2013年3月31日日曜日

2013.03.31 長谷川慶太郎 『日本企業の生きる道』


書名 日本企業の生きる道
著者 長谷川慶太郎
発行所 PHP
発行年月日 2013.03.22
価格(税別) 1,500円

● 本書の出発点は次のようなテーゼ。
 私は以前から,「二十一世紀は“デフレの世紀”となる」と言い続けてきた。だが,「デフレだから不況なのだ」とする見解には与しない。ましてや,小手先の金融政策や財政政策によってデフレを克服すれば,即,景気がよくなるとも思えない。やはり日本の場合,景気回復の原動力は“モノづくり”であるべきだ。(p2)
● 労働者保護を優先すると企業の活力を削ぐ。その結果どうなるかといえば,労働者が困ることになる。
 労働者保護を続けているフランスより,経営者が権限を取り戻して,企業が大胆なリストラを続けているドイツのほうが,失業率は低い。企業が競争力を取り戻さなければ,多くの従業員の雇用を維持できなくなるし,また,新規雇用も生まれないということだ。(p26)
● 長谷川さんはアメリカを高く評価する。政治決定の迅速さをはじめとして,アメリカには他国に真似のできないものがたくさんある。シェールガス革命によって,エネルギーコストが劇的に下がれば,製造業もアメリカ国内に戻ってくる。
 アメリカは,独自の選挙制度によって,他国よりも目先の金銭的なことを気にすることなく,長期的な施策を打ちやすくなっている。 また,スピーチ力を鍛えられ,予備選挙によって選び抜かれた者が本選挙に出て,そこで勝ち抜いた者が当選する。そうして予選を勝ち抜いて鍛えられた政治家たちが,国際交渉の場に出てくるから,他国よりも相対的に優位になるのは当たり前だ。(p72)
● 対して,中国は破綻の寸前にある。日本政府の喫緊の課題は,中国の在留邦人14万人をどうすれば救出できるか,それを考えてすぐに法改正をはじめとする手を打つことだという。
 一九八九年に起こった天安門事件は,十万人が天安門広場に集まってデモを行なって起きた大事件であった。その天安門事件と今日のデモとの最大の違いは,参加者の属性である。天安門事件は,「学生と知識人の運動」であったのに対して,今日のデモは「失業者の運動」である。 天安門事件は一日で運動が切り崩されてしまったが,失業者のデモが一日で収まることはあり得ない。失業者たちは,命が懸かっているため,簡単に矛を収めない。いったん火がついたら,打つ手がないほどに広がっていくはずである。(p91)
● 中国ではもはや人民解放軍をコントロールする力が政府にない。この状態で中国に政変が起これば,内戦が勃発する。特に,中国東北部を管轄する瀋陽軍区が問題だ。
 軍事的に脅しをかけられ,また,一方で支援を受けているうちに,北朝鮮は,軍事,経済などのすべての面で,瀋陽軍区の意向に逆らうことができなくなってしまった。金正恩は,瀋陽軍区の“操り人形”といってもいい。 北朝鮮のミサイル発射は,瀋陽軍区に伺いを立て,その許可を得て踏み切っているとみて間違いない。(p104)
 北朝鮮がミサイル実験や核実験をすればするほど,中国政府は窮地に立たされていく。それが瀋陽軍区の狙いである。中央政府に対する脅しのために,瀋陽軍区が北朝鮮を利用しているのである。 表面的には,「北朝鮮」対「国際社会」にみえるだろうが,その真相は,「瀋陽軍区」対「北京中央政府」という中国国内の内部抗争である。(p106)
 ● 韓国のサムスンには一定の評価。
 サムスンの薄型テレビ技術は,ソニーやパナソニックの技術を利用しているとみる向きもあるが,見当違いである。かつては,サムスンは日本の技術者を引き抜き,日本の技術を導入していた。だが,それはひと昔前のことである。サムスンは巨額の研究開発投資を続けており,地力で技術開発を行っている。(p124)
● しかしながら,そのサムスンをもってしても,重電部門は手に負えない。この重電部門が日本の宝である。これがあるから,日本経済の将来図を明るく描くことができる。

● 日本はアメリカを含むすべての国に対して,特許収支が黒字。企業が研究開発を怠ってこなかった成果だ。特許の重要性について,次の例をあげて説明する。
 グーグルは,モトローラの事業がほしかったのではなく,「アンドロイド」を守るための武器として,モトローラがもっているとされる約二四五百件の特許がほしかったのである。“特許ポートフォリオ”を強化することは,ハイテク企業の重要な戦略となっている。(p146)

2013.03.30 長谷川慶太郎・中原圭介 『激論 日本経済,崖っぷちの決断』


書名 激論 日本経済,崖っぷちの決断
著者 長谷川慶太郎・中原圭介
発行所 徳間書店
発行年月日 2013.03.31
価格(税別) 1,500円

● 主にはふたりの対談で構成されている。中原さんが噛ませ犬の役を演じて(演じているつもりはないかもしれないけど),長谷川さんの見解を引きだすという形。

● 長谷川さんは徹底したリアリスト。情だのヒューマニズムだのに流されるところが微塵もない。小気味いいほどだ。逆にそこが反感を買うところかもしれないわけだが,そんなことは歯牙にもかけていないところがまた潔い。

● まず,派遣切り以来,しばしば問題にされる非正規社員について,長谷川さんの見解は次のようなもの。
 非正規社員を増やすことによって賃下げを考えないとするなら,経営者はこれからどうやって食っていけるのでしょう。賃金コストを考えれば非正規社員というのは自動的に増えていくものなのです。自然発生的に拡大していく雇用形態なのですから,これはどうすることもできません。(p80)
 いつクビになるか分からないからといって,なぜモチベーションが下がるのでしょうか。むしろ仕事で安心していてはいけません。安心したら気が抜けますし,気を抜いているからこそ安心できるのです。(p80)
 松下氏は確かに絶対にクビを切らないといっていました。しかし,それはクビを切らないでもやっていけるときだったから,クビを切らないといっていただけです。ところが,現状のパナソニックだったらどうでしょうか。松下氏が今生きていれば,大胆にどんどんクビを切るでしょう。松下氏の経営感覚からはそれが当然であって,そんな甘い経営者ではありません。(p83)
● 終身雇用制についても何らの幻想は抱いていない。
 終身雇用制が高度経済成長の原動力だったというのは今でも誤解されています。当時は人口がどんどん増えていったので,ものをつくれば何でも売れていった時代だったのです。過去は麗しく美しく思い出されて懐かしい。終身雇用制にこだわるのは昔懐かしいということにすぎません。(p85)
 高度経済成長期には「会社が家族だ」というような言い方がされましたが,そんなものはもともと幻想なのです。しかも今のような国際競争の時代になると,日本の企業だろうが欧米の企業だろうが同じルールの下で働かなくてはいけません。また,同じルールで動かされていくということが本当のグローバリズムなのです。(p86)
● 終身雇用制によって企業にノウハウが蓄積され,それが競争力の源になるという意見も,一笑に付される。
 ハイブリッド車などやろうと思えばどこでもできますよ。すでにアメリカのGMでもハイブリッド車の生産を始めました。また,終身雇用制の麗しい慣行がハイブリッドばかりか他の新しい技術を生んだという事実もありません。終身雇用制と技術開発とはまったく関係がないのです。 GMがこれまでハイブリッド車をつくれなかったのも労働慣行のせいですが,それは労使問題であって正社員制度とか,ましてや終身雇用制などとはまったく関係ありません。(p91)
 ● 非正規では研修も受けられず,したがって人材活用の幅を狭めることになるという意見に対しては,次のように解答。要するに,自分にスキルを付けることは自己負担で行う時代になっているということ。
 雇用悪化は若者にしわ寄せがきていると言われるけれども,その若者に対しても,徹底したリアリズムで対応。
 三分の一の人間が教育の機会を奪われているといわれるけれども,積極的に教育の機会を得ようとしない人間も少なくないのです。やる気がありません。そのような連中に教育を受ける資格があるでしょうか。(p94)
 これからは自分の仕事のスキルは自分で身に付けなければいけませんよ。企業も自分でスキルを身に付けてきた人しか採用しなければいい。つまり,会社におんぶに抱っこという姿勢の人ではもはやダメなのです。以前のように日本経済も右肩上がりのときには会社も教育する余裕があったかもしれませんが,今の経済状況では会社ももうそんな負担には耐えられません。とすれば,労働者側も自分で勉強するほかないじゃないですか。 それに今はやる気があれば,情報化時代ですから高度な技術も自分で勉強できるようになっています。(p95)
● デフレ時代に最も重要なのは研究開発だということ。
 製品価格の下落に対して生産コストを切り下げられないとすると企業はどうやって対応するのか。結局,技術の研究開発しかありません。デフレ時代に生き残るたった一つの方法は,総力を挙げて研究開発を行うことです。(p140)
 日本が成長路線に復帰するスピードを上げるには二つの点に力を入れるしかありません。これは日本だけではなくどの国にも共通していえることです。一つが研究開発で,研究開発投資をどこまで伸ばせるかがポイントです。もう一つがインフラ整備になります。(p146)
● TPP,ヨーロッパ危機,中国崩壊について。
 TPPの後ろにはシェールガス革命があるともいえます。シェールガス革命にうまく乗ろうとするならTPPに参加することが大前提であり,それによって経済活動を低迷から高揚の方向へ持っていくことができると考えていいでしょう。(p180)
 日本は貿易なしにはやっていけない国ですから,TPPに参加すれば他国との平等な競争が可能になって製造業も伸びていきます。逆に参加しなければ,輸出先の国で関税が一五%から二〇%もかけられる状況が残るのですから,製造業の国際競争力も失われてしまいます。(p181)
 最近も私のところに防衛省の防衛政策局長が来たとき,中国で大規模な内戦が発生した場合にどうなるかという話題が出ました。つまり,日本政府として在留邦人の救出に手の打ちようがあるかということです。「残念ながらございません」というのが彼の答えでした。となると一四万人は見殺しにしなければいけませんし,実際に見殺しになってしまうでしょう。 そうなって初めて日本国民は平和ボケがどんなに高く付くかを痛感するわけです。それは仕方がありません。六七年間も平和ボケで過ごしてきたのですから。(p208)

2013.03.29 前田めぐる 『ソーシャルメディアで伝わる文章術』


書名 ソーシャルメディアで伝わる文章術
著者 前田めぐる
発行所 秀和システム
発行年月日 2013.03.11
価格(税別) 1,600円

● 文章読本。ソーシャルメディア以外の場面で文章を書くときにも,こういうことを知っておけば役に立つ。逆にいうと,ソーシャルメディアに特有の文章術というのは,さほどにたくさんあるわけではない。

● むしろ,文章以前に注意しなければならないマナーだったり護身術?だったりが,ソーシャルメディアにはある。それらについても触れられているので,参考になる。
 が,これほどに気をつけなきゃいけないんだったら,ソーシャルメディアには手を染めなくてもいいかなと,ぼくなどは思ってしまう。

● 要は面倒くさがり。だけど,その前にあまり細かなコミュニケーションは望んでいないんだと思う。むしろ,そういうのは避けたいかな,と。
 リアルでもそうだ。友だちは少なくていいと思っている。何だったらいなくてもいいと思っている。一人でいるのが苦にならない。っていうか,一人が好き。典型的な分裂気質。

2013年3月28日木曜日

2013.03.28 中谷彰宏 『もう一度会いたくなる人の聞く力』


書名 もう一度会いたくなる人の聞く力
著者 中谷彰宏
発行所 PHP
発行年月日 2012.09.26
価格(税別) 1,200円

● 中谷さんを嫌う人,けっこう多いでしょうね。この種の本を数え切れないほど出している。活字をスカスカに組んで,本数をたくさん出す。それで「作家」と自称する。「作家」はないだろう,ってね。

● でも中谷さんの本は出せば一定数売れる。彼のファンはナカタニアンというんだそうだ。そのナカタニアンがマーケットを支えている。

● でもね,言っていることはしごくまっとうですよね。たとえば,次のようなこと。
 クレームを聞く時,「大問題が起こってしまった」というとらえ方は間違いです。「散歩が足りないんだな」と思って話を聞くことです。これはクレームだけでなく,怒っている相手への話の聞き方です。上司の説教も同じです。上司が説教するのは散歩が足りないのです。散歩をさせてあげるぐらいのつもりで聞くことです。クレームは筋道で聞く必要はありません。怒っている相手のロジックを聞かなくていいのです。(p124)

2013.03.27 杉原厚吉 『大学教授という仕事』


書名 大学教授という仕事
著者 杉原厚吉
発行所 水曜社
発行年月日 2010.02.10
価格(税別) 1,600円

● 大学教授といっても,個体ごとに見ていけば千差万別で,幅広いバラエティーに富んでいるのだろう。どの職業でも同じだ。
 本書の著者は理科系の先生。しかも東大。さらに,相当に職業に誠実というか真面目な人のようだから,本書をもって「大学教授という仕事」を代表させるわけにはいかない感じ。

● 大学教授とは,まずストレスのない職業らしい。羨ましいぞ。
 平日の昼間の職場では,講義,会議,学生の相手,管理運営の仕事,電子メールの処理などに追われて,まとまった時間は取りにくい。そのため,論文や本を読むのは電車の中,論文や本の原稿を書いたりするのは自宅でということになってしまう。昼間やり残した雑用的な仕事も家にもち込む。(p14)
 ただ,家庭まで仕事をもち込むことは,いやいややっているのではない。好きでやっているのである。好きなことだから時間をかけても,時には徹夜をしても,苦にはならないし,ストレスもたまらない。楽しいから,自ら進んで忙しくできるのである。(p15)
● 講義をすることが大学教授の主要な仕事のひとつ。準備は大変そうだけど,とはいいながらも楽しそうでもある。
 講義の準備をしているとき,自分の心の動きは,こんな風に説明したら生徒からこんな質問を受けそうだと想像し,それに対する答え方を考えるという作業の繰り返しである。いわゆる自問自答である。生徒の気持ちになって質問し,教員の立場に戻ってそれに答えるという場面をくり返し想像し,シャドーボクシングのように講義の構想を練り上げていく。 それでも実際に教壇に立つと,思いもよらない質問を生徒から浴びる。(中略)生徒に教えてもらっているようなものである(p32)
 ● もうひとつは学問の開拓というか研究ですね。これは理系と文系ではだいぶ様相が異なるのかもしれない。理系は実験と計算というイメージがあるんだけど。
 自分で研究するだけじゃなくて,学生の指導もしなきゃいけない。
 研究の仕方は,講義などを通した知識の伝達ではなかなか教えられない。ではどうすればよいかというと,教員がやっている研究活動に学生も参加して,自分でも研究の一端を担ってみるという体験を通して体で覚えるのがよい。これをやるのが,学部であれば卒業論文を書くことであり,大学院であれば修士論文や博士論文を書くことである。(p37)
 ● 研究に区切りをつけたら,それを論文にする。ぼく的には研究のテーマを見つけることが大変で,論文にするのは機械的な作業じゃないかと思うんだけど,どうもそうでもないらしい。
 私自身が見つけて気に入っている工夫は,「流行作家になってエンターティメント小説でも書くような気分で,審査委員を楽しませることを最優先して論文を書こう」というものである。ふざけていると思われるかもしれないが,私はこれを真面目にやっている。そして,その効果に,長年手応えを感じている。だから,論文を書くことは楽しい。(p76)
● タコツボという言葉がある。大学の先生なんてのは,それぞれがタコツボに入っていて,ツボの外とは没交渉なんだろうと思いがちなんだけど,実際はどうなんだろうな。
 大学の学科や専攻という単位は,学問の一つの分野に対応していることが多い。だから,そのなかの教員同士は研究分野も近く,研究上の議論も十分にできると思われるかもしれない。しかし,なかなかそうはいかない。学問は非常に細分化されてきている。その細かさと比べると,学科や専攻の名前でくくれる学問分野は,一つ一つが非常に広い。だから同じ専攻に属していてもそれぞれの研究分野は非常に近いというわけではない。(p94)
● 研究発表は国内に限らず,国際的なものもある。特に理系は多いんだろうな。当然,いろいろと大変なこともある。
 質疑のもう一つのむずかしさは,いろいろな国の人からいろいろななまりを伴った英語で発せられる質問の意味をちゃんと聞き取って理解することにある。(中略)たいていの学生にとって,これが最も心配の種であり,緊張の原因である。これに関して私がいつも学生に言っているのは,「質問の意味が聞き取れなかったら,聞き取れたふりなどしないで,わかるまで聞き返せ」ということである。(中略)何回聞いてもわからないときには,そのうち時間切れになるから,司会者が,「この続きは休み時間に個人的に議論してください」といって終了してくれる。(p107)
● 本を出すのも教授のお仕事。著者なりの本を出すコツは次のとおり。
 どうしても書きたいと思ったとき,出版のあてがなくてもともかく原稿をつくってしまうということは,なかなか楽しいものだということを知った。 出版のあてがないのに原稿を書くということは,ひょっとしたら書いたことが無駄骨になりかねないから躊躇したくなる。でも,原稿を完成させて,それを出版社に見せることは何を書きたいかを示す最も確実な方法である。出版社としても企画だけ聞く場合より判断しやすいであろう。だから,これは人が読みたいはずだと思ったら,きっとどこかが出版してくれるという信念をもって,ともかく書いてしまうのがいいと思うようになった。(p133)
 ● 以下は研究に向かう態度のひとつ。大学教授に限らず,大切なことかも。
 私が学生によく言うとともに自分にも言い聞かせているのは,体勢が整わなくてもともかくシュートを打てということである。(中略)ボールを受け取ったら,体勢など整えないで,無理な姿勢のままともかくシュートを打つのがゴールを奪うコツだと思う。だから,国際会議への投稿を学生へ勧めたとき,学生が,もう少しこの実験をしたいなどと言ってきたら,実験をしながら(すなわち体勢が整わないまま)論文も書け(シュートを打て)と言うことにしている。(p168)

2013年3月26日火曜日

2013.03.26 茂木健一郎 『茂木健一郎の科学の興奮』


書名 茂木健一郎の科学の興奮
編著者 茂木健一郎・日経サイエンス編集部
発行所 日経サイエンス社
発行年月日 2011.12.18
価格(税別) 1,600円

● 茂木さんがいろんな科学者の現場を訪ねて,対談を展開。というか,教えを乞うという内容。どの現場でも,茂木さん,楽しそうで,科学啓蒙書なのにほっこり読める。
 もちろん,ほっこり読めるからといって,内容を理解できるかというと,ことはそう簡単にはまいらない。結局,自分の頭に合わせた理解の仕方をしちゃっていると思いますね。

● 茂木さんは「中学校に入った頃,ごく自然に『日経サイエンス』を読み始めた」そうだ。高校のときは『赤毛のアン』を原書で読んでいたし,ワーグナーに目覚めたというし,ニーチェだの夏目漱石だのにも手を染めていたようだ。
 こういう怪物が世の中にはいるのだ。こういう人とぼくとが,たとえば選挙で同じ1票を持っていいんだろうかねぇ。

2013年3月25日月曜日

2013.03.23 『DVD厳選 珠玉の名作オペラ VOL.2 リゴレット』


書名 DVD厳選 珠玉の名作オペラ VOL.2 リゴレット
監修者 永竹由幸
発行所 世界文化社
発行年月日 2009.06.10
価格(税別) 3,990円(DVDとも)

● これは書籍ではない。オペラのDVDに付いてきた解説書。60ページあまりの,リーフレットというか冊子ですな。
 こういうものは,本体のDVDを観る前につい読んでしまう。

● それがいいこととは限らないわけでね。へたに予備知識をいれないでDVDを観るのが,たぶん,間違いないんでしょうね。

● この解説書はない方がいいと思った。
 たとえば,「何故1849年頃になってこれをオペラ化しようと考えたのか。それは権力者が女性の貞操を弄ぶことへの怒りが,ふつふつと彼の心に湧き上がってきたからではないだろうか」(p26)なんて文章が出てきちゃわけですよ。
 「ふつふつと彼の心に湧き上がってきた」だって。小学生の作文じゃないんだぞ。

● さらには「漢字も読めない政治家を持ち,強欲な高級官僚に富を吸血鬼のように吸い取られ,払った年金の行方はわからない。ふんだりけったりされても何も言えず,男の子は草食植物化し,女の子は貞操という言葉の意味すら知らない。そういう世の中になっても仕方がないと天を仰ぐ以外どうしようもないこの喜劇的世界に,我々は道化1人持っていないのだ」(p46)という文章まで読まされることになる(このオペラのタイトルになっているリゴレットさんが,道化師を職業としている人なんですね)。
 ひょっとして気が効いた文章を書いたつもりでいるのかなぁ。ちょっと勘弁してほしいなぁ,こういうの。

● おまえは漢字が読めて偉いよ,と返したくなるんだよね。
 「稀有」を「キユウ」と読む政治家はダメなのか。政治家は政治家として有能であれば(無能でなければ)いいのであって,政治家として必要な能力に漢字を正確に読める能力なんぞは入っていないだろうよ。文人政治家を良しとするのか。とすれば,旧態依然の度が過ぎる。
 実際,この解説書が出たあとだけれども,漢字はおろか英語まで読み書きできるものの,政治家としては無能を極めた総理大臣を,我々は持つことになったではないか。

● 「男の子は草食植物化し,女の子は貞操という言葉の意味すら知らない」っていうのもなぁ。これを書いた時点で,この表現は黴だらけだったはずだぞ。レトリックとしてもどうなんだかなぁ。

2013.03.23 早坂 隆 『僕が遍路になった理由』


書名 僕が遍路になった理由
著者 早坂 隆
発行所 連合出版
発行年月日 2000.12.05(新装版 2009.02.28)
価格(税別) 1,700円

● 著者が大学4年の夏に体験した四国遍路を本にしたもの。「野宿で行く四国霊場巡りの旅」という副題のとおり,野宿をメインにして,ときどきユースホステルや民宿に泊まりながら八十八ヵ所を歩いた。
 ユースホステル部に所属して,しばしば国内外に行っていたらしいから,その延長に四国遍路があったのかもしれないが,なぜ四国に出たのかは,最後まで説明されない。なんとなくだったのかもしれない。

● 面白くて一気に読めた。理由はふたつ。
 ひとつは,内容の面白さ。いかにも青春っていうか,青春という単語からぼくらが想像するイメージにピッタリはまっているっていうか,若さが爆発していることによる面白さですね。
 この遍路をしている最中の著者は,就活に励んでいる同級生を尻目に,それに背を向けて四国を歩いているわけで,青春どころではなかったかもしれない。でも,そこを含めて,いいぞ,青年,って声援を送りたくなるわけね。

● 当然,こういう青春のモニュメントを建てることができた著者に対する羨望の念もある。オレには何にもなかったぞ,っていうね。大方の人はそうだと思う。就活にいそしんでいる同級生の側に属するわけですよね。要するに,その時々の多数派。
 著者はそうではなかった。多数派に属さないって,できそうでできないからね。たいていの人は,いい大人になっても「茶の間の正義」を得々と語ってやまない,見にくい多数派に甘んじているもんね。しかも,その自覚なく。

● もうひとつは,文章の素晴らしさ。本書の初版は,四国を歩いてさほど期日が経過していない間に出版されている。このときの著者は20代半ばか。
 それでこういう文章が書けるとは。文才ってことになるんでしょうかねぇ。大学を卒業したあと,著者はルポライターになったわけだけども,なるほどと思いますな。

● だいぶ前から,四国八十八箇所を歩いて回る,歩き遍路が増えているらしい。本書のほかにも,その体験記がたくさん出版されているし,ネットにはさらに多くの体験談が綴られている。
 じつは,ぼくも10年くらい前から,機会があれば四国を歩いてみたいと思って,その何冊かを読んだことがある。それぞれに面白いのが不思議。

● でね,わが地元にも「那須三十三所観音霊場」というのがありましてね。四国に行くのは叶わないとしても,せめて地元の観音霊場くらいは歩いてみようと思って,10年前に,休日を利用して巡礼の真似事を始めてみたんですよ。
 が,3分の1ほど廻ったところで挫折。そのまま今日に至っている。自分の不甲斐なさを棚にあげて申しあげると,この観音霊場が場として弱いんですよね。
 廻っている人があまり(というか,ほとんど)いないわけです。札所のお寺にしても,巡礼者がいるなんてあまり想定していないようでもあった。
 そこを歩いて廻るのは,何ていうか,妙に目立っちゃって(自意識過剰か),歩いているところからしてすでに居心地が悪かった。

● 近い将来,老いをひきずりながら四国を歩ければなぁと思うんですけどね。

2013年3月24日日曜日

2013.03.22 フジコ・ヘミング 『フジコ・ヘミング画集 青いバラの夢』


書名 フジコ・ヘミング画集 青いバラの夢
著者 フジコ・ヘミング
発行所 講談社
発行年月日 2007.09.27
価格(税別) 1,905円

● ぼくは絵がわからない。本書に掲載されているフジコ・ヘミングの絵が巧いのかそうではないのかもわからない。
 が,好みだけでいえば,一番いいなと思うのは,100ページに載っているマレーネ・ディートリッヒを描いたものですね。往年のショーガールの佇まいはこんなだったんだろうなぁと,妙に納得させるところがあって。

● カラヤンを描いた絵が2枚。カラヤンとフジコ・ヘミングとの小さな交流の話は,彼女の別の著書でも登場するんだけど,時間にすればほんの数分間のカラヤンとの思いでが,彼女に消しがたい影響を与えているのかな,と。

2013年3月22日金曜日

2013.03.22 竹内 薫 『面白くて眠れなくなる素粒子』


書名 面白くて眠れなくなる素粒子
著者 竹内 薫
発行所 PHP
発行年月日 2013.03.08
価格(税別) 1,300円

● 眠れなくなるほどではなかったけれど,面白かった。もちろん,本書で説かれていることをぜんぶ理解できたわけではないんですけどね。
 著者の難しいことをわかりやすく語る技術に脱帽。科学しか知らない人では,こういう文章は書けないわけで,いわゆる教養の蓄積が凄いんでしょうね。それとサービス精神に富んでいること。

● 物理学では,たとえば「九七パーセントの確率」というときは,ガセネタの可能性があること,素粒子の世界は徹頭徹尾「確率」であること,自分の脳で構築したイメージの延長線上には素粒子はないこと,など,へええと思わされることのオンパレード。

● しかし。それにしても。こういう理論を考えつくというか,構想できる人間の頭脳って凄いものですなぁ。

 正確にいうと,人間の中のほんの一部の人の頭脳は,ってことだけど。

2013.03.22 『TOKYO研究所紀行』


書名 TOKYO研究所紀行
発行所 玄光社MOOK
発行年月日 2012.09.01
価格(税別) 1,200円

● 紹介されている研究所は次のとおり。初めて聞くのがたくさんある。TOKYOではなく千葉や埼玉や,特に筑波に所在する研究所がいくつもある。

 国立環境研究所(NIES)
 海洋研究開発機構
 情報・システム研究機構 国立極地研究所
 産業技術総合研究所 地質標本館

 国立科学博物館 筑波実験植物園
 農業生物資源研究所
 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所
 放射線医学総合研究所

 国立科学博物館
 東京大学総合研究博物館
 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
 国士舘大学イラク古代文化研究所
 東京都江戸東京博物館

 国土地理院 地図と測量の科学館
 建築研究所
 産業技術総合研究所 サイエンス・スクエアつくば
 白洋舎洗濯科学研究所

 理化学研究所
 高エネルギー加速器研究機構
 東京大学生産技術研究所
 物質・材料研究機構

 宇宙航空研究開発機構 筑波宇宙センター
 自然科学研究機構 国立天文台
 宇宙航空研究開発機構 相模原キャンパス
 宇宙航空研究開発機構 調布航空宇宙センター
 宇宙航空研究開発機構 地球観測センター

● 紹介の仕方は通り一遍だ。それは仕方がない。突っこんで紹介されても,たぶん,ついて行けないだろうし。
 中には,研究所のスタッフがサクラの来館者を演じていると思われる写真もある。が,これも愛敬ってことね。

2013年3月21日木曜日

2013.03.20 デイヴィッド・シールズ編 『イチローUSA語録』


書名 イチローUSA語録
編者 デイヴィッド・シールズ
訳者 永井 淳・戸田裕之
発行所 集英社新書
発行年月日 2001.12.19
価格(税別) 660円

● イチロー語録を読んで感じるのは,彼は言いたいことを現すのに最適な言葉を選ぶことに関して手を抜かない人だってこと。妥協しないで言葉を探している。

● メージャーに渡って,まだ結果を出せるかどうかわからないのに,その時点でメジャーに負けていない。このあたりが凄いなぁと思いましたね。
 もちろん,ファンにもメディアにも負けていない。イチローの真骨頂って,このあたりにあるのかもしれない。

2013.03.20 山藤章二 『ヘタウマ文化論』


書名 ヘタウマ文化論
著者 山藤章二
発行所 岩波新書
発行年月日 2013.02.20
価格(税別) 720円

● 「ヘタな人間」が「ヘタ」に描くのはやさしい。しかし「ウマさを志した人間」や「ウマい技術を身につけた人間」が,「ヘタに見える絵」を描くことは非常にむずかしい。
 「ヘタウマ派」とはその困難をのり越えた人たちのことで,一朝一夕になれるものではない(p82)

● そのヘタウマについて語っているわけだけれども,著者もことわっているように,本書の話題はそれに限定されない。そっちこっちに飛ぶ。で,飛んだ先が,それぞれに面白くて,あっという間に読めてしまう。
 山藤さんのアンテナに引っかかった文学,演劇,落語,絵画,漫画,物真似芸などが,ポンポン飛びだしてくる。こちらはたんにそれを楽しめばよい。
 本書に副題を付けるとすれば,戦後サブカル史とでもいえばいいか。ぜんぜん違うね。伝統文化の話題もたくさん出てくる。いわゆるサブカルの話題はそんなにない。

● 山藤さんが語るエピソードに登場する人物は,次のような人たち。このうち,寺山修司だけは自分には合わなかった生真面目な人として言及している。
 岡本太郎,糸井重里,井上ひさし,飯沢匡,立川談志,ピカソ,タモリ,南伸坊,伊東四朗,山口瞳,寺山修司,東海林さだお。

● このなかで最も濃い登場の仕方をするのが立川談志。彼について,次のように書いている。
 立川談志はウマい落語家だった。それも百年にひとり出るか出ないか,というレベルの落語家だった。なにしろ,志ん生,文楽,柳好,三木助,円生,小さんという昭和の名人といわれる人に囲まれて育った。 彼が「破壊と創造」などという,芸人にあるまじき能力を持たなかったら,一途にウマい芸人を目指していたら,間違いなく「平成の名人」になれたはずだ。 ところが芸の神のいたずらで,彼に余計な能力を与えた。 そのために彼は,落語家人生のあいだ中,自分の中で騒ぎ立てる「創意の虫」と格闘をし続けなければならなかった。 人並み外れて「ウマい」のだから,何も苦労することはあるまい,と普通の人は思うだろう。 しかし天才には天才にしかわからない苦労があって,終着点のない旅に出てしまったのだ。(p72)

2013.03.20 隈 研吾・清野由美 『新・ムラ論TOKYO』


書名 新・ムラ論TOKYO
著者 隈 研吾・清野由美
発行所 集英社新書
発行年月日 2011.07.20
価格(税別) 760円

● 本書でいう「ムラ」とは「その場所と密着した暮らしがある場所すべて」(p22)。「ムラ」に着目する問題意識は次のとおり。
 二〇世紀初頭,弱者は「建築」によって救出可能であると人々は信じた。建築は神の代用品ですらあった。誰でも「持ち家」という建築を与えられることで救われる。公共建築によって,その工事プロセスが生み出す雇用によって,弱者を救済することができる,と人々は信じた。 しかし結局のところ,「空間の商品化」は誰も救うことができなかった。全員が傷つき,ヤケドをした。土地というもの,それと切り離しがたい建築というものを商品化したことのツケは大きかった。商品の本質は流動性にある。売買自由で空中を漂い続ける商品という存在へと化したことで,土地も建築も,人間から切り離されて,フラフラとあてどもなく漂い始め,それはもはや人々の手には負えない危険な浮遊物となってしまった。(p20)
● 著者二人が,下北沢,高円寺,秋葉原,小布施(長野県)を訪ねて,現地を歩きながら,言葉を交わしていく。清野さんの合いの手が絶妙で,小気味よく話が展開していく。
 話題は都市や建築ということになるわけだけど,四方八方に飛ぶ。本書に収録されなかった部分が相当以上にあるに違いない。それも読んでみたい。

● 隈さんは,まことにもって博覧強記。この言葉は今はあまり褒め言葉にはならないのかもしれないが,自分の足でスックと立って,自分の頭で世間と対峙している感じ。かっこいいねぇ。

2013年3月19日火曜日

2013.03.19 佐藤治夫 『ダメな“システム屋”にだまされるな!』


書名 ダメな“システム屋”にだまされるな!
著者 佐藤治夫
発行所 日経BP社
発行年月日 2009.12.07
価格(税別) 1,600円

● タイトルからはユーザー企業に向けてのご注進のように思えるが(副題は「IT経営で失敗しない33カ条」),内容は“システム屋”業界内部に向けた提言。ここをこう変えたらもっと業界は良くなるのに,と。
 同じ内容の繰り返しがけっこう多い。

● ひとつだけ引用。
 私がこれまで直接接点を持ったことがあるサイト構築企業は4社ありますが,このうち3社は,「企業として」というよりも「社会人として」の責任感に欠けるようなレベルでした。 例えば,そのうちの1社は,顧客企業からの受託案件で,完成していないものをウェブサイトとして公開してしまいました。(p105)

2013年3月18日月曜日

2013.03.17 永江 朗 『消える本,残る本』


書名 消える本,残る本
著者 永江 朗
発行所 編書房
発行年月日 2001.02.10
価格(税別) 1,600円

● 10年以上前の本だけれども,古さは感じない(が,そのことを念頭において読んだ方がいいと思う)。著者の書評(「ベストセラーを解読する」)と「個性派書店」のルポがメイン。間に,著者自身の仕事について語ったインタビュー記事などを挟んでいる。

● 書評で取りあげているのは,1997~98年に出版され,ベストセラーになったもの。そのどれもが面白い。
 以前,著者の『いまどきの新書』を読んで腹を立てたことがある。ひとつには著者に与えられたスペースの違いに由来するかもしれない。短いスペースで意を尽くすことは,名人にとっても難しいのだろう。

● じつは,永江さんが書評で取りあげている本の中で,唯一ぼくが読んでいたのが,リチャード・カールソン『小さなことにくよくよするな!』だったりするんですよねぇ。恥ずかしいんですけどね。面白かったかと問われれば,つまらなかったと答えられるところがギリギリ救いってところかなぁ。
 ぼく,この種の本をけっこう買いこんでて,まだ読んでないのが溜まっている。せっかくだから読んでやろうと思ってるんだけれども,時間の無駄かなぁ。
 この本(リチャード・カールソン『小さなことにくよくよするな!』)が言っているのは,現実に逆らうな,すべてを受け入れよ,じっと耐え忍び,苦痛も快楽と思えということだが,ようするにこれは,奴隷は主人の批判などせずに奴隷であることに満足せよ,というのと同じである。(中略) 日本の出版産業がこういうクズ本によって支えられているのも現実である。トホホ。(p56)

2013.03.15 永江 朗 『インタビュー術!』


書名 インタビュー術!
著者 永江 朗
発行所 講談社現代新書
発行年月日 2002.10.20
価格(税別) 700円

● 「術」とはいいながら,本書が説いているところをそのまま実行すれば,誰でもインタビュアーとして成功できるかといえば,そういうわけにはいかない。
 そもそも,そのまま実行するというそれ自体ができるかどうか。それができるためには,たぶん持って生まれた才能が必要だろう。

● 本書は渡世術の解説書としても読める。しかも,相当に良質な解説書(もっとも,著者が渡世のうまい人かどうかは別の問題)。あるいは読書の指南書としても読める。
 ひょっとすると,福祉や教育の現場で相談に乗ったりカウンセリング的な仕事をしている人にとっても,下手な専門書を読むより本書を読んだ方が,裨益するところは大きいかもしれない。

2013年3月14日木曜日

2013.03.13 隈 研吾 『小さな建築』


書名 小さな建築
著者 隈 研吾
発行所 岩波新書
発行年月日 2013.01.22
価格(税別) 720円

● 1755年のリスボン大地震の影響については,前に読んだ黒崎政男『今を生きるための哲学的思考』でも取りあげられていたが,本書でも冒頭に登場する。
 この未曾有の災害によって,人々は神に見放されたと考えた。神学や教会の権威を揺るがし,啓蒙思想を生む契機となった。
 著者によれば,リスボン大地震によって,建築は「地震にも火災にも耐えうる,強く合理的な」方向に向かった。「不燃の強く合理的で大きな建築」である。
 けれども,あの3・11が「強く合理的で大きな建築の無力さをわれわれにつきつけた」。

● 読みものとして抜群の面白さ。頭のいい人が書いたものは面白い。書き手の頭がいいっていうのが,面白さの構成要素のひとつってことなんでしょうね。

2013年3月13日水曜日

2013.03.12 『世界の鉄道』


書名 世界の鉄道
写真 PPS通信社・株式会社アフロ・松村大輔
発行所 パイ インターナショナル
発行年月日 2013.02.04
価格(税別) 1,800円

● 世界各地の鉄道を写したもの。感じたことは次の4つ。
 1つめは,よくもまぁこんなところに鉄道を敷いたものだなってこと。スイスやペルー,アメリカのコロラドなど,峻険な崖っぷちを鉄道が走っているのは,なかなかに感動的だ。すでに走っているところを見るからそうした感想になるけれども,景観だけを見せられたら,こんなところに鉄道を敷くなんて思いも及ばないだろう。

● 2つめは,橋梁に代表される土木技術のたくましさっていいますかね。これまた,とんでもないところに橋を,それも壮大な橋を架けている。ここまでするかね。って,やってきたわけだよねぇ。

● 3つめは,自然の過酷さ。オーストラリアの赤茶けた砂漠とかね。上に書いたところとかぶるんだけど,こんなところにも鉄道を通してきたんですねぇ。人間の欲望ってとんでもないな,と。

● 4つめは,インドやバングラディシュ,ネパールの乗客の写真。車両の外側とか屋根の上にも人がいる。へばりついている。人が貨物になっている。なぜ,そうなるか。究極は人が多すぎるからだな。
 大丈夫なのかね。って,実際,事故もあるんだろうけど,ここでは人間のたくましさを感じさせられる。

● ケニアのスラム街の写真もある。よくここで写真が撮れたものだと思う。

● 4つめは日本では見られないけれども,最初の2つは日本国内の鉄道写真でも充分に表現できるものだろう。

2013年3月12日火曜日

2013.03.12 クリス岡崎 『最高の人生を引き寄せる法』


書名 最高の人生を引き寄せる法
著者 クリス岡崎
発行所 こう書房
発行年月日 2007.11.10
価格(税別) 1,500円

● すべからく正論。
 正論の胡散臭さっていうのをキッチリ言語化できると,自己開発セミナーなんてのに出かけて,大事なお金をドブに捨てるような人が減るかもしれない(減らないかもしれないけどね)。

● 便利な言い方がある。「この世には2種類の人間(または男あるいは女)がいる」というものだ。
 この世には2種類の人間がいる。小さな子どもと年のいった子ども。
 この世には2種類の女がいる。美しい女と自分は美しいと思っている女。
 この世には2種類の男がいる。気弱な男と気丈だと勘違いしている男。
 この世には2種類の人間がいる。小馬鹿と大馬鹿。
 この世には2種類の人間がいる。カモる人とカモられる人。

● そんなことを連想させる内容だった。

2013年3月11日月曜日

2013.03.11 吉田友和 『転んでも海外!』


書名 転んでも海外!
著者 吉田友和
発行所 幻冬舎
発行年月日 2012.11.10
価格(税別) 1,400円

● 特に若い人たちは海外旅行をしなくなっていると聞く(しなくなったのか,したくてもできないのか)。これを嘆く年配者の声を聞くこともある。
 ぼくは,しなくたって別にいいんじゃん,という意見。というと,でも思いでができましたから,なんて声が聞こえてくるかも。特にバブル世代からね。
 思いでねぇ。海外に行かないと思いでも作れないような手合いは,豚に喰われてしまえ。って言ってしまうと,ぼくも豚に喰われた方がいい部類に入ってしまうんですけどね。

● さて,というわけで,海外旅行本ってガイドブックをはじめいろんなジャンルのものがあるけれども,おしなべていえば活気がない感じがする。ひと頃はやったバックパッカー貧乏旅行的なものは,特に凋落著しいのではないか。
 そんな中で,吉田友和さんと奥さんの松岡絵里さんのお書きになるものが,ひとり気を吐いているような印象。ぼくもこの二人のものは,たいてい読んでますよ。
 貧乏旅行でもなく豪華ホテルやグルメ三昧でもなくっていう,ほどほどのところが世相に受けているんでしょうかねぇ。コストパフォーマンスの良さっていうあたり。

● 「心から満足して帰国するための旅極意60」というのが副題。出発前の注意事項から,機内での過ごし方。到着後の宿や食事,観光の心得。何を持っていくか。現地でのお金にまつわる話。
 そうした海外旅行の全プロセスから60のトピックを拾いあげて,著者の考えを開陳。しかもそのひとつひとつが,読み切りエッセイのようになっている。
 これ,なかなかできませんよ。何といっても語るに足る経験を数多く持っていなければいけない。

● 読みやすい。面白い。でも,ぼくは一気読みができなかった。こちらが海外旅行から離れてしまっているのが理由かなぁ。
 旅行って,行かなくなると行かない状態が定着するからね。そこで息苦しくなるほどに行きたいよぉってなると,旅フリークの称号を得られる。でも,ぼくは行かなけりゃ行かないで平気なタイプ。基本,近場ですんじゃうっていうかね。

● ニューヨーク(行ったことはないけど)よりも,パリ(これは一度行った)よりも,香港(何度か行った)よりも,東京の方が面白いんじゃない? ぼくが地方に住んでいるからだと思うんだけどね。
 もっというとさ,ぼく,栃木の片田舎で息をしてるんだけど,宇都宮で気がすんじゃうってところもあってさ。時間帯とか場所によってはね,宇都宮で旅情を感じることもあるんですよ。それでいいかなぁと思っててさ。

● 吉田さんが奥さんの言葉として紹介している文章を引用。
 留学なんて無意味だと思うよ。そんなお金と時間があるなら,旅した方が遙かに勉強になるよ。日本人は言葉のコンプレックスが強すぎるんじゃないかな。(p182)

2013年3月8日金曜日

2013.03.08 木山泰嗣 『情報をさばく技術』


書名 情報をさばく技術
著者 木山泰嗣
発行所 日本実業出版社
発行年月日 2012.10.01
価格(税別) 1,500円

● 大量の情報をどうやってさばいていくか。この課題に遭遇する人はそんなに多くはないかもしれない。ビジネスマンの仕事は相当にハードだけれども,そのハードさは情報との格闘よりも,人との格闘によることが多いからね。上司との格闘,お客との格闘,ほとんど精神病者じゃないかと思えるクレーマーとの格闘。
 ゆえに,本書の著者の職業である弁護士とか,学者であるとか,そうした人たち限定の話ってことでしょうね。

● 要するに,魔法はないんだよ,地道に努力しなよ,って言ってる。

2013年3月7日木曜日

2013.03.06 長谷川慶太郎・泉谷 渉 『シェールガス革命で世界は激変する』


書名 シェールガス革命で世界は激変する
著者 長谷川慶太郎・泉谷 渉
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2012.12.20
価格(税別) 1,500円

● 副題は「石油からガスへ」。シェールガスが実用化されると,石油よりも安く燃料を供給できる。埋蔵量も石油より段違いに多いから,少なくとも向こう100年は安定供給が可能だ。石油と同様に,化学工業の原材料にもなる。
 その結果,何がどう変わるか。

● その点について,長谷川さんは次のように指摘する。
 苦境に陥ることが予想されるのはイギリスのシティである。これまで中東のオイルマネーを一手に集めてきたシティは,中東の地位低下と一蓮托生ということになるかもしれない。シェールガス革命後,欧州の中心は,金融においても実態経済においても,急速にドイツへと移ることになりそうだ。(p32)
 原油相場が下落することで農産物価格も下落する。なぜなら,バイオエタノールのマーケットがなくなるからである。(p35)
 日本はいろいろな意味で,シェールガス革命の恩恵に大いに浴する国の一つである。これまで最大の弱点であったエネルギー・コストの問題が改善できるし,世界規模でシェールガスへのシフトが進めば進むほど,世界中で日本の技術力が必要とされるからだ。(p36)

2013年3月6日水曜日

2013.03.05 佐々木正悟・大橋悦夫 『スマホ時代のタスク管理「超」入門』


書名 スマホ時代のタスク管理「超」入門
著者 佐々木正悟・大橋悦夫
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2013.02.07
価格(税別) 1,400円

● 読後感は,どこか違う,なんか違和感がある,というもの。うまく言えないけど。
 ガッチリと仕事のできる人は,たぶん,この種の本は読まないものだと思う。ここに書かれているようなことを几帳面にやっている人の中には,抜きんでた仕事人って,たぶん,いないんじゃないかと思う。

● ぼくは,できない方の人だし,この種の本を読むのが趣味というところがあって,わりと読む。
 「はじめに」で「クラウド時代に,タスクをデジタル記録していくことで「いつでも,どこでも,完全に正しいリスト」を持つことが可能になります。これはクラウド上のリストをスマホで見るというスタイルが確立するまでは,不可能だったことです。(中略)「いつでも,どこでも,完全に正しいリスト」があってはじめて,どうでもよい仕事から解放され,もっとストレスがなくなった状態で,すべてのエネルギーを本当にやりたいことに集中するという行動スタイルが可能になるのです」と書かれている。
 だけど,この文章を読んでもなお,ここから先を読もうとする人は,天性の素直さを持ちあわせている人に違いない。

● こういうこともあるかもしれない。世の流れに乗ってスマホを買ってはみたけれども,ぜんぜん使いこなせていない,これなら従来型のケータイでよかった,何とか使いこなす工夫はないものか,と思っている向上心旺盛な人が,こういう本を読むってこと。
 でもね,使いこなすなんて考えちゃダメなのかも。

● どうもね,書店に行くと,スマートフォンで仕事を効率化するとか,スマートフォンでノマドワーカーになるとか,スマートフォンで仕事もスマートにとか,そんなタイトルの本が溢れているから,惑わされることもあるかもしれないけれども,それはそういうことを言うのを飯の種にしている人がいるってことなんじゃないかなぁ。
 そういう人に飯を食わせるのは,あなたやぼくの役割じゃありませんよ。

● だいたいあの狭い画面で,表計算のワークシートを見る気になりますか。それでなくても老眼が進んじゃってるってのに。
 銀行の振込だって,パソコンでならするけれども,スマホでそんなことをする気にはなりませんね。いくらポケットに入るパソコンだといわれても,向き不向きってもんがあるでしょ。

● ぼくもスマホを使ってるんだけど,いずれケータイはらくらくホンの一番安いのにして,スマホはSIMカードを抜いた状態で,それ単体で使おうかと思っている。カメラも付いてるし,音楽プレーヤーとしても使えるし,通信を発生させないでも,遊びの道具としてはかなり使えそうだもんな。
 ネットなんか家でパソコンでやればいいんですよ。充分でしょ,それで。TwitterだのFacebookだのと,しょっちゅうスマホをいじってる輩って,ちゃんと仕事をしているのかね。

● いささか以上に本書からずれてしまった。中にはいるんだろうからね,スマホで仕事の質や効率をあげている人。

● 「いつかやりたいこと」を「今からやること」に変換する,というってそれができる人は,スマホなしでもできそうな気がする。本書を読み終えても,なお,そう思う。

2013年3月5日火曜日

2013.03.04 糸井重里・小室淑恵・陰山英男・八代英輝・佐久間英彰 『賢人の手帳術』


書名 賢人の手帳術
監修者 糸井重里・小室淑恵・陰山英男・八代英輝・佐久間英彰
発行所 幻冬舎
発行年月日 2012.12.20
価格(税別) 1,300円

● 糸井重里さんの発言から引用。
 (ほぼ日手帳が)「どうしてこれだけ支持されるようになったんですか?」とよく質問されるのですが,僕ら自身も「どうして?」と思っていて,それを知りたいと思いながらつくっています。 でも,そのことが逆に重要なのかもしれないですね。つまり「こうだから,こうなる」みたいな記号的な発想であったり,急ぎのマーケティングで人が動くとは思っていなかった。実はそれがすごく大事なことなのかもしれません。(p14)
 「手帳」という言葉からイメージする「自分を管理する道具」というような発想から,一回外れてみる必要があるんでしょうね。それは僕らもそうですし,手帳を使うそれぞれの人にとっても重要なことなんだと思います。そこから,何か新しい世界が見えてくるのかもしれません。(p15)
 僕は昔「メモしなきゃ忘れるようなことは大したことじゃない」と思っていたのですが,違っていましたね。 思いや考えって,言葉にしないと消えちゃうんです。でも書いておけば,あとで使える道具にできる。メモそのものが役立つこともあれば,メモとメモが結びついて大きなアイデアになることもあります。 ただ,焦っちゃダメですね。アイデアというのは,直接,効率よく結びつけようとすると痩せてしまいます。思いついたばかりのヒヨコみたいなアイデアは,手帳にメモをして放っておいて,放っておくけどまた考える。それを続けていくと,あっちこっちのネットワークが並行に進化して,つながるときが来ます。(p16)
 メモするときは,目的意識を研ぎすませすぎないほうがいいと思います。ムダだと思うことも書いておく。それが重要なポイントです。(p19)
 「欲しい」と思う心は,体全体が無意識まで含めて決めているので,本当に大事なヒントやアイデアはそこに隠れているんです。その無意識を捨てずに,そのまますくいとって,一緒に考えていく。これはすごく大事なことだと思います。 パソコンを使うと,ムダを省いて整理しちゃいます。(中略)その点,手書きは無意識を含めてそのまま残せる。これは紙の手帳ならではのよさですね。(p30)

2013年3月4日月曜日

2013.03.03 ロンダ・バーン 『ザ・マジック』


書名 ザ・マジック
著者 ロンダ・バーン
訳者 山川紘矢・山川亜希子・佐野美代子
発行所 角川書店
発行年月日 2013.02.10
価格(税別) 1,600円

● 『ザ・シークレット』『ザ・パワー』に続く,3弾目。ロンダ・バーンの著書は出せば売れるんでしょうね。
 今回のテーマは「感謝」。「あなたが受け取る量は,あなたが与えた感謝の量に等しいのです」(p22)ということ。あるいは,「支払ったお金に感謝すると,必ずお金が入って来ます」(p131)ということ。
 そのことを手を変え品を変えて,何度も何度も書いているわけですね。

● この種の本って昔からあって,すでに出版されている点数を数えると,とんでもない数になるだろうと思う。なぜかくも大量に出るのかといえば,読む人がいるから。
 で,この種のものを読む人ってどんな人なんだろう(ぼくも読んだわけですけどね)。楽してお金持ちになりたい人。努力しないで成功したい人。天井をじっとにらむと,お金がドサッと落ちてくればいいのに,と思っている人。そんなところなのかなぁ。
 つまり,怠け者で,少しおバカで,図々しさだけは人並み(以上)に持っている人。そう,ぼくのような人ね。

● でもね,そういう人が,本書を読むのは別に悪いことではないやね。読書ってつまるところは気晴らしだと思ってますんでね。
 ただ,中にはいるのか,本気で信じちゃう人。

● 「願いに対して感謝の気持ちを飽和状態にまで高めること」(p166)が必要だそうですよ。「飽和状態にまで」ですよ。いいですか,皆さん。

● ちょっといい言葉を引用。
 あなたが出会う人はみな,厳しい戦場にいます。だから誰にでも親切にしてあげなさい(p139)

2013.03.03 橘木俊詔 『学歴入門』


書名 学歴入門
著者 橘木俊詔
発行所 河出書房新社
発行年月日 2013.01.30
価格(税別) 1,200円

● 河出書房新社の「14歳の世渡り術」の1冊。学歴にまつわるアレコレや,欧米との比較論など。なるほどと肯かされるものもあれば,ちょっとどうなのよと思うところもある。

● 後者をひとつ引用。
 ほどほどの経済,つまり,低所得者同士が,べつに大学を出ていなくてもキチンと暮らしていく体制が整えられていれば,それはそれでいいとすることもできる。そこまで上を望まない生き方があってもいいのです。ただし,その人たちが貧困にあえぐような社会であってはならない。なんとか暮らしていけるレベルの所得を保障しなきゃいけない。 そのためには,社会保障制度を充実させる必要があります。(p165)
 これにはちょっと引っかかりを感じるんですよね。みんなが上を望んでいる中で,自分は「ほどほど」でいいというのはアリだと思うんだけど,そう思うのが大勢になった社会(あり得ない想定か)で,社会保障制度を充実させることができるんだろうかっていうね。
 医療の皆保険も最低生活水準の充実も,経済成長があったればこそ。エコノミック・アニマルとかつて呼ばれたサラリーマンがしゃにむに働いた結果でしょ。国が打ちでの小槌を持っているわけじゃないからね。

2013年3月2日土曜日

2013.03.01 JMAM手帳研究会編 『手帳活用パーフェクトBOOK』


書名 手帳活用パーフェクトBOOK
編者 JMAM手帳研究会
発行所 日本能率協会マネジメントセンター
発行年月日 2012.09.30
価格(税別) 1,300円

● 本書でも紹介されているが,手帳を使っている人の9割はスケジュール管理のためと答えているそうだ。
 自慢ではないが,ぼくの場合は,スケジュールを管理するのに手帳なんか要らない。小さめのカレンダーにチョコチョコと書いておけば足りる。さすがに寄る年波のせいで,頭の中だけですまそうとすると忘れてしまうことがありそうだけども,スケジュールを管理するのに手帳を使うのはいくらなんでも大仰に過ぎる。ぼくの場合は,ですけどね。

● でも,手帳はずっと使っている。はるかな昔は,当時は市販されていた新潮社手帳(ごく薄いやつ)とか,集英社の「PLAY BOY手帳」なんてのを使っていたこともある。けど,その後はずっと能率手帳。
 紙質もいい,目も疲れない,造本もしっかりしていて,安心して1年間使い続けることができる。おそらく,部外者にはうかがい知れないノウハウがぎっしり詰めこまれているに違いない。

● 途中からシステム手帳に替えてみた。といっても,「Bindex」ひと筋。A5サイズを使ったこともあるけども,ここ数年はバイブルサイズを愛用。リフィルはNO.011。要するに,中身は能率手帳だ。
 最近注目のバーチカルタイプなんてのは,ぼくには無用の長物。何せ,スケジュール管理に手帳を使っているわけじゃないから。

● スケジュール管理をしない? じゃ,手帳なんて要らないじゃん,と突っこまれそうだ。何に使っているかというと,はやりの言葉でいえば,ライフログを残すためってことでしょうか。日記がわりというか,その日のことをチョコチョコと書いておくわけです。
 仕事についても会議の名前程度は書いているけど,それよりも昼や夜に食べたもの,読んだ本のタイトル,CDで聴いた音楽の曲名,そういうものを記録している。それについての感想などは書かない。あくまで,外面的な事実だけを記録しておく。
 貼ることもよくする。食べたお菓子の包み紙を貼る。その日見たテレビ番組を新聞のテレビ欄から切り抜いて貼る。映画の半券を貼る。貼るのは好きだな。
 コンサートの半券は貼るには大きすぎるので,パンチで穴をあけて綴じこんでいる。システム手帳にこだわっているほとんど唯一の理由がこれで,コンサートの半券を残さないのなら,システム手帳などかさばるだけの邪魔ものに過ぎなくなる。

● 仕事関係は黒,プライベートは緑,読んだ本のタイトルは赤で書く。ページが黒っぽいとイヤな気分になる。仕事,嫌いだもん。緑が多いのが嬉しい。
 こうしておくと,記憶喚起力のある手帳ができあがる。数年前の手帳を取りだしてページをめくると,そのときの自分にすっと戻れる。
 当然,過去の手帳は捨てない。百円ショップで売っている保存用のバインダーに綴じて本棚(カラーボックスだけど)に並べておく。

● のだが。では過去の手帳を手に取ることがあるのかというと,これが笑っちゃうほどないわけですよ。だったら保存する必要ないでしょ。われながらそう思う。
 結局,何なんでしょうね。手帳に書いておくと安心する,その安心感を得るために手帳を使っているってことになりますか。馬鹿っちゃ馬鹿だよなぁ。

● というわけだ。ぼくの手帳の使い方はほぼ固定しているので,いまさら他人様のノウハウを知りたいとはあんまり思わないんですよ。
 でも,本書のような手帳本を読むのは大好きだ。手帳というモノがモノとして好きなんでしょうね。

● デジタルに対するアナログ手帳の優位性を強調するのは,本書の性格上,当然のこと。ただ,それを割り引いても,手帳の代わりをスマホにさせるというのは,ぼく的にはあり得ない。
 デジタルではコンサートチケットの半券を挟んでおくことはできないからね。スキャンすればいいじゃないかと言われるか。そこまでやれるか。

● こういうガイドブックには,でも,大きなお世話というか,それができりゃ苦労しないよっていうか,そんなことしないだろ普通っていうか,要は些末なことがらも書かれている。わかりきったことも書かれている。総花的ですよね。
 ゆえに,本書は読み流すべきものだと思う。雑誌のようにパラパラとページを繰って,目に入ってきたところだけを摘まみ読みすればいい。