2013年3月28日木曜日

2013.03.27 杉原厚吉 『大学教授という仕事』


書名 大学教授という仕事
著者 杉原厚吉
発行所 水曜社
発行年月日 2010.02.10
価格(税別) 1,600円

● 大学教授といっても,個体ごとに見ていけば千差万別で,幅広いバラエティーに富んでいるのだろう。どの職業でも同じだ。
 本書の著者は理科系の先生。しかも東大。さらに,相当に職業に誠実というか真面目な人のようだから,本書をもって「大学教授という仕事」を代表させるわけにはいかない感じ。

● 大学教授とは,まずストレスのない職業らしい。羨ましいぞ。
 平日の昼間の職場では,講義,会議,学生の相手,管理運営の仕事,電子メールの処理などに追われて,まとまった時間は取りにくい。そのため,論文や本を読むのは電車の中,論文や本の原稿を書いたりするのは自宅でということになってしまう。昼間やり残した雑用的な仕事も家にもち込む。(p14)
 ただ,家庭まで仕事をもち込むことは,いやいややっているのではない。好きでやっているのである。好きなことだから時間をかけても,時には徹夜をしても,苦にはならないし,ストレスもたまらない。楽しいから,自ら進んで忙しくできるのである。(p15)
● 講義をすることが大学教授の主要な仕事のひとつ。準備は大変そうだけど,とはいいながらも楽しそうでもある。
 講義の準備をしているとき,自分の心の動きは,こんな風に説明したら生徒からこんな質問を受けそうだと想像し,それに対する答え方を考えるという作業の繰り返しである。いわゆる自問自答である。生徒の気持ちになって質問し,教員の立場に戻ってそれに答えるという場面をくり返し想像し,シャドーボクシングのように講義の構想を練り上げていく。 それでも実際に教壇に立つと,思いもよらない質問を生徒から浴びる。(中略)生徒に教えてもらっているようなものである(p32)
 ● もうひとつは学問の開拓というか研究ですね。これは理系と文系ではだいぶ様相が異なるのかもしれない。理系は実験と計算というイメージがあるんだけど。
 自分で研究するだけじゃなくて,学生の指導もしなきゃいけない。
 研究の仕方は,講義などを通した知識の伝達ではなかなか教えられない。ではどうすればよいかというと,教員がやっている研究活動に学生も参加して,自分でも研究の一端を担ってみるという体験を通して体で覚えるのがよい。これをやるのが,学部であれば卒業論文を書くことであり,大学院であれば修士論文や博士論文を書くことである。(p37)
 ● 研究に区切りをつけたら,それを論文にする。ぼく的には研究のテーマを見つけることが大変で,論文にするのは機械的な作業じゃないかと思うんだけど,どうもそうでもないらしい。
 私自身が見つけて気に入っている工夫は,「流行作家になってエンターティメント小説でも書くような気分で,審査委員を楽しませることを最優先して論文を書こう」というものである。ふざけていると思われるかもしれないが,私はこれを真面目にやっている。そして,その効果に,長年手応えを感じている。だから,論文を書くことは楽しい。(p76)
● タコツボという言葉がある。大学の先生なんてのは,それぞれがタコツボに入っていて,ツボの外とは没交渉なんだろうと思いがちなんだけど,実際はどうなんだろうな。
 大学の学科や専攻という単位は,学問の一つの分野に対応していることが多い。だから,そのなかの教員同士は研究分野も近く,研究上の議論も十分にできると思われるかもしれない。しかし,なかなかそうはいかない。学問は非常に細分化されてきている。その細かさと比べると,学科や専攻の名前でくくれる学問分野は,一つ一つが非常に広い。だから同じ専攻に属していてもそれぞれの研究分野は非常に近いというわけではない。(p94)
● 研究発表は国内に限らず,国際的なものもある。特に理系は多いんだろうな。当然,いろいろと大変なこともある。
 質疑のもう一つのむずかしさは,いろいろな国の人からいろいろななまりを伴った英語で発せられる質問の意味をちゃんと聞き取って理解することにある。(中略)たいていの学生にとって,これが最も心配の種であり,緊張の原因である。これに関して私がいつも学生に言っているのは,「質問の意味が聞き取れなかったら,聞き取れたふりなどしないで,わかるまで聞き返せ」ということである。(中略)何回聞いてもわからないときには,そのうち時間切れになるから,司会者が,「この続きは休み時間に個人的に議論してください」といって終了してくれる。(p107)
● 本を出すのも教授のお仕事。著者なりの本を出すコツは次のとおり。
 どうしても書きたいと思ったとき,出版のあてがなくてもともかく原稿をつくってしまうということは,なかなか楽しいものだということを知った。 出版のあてがないのに原稿を書くということは,ひょっとしたら書いたことが無駄骨になりかねないから躊躇したくなる。でも,原稿を完成させて,それを出版社に見せることは何を書きたいかを示す最も確実な方法である。出版社としても企画だけ聞く場合より判断しやすいであろう。だから,これは人が読みたいはずだと思ったら,きっとどこかが出版してくれるという信念をもって,ともかく書いてしまうのがいいと思うようになった。(p133)
 ● 以下は研究に向かう態度のひとつ。大学教授に限らず,大切なことかも。
 私が学生によく言うとともに自分にも言い聞かせているのは,体勢が整わなくてもともかくシュートを打てということである。(中略)ボールを受け取ったら,体勢など整えないで,無理な姿勢のままともかくシュートを打つのがゴールを奪うコツだと思う。だから,国際会議への投稿を学生へ勧めたとき,学生が,もう少しこの実験をしたいなどと言ってきたら,実験をしながら(すなわち体勢が整わないまま)論文も書け(シュートを打て)と言うことにしている。(p168)

0 件のコメント:

コメントを投稿