2012年10月15日月曜日

2012.10.15 NHKスペシャル取材班 『Steve Jobs Special ジョブズと11人の証言』


書名 Steve Jobs Special ジョブズと11人の証言
著者 NHKスペシャル取材班
発行所 講談社
発行年月日 2012.09.26
価格(税別) 1,500円

● 論語読みの論語知らず,というのとはまったく意味が違うけれども,アップル知らずのアップル読みってのが,けっこういるのじゃなかろうか。Windowsユーザーなのにアップルに関する記事や書籍を面白がって読むっていう人たち。
 ぼくもその一人だ。パソコンはWindows,スマホはAndroidを使っているのに,アップルやスティーブ・ジョブズの記事や書籍はけっこうというには頻繁すぎるほど読んでいる。
 もっとも,IT企業に関する記事はアップルを取りあげたものが圧倒的に多いから,いきおいそうならざるを得ないってのもあるけどね。

● ぼくに関していうと,アップル製品で使っているのはWindows用のiTunesのみ。あとはiPodを含めてアップル製品のユーザーになったことはない。
 iPadもたぶん買わないと思う。Googleのnexus7には食指が動くけど。マイクロソフトのSurfaceにも魅力を感じる(Windows8Pro版は間違いなく日本でも発売されるだろう)。けれど,アップル製品で欲しいものは今のところない。
 それでも「Mac Fan」なんて雑誌を時々買って読んだりするわけですよ。潜在的なアップルファンというわけでもないと思ってるんですけどね。

● スティーブ・ジョブズはいまだ時の人だ。死に体のアップルを生き返らせて,株式の時価総額でマイクロソフトを抜き去るという離れ業をやってのけたわけだから,ただ者ではないことは誰の目にも明らかだ。
 ただね,これについても成毛眞さんが『成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈』で言っているのが正解なのだろうなと思っている。つまり,ジョブズをお手本にしようとする時点で,あなたはすでにダメな人っていう。
 自分がジョブズになれると思っている人はほぼ皆無のはずだけれども,時の人に引きずられるっていうところで,すでにどうなのよ。
 でも,アップルものやジョブズものって,読むと面白いんだよねぇ。

● これ,アップルのイメージ戦略にまんまと乗せられているのかもしれない。かつてのMacintoshには(現在のアップル製品も同じかもしれないけど)強烈なイメージがあった。
 ひとつは,Macは自由だっていうイメージ。反権力,反中央。「The Computer For the Rest of Us」は秀逸なコピーだ。IBMを仮想敵に見立てた「1984年」のテレビCMもインパクトあったろうねぇ。見ようによっては下品なCMだと思うんだけどね。後年の「Think different」も見事なイメージング。

● 2番目はMacはクリエイティブっていうもの。Windowsはサラリーマン(体制側)がお仕事で使うもの。Macは違うぞ。ミュージシャンやデザイナーな設計技師やイラストレーターや漫画家のような,作品を産みだす人たちの道具だぞ。Windowsなんて使ってて楽しくないでしょ,Macは楽しいよ。
 それと,かつてアイディアプロセッサと呼ばれていたジャンルのソフトが,圧倒的にMacに多かったってのもあるかも。「インスピレーション」とかね。今はどうなっているのだ,この手のソフト。

● 3番目は,Macは格好いい。アップル以外のメーカーのデスクトップパソコンが並んでいる様は,墓石の整列に見えなくもなかった。
 その点,Macは可愛らしかったよね。特にノート型パソコンのPowerBookはキリッと洗練されたデザインだった。ぼくにもMacにしようかと思ったことが一回だけあって,それがこの時期(1993年頃)にPowerBookを見たときでしたね。たしかに格好よかったなぁ。

● 4番目はMacはハイブローだっていうイメージだ。自由とハイブローを両立させてしまうところがすごい。昔は,Macって高かったからね。それを逆手に取ったのかもしれないね。
 とにかく,以上4つのイメージがMacにはあって,Windowsを使っていながらも気になる存在ではありましたよ。

● こういうイメージ戦略に乗せられやすいタイプの人がいるはずだ。
 ぼくはIBMの時代からThinkPadを使っている。最近のThinkPadにはちょっとした違和感を感じないでもないんだけど,たぶんずっとThinkPadを使い続けると思う。堅牢さとキーボードの打ちやすさ。デザインもクールだと思ってますね。いかにも道具といった無骨さを残しているのもポイント。
 で,ぼくみたいに特定の機種にこだわる人は,たぶんイメージ戦略に乗せられやすい性向を持った人だと思う。いい悪いの問題ではなくね。

● ともあれ,本書を読んでみた,と。読んでみるとやっぱり面白い。特にスティーブ・ウォズニアックのインタビューは興味深かったですね。ジョブズを単純に持ちあげていないしね。
 ジョブズの「公式自伝」を書いたウォルター・アイザックソンのも。「クローズドシステムへのこだわり」について,「ジョブズは自分の製品を京都の美しい庭園のように考えていました。訪問者が好きな花を植えたりするような勝手な真似を彼が許すはずがありません。細心の注意を払って計画し,細部に至るまで丁寧に仕上げてあるのですから。真の芸術家というのは,他人に自分の作品をいじられたくないと思っているものです」(p230)と語っている。腑に落ちる説明ではあるまいか。

● けれど,ぼく一個はクローズドシステムにはまったく賛同できない。しょせんは一人の美学,こだわりに過ぎないからだ。たとえそれがどんなに優れたものであったとしても。
 というわけで,これを読んでもアップル製品を使ってみようとは思わなかったね。

● これからもアップルもの,ジョブズものを読むことはしばしばあると思うんだけども,読み捨てるべきもの,ああ面白かったで終わりにすべきもの,だと思います。

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