2013年3月31日日曜日

2013.03.30 長谷川慶太郎・中原圭介 『激論 日本経済,崖っぷちの決断』


書名 激論 日本経済,崖っぷちの決断
著者 長谷川慶太郎・中原圭介
発行所 徳間書店
発行年月日 2013.03.31
価格(税別) 1,500円

● 主にはふたりの対談で構成されている。中原さんが噛ませ犬の役を演じて(演じているつもりはないかもしれないけど),長谷川さんの見解を引きだすという形。

● 長谷川さんは徹底したリアリスト。情だのヒューマニズムだのに流されるところが微塵もない。小気味いいほどだ。逆にそこが反感を買うところかもしれないわけだが,そんなことは歯牙にもかけていないところがまた潔い。

● まず,派遣切り以来,しばしば問題にされる非正規社員について,長谷川さんの見解は次のようなもの。
 非正規社員を増やすことによって賃下げを考えないとするなら,経営者はこれからどうやって食っていけるのでしょう。賃金コストを考えれば非正規社員というのは自動的に増えていくものなのです。自然発生的に拡大していく雇用形態なのですから,これはどうすることもできません。(p80)
 いつクビになるか分からないからといって,なぜモチベーションが下がるのでしょうか。むしろ仕事で安心していてはいけません。安心したら気が抜けますし,気を抜いているからこそ安心できるのです。(p80)
 松下氏は確かに絶対にクビを切らないといっていました。しかし,それはクビを切らないでもやっていけるときだったから,クビを切らないといっていただけです。ところが,現状のパナソニックだったらどうでしょうか。松下氏が今生きていれば,大胆にどんどんクビを切るでしょう。松下氏の経営感覚からはそれが当然であって,そんな甘い経営者ではありません。(p83)
● 終身雇用制についても何らの幻想は抱いていない。
 終身雇用制が高度経済成長の原動力だったというのは今でも誤解されています。当時は人口がどんどん増えていったので,ものをつくれば何でも売れていった時代だったのです。過去は麗しく美しく思い出されて懐かしい。終身雇用制にこだわるのは昔懐かしいということにすぎません。(p85)
 高度経済成長期には「会社が家族だ」というような言い方がされましたが,そんなものはもともと幻想なのです。しかも今のような国際競争の時代になると,日本の企業だろうが欧米の企業だろうが同じルールの下で働かなくてはいけません。また,同じルールで動かされていくということが本当のグローバリズムなのです。(p86)
● 終身雇用制によって企業にノウハウが蓄積され,それが競争力の源になるという意見も,一笑に付される。
 ハイブリッド車などやろうと思えばどこでもできますよ。すでにアメリカのGMでもハイブリッド車の生産を始めました。また,終身雇用制の麗しい慣行がハイブリッドばかりか他の新しい技術を生んだという事実もありません。終身雇用制と技術開発とはまったく関係がないのです。 GMがこれまでハイブリッド車をつくれなかったのも労働慣行のせいですが,それは労使問題であって正社員制度とか,ましてや終身雇用制などとはまったく関係ありません。(p91)
 ● 非正規では研修も受けられず,したがって人材活用の幅を狭めることになるという意見に対しては,次のように解答。要するに,自分にスキルを付けることは自己負担で行う時代になっているということ。
 雇用悪化は若者にしわ寄せがきていると言われるけれども,その若者に対しても,徹底したリアリズムで対応。
 三分の一の人間が教育の機会を奪われているといわれるけれども,積極的に教育の機会を得ようとしない人間も少なくないのです。やる気がありません。そのような連中に教育を受ける資格があるでしょうか。(p94)
 これからは自分の仕事のスキルは自分で身に付けなければいけませんよ。企業も自分でスキルを身に付けてきた人しか採用しなければいい。つまり,会社におんぶに抱っこという姿勢の人ではもはやダメなのです。以前のように日本経済も右肩上がりのときには会社も教育する余裕があったかもしれませんが,今の経済状況では会社ももうそんな負担には耐えられません。とすれば,労働者側も自分で勉強するほかないじゃないですか。 それに今はやる気があれば,情報化時代ですから高度な技術も自分で勉強できるようになっています。(p95)
● デフレ時代に最も重要なのは研究開発だということ。
 製品価格の下落に対して生産コストを切り下げられないとすると企業はどうやって対応するのか。結局,技術の研究開発しかありません。デフレ時代に生き残るたった一つの方法は,総力を挙げて研究開発を行うことです。(p140)
 日本が成長路線に復帰するスピードを上げるには二つの点に力を入れるしかありません。これは日本だけではなくどの国にも共通していえることです。一つが研究開発で,研究開発投資をどこまで伸ばせるかがポイントです。もう一つがインフラ整備になります。(p146)
● TPP,ヨーロッパ危機,中国崩壊について。
 TPPの後ろにはシェールガス革命があるともいえます。シェールガス革命にうまく乗ろうとするならTPPに参加することが大前提であり,それによって経済活動を低迷から高揚の方向へ持っていくことができると考えていいでしょう。(p180)
 日本は貿易なしにはやっていけない国ですから,TPPに参加すれば他国との平等な競争が可能になって製造業も伸びていきます。逆に参加しなければ,輸出先の国で関税が一五%から二〇%もかけられる状況が残るのですから,製造業の国際競争力も失われてしまいます。(p181)
 最近も私のところに防衛省の防衛政策局長が来たとき,中国で大規模な内戦が発生した場合にどうなるかという話題が出ました。つまり,日本政府として在留邦人の救出に手の打ちようがあるかということです。「残念ながらございません」というのが彼の答えでした。となると一四万人は見殺しにしなければいけませんし,実際に見殺しになってしまうでしょう。 そうなって初めて日本国民は平和ボケがどんなに高く付くかを痛感するわけです。それは仕方がありません。六七年間も平和ボケで過ごしてきたのですから。(p208)

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