2013年1月31日木曜日

2013.01.31 『TOKYO図書館紀行』


書名 TOKYO図書館紀行
発行所 玄光社MOOK
発行年月日 2012.03.24
価格(税別) 1,200円

● 図書館って,出版社やCDレーベルに言わせれば,たぶん,迷惑施設に違いない。無料の貸本屋にしか見えないだろう。買わないで借りる人を増やしているだけじゃないか,と。長い目で見たら,文化の衰退につながるのじゃないか,と。
 CDレーベルにとっては,さらに被害は大きいかもしれない。図書館でCDを借りてパソコンにリッピングしてる人が相当いるはず。CDが売れなくなったのは,インターネットの普及が最大要因だけれども,公立図書館の存在も看過できない理由だ。
 特に,クラシック音楽に関しては,CDショップの地域一番店やレンタルショップよりも,地元の公立図書館の方が品揃えがいい(地方では)。まず,図書館で探して(ネットですぐに検索できる),もしなければネット通販で買うというのが,一番ありがちな購買行動ではあるまいか。

● 実際,たいていの市町村立図書館は,無料の貸本屋として機能している。そういう役割しか期待されていないもんね。知的水準の高い人が,さらに知の探求を試みるために図書館を利用するなんてのは,地方の図書館では絶無といっていいんじゃないか。
 ゆえに,図書館に司書は要らない。素人でも務まる。そういう実態がたしかにあると思える。

● 図書館にたむろしているのは,自腹を切らないで借りてすませようとする人ばかり。知にケチな人。知的品性の下劣な人。かくいうぼくもそのひとりなんですけどね。図書館が盛況であるのがいいことなのかどうか。
 というと,だって本って高いんですもの,っていう声が聞こえてきそうだな。いやだ,いやだ,ゾッとする。クローゼットの中でゴミになっている洋服は高くなかったのかよ。でも,繰り返すけれど,ぼくもそのゾッとする中のひとりなんですな。

● で,ここから言い訳になるんだけど,知は限りなく廉価であるべきだとも思ってましてね。空気と同じになってほしいっていうか。知の生産をメシのタネにするのは,もう終わってもいいんじゃないか。本業を別に持っている人が,手慰みにやるものになるべきじゃないか。
 ま,そういうふうにはならないんだけどさ。っていうか,相当に無茶苦茶なことを言ってますよね。
 知に対してケチなぼくが言っちゃいけないんだけども,無料貸本屋としての図書館はやっぱりあってほしい。クリエイターの皆さんには本当に申しわけないけれども。

● 本書で紹介されている図書館は次のとおりだけれども,いずれも存在感に溢れている感じ。公立図書館もいろいろと斬新な試みをしているのだなぁと,認識を新たにしました。さすが東京という感じも。
 国立国会図書館 国際子ども図書館
 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
 東京大学総合図書館
 東京・日仏学院メディアテーク
 世田谷文学館
 東京都北区立中央図書館
 日本近代文学館
 ちひろ美術館・東京
 多摩美術大学図書館
 東京藝術大学附属図書館
 東京都写真美術館図書室
 東京国立近代美術館フィルムセンター図書室
 東京都現代美術館美術図書室
 Bookshop TOTO
 国立新美術館アートライブラリー
 千代田区立比日谷図書文化館
 まち塾@まちライブラリー
 ひと・まち・情報創造館 武蔵野プレイス
 紙の博物館図書室
 現代マンガ図書館〈内記コレクション〉
 食の文化ライブラリー(味の素)
 切手の博物館図書室
 印刷博物館ライブラリー
 アド・ミュージアム東京 広告図書館
 国立天文台図書室
 国立劇場図書閲覧室
 大宅壮一文庫
 東洋文庫
 都立多摩図書館 東京マガジンバンク
 国立国会図書館

2013年1月30日水曜日

2013.01.30 ジュラール・ジョルジュ・ルメール 『芸術家の家』


書名 芸術家の家 作品の生まれる場所
著者 ジュラール・ジョルジュ・ルメール
    ジャン・クロード・アミエル(写真)
訳者 矢野陽子
発行所 西村書店
発行年月日 2012.01.27
価格(税別) 3,600円

● 人さまの書斎を覗くのは,ぞくぞくするような快感がある。その人の深いところがわかるような気になる(実際にはわかるわけがないんだけどさ)。
 『作家の仕事場』なんていう写真集が出ると,ま,興味津々で見るわけです。雑誌「男の隠れ家」も書斎特集なんてことになると,たいていは買うことになる。
 そんな中で最も印象に残っているのは,高橋義孝さんの書斎の写真。端然とした雰囲気が漂っている。いかにも使いこまれているようで,主の息遣いまで感じられる。

● で,自分も書斎を持ちたいと思い,今の家を建てるときに,北向きの部屋を書斎にした。のだが,どうにも格好がつかない。雑誌や本で見る写真のようにならない。
 結局,持ち主の器量や性格や暮らしぶりが現れるってことですよね。今は物置部屋になっている。

● 本書は画家のアトリエや生活の場を写真で紹介したもの。上記の書斎本と違うのは,保存されているものだってところ。現在進行形で使用されているものではない。
 紹介されるのはヨーロッパの画家たちなんだけど,ヨーロッパ人の保存の仕方ってのは,徹底してますな。保存を感じさせないといいますかね,今でも使われているんじゃないかと錯覚しそうなほどだ。

● 文章と写真で紹介していくわけだけれども,文章の方は早々に読むのをやめた。この文章を読める人は,よほど美術に関心が深いか,並はずれた忍耐力の持ち主だろう。翻訳もあまり良くない(ように思われる)。
 写真に自分の想像力を足して,ページを繰っていけばいいのじゃないか。と思ったのだが,どうも想像力が起動しないまま終わってしまった感じ。

● ちなみに,紹介された芸術家は次のとおり。
 アンドレ・ドラン
 ブルームズベリー・グループ
 フランティシェク・ビーレク
 ギュスターヴ・ド・スメット
 アルフォンス・ミュシャ
 ルネ・マグリット
 ローザ・ボヌール
 ギュスターヴ・モロー
 ウィリアム・モリス
 ガブリエーレ・ミュンター
 ジェームズ・アンソール
 クロード・モネ
 アルフレート・クビーン
 ジョルジョ・デ・キリコ

2013年1月29日火曜日

2013.01.29 フジ子・ヘミング 『運命の力』


書名 運命の力
著者 フジ子・ヘミング
発行所 TBSブリタニカ
発行年月日 2001.06.27
価格(税別) 1,800円

● 著者が世に知られるようになってまもない頃に出版された。著者の自伝のようなものだが,本人が書いたのではなく,本人へのインタビューを元に他者がまとめたものかと思う
 著者について知るには,最も適当な一冊だと思う。

● 母親についてもわりと詳しく言及している。今のモノサシをあてれば,ひょっとしたら虐待?と思えるような扱いを受けているんですね。当時は世間にざらにあったことだと思うんだけど。傍目には,少女時代も幸せとは言いがたかったように思える。
 ベルリンに留学後,聴力を失った著者は,貧困と失意のうちにストックホルムに移る。自分と母を捨てて故国に帰った父親を頼ろう(主には経済的に)としたのだろう。しかし,結局,父親も会ってはくれなかった。
 著者の人生の大半は過酷と道連れ。親の犠牲者って感じもしてしまう。それでも,父,母とつながっていたいという切ないほどの著者の思いが印象的(と,ぼくには思えた)。

2013.01.28 フジ子・ヘミング 『パリ・下北沢猫物語』


書名 パリ・下北沢猫物語
著者 フジ子・ヘミング
    山下郁夫(写真)
発行所 阪急コミュニケーションズ
発行年月日 2007.04.09
価格(税別) 1,600円

● 猫好き(という言葉では収まらないか)な著者が猫を語る。もちろん,それは自分を語ることにもつながるわけだが。

● 「パリは人々がそれぞれひたむきに生きているような気がする。男も女も,みんなが自然なのよ。高価なものを身につけているわけではないけれど,自己主張があって格好いい」(p53)とパリを紹介。
 著者はヨーロッパの古い建物を維持している街並みに美を感じ,日本は古いものをどんどん壊して新たしくしていると,ご不満の気味。たぶん,小さい頃をベルリンで過ごし,その後も外国暮らしが長かったゆえの美意識なのだと思う。
 短期の旅行者として眺める分には,たしかにヨーロッパの街並みは魅力的だけれども,そこに住めと言われたら断然拒否する。たぶん,大方の日本人も同じだと思う。窮屈そうだ。第一,寒すぎる。

2013.01.27 フジ子・ヘミング 『我が心のパリ』


書名 我が心のパリ
著者 フジ子・ヘミング
    初沢克利 他(写真)
発行所 阪急コミュニケーションズ
発行年月日 2005.02.25
価格(税別) 1,800円

● 著者のパリ暮らしを紹介したもの。あるいは著者がパリの良さを語る。自分の来し方をふり返る。写真満載で楽しめる。
 若いときにこれを読めば,自分もパリに行きたくなったろうが,最近はどうもその反射が鈍くなっている。別に行ってみなくてもいいよなぁ,と考えてしまう。
 旅行ガイドを読んで行った気になる。グルメガイドを見て食べた気になる。これが嵩じると,ガイドブックを読む気がなくなるんだと思う。まだそこまでは行ってないから,多少の救いはある。

● いくつか転載。
 運命は皮肉だ。ストックホルムで貧困に負けそうになり,音楽を諦め、仕立て屋の「縫い子」になろうとしたが断られてしまった。あのとき断られていなかったら,今の私はなかっただろう。(p30)
 パリっ子は徹底した個人主義で,それは見事なほど他人を気にしたり干渉しないから,何かと堅苦しいドイツからパリへ来るとうれしかった。多分,パリっ子は空腹で私が倒れていても,顔色も変えずに跨いで行くんじゃないかと思うほど他人に無関心なの。でも,パリのそんなところが好き。(p114)
 幸せというのは,多くを持つことによって得られるものではない。今持っているもので,得られるものよ。(p125)

2013.01.26 横澤 彪 『テレビの貧格』


書名 テレビの貧格
著者 横澤 彪
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2008.06.26
価格(税別) 1,400円

● テレビ番組(主にはお笑い,バラエティー)への感想,寸評をまとめたもの。すでに終了している番組もある。もともとネットに載せていたものだから,新鮮さが命で,本としての寿命は短いものになるだろう。
 が,古くなると読むに耐えないかというと,そんなこともない。あ,そういえばこんな番組があったな,と,懐メロを聴くような感じで読んでいける。
 そうか,こんな切り口もあるのか,と教えられることも多々あり。

● この種の本から引用するのは,われながらあまり感心しないけれども,いくつか引いておく。
 落語というのは客をどれだけ自分の世界へ引き込めるかが勝負だから,「お客さんと戦っている」という感覚がないといけない。そうじゃないと芸がハネない。今は客と勝負しない,客に甘えている芸人が多いんだけど,円楽は「客と勝負する」という意識を持っていた。(p61)
 結果を出す,ということにさぞかしこだわっているのかと思っていたが,イチローはそれ以上の美学を追っていることを初めて知った。単にヒットを打てばいい,ということじゃないんだ。 どういう美学かというと,相手投手が持っている一番いい決め球を打つ,というものだそうだ。(p76)
 (安住紳一郎について)今ひとつ人気が爆発しない。器用貧乏というか,腰が定まらない感じがする。 なぜか。一番大きな原因は“てめぇがアホになれない”ということだ。どうしても利口になっちゃうところがある。「俺はアナウンサーだ」みたいな意識があるのかもしれないし,「こんな仕事したくない」という気持ちがあるのかもしれない。まだ,吹っ切れていないのだ。せっかく期待されているのに,このままじゃモッタイナイよ。(p151)
 (宮崎駿について)ものを作るために集中していく段階で不機嫌になっていくから,「不機嫌でいることが大事」というのが彼の考え方なんだね。 その姿勢には「ものづくりの原点」が表れていて,心が動かされたな。(p159)

2013.01.26 弘兼憲史・竹内義和 『楽しむ心を忘れない大人たちの人生娯楽術』


書名 楽しむ心を忘れない大人たちの人生娯楽術
著者 弘兼憲史・竹内義和
発行所 ぶんか社
発行年月日 2002.02.20
価格(税別) 1,500円

● 人生をいかにして楽しむかを説いた本かと思って読み始めたんだけども,内容はテレビ論,漫画論,映画論だった。二人とも忙しい人だから,なかなか休みが取れない。いうなら寸暇を惜しんでの楽しみだから,遠くへ出かけるってのじゃなくて,身近に楽しめるインドア娯楽となるのでしょうね。
 テレビと漫画と映画,インドアの代表だね。若い人は映画の代わりにゲームってことになるのかな。

● 映画は往年の名画が紹介されているんだけど,すでに古典になった感のある「2001年宇宙の旅」や「スター・ウォーズ」もぼくは観ていない。
 映画もそうだし,テレビもそうなんだけど,谷間の時期ってありますよね。全然見なかった時期。映画についてはそれが長く続き,テレビも長くはなかったけれどもそういう時期があった。
 漫画も小学生の頃は,「少年マガジン」は楽しみだったし,少年じゃなくなってからも,「少年ジャンプ」にはお世話になった。が,そこでとまってしまってて,大人向けのコミック誌には移行せずに終わった。何を読んでいたかというと,「週刊プレイボーイ」とかそういうやつね。そっちを読むようになっちまった。コミックは単行本で時々読む,と。「釣りバカ日誌」や「課長島耕作」なんかはそうして読んだ。

2013年1月28日月曜日

2013.01.25 養老孟司 『話せばわかる!』


書名 話せばわかる! 養老孟司対談集 身体がものをいう
著者 養老孟司
発行所 清流出版
発行年月日 2003.09.12
価格(税別) 1,300円

● 養老さんのイメージって,生き方の達人っていうか,何もかもわかったうえで飄々としているっていうか,大人喧嘩せずの風情があるっていうか。
 本書はその養老さんの対談集。全編,これ知恵の宝庫という感じ。すべて転載したくなる。
 ただし,その知恵を活かせるかどうか。ぼくは,たぶん,知識として知っただけで,そうなんだよなぁと思っただけで終わりそうだな。

2013年1月24日木曜日

2013.01.23 フジコ・ヘミング 『パリ音楽散歩』


書名 パリ音楽散歩
著者 フジコ・ヘミング
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2008.07.30
価格(税別) 1,500円

● これは,少々安易な本作りかも。発行する側が,フジ子・ヘミング人気に寄りかかってパリのガイドブックを作れば,ある程度の部数は見込めるのではないかとだけ考えて出したような感じ。

● 「(パリには)不思議な風が流れているに違いないと思うの。今も昔も芸術家が憧れ集まってくるんだから」(はじめに)という著者の言葉をふたつだけ引用。
 私が子供のころにピアノを弾くと最初に感じたのは,音楽の旋律ではなくて色彩だったのね。今も音のひとつひとつに色をつけるように弾くことを大切にしているの。テクニックで弾くより豊かな色を奏でたいから。(p123)
 オーケストラを音楽を一緒に作り上げていく楽しさは言葉では表せないほど。生みの苦しみを伴うことはもちろんあるけど,それを越えたところにこそ感動が生まれるはずだと思っている。(p167)

2013.01.23 浅田次郎 『浅田次郎とめぐる中国の旅』


書名 浅田次郎とめぐる中国の旅
著者 浅田次郎
    但馬一憲・森清(写真)
発行所 講談社
発行年月日 2008.07.30
価格(税別) 1,500円

● 小説を読まなくなって久しい。が,気になる作家は何人かいて,浅田次郎さんもそのひとり。極道ものを経て,最近は中国近代史から素材を得て力作を書いている。その程度には知っている。
 本書はその小説の舞台になった北京,瀋陽を中心に中国を紹介したかなり渋めのガイドブックでもあり,浅田次郎さん自身のプロフィールを紹介する内容にもなっている。

● 巻末のインタビューが本書の白眉だと思う。ここからいくつかを転載。
 (中国に関心を持つきっかけになった本や,影響を受けた作品などはありますか)最も愛読したのは,文学なら吉川幸次郎,歴史なら宮崎市定,両先生のご著書ですね。(p135)
 宮崎市定は,あの谷沢永一さんが推奨してやまなかった人。昔,中公文庫の何冊かを読んだことがある。『アジア史概説』は雄渾かつ明解で,驚嘆したものだ。そのわりには,あまり踏み込むことなく終わってしまったのだが。
 どれだけ難しい題材を扱おうと,分からないという読者がいたら作家の負けです。僕は分かる人間にだけ分かればいいという芸術は,間違いなく二流だという芸術観を持っています。頭で考えるのではなく,一目見ただけで驚きがある,感動するのが本物なんです。(p145)
 僕は古文書オタクでもあり,若いころは古文書を読み漁っていました。(中略)特に京都大学図書館には珍しい史料が多いので,それこそ暇さえあれば一日中調べていました。 (中略)僕は不思議な短編をいくつも書いていて,あんな物語をよく思い付けますねと聞かれることがあるのですが,自分が考えたように見せかけながら,実は昔読んだ古文書を参考にしたというケースが多いですね。(p146)
 ネタ探しから,面白い小説が生まれることはありませんから。僕は取材に行くときもノートを持ち歩かないので,編集者はいぶかしがるんです。(中略)メモができるようなことは,パンフレットにも観光ガイドにも書いてある。そこに載っていない何か面白いことは,漫然と見ているとぶつかるものなんです。(中略)ネタになる話は,探してもダメですね。探す暇があったら,片っ端から数を読んだ方がいい。(p147)
 僕は小説を書くのも好きだけれど読むのも大好きなので,作家が嫌だ嫌だと思って書いている小説はすぐにわかります。(中略)作者が楽しんで書いている小説は,やはり面白い。たとえば司馬遼太郎さんの作品の躍動感は,司馬さんが面白がっているから出るものです。(p147)
 たとえ大嘘を書くにしても,それが本当であっても不思議ではないと思わせるレベルまで史料を用意しておかなければならないし,自分の中にそれを補強するだけのロジックを用意しておかなければなりませんが,それは難しいことではない。学生の気分で謙虚に史料を学び,小説家という別人格に豹変すればいいだけです。(p149)

2013年1月23日水曜日

2013.01.22 フジ子・ヘミング 『フジ子・ヘミングの「魂のことば」』


書名 フジ子・ヘミングの「魂のことば」
著者 フジ子・ヘミング
発行所 清流出版
発行年月日 2002.04.15
価格(税別) 1,200円

● 音楽界のアカデミズム,本流においては評価の対象にすらなっていないであろう,フジ子・ヘミングの本をまとめて読もうと思っている。
 そのほとんどはエッセイというか,人生論というか,若い女性に向けた「辛くても負けないで」っていうメッセージですな。
 本人が原稿を書いているわけではなく,口述筆記でもなく,ライターがインタビューして文字に落としたものだと思うんですけどね。

● でも,それゆえ読みやすくもあってね。波瀾万丈の人生をやってきた人ですからね,たんに頑張ってと励ますのでも気がこもっているっていいますかね。元気づけられますよ。

● 彼女を有名にしたのは,1999年にNHKが放送した「フジコ~あるピアニストの軌跡」と2003年のドラマ「フジ子・へミングの軌跡」だろう。
 ぼくはどちらも見ていないんだけど,見ていなくても何とはなしに彼女の生いたちは知るようになった。テレビの影響はネットなどよりはるかに大きい。普段は音楽を聴かない人でも彼女を知るようになり,彼女のファンになった人が大勢いるに違いない。
 結果,CDは売れるし,リサイタルを開けばお客さんは入る。彼女のリサイタルのお客さんと他のピアニストのお客さんは,ほとんど重ならないのかもしれないね。

● 宇都宮でも3月に彼女のコンサートがある。行きたいんだけどね,チケットが10,000円なんですよねぇ。
 高くはないとしても,目下のぼくには少々以上にきつい負担。彼女の生演奏はぜひ聴きたいと思ってるんだけど。

● 彼女のCDに入っている楽曲であれば,まずは彼女の演奏を聴く。理由は自分でも分析しきれていないんだけども,要は彼女独特の世界に引きこまれてしまうということ。
 「通」には顔をしかめられるかもしれないんだけど,ま,そういうことになっている。

2013年1月22日火曜日

2013.01.21 フジ子・ヘミング 『あなたに届けば』


書名 あなたに届けば
著者 フジ子・ヘミング
発行所 オークラ出版
発行年月日 2005.12.25
価格(税別) 952円

● 『ほんの少し,勇気をあげる』は人生についてのアフォリズム。こちらは恋愛についてのアフォリズム。いくつになっても恋をしなさい,ということを言っているわけ。

● 野暮な引用。
 繊細でノーブルな人が好きだった。好きになった人は,皮肉なことに,みんな同性愛者だった。
 「運命の出会い」って言葉があるけれど,出会う人もいるし,一生会わない人もいる。私の場合は,恋人ではないけれどバーンスタインかしら。

2013.01.21 フジ子・ヘミング 『ほんの少し,勇気をあげる』


書名 ほんの少し,勇気をあげる
著者 フジ子・ヘミング
発行所 オークラ出版
発行年月日 2005.12.25
価格(税別) 952円

● 著者謹製のアフォリズムに,これまた著者が描いた絵を見開き2ページに配して作成した絵本。または豪華なリーフレット。ページ数も打たれていない。
 目新しいことが書かれているわけではないけれども,説得力があってしみじみする。

● こういうものから転載するのは,阿呆の極みだけれども,ひとつだけ。
 お金がなくて,病院の掃除婦をしたこともある。何棟もあるとても大きな病院で,忙しく働いた。いい経験になった。そんな苦労が,今のピアノの音を作ったのだと思う。

2013.01.21 藤子不二雄Ⓐ 『夢追い漫画家60年』


書名 夢追い漫画家60年
著者 藤子不二雄Ⓐ
発行所 PHP
発行年月日 2012.12.04
価格(税別) 1,100円

● 藤子不二雄といえば,子供の頃からお世話になった漫画家のひとり。「オバケのQ太郎」「パーマン」「怪物くん」「忍者ハットリくん」「ドラえもん」などなど。漫画も読んだし,アニメも見た。
 我孫子素雄さん(本書の著者)と藤本弘さんのコンビで描かれたものもあるし,単独の作品もある。ともかく,お世話になったなぁ,と。
 手塚治虫さん,横山光輝さん,石ノ森章太郎さん,赤塚不二夫さん,川崎のぼるさん,ちばてつやさんなど,他にもお世話になった漫画家はたくさんいるんだけど,日曜夜7時の子供にとってのゴールデンタイムに放送されたアニメとしては,藤子不二雄作品が最初に頭に浮かんでくる。

2013年1月18日金曜日

2013.01.20 宇野功芳 『モーツァルト 奇跡の音楽を聴く』


書名 モーツァルト 奇跡の音楽を聴く
著者 宇野功芳
発行所 ブックマン社
発行年月日 2006.01.27
価格(税別) 1,800円

● 副題は「生誕250周年」。個々の楽曲について,著者がモーツァルト観を語りながら,推薦の名盤を紹介していく。

● 宇野さんは名盤紹介の大家ですな。多くのレコード,CDを聴きこんできたんでしょう。その蘊蓄たるや,凄まじいばかり。
 ぼくは彼の文章というか語り口も好きで,この1ヵ月の間に,宇野さんの本を読むのはこれが3冊目になる。

● ただ,彼が紹介している名盤を探して聴いてみようとは思わない。彼の紹介の仕方が悪いんじゃなくて,こちらの準備がまったく整っていないからということですね。
 にわかクラシックファンに過ぎませんからね。同じ楽曲を複数の指揮者,オーケストラ,演奏家による演奏で聴いて,その違いを味わうというところまで行けていない。
 さらにいうと,オーディオ環境も貧弱だ。家ではノートパソコンに安いスピーカをつないで聴いているし,外ではスマートフォン+イヤフォンで聴く。こんなものでは,微妙な差異は差異として出力されないだろう。
 以上を要するに,音楽を聴く姿勢というのが,その程度なんだってこと。

● それとね。どうせ聴くんだった最初からいわゆる名盤でっていうのはちょっと違うような気もしている。ハナからその種の効率性を求めるのは少し下品のような。
 少なくとも,自分の耳を通さずに,専門家や評論家に下駄を預けてしまうのもおかしなものだし。

● でも,読むのは好きだ,と。耳学問をしてイッチョマエに人に語ってみたいと思っているわけではないんですけどね。
 ちなみに,ざっくりいうと,弦楽四重奏ではジュリアード弦楽四重奏団,ピアノではリリー・クラウスが,宇野さんのお気に入りのようだ。

2013.01.17 安永 徹 『音楽って何だろう』


書名 音楽って何だろう 安永徹対談集
著者 安永 徹
    石井眞木
    三善 晃
    徳永二男
    安永武一郎
発行所 新潮社
発行年月日 1990.08.20
価格(税別) 1,748円

● ベルリン・フィルで日本人初のコンサートマスターを務めた安永徹さんの対談集。20年も前の本だけれども,内容が古くなっているという感じは受けない。扱っているトピックの性格が,時代とともに大きく変わるというものではないから。
 この本を読むと一流の音楽人は生まれながらにして決まっていると思わされる。DNAもさることながら,環境がね,当時の日本の一般家庭とはだいぶ違っていたっていうかね。父親は九州交響楽団の名誉指揮者で福岡教育大学の学長を務めた人。母親は声楽家。
 いわゆる立身出世ってのは貧乏から這いあがるパターンが今でもあるのだと思うんだけど,音楽界の場合はどうなのかねぇ。

● 石井眞木さんとの対談では,ベルリン・フィルの内輪話やカラヤンの話が出てくる。早稲田交響楽団の話題も登場する。

2013年1月17日木曜日

2013.01.17 福岡伸一 『フェルメール 光の王国』


書名 フェルメール 光の王国
著者 福岡伸一
    小林廉宜(写真)
発行所 木楽舎
発行年月日 2011.08.01
価格(税別) 2,200円

● 著者はベストセラー,『生物と無生物のあいだ』で知られる生物学者。もっとも,ぼくはまだ読んでいないんですけどね。
 その著者がフェルメールを訪ねて,各国の美術館を訪ねる。

● 著者がフェルメールの真骨頂とするのは「光のつぶだち」。本書でも引用されているが,赤瀬川原平さんの視点(視覚のレンズ効果)とほぼ同じものと言っていいだろうか。
 というより,フェルメールといえば,誰もが指摘することなのか。

● カメラ・オブスクーラ(針穴写真機に似た箱形の光学装置で,風景や部屋の配置や遠近を正確に二次元平面に写し取ることができる)の話題を紹介しながらも,フェルメールと同時代にデルフトに住んだレーウェンフックに著者は注目する。「フェルメールは,レーウェンフックの作った顕微鏡のレンズを覗き,おそらくそこで「光のつぶだち」を発見したのではないか」(p18),と。

● オランダから始まって,アメリカ,フランス,イギリス,アイルランド,ドイツ,オーストリアと,フェルメール作品を所蔵している美術館を巡っていく。
 その地にゆかりの哲学者や科学者を紹介しながら話をつないでいくところも面白い。オランダではスピノザ,ニューヨークでは野口英世,パリでは数学者のガロア,ロンドンではワトソンとクリック,アイルランドではライアル・ワトソン,ベルリンではルドルフ・シェーンハイマー。
 フェルメールを深く掘っていくというよりは,横に横に話をつないでいく感じ。

● つまり,読みものとして楽しめばいいのだと思う。上質なエッセイ(あるいは紀行文)だ。もともと,ANAの機内誌「翼の王国」に連載されたものだ。読みやすいのも道理。
 全編に散りばめられている写真もいいですな。特に,額縁まで眺められるのは,ひょっとしたら本書だけかもしれない。

● とはいえ,読了後はいっぱしフェルメール通になった気分を味わえる。
 フェルメールについての著者の一応の結論は,「この世界にあって,そこに至る時間と,そこから始まる時間を,その瞬間にとどめること。フェルメールは絵画として微分法を発見したのである」(p238)ということ。

2013年1月14日月曜日

2013.01.13 大崎善生 『西の果てまで,シベリア鉄道で』


書名 西の果てまで,シベリア鉄道で ユーラシア大陸横断旅日記
著者 大崎善生
発行所 中央公論新社
発行年月日 2012.03.25
価格(税別) 1,400円

● 鉄道紀行となると,どうしても宮脇俊三氏を思いださないわけにはいかない。宮脇さんがあそこまで極めてしまった以上,あとに続く人はどうしたって二番煎じを免れない。
 文章もしかり。宮脇さんの香気ただよう文章に,何かを付加できる人なんているんだろうか。

● 貧乏旅行というなら,下川裕治さんがいる。この分野では,下川さんがありとあらゆることをやってくれている。脂肪をそぎ落とした文章で作品にしてくれている。
 青春冒険紀行?なら,沢木耕太郎さんの『深夜特急』が現在に至るも圧倒的な存在感だ。それなら毛色の変わったものをといっても,たとえば鴨志田穣さんの『アジアパー伝』がある。
 どうにも困ったものだ。

● この本は,著者のメモのようなものだと思える。将来,これを素材にした小説が生まれるのかもしれない。

2013.01.13 赤瀬川原平 『赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼』


書名 〔新装版〕赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼
著者 赤瀬川原平
発行所 講談社
発行年月日 2012.06.15
価格(税別) 1,800円

● 本書に掲載されているフェルメールの作品は36点。彼の「全作品」である。それに赤瀬川さんが解説を付けているわけだ。

● 彼のフェルメールに対する視点は,本書の冒頭「はじめに」で明らかにされている。
 フェルメールの絵は光学的で,神秘的である。(中略)二律背反というか,暖かいのに冷静,穏やかなのに研ぎすまされている
 筆づかいは要所要所かなり粗いのに,描かれた絵の本物そっくり感はぞくっとするほどだ。でも何にぞくっとするのだろうか。一つは視覚のレンズ効果が描かれていることだと思う。
 カメラ以前に,フェルメールはその絵の中にレンズ効果を描き込んだのである。
 ふつうならもう少し,そのポーズなり表情なりを,“絵らしく”安定して落ち着いたところを描くものである。でもフェルメールの絵は違う。人々の生活の生の瞬間をすぱっと正確に切っている。その時間の切り取り方のところでも非常に写真的で,大胆である。画面に描かれた人物の,とくに複数の場合の互いの心理関係などが,それぞれの動作や表情の上で,見事にその瞬間に凍結されている。
● 「中断されたレッスン」でも,「愛や身分によって視線の強さや屈折度が変わる,そういう視線そのものの振舞いをとらえることが,フェルメールの興味なんだと思われてくる」(p30)という。

● 「娘の頭部」では,「生きた表情が画布に完璧に再現されると,それだけでおのずから霊的な力がやどるのではないかと,そんなことを考えさせる」(p41),と。

● しかし,「信仰の寓意」に対してはこんなふうにも。
 地球儀を股にかけた格好,床の上のかじったリンゴ,血を吐いて転がる蛇。マンガ的というか,劇がみたいだ。(中略)お手のものの手前のカーテンも,何だか安っぽいコピー商品みたいだ。やはり絵の中に思想が入ると,フェルメールでもこうなる。(p88)

2013年1月13日日曜日

2013.01.12 岩城宏之 『音の影』


書名 音の影
著者 岩城宏之
発行所 文藝春秋
発行年月日 2004.08.30
価格(税別) 1,600円

● 著者は著名な指揮者(故人)。指揮のみならず,エッセイを書く才能もお持ちだったのだ。ベタな言葉で申しわけないけれども,軽妙洒脱。
 もちろん,音楽活動を通じて上質なネタをたくさん持っていたのだろうが,それだけではない。文才のなせるワザだ。

● 和田誠さんのイラストも懐かしい。若い頃は,和田誠さんか山藤章二さんの絵が添えられた小説家のエッセイ集をけっこう読んだものだ。丸谷才一『男のポケット』とか山口瞳『酒呑みの自己弁護』とか。そういう意味で懐かしい。

● ちなみに,ぼくの文学系の読書は,第三の新人とその周辺にいた作家で止まってしまっている。遠藤周作,吉行淳之介,安岡章太郎,阿川弘之,北杜夫,山口瞳,丸谷才一,色川武大といったあたりですね。四半世紀前ですな。
 村上龍や村上春樹はまったく読んだことがない。それ以後の作家は言うに及ばす。そろそろ小説も読んでみようかなと考えたりはするんですけどね。

2013年1月10日木曜日

2013.01.09 伊東 乾 『人生が深まるクラシック音楽入門』

書名 人生が深まるクラシック音楽入門
著者 伊東 乾
発行所 幻冬舎新書
発行年月日 2011.07.30
価格(税別) 860円

● この人はどういう人なんだろう。
 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督を務める作曲家・指揮者である。かといって,音大は出ていない。東大・東大院での専攻は物理。
 東京大学大学院で作曲=指揮・情報詩学研究室をかまえる学者でもある。『さよなら,サイレント・ネイビー』で開高健ノンフィクション賞を受賞した作家でもある。認知脳科学を研究する科学者でもある。
 6年前に著者の『東大式絶対情報学』を読んだことがあるが,この種の本を書く人でもある。

● 「物心がついたときからクラシック音楽が生活の一部として身近にありました。敷居の高さを感じたことはありません」(p18)ということだから,やっぱり環境って大きいよねぇ。

● まず,クラシック音楽の敷居は高くない,習うより慣れろだ,と一般的な心得を説き,次にざっとクラシック音楽の歴史を振り返る。続いて,楽器原論,音響学入門的な話をしたあと,録音について簡単に触れて,「歌うクラシックのススメ」というコーダ?で終わる。
 その合間々々に著者がこれはと思う楽曲を紹介していく。

● キリスト教会の建築の変化が,音楽の変化をもたらしたというのも,言われてみれば納得の指摘。背が低く窓がないロマネスク様式では残響が長く残るから,音が重なると濁って聞こえる。だから単旋律の音楽,転調のない(少ない)音楽が都合がいい。ゴシック様式になると音が上に抜けるから,音を足さなければならなくなる。
 バッハとヴィヴァルディの違いを,ドイツとイタリアの教会建築の差から説明するのも,目から鱗。

● 頭脳明晰な人が書いたものは,このように平易になるという見本。聴く側にとっての入門書として,本書は随一のものかもしれない。いい本を読んだっていう充実感が残りましたね。

2013年1月8日火曜日

2013.01.08 金聖響・玉木正之 『マーラーの交響曲』


書名 マーラーの交響曲
著者 金聖響
    玉木正之
発行所 講談社現代新書
発行年月日 2011.12.20
価格(税別) 860円

● 「ベートーヴェン」「ロマン派」に続いて,シリーズ3冊目。
 読むのに難儀した。その理由は主にこちら側にあると思われる。「ベートーヴェン」と「ロマン派」の交響曲はそれなりに聴いているのに対して,マーラーはあまり聴かないままで来てしまったから。
 聴く前に読むか,聴いてから読むか。「聴く」にとっても「読む」にとっても,まず充分に聴くことから始めた方がいいようだ。

● 以下,転載。
 たしかにマーラーの音楽を,明るく楽しいハッピーな音楽と言う気はありません。が,音楽とは,どんな音楽でも本質的に,楽しいもの,明るいもの,明日へ向かっての希望を示すもの,といえます。そうでなければ皆さんも,おカネを払ってわざわざ音楽を聴きに行かないでしょう。(中略) ですから,すべての交響曲に「埋葬行進曲」や「死のイメージ」を込めたマーラーも,「埋葬」や「死」のあとには,何らかの「新しい希望」「悟り」「心の安らぎ」「深い喜び」といったものをっ表現しています。(p39)
 「音楽をワカル」ということは,突き詰めて考えると,その音楽に「馴染む」ことであり,「慣れる」ことだといえるのではないでしょうか。(p211)
 クラシックと呼ばれるジャンルの音楽の“新しさ”は,若い世代から生まれるとは限りません。若者の生み出す音楽は,新しいセンスや革新性,過去の常識に囚われない革命性が存在しているものですが,過去のすべての音楽を完全に凌駕して超越する新しさが求められるとなると,それは若く新しいセンスだけでできるものではないでしょう。ある程度の・・・・・・・という以上に,過去のすべての音楽に対する深い知識も必要で,それには年齢の積み重ねが必要になってくるはずです。(p211)

2013.01.06 中島孝志 『すごい読書!』


書名 すごい読書!
著者 中島孝志
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2009.07.23
価格(税別) 1,300円

● タイトルに「仕事力・マネー力・運気力がアップする」と付記されているが,本を読んだだけで運気が変わるはずはないもんな。読んだのをきっかけにして,自分の行動とか習慣にゆさぶりをかけないと。
 しかし,行動や習慣にゆさぶりをかけたくなるほどの本が,この世に存在するのかどうか。もしそういう本に出会えたら,人生屈指の慶事ってことになるだろうね。
 自分(人生)を変えた本ってのは,読書界の業界誌やビジネス誌にはしばしば登場しているのかもしれないけれど,その実例を自分と自分の周囲に見たことがない。
 せめて,ジワジワと血になり肉になってくれればいいと思うんだけど,さてさて,そういうものもあるのかどうか。

● とはいえ,本書は軽い読みものとしては面白い。役に立つアドバイスもある。

2013.01.06 宇野功芳・山崎浩太郎 『宇野功芳のクラシックの聴き方』


書名 宇野功芳のクラシックの聴き方
著者 宇野功芳
    山崎浩太郎
発行所 音楽之友社
発行年月日 2006.07.10
価格(税別) 1,600円

● 著者は自身でも合唱団やオーケストラを指揮する指揮者でもあって,評論一辺倒の人ではない。当然,楽譜を細かく読み込んだり,ステージでどう表現すればよいのか,実地に悩んだ経験を充分に持つ人に違いない。

● そういう人が,豊富な語彙で演奏や指揮者について語っている。語り口は硬派だけれどロマンにあふれる。音楽知識がまったくなくても,ないなりに読み進めることができる。読みものとして楽しむことができる。

● 著者が足を運ぶ公演は,当然ながら,一流のプロたちのもの。同じことをぼくがやろうとすれば,先立つものをどうやって調達するかから考えなければならない。宝くじを買ってみようかと埒のないことを考えたりもしそうだな。
 それより何より,ぼくの耳でそれらの公演を聴くことは,まさしく馬の耳で念仏を聞くようなものだろう。

● それゆえ,ガイドブックを見て実際に旅行した気分になるように,この本を読んで実際に聴いた気になる方が,身のためかもしれない。
 とはいえ,聴いてみたいよなぁ。一流のプロたちの生の演奏。

● 71~73ページに「SPの録音事情」についての話がでてくる。そうだったのかぁと教えられたこと多し。

2013年1月5日土曜日

2013.01.05 岡本 真 『ウェブでの〈伝わる〉文章の書き方』


書名 ウェブでの〈伝わる〉文章の書き方
著者 岡本 真
発行所 講談社現代新書
発行年月日 2012.12.20
価格(税別) 740円

● 仕事でウェブサイトに文章(イベントのお知らせやら何やら)を書かなければならないビジネスマンに向けて,こういうところに注意しなさいよと説く,ウェブ版文章読本的なもの。

● かといって,特別な注意があるわけでもない。
 文章はできるだけ短く
 箇条書きを採用せよ
 いつ,どこで,を最初に明示せよ
 改行を入れて空白行を作れ

 というような,できてないかもしれないけど知ってはいるよ,っていう内容ですな。

● 「意図して共感を呼ぶことは,才能にあふれているわけでもない大抵の人間にはできない」(p132)というのは,知っておくべき原理原則のひとつだろう。でも,これも,言われなくても知ってるよ,ってことかもね。

● 第5章だけさっと目を通せば,本書を読んだことになるのではないかと思う。

2013.01.05 金聖響・玉木正之 『ロマン派の交響曲』


書名 ロマン派の交響曲 「未完成」から「悲愴」まで
著者 金聖響
    玉木正之
発行所 講談社現代新書
発行年月日 2009.05.20
価格(税別) 760円

● シューベルト,ベルリオーズ,メンデルスゾーン,シューマン,ブラームス,チャイコフスキーの6人を取りあげる。初心者向けの鑑賞の手引きといった性格のもの。
 いたって面白く読むことができたが,他の人にとっても同じかどうかはわからない。いわゆる通人の中には,何言ってんだよと感じる向きがあるかもしれない。

2013年1月4日金曜日

2012.12.31 金聖響・玉木正之 『ベートーヴェンの交響曲』


書名 ベートーヴェンの交響曲
著者 金聖響
    玉木正之
発行所 講談社現代新書
発行年月日 2007.11.20
価格(税別) 760円

● 初心者のガイドブックとしてかなり役に立つ。金聖響さんは頭がいい人なんだなぁって印象。そうじゃなきゃ,指揮者は務まらないだろうけど。
 自分の仕事に誠実な人でもある。仕事に誠実であり続けるって,できそうでできないじゃないですか。ぼくは全然できなかったのでね。
 たいていは自分の仕事を見限ってしまう。仕事を見限るってのは,ほとんどの場合,短慮の産物なんだけど,それを免れているのは,それだけでたいしたもの。

● 戦前のフルトヴェングラーとかトスカニーニの時代を「大指揮者時代」と呼んでいる。聖響さんは,「大指揮者時代」がお嫌いのようだ。
 ベートーヴェンを必要以上に重々しくしてしまった元凶が「大指揮者」だと言いたいらしい。

2013.01.04 清水玲奈 『世界の夢の本屋さん2』


書名 世界の夢の本屋さん2
著者 清水玲奈
発行所 エクスナレッジ
発行年月日 2012.07.17
価格(税別) 3,800円

● ヨーロッパに日本を含むアジアと南米を加えた続編。写真がメインだから,旅行ガイドブックのようにながめて,彼の地の光景を感じ取るようにすればいいのかもしれない。

● ホッジス・フィギス書店(ダブリン)の店員さんの話。
 うちの店は歴史がありますが,それが将来の保証になるかといえば,まったくそうではありません。今日私たちがどのような仕事をするかによって,店の将来は決まります。(p49)
● シェイクスピア・アンド・カンパニー(パリ)の店長さんの話。
 優れた本屋をやっていくために近道はありません。私自身もたくさん働きますし,パートタイム5人,フルタイム5人のスタッフたちには十分な給料を支払うとともに,家族のようなきずなを築き,幸せな気持ちで働いてもらえるように気を使っています。ここは放っておいても観光客がやってくるので,『星の王子様』の本とロゴ入りの記念品だけを置いて商売をやっていくことだって可能です。でもそれではつまらない。(p62)
● コープ・アンバシャトーリ書店(ボローニャ)。
 レストランや食料品店の存在が,本の売り上げに直接つながっているわけではない。店では,本を買った人にイータリーでの割引券を配り,イータリーの利用者に本の割引券を配る,という実験をしたことがある。その結果,本を買う人はイータリーに積極的に立ち寄ったが,イータリーの利用者が食料品を買うついでに本を買う割合は低いことがわかったという。(p75)
● シブヤパブリッシングアンドブックセラーズ(渋谷)の店長さんの話。
 今は店づくりも雑誌や本づくりも,雰囲気だけで売れる時代ではありません。お客さんのリテラシーが上がったので,良いものだけが売れる。いってみれば健全な時代です。全国どこで買っても同じ商品を,あえて自分の店で買ってもらうことの意味を感じてもらわなくてはなりません。(p115)
● 紀伊國屋書店札幌本店の店長さんの話。
 一流の本屋があるおかげで市民の生活の質が上がるというより,むしろその逆。いい本を読んでくれる市民がいる土壌にこそ,優れた本屋が育ち,その関係が好循環を生みます。(p120)
 札幌って,かつては一人あたりの書籍購入金額が全国最低の政令指定都市として有名だったんじゃなかったっけ? 今や大型書店がいくつもできて,その汚名を払拭しているんだろうかね。紀伊國屋札幌本店では100万冊が買ってもらえるのを待っているそうだから。

● 恵文社一乗寺店(京都)の店長さんの話。
 書店経営のプロならアマゾンを出しぬけます。洋書は断然アマゾンが安くても,文化的な人であれば,安い店を求めて駆けずり回ったりはしない。食べ物屋にたとえるなら,安くて量が多い店ではなく,「雰囲気がよくて旬のものを出す店」に行きたいと,私は思います。(中略) うちの店は,京都,とくに左京区の文化的な土壌があるからこそ成立しています。そして,京都の文化を支えているのは,寺社仏閣といった観光名所だけではなく,そのような個人商店なのです。(p132)
● エリート書店(台北)。
 台湾人の平均的な読書数は年間4.2冊だが,ここの会員の30万人は,エリートだけで年間12冊の本を買う。(p161)
 こんなものなのか。日本も同じか。本って,読む人と読まない人がくっきりと分かれてて,読まない人の年間読書数は文字どおりのゼロだからね。そういう人が大半であることを考えると,もっと少ないかもしれない?
 が,読まない人が馬鹿で読む人が賢いかというと,まったくそういうことはないと感じてますけどね。

● クルトゥーラ書店(サンパウロ)
 ブラジルでは,大人が一年に読む本は平均2冊に満たない。人口1億9千万人の国全体に,本屋さんは2,300軒(日本の書店数は約1万5千軒)。しかし,経済成長で文化的なものにお金をかけたいと思う人が急速に増えているのを受けて,書店の数は増え続けている。(p171)
 ブラジルでは,本は値段が高くぜいたく品とみなされている。しかし,クルトゥーラ書店の客層は「すべての人たち」。低所得層も,マイカーを買うのと同じように本を買う生活に憧れ、それを目標にする時代になりつつある。(p171)
 店員さんの話。
 とくに売れているのは,ブラジル文学を別にすると,自己啓発本だという印象があります。ブラジルでは今,ビジネスで成功してお金持ちになりたいと希望に燃えている人たちが多いのでしょう(p172)
● アビラ書店(ブエノスアイレス)の店長さんの話。
 アルゼンチンには,「人が本を知れば,二度と孤独に戻ることはない」という言葉があります。(中略) インターネットを通して,情報交換はできても,愛する人の手を握ることはできない。どんなにテクノロジーが発達しても本屋さんが不滅なのは,つまりそういうことです。(p210)