2013年11月1日金曜日

2013.11.01 鳥海 靖 『もういちど読む山川日本近代史』

書名 もういちど読む山川日本近代史
著者 鳥海 靖
発行所 山川出版社
発行年月日 2013.04.30
価格(税別) 1,500円

● 山川出版社の「もういちど読む」高校社会科教科書シリーズの1冊。といっても,高校の授業科目に日本近代史があるとは聞いたことがない。本書も教科書のリライトではなく,書き下ろしたもの。
 じつは,著者の日本近代史を読むのは,今回が初めてではない。もう20年近くも前になるけれど,同じタイトルの本を読んだことがある。放送大学の印刷教材として出版されたものだった。それよりも,今回の山川の方が情報量も多いし,水準も高いんじゃないかと思う。

● 教科書的通史ではあるものの,面白く読めた。スイスイグイグイ読める。
 昔,進歩的文化人と呼ばれた人たちが書いた断片は,読むとザラザラした感覚が残った。薄汚いとはこういうことかと思わされたものだ。
 本書にはそういうものが一切ない。丹念に史料を渉猟し,自身の空想が勝手に羽ばたかないように細心の注意が払われている。

● かつての主流をなしていた「マルクス主義歴史学,ないしそれに同調する立場からの歴史研究」に対して,次のような疑問を提出している。
 第一に「西欧先進国との比較で「遅れ」「ゆがみ」を指摘する場合,そこでの西欧理解があまりに観念化・理念化されていて,必ずしも歴史の実態を踏まえていない点」。
 第二に,「「遅れ」「ゆがみ」論が,制度上の建前にとらわれすぎて,制度の実際上の運用を軽視している点」。
 第三に,「時代状況を度外視した今日的価値を基準とする理解・評価への疑問」。
 要するに,かつての主流派は,手間暇や思考を惜しみすぎたということですか。こういうものがたとえば大学で教えられていたとすれば,勉強家ほど馬鹿になるというか,高学歴者ほど愚かになる,ってことになる。こういうことって,わりとありそうな気がする。

● 「はじめに」で「歴史を内在的にとらえるためには,まずなによりも,それの時代に生きた生身の人間たちがどのような価値基準に基づいて,なにを考え,なにを目標に行動したかを,歴史状況に即して理解することが必要不可欠といえよう」と書いている。
 そのとおりなんでしょうね。ただ,そうしたことは近代史では可能であっても,さらに過去に遡る中世史や古代史に関しては,かなり難しくなるんでしょうねぇ。
 「歴史には神も悪魔も登場しない」という諺があることも,本書で初めて知ることができた。

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