,ニッチが日の目を見るようになったのだなとも思う。
 昔の空気を吸って,年を重ねてしまった者には,なかなかついて行くのが難しい時代なのだなぁとも思った。

2013.09.16 疋田 智 『日本史の旅は,自転車に限る!』

書名 日本史の旅は,自転車に限る!
著者 疋田 智
発行所 枻出版社
発行年月日 2004.11.30
価格(税別) 1,400円

● 自転車は高校以来,あまり縁のない存在だった。それがどういう風の吹き回しか,忽然と,通勤に車ではなく自転車を使ってみようと思いたち,片道29キロを自転車で通うようになった。3年前の6月のこと。
 もちろん毎日ではない。そんなことをしたら死んでしまう。週に2回程度。通勤に乗るようになると,休日にも乗るようになる。いろいろと苦労はあったんだけども,なかなかいい感じに生活が転んでくれた気がしてた。
 のだが,昨年4月に転勤になり,電車通勤になった。通勤で自転車を使わなくなると,すべてが逆回転。バッタリ乗らないようになって,現在に至る。

● 著者は,その自転車ツーキニストの元祖。何冊かの著書を面白く読んだし,Webにも多くの文章を載せているので,それも読むようになった。独自の文体を確立しておりますな。
 本業はTBSのプロデューサー。自転車本がヒットして,そちらの仕事も増え, いうところの二足のわらじを履いてることになるんだけども,どちらかひとつでも大変だろうに,この人,相当に忙しいのではあるまいか。しかし,現在に至るも勢いは衰えを見せない。

● 自転車から離れると,その疋田さんの本も読まないようになった。本書は久しぶりの疋田本ってことになる。
 読んでみれば,やはり面白い。

● 「はじめに」で次のように書いている。
 実は前々から,私は「歴史探訪」と「自転車」は相性がいいと思っていた。自転車のよさというのは,適当なスピードで,等身大の距離を行けるところにある。(中略) 自分の力で進んでいくという感覚もいいし,その地の風の匂いや気温などを感じていると,そこに流れる地元の「気分」のようなものが,より多く見えてくる。本来見えなかったものまでも,ひょっとしたら見えてくるのではないかとも思った。
 たぶん日本の歴史ってヤツは,自転車と同じぐらいのスピードで進んでいる,なんて思ったりもした。よくは分からないが,牛車より速く早馬より遅い。それぐらいが日本史の進むスピードなのではないか。ホントに。
● 自分も同じことをしたくなるわけだけど,まずは自転車に復帰しないとねぇ。すっかり億劫になっているのが情けないんだけど。

2013年9月11日水曜日

2013.09.09 松本 肇編 『社会人大学院生のススメ』

書名 社会人大学院生のススメ
編者 松本 肇
発行所 オクムラ書店
発行年月日 2012.04.20
価格(税別) 2,000円

● デキる優秀な職業人は,大学院などには目もくれないものだと思っている。社会人大学院を視野に入れるのは,それよりもちょっと下位の人たちではないか。
 そうでなければ,棒にも箸にもかからない水準の人たち。大学院修了という学歴が何かモノを言うと思っちゃってる人たちだね。

● 実際,社会人を対象とした土日開講制や通信制の大学院が急増し,現在も増加の過程にあるわけだけれども,それはなぜかといえば,社会の多様化やグローバル化によって,それぞれの業界の業務も多様化,高度化した結果,大学(学部)だけでは必要な知識を提供できなくなったからだ。
 っていうのを信じている人は,そんなに多くはないと思うんだよねぇ。仮にそうだとしたって,そのために必要な知識が大学院に転がっていると思う人は,さらに少ないはずだ。

● 結局これは供給者側,大学を経営する側の事情を慮ってのものだろう。少子化がきつい。すでに選ばなければ大学全入の時代だ。希望者を全員入学させても,定員に満たない。
 本来なら,大学の何割かを潰さなくちゃいけない。それをしないで需要を増やそうとした結果だろう。すでに社会人になっている人をどうにかその気にさせて,大学や大学院に呼びこむ。お客さんを増やす。

● それにウマウマと乗ってしまう人って,もともとそんなに頭がいいはずがない。必要もなければ役にも立たないものに,けっこうな額のお金を投じちゃうわけだからさ。道楽でそうしているというのなら,この限りではないけれど。
 それにさ。民間企業には立派な経営者も多いと思うんだけど,学校法人はそうじゃない(と思う)。品性下劣で頭脳劣弱なんだけど,人の上に立ちたいというのが,学校法人の理事に多い(ような気がする)。
 学校法人と宗教法人と社会福祉法人。この3つは叩けばいくらでも埃がたつ。これ,大人の常識(ではあるまいか)。ちなみに,この3つの中では,社会福祉法人がいくぶんマシだと思う。
 いや,ちょっと言いたい放題が過ぎるか。

● 本書にも次のような記述がある。
 大学でそれなりに優秀な成績を修めて卒業した人が,かなりの学費を捻出して大学院へ進学したのに,なぜか定職に就けないというケースが増えているのです。高校よりも,大学よりも上位の学歴のはずなのに,就職できないのです。(p13)
 こういう事実を目の当たりにすると,大学院へ行けば幸せになるというのは,実は大いなる誤解であることがわかります。本来のあり方を考えてみれば,多くの時間と費用を投下した大学院出身者を疎ましく思う企業の方こそ問題ですが,この問題を解決するために,全ての企業を回って説得するというわけにもいきませんから,企業側の意識改革は待つしかないのが実情です。(p14)
 新規学卒で就職したのにも関わらず年齢が2~3歳上で,学位も上位のものを持っている人について,他の従業員と同じに扱うべきか,それとも別物として扱うのか,企業の方が戸惑ってしまうのです。できることなら型破りな人物は採用したくないという気持ちもわからなくもありません。(p17)
 これは本書の読者にだいぶ遠慮した結果のもの言いなのかもしれない。もし,本気でこのように考えているのだとすると,大馬鹿野郎と言うしかない。
 なぜかというに,「学歴」や「学位」の価値や働きを重く見過ぎているからだ。悪しき学歴主義,学位主義に墜ちかねないものだからだ。

● 企業は市場でシビアな競争に晒されている。優秀な人材は喉から手がでるほどに欲しいに決まっている。まともな企業ならそうだろう。しかし,企業が考える「優秀」とは「学歴」や「学位」とは重ならないところがあるのだと思う。
 「学歴」や「学位」が上位であることは,骨惜しみをしないで働くことを保証しない。打たれ強くて明るい性格であることを保証しない。もっと言ってしまうと,勉強好きであることすら保証しない。

● 頭のことをいえば,企業が欲しいのは地頭のいい人であって,地頭に載っているデコレーションはどうでもいい。学歴で地頭を推測できるのは学部までだ。大学院は学歴のうちに入らない。
 大学院まで行ってしまったということは,20代の半ば過ぎまで大学の中で過ごしてしまったということでもある。人間関係や集団の中の位置取りについて学ぶのに適した,可塑性の高い2年間なり3年間なりを大学の中で過ごしてしまうことのデメリットは,考えられているより大きいかもしれない。
 ちなみに,ぼく一個は,修士課程卒は高卒扱い,博士課程まで行ってしまった者は中卒扱いが相当だと考えている。そう考えると平仄が合う例が,けっこうあるのではあるまいか。

● 結局,本気で研究者を狙うわけでもないのに,出来心で大学院に行くのはやめるのが賢い。就職できなかった場合の避難先にするのはやむを得ないと思うが,留年という手もある。
 とにもかくにも,大学院が多すぎるのだ。多すぎるものに価値はないというのは,古今の鉄則ではないか。大学院側が美辞麗句を並べて学生を募るのは,洗剤や化粧品メーカーのCMと同じである。信じる方が悪いのだ。
 本書でも勧めているように,大学院は行くとしても,社会人になってからでいいのじゃないか。冒頭に書いたように,本当に優秀な人は行かないものだと思うけど。
 以上は主に文系の卒業生のことだ。工学部や理学部だと,企業の側が大学院までの教育を求めるのがむしろ普通だろう。理学部を出て金融機関に就職するなんて場合は,そうでもないかもしれないが。

● 宮子あずささんの手記は勉強になった。
 7年間看護師長として働く中で感じてきたのは,看護師として働くことが年々つらくなっている現実でした。私が就職した当時に比べて,人員は非常に豊かです。しかし,医療が進歩すればするほど患者さんの要求水準も上がり,安全管理その他さまざまな基準ができるにつれ,研修や会議,マニュアルなど直接患者さんとかかわる以外の業務が,非常に増えてきます。結果として,現場は後輩をゆっくり育てるゆとりはなく,人は育たず,ベテランは疲弊する。そうやってやめていくスタッフを見送るのが,私には本当につらくてなりませんでした。(p133)
 看護師はそのまじめさゆえに,同業者に厳しく,「足りないところをびしびし指摘するのが教育だ」と考えやすいようです。背景には,自分の不完全さを認められない,自信のなさがあるのだと思います。こうしたバランスの悪さゆえに,不安な状況になればなるほど,「もっとがんばらなくちゃ認められない」とがんばり,やがては「がんばらない人が悪い」とさらに人に厳しくなってしまう。しかし,人間は,その存在を肯定されなければ,がんばれないのではないでしょうか。ほめられるできではない人でも,日々の労働はねぎらわれるべきだし,北風より太陽が,私の信念。(p133)
● 同じ状況は看護の世界に限らないに違いない。学校の教師も諸手をあげて宮子さんの意見に賛成するだろう。福祉でも同じかもしれない。いや,製造や金融,流通の世界でも同様だろう。
 雑用が本来業務を圧迫しだして久しい。課長や部長が口をだすのも,この雑用の方。結果,ストレスまみれになるという状況があるのかもしれない。たぶん,メンタルヘルスの問題も,原因のひとつはこのあたりにありそうだ。
 そこで,宮子さんはフルタイムの大学院進学を決めるのだけれども,そのあたりは読みごたえがあった。

2013.09.07 上田正昭 『渡来の古代史 国のかたちをつくったのは誰か』

書名 渡来の古代史 国のかたちをつくったのは誰か
著者 上田正昭
発行所 角川選書
発行年月日 2013.06.20
価格(税別) 1,800円

● 著者が本書で訴えたかったのは,おそらく次の2点。
 王化思想の所産である「帰化」・「投化」を意識的に用い,「蕃国」観をはっきりと投影した『日本書紀』にしるす日朝関係史を主軸に,朝鮮関係の史籍や金石文を解釈するその立場は,その根底において問い直す必要のあることは多言するまでもない。 『日本書紀』の対朝鮮観が,いかに八世紀中葉以後,とりわけ近世・近代の日本思想の動向にすさまじい暗影をなげかけたか。それを想うにつけても,『日本書紀』的「帰化」人史観のゆがみをただすことは,今日の善隣友好の課題にかかわっていることを痛感する。(p33)
 多くの研究者は「渡来人の影響」というが,それはたんなる影響にとどまらない。古代日本の文化そのものの担い手として活躍し,文化の創造にも注目すべき役割を果たしたというべきであろう。(p134)
 要するに,副題の「国のかたちをつくったのは誰か」という問いには,それは朝鮮半島からの渡来人であるという解答になるのだろう。

● 史籍の引用も一般向けに読みやすくする工夫をしていると思われるのだが,それでもなかなかついていくのは大変だ。っていうか,ついていけてないと思う。
 どの分野にもオタクというのはいるもので,オタクも極めれば(なおかつ運がよければ)大学者に至るわけだ。

2013年9月5日木曜日

2013.09.04 松尾知枝 『1日5分で夢が叶う日記の魔法』

書名 1日5分で夢が叶う日記の魔法
著者 松尾知枝
発行所 中経出版
発行年月日 2012.01.11
価格(税別) 1,400円

● 時々は読むことにしている,こういうのも。読むことにしているっていうか,読んじゃうんだよなぁ。さすがにこのとおりにやってみようとは思わないけど。

● 若い人の中には,こういうのを真に受けちゃう人もいるのかな。
 で,中には本当に夢が叶っちゃったよ,っていう人が出るんだろうと思う。ほとんど偶然なんだけどね。

● とはいっても,日記を書くことはぜんぜん悪いことじゃないし,っていうか,基本的にはいいことだろう。本書が説いているようなフォーマットにとらわれずに,自由に書いてみるのがいいんだろうね。

2013年9月4日水曜日

2013.09.04 指南役 『時間マニュアル』

書名 時間マニュアル
著者 指南役
    高田真弓(画)
発行所 PHP
発行年月日 2010.02.12
価格(税別) 1,300円

● 著者の指南役とは「エンタテインメント企画集団」で,草場滋さん,津田真一さん,小田朋隆さんがメンバーになっているらしい。

● 軽い読みものとして楽しめばいいものだろう。面白く読める。
 以下に転載をいくつか。
 家の中にいても定点観測ができる方法がある。 テレビだ。 とにかく週イチで,場合によっては毎日,同じ番組を見続ける。 例えば--僕はかつて,午後6時52分からのNHKの気象情報を,半年間ほど毎日見続けたことがあった。(中略) 不思議なことに,この天気予報だけを毎日続けて見ていると,特に他の番組やニュースを見なくても,なんとなく世の中の動きが見えてくるのだ。(p30)
 ぼくも結果においてこれをやっている。「SMAP×SMAP」(フジ),「さんま御殿」(日テレ),「ホンマでっか!?」(フジ)の3つが,ぼくが見ているテレビ番組のすべてなんだけど,これだけは必ず見ている。すると,どういうわけか,周囲から繰りだされるたいていの話題には対応できる。
 30分の遅刻は,どんなに言い訳しても,時間にルーズな印象は拭えない。でも,2時間は違う。それはもはや遅刻ではなく,何か特別な事情を髣髴させる。むしろ同情してくれたりもする。(p36)
 結局,時間の使い方において一番大切なことは,その時,その時を“最大限に生かす”ことに尽きると思う。 思い立ったが吉日,オンタイム,旬--。 タイムシフトは,時間の有効活用であっても,けっして最良の方法ではない。その時にできることは,やはりその時にしておいたほうがいい。 仕事もそうだ。何か問題が生じた時,その瞬間に処理するのが一番いい。問題を先送りにして,よくなることは稀である。(p167)

2013年9月3日火曜日

2013.09.03 渡邉昭彦 『50過ぎから人生を面白くする方法』

書名 50過ぎから人生を面白くする方法
著者 渡邉昭彦
発行所 半蔵門出版
発行年月日 2003.10.16
価格(税別) 1,500円

● 百歳まで生きるのだから,50歳はまだ道半ばだ。50歳までは雌伏の時期,羽ばたくのはこれからだ。50歳過ぎに起業して,細く長く家業を続けよ。ということを説く,励ましあるいはアジテーションの本。
 著者自身,それを実行して,60歳で東洋経済新報社を退職後,経済情報研究所と半蔵門出版を起こした。

● 元気をもらえますな。同じことを同じような文章で何度も繰り返すのに閉口するかもしれないけれども。
 「好きなことに没頭している人がいちばん強いのです。好きで取り組んでいる人には,仕事でやっている人がかなうものではありません」(p51)とかね。言われなくてもわかっていることなんだけど,あらためて言ってもらえると,そうだよなぁと思える,っていうか。

● 百歳まで元気にいられればいいねぇ。いくら寿命が伸びたとはいえ,元気で百歳というのは,まだまだレアだからね。

2013年9月2日月曜日

2013.09.01 ほぼ日刊イトイ新聞編 『ほぼ日手帳公式ガイドブック2014 ことしのわたしは,たのしい。』

書名 ほぼ日手帳公式ガイドブック2014 ことしのわたしは,たのしい。
編著者 ほぼ日刊イトイ新聞
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2013.08.26
価格(税別) 1,500円

● 多くのユーザーが登場するんだけど,ぼく的にすごいなと思ったのは,日本茶専門カフェに勤務する山口奈々子さんの手帳(p108)。
 書いている媒体が「ほぼ日手帳」だというだけで,これはもう手帳の範疇じゃないですな。手帳を手帳として使おうと考えることが,すでにして固定観念。

● その人の生活や仕事への姿勢と切り離して,手帳の賢い使い方なんていうのはあり得ないのだってことを教えてくれる。彼女の仕事好き,仕事への献身があって,初めてこういう使い方が誕生するわけだ。それに先だって,望ましい(あるいは効果的な)手帳の使い方なんてのがあるわけではない。
 そういうあたりまえのことを教えてもらった感じ。

2013.09.01 マークス編 『DAILY PLANNER EDIT 毎日をクリエイティブにする「1日1ページ」手帳術』

書名 DAILY PLANNER EDIT 毎日をクリエイティブにする「1日1ページ」手帳術
編者 マークス
発行所 エディシオン・ドゥ・パリ
発行年月日 2012.09.24
価格(税別) 1,200円

● 東京に出た帰りに,大宮で途中下車。高島屋7階にあるジュンク堂書店で購入し,車中で読んだ(っていうか,見た)。

● 1日1ページの手帳は「ほぼ日手帳」がその代名詞になった感があるけれど,ほかにももちろんある。モレスキンとかね。マークスのEDITもそのひとつ。
 本書は「ほぼ日手帳」でいうと『ほぼ日手帳公式ガイドブック』にあたるものですかね。

● 主には実際に使っているユーザーに取材して,それをまとめたもの。ということになると,内容の豊富さ,多彩さにおいて,『ほぼ日手帳公式ガイドブック』に及ばないってことになる。
 使い方はユーザーの数だけあるものだとは思うんだけど,大きく括ればいくつかに収斂する。書くか描くか貼るか,だ。用途はそれぞれだけれども,使用法はそんなにたくさんあるわけじゃない。

● のだが,人の手帳を見るのは楽しいものだ。