2012年12月10日月曜日

2012.12.09 日下公人 『日下公人が読む2013年~ 日本と世界はこうなる』


書名 日下公人が読む2013年~ 日本と世界はこうなる
著者 日下公人
発行所 WAC
発行年月日 2012.11.27
価格(税別) 1,238円

● いつもながらの日下節で面白く読める。来年は金融不安が世界を襲うと予想。
 来年,金融大津波が世界を洗うとヨーロッパ文明と文化の威信が地に落ちる。アメリカの自由・民主・ドルの看板に傷がつく。中国共産党は和解路線に戻る。新興国は自らのアイデンティティに目覚める・・・・・となるが,そのとき日本と世界の関係はどうなるのか,日本はどうするのか。(中略) 日本はそういうとき,どう振舞えばよいかについての経験がない。指導理念もない。覚悟もない。世界をリードする優位戦を戦える人材もいない・・・・・・と思っていたが,そんなことはなかった。 安倍晋三氏とそれを支持する人々がいた。颯爽と登場されたのは嬉しい限りである。(p2)
 心優しい日本人は平和のため,原爆などは論外で軍事力は持っても最低限で,中国など近隣諸国とトラブルも起こさず,世界から愛されるような国であればいいと願っている。しかし,それを実現するためにはどうすればいいか,援助のばら蒔きが無効であることはもう証明されているが,何かいまの世界で有効な策があるのかどうか。 国民が安倍新総裁に期待していることは,それが第一だと思うが,期待だけですむ段階はもう終わっている。(p182)
 民主党がひどすぎた。市民運動家かひょっとしたらそれ以下の水準で,一国の政治を動かそうとした。特に,外交・防衛という国の根本に関わるところを滅茶苦茶にした罪は大きい。どうにもならない。
 あと一週間で総選挙だけれども,新聞の予想記事以上に民主党は議席を減らすのではあるまいか。政権交代時に民主党だった政党もまた同じ。
 とすれば,安倍-石破ラインの自民党に期待するのは自然の流れだ。

● 日下さんは中国をはっきり見限っている。中国人とは関わるなという。
 日本の新聞は,「中国が元通貨圏をアジアにつくろうと企んで着々と進めている」と,中国脅威説をつくっているが,国家が管理する通貨は長期的には信用できない。したがって,誰も元を受け取ろうとしないのだから,元通貨圏などできるわけがないし,元はこれから下がるという予測のほうが的確であろう。(p76)
 中国は(中略)いまだに古代が根強く残っている国である。すなわち,中国は根本的に原理が違う国なのだから,日本も中国とのつき合い方は当然変えなければならない。 日本人と中国人とは心は通じないと割り切らなければいけない。しかし,日本人は,いつかは中国人もわかってくれると思っている。 たとえば,日本の会社が中国に工場を建てて,工場長みずからがそれこそ率先して雑巾がけをして,誠心誠意でやれば,働く中国人がついてきてくれて,いつかはうまくいくと思う。だが,少しもうまくいかない。そんなことはいくらでもある。(p83)
 ● ヨーロッパも滅ぶ。
 EUの危機は昔からいわれ続けているが,結局,「ヨーロッパはヨーロッパ的な幸せ」の中で静かに消えていくと考えている。(p89)
 いままでヨーロッパが問題を先送りできたのは,ひとつは植民地を搾取してきたからで,もうひとつは,ヨーロッパの間でも,弱い国を潰してきた。しかし,もう限界である。 そこで中国や日本からカネを出させようと,いろいろやっているが,そのときの彼らの論理は,騙されたのは騙されたほうが悪いという自己責任論である。(p118)
● 福祉政策もほどほどにしろという意見。
 いまの選挙制度のもとでは,働かない人の投票によって福祉予算が膨らみ,国家財政が破綻する道をまっしぐらに歩むことになる。(p16)
 リンゼー市長によって母子家庭の保護が充実すると,離婚及び父親不明の出産が増加した。市役所の職員が偽装離婚を摘発しに深夜訪問すると,射殺される事件が起こった。赤ん坊の遺伝子を検査して前夫と同じであれば母子家庭の保護を打ち切ったので,行きずりの男に遺伝子を求めるという話もあった。働くより子ども手当のほうが楽だったのである。福祉の行き過ぎは家庭を破壊した。(p60)
● そもそも左翼政党や労働組合がお嫌いである。国会議事堂の施設に関して,次のようなエピソードを紹介している。
 はじめはエレベーターも食堂も国会議員専用というのはなく誰でも同じだったが,みるみるうちに国会議員専用エレベーター,国会議員専用食堂などができた。 こうした要求は,ほとんどが社会党の主張だった。これは,労働組合運動の「カネをよこせ」「権力をよこせ」というのと同じで,そうした私利私欲や党利党略ばかりに専念していると,その政党は内部からおかしくなる。結局,衰退していまは「社民党」として細々と残っているだけである。(p67)
● 日下さんの論調の骨子は,庶民の常識や道徳,実生活から生まれた知恵にリスペクトを置いていることで,逆に官僚や学者など頭で考えるだけの人たちに対してはかなり辛辣である。
 日本のエリートも同じで技術進歩とか生産性の向上とか合理化とか国際競争力強化とかを,いまだにキーワードとして信奉している。 その延長にあるのは「計画化」や「統合化」や「中央集権化」で,それが古いと思っていないのは高学歴病である。大学その他が教えているアカデミズムを身につけて世に出た人はなかなかそれを捨てられない。したがって,結局は庶民の後方を歩くことになるが,それに気がつかない。(p22)
 役人は先見の明もないし手金もないのに,民間の商売に口を出すのが大好きである。彼らにとっての手金は,結局は徴税権であって,国民に責任を転嫁する力があるというだけである。(p106)
 ● 理性の限界も強調する。
 理性が使える範囲は,時間や場所を限定すれば切れ味は鋭い。その意味で,ケインズの理論も少しは使えるが,長期間使ってはいけない。人間は理性だけで動くものではなく,感情や感性や人格や品格や変化しやすいいろいろな要因の波にもまれて動いているから,それを縛る仁義や道徳がなければ,社会は続かない。(p28)
 ● 庶民の常識が官僚や学者をしのぐ。
 二〇一三年は,日本人の庶民の常識が復活する年だと考えている。そのときには,「裏」「影」「歪み」「回り道」「含み」「あいまい」「不統一」「多様化」「ひずみ」「揺らぎ」「でたらめ」といった,一般にはマイナスイメージでとらえられてきた日本語が,逆に,いい意味になる。 というと,「それはいったいどういうこと?」と疑問に思うかもしれない。 たとえば,公式意見としては事故や不正はゼロにしたほうがいいに決まっている。しかし,庶民の常識の中には「適正事故率」というのがある。
● 金融についても,金融だけを見ていてはいけない,と。
 公認会計士を入れてもきちんとした監査が行われないのは,オリンパスの例でも分る。オリンパスの場合には,一九九九年から一千億円以上の「飛ばし」で損失を隠していた。(中略) 外部に監査をさせたり,社外取締役を置いたからといって,会社が健全に経営されることが保証されているわけではない。コスト高になるだけで,そのコストはアメリカの弁護士や会計事務所の利益になるとはばかばかしい話である。(p125)

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