2013年8月20日火曜日

2013.08.16 筒井康隆 『笑犬楼の知恵 筒井康隆トークエッセー』

書名 笑犬楼の知恵 筒井康隆トークエッセー
著者 筒井康隆
発行所 金の星社
発行年月日 2002.06.
価格(税別) 1,000円

● 生活指南書,仕事指南書,人生指南書として,つまるところ実用書として,ぼくは読んだ。かなり面白かった。

● たとえば,つぎのようなもの。
 文体というのは作者の思考の過程と流れの速さを表現するから,そんなに変わらないし,すぐに自動化されてしまう。ストレートな思考で迷いなく書いている時ほど自動的になりますね。自動的な文章は読者にわかりやすいし,エンターテインメントならそれでもいいだろうけど,現代文学を一定の思考のリズムに乗って書いちゃいかんのでね。創作過程ではできるだけ夾雑物が入ってきた方がいい。電話とか来訪者とか,家の者の声や警笛や,テレビの爆笑とかね。そういうものがあっての現代なんだから。つまり,ぼくの考えでは,原稿にはできるだけ行き詰まった方がいいということです。(p7)
 たとえば相手が何を考えているかわからない場合,その人の表情や喋りかたを真似してみる。すると不思議に相手の気持ちがわかったりする。まあ,高等技術ですがね。(p22)
 たとえばサラリーマンで,趣味の世界で名をあげた人がいたって,職場ではそんな功績,無視されてしまう。それでいいんだと思います。違う世界があるんだってこと,そしてそのふたつはほとんど断絶しているんだってことを認識できることは,本人にとってはたいへんなプラスになる。視点が複数になるから世界を見る視野が拡がるんです。(p28)
 孤独に負けたときから老醜や老臭が出てくるんだと思います。そうなると家族にまで嫌われる。死ぬときはひとりなんだから,死ぬときが近づけば孤独になるのは当然なんですけどね。やっかいな人間関係よりはましだと思って,孤独を楽しむべきでしょうねぇ。(p41)
 不倫というのはいけません。配偶者がいるのに現実に不倫したりすると,その気苦労でたちまち老け込んじまうからね。作家や芸能人が,創作のためとか取材だとか芸の肥やしだとかいって堂堂と不倫したりするのは,本当にそうなるのならまだいいんだけど,たいていはそうはならないからね。(p99)
 このあいだ作家の佐藤亜紀とも話したんだけど,われわれにとっては,岩波はもちろんだけど,特に大学の出版局から出る本など,着想の宝庫だったんですが,本屋さんで手に入らなくなるのが心配です。(p105)
 段取りというのが大切なのは,先の見通しがつくからです。このときに一応,すべての仕事のことを考えておく。仕事によっては,いったんその仕事を全部おさらいして,頭の中でやってみる。そうすれば仕事の順番もわかってくる筈です。 それができたら,今度は最初にやるべきことだけを考えて仕事にとりかかる。これから先にやるべきこと全部を,ずっと考えながら仕事をするというのが,いちばんいけません。(p109)

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