2012年10月8日月曜日

2012.10.06 和田秀樹 『知力の鍛え方』


書名 知力の鍛え方
著者 和田秀樹
発行所 海竜社
発行年月日 2012.02.14
価格(税別) 900円

● 今の日本人は自分で考える力が落ちている。これでは国の将来が危ういと警鐘を鳴らす。「疑うことや,ほかの可能性を考えてみること」(あとがき)が重要で,その具体的な方法を説く。

● 日本人を今のようなていたらくに落とした元凶は2つあると著者は考えているようだ。マスコミと「ゆとり教育」である。

● マスコミについては,次のように書いている。
 事故発生から何ヶ月もすぎていて,危ないか危なくないかわからないのに,すべて危ないものだと決めつけて報道しているのは非常におかしいのです。 (中略)危なくないのに危ないと言ったのなら,その風評被害の損失はテレビ局が払って当然です。ところが,勝手に危ないと決めつけて報道しているのはテレビなのに,彼らはその風評被害の責任を東電に負わせている。全局そろって危ないと言い,モノが売れなくなったら「東電が払ってね」。そんなことがあっていいのでしょうか。(p30)
 はっきり言わせてもらえば,カネになることなら何でもやってしまうのがテレビ業界です。いい例がパチンコ関連のCMで,貸金業法が改正されて消費者金融のCMが激減すると,テレビ業界はそれまで自主規制してきたパチンコのCMをあっさり解禁しました。(p40)
 冤罪事件になると,テレビは警察の当時の取り調べ方法を批判はしても,自分たちがどんな報道をしたかについては口をつぐんで知らんぷりです。VTRが残っているはずなのに,テレビが過去の報道を自ら検証したという話はついぞ耳にしません。(p44)
 中国人ですら「テレビ局なんてどうせ政府の意向でやっているんだ」と考えてインターネットで情報を得ようとするのに,日本人はすべてのテレビ局が同じ情報を流しても,それを疑ってインターネットで調べようとする人は稀です。 いまの日本人はメディアリテラシーが異様に低い国です。(p47)
 ベトナム戦争の頃までは新聞記者が戦地に赴いていたのに,いまは戦地にはフリージャーナリストを行かせて,自分たちは安全が確認されるまで絶対に行きません。 原発についても同じことが言えます。事故発生後の8月末,福島第一原発の原子炉建屋に入って取材したのは,新聞記者ではなく,やはりフリーのジャーナリストでした。 マスコミというのは本来,「命が惜しかったらジャーナリストになるな」が鉄則です。命を惜しむ日本の新聞記者をジャーナリストと呼べるでしょうか。(p90)
 かつて私は週刊朝日の映画評に「日本の新聞記者は,世界でいちばん高い給料をもらい,世界でいちばん殺されることが少ないそうだが」と書いたことがあります。 そうしたところ,どうやらタブーに触れたようで,週刊朝日の担当編集者が血相を変えて「書き直せ」と迫ってきました。彼は元新聞記者だったのでしょう。(p91)
 じつは,わが家でもしばらく前に新聞を取るのをやめた。内容云々よりも,新聞購読勧誘が暴力的といえるほどにしつこいことに対する態度表明ってとこかな。
 新聞紙は資源ゴミとしてだすわけだけど,回収が月に1回なので,自動的にひと月分が溜まってしまう。その光景に嫌気がさしてきたってのもありますね。
 もちろん,ニュースもスーパーの安売り情報もネットで取れるようになったことも大きい。
 で,新聞が消えて困ったことは何もない。じつに見事に何もない。

● 次に「ゆとり教育」について。
 日本の恥ずかしい点は,ノーベル賞を取ったら何でもできるようになってしまうことです。 「ゆとり教育」を強力に推し進めた教育国民会議(小渕内閣,森内閣)の座長,江崎玲於奈氏や,教育再生会議(安倍内閣)で座長を務めた野依良治さんがその好例です。国の教育方針を決める組織のトップの座に,ノーベル賞を取ったというだけで教育の経験のほとんどない学者が座っている様は,異様な光景と言うしかありません。(p56)
 「ゆとり教育」も,現場を知らない人たちが導入した政策でした。1978年までは東京教育大学という大学があり,そこの教授の半分は教員の経験がある人たちでした。それもあってその頃の教育政策は比較的まともだったのですが,東大などの陰謀で,東京教育大学をつぶして筑波大学にしてしまいました。 その結果,教育の世界の政策立案を東大教育学部の教授たちが中心になってやるようになり,それで始まったのが「ゆとり教育」です。ところが,彼ら東大教育学部の教授たちは教員の経験のある者は一人もいなかったのです。(p89)
 「ゆとり教育」が逆効果を招いたことは,火を見るより明らかです。にもかかわらず,いまだにゆとり教育の失敗を認めようとしない人がいるのはなぜでしょうか。 私が思うに,それは,「こうなるはずだ」的思考の欠点のなせるわざです。(中略)とかく理論に固執しがちな学者にそういう傾向が強いことも,それを示していると思います。教育「改革」を推し進めた人々は,うまくいかないのは,理論が間違っているからではなく,実践が徹底していないから,あるいは社会に十分な土壌がないからだと思っているようです。 しかし,私に言わせれば,うまくいかないのは,その方法が間違っているからにほかなりません。(p162)
● ネット社会の泳ぎ方についての助言も引用。
 情報の海であるネットから必要な情報を取り出してくるためには,その分野についての概括的な知識や理解が必要になります。それもなくてネットに向かうのは,真っ暗闇のなかを手探りで歩くようなものです。(p91)
 ネット社会というのは,意外に人間関係を必要とするのです。情報の量が膨大なので,勝手知ったる水先案内人がいたほうが,目的地にたどり着きやすくなります。そうでないと,ウィキペディアを盲信することになりかねません。 その意味では,日頃からいろいろな分野の知人,友人を持っておくというのは大事なことです。(p174)
 私の場合,ワードで書いた原稿はコピペの基になります。 つまり,本をたくさん書いている人ほど,データベースが増え,さらにたくさん書きやすい状況を作っているということです。 (中略)もっとも,本を書くのはハードルが高いので,私は普通の人にはブログの活用を勧めています。参考になりそうなサイトのリンクを貼る,調べた情報をコピペする,情報を自分なりに整理する,意見や感想を書く,といった形でブログを活用すれば,ブログが自分専用の情報収集ノート,思考の整理ノートになります。(p175)
● その他,言われてみればなるほどと思えること。
 人間の本来的な賢さは,頭の中に詰まっていることではなく,会話や文章など,外に出るものに現れます。(p61)
 日本人の文字離れというのは恐ろしい勢いで進んでいます。 原因は,一つには「ゆとり教育」による学力低下が考えられます。テレビの視聴時間が増えて新聞を読まなくなったこともあるでしょう。 もう一つは,家庭内のコミュニケーション不足です。 東日本大震災で,東北の子どもたちにインタビューをすると,ほとんどの子どもが標準語をしゃべります。 テレビの影響もありますが,テレビがいくら標準語でしゃべっても,家庭内の会話があればそうななりません。おじいちゃん,おばあちゃんとしゃべっていない,あるいは家庭内での会話が少ないから,標準語になるわけです。 家庭内での会話がありそうな家の子は,ちゃんと田舎の言葉を使っています。昔と違って,方言をしゃべる子というのは,それなりにいい家の子どもだということです。(p64)
 教育とは本来,欲ばりであるべきです。学歴が高くて悪いことは一つもないのですから,それに上乗せしてEQも鍛えていけば,人生の可能性はそれだけ開けていくはずです。(p71)
 社会のなかで全然認められないとか,偉そうにできない,人に評価してもらえないという状況下だと,自分より弱い者を見つけたときや,相手がミスして自分が威張れる立場に立ったとたんに,これまでの我慢パワーが噴出して制御が利かなくなります。 (中略)もう一つ,クレーマーやモンスターペアレントには「認知的成熟度」が欠けていることも指摘できます。 認知的成熟度とは,一言で言えば,曖昧さに耐える能力です。 (中略)認知的成熟度が低い人ほど,白黒はっきりさせたがるものです。敵か味方か,いい奴か悪い奴かという色分けをはっきりさせて,中間の領域を認めようとしません。クレーマーやモンスターペアレントとは,まさにそうした人たちです。(p83)
 「考えている」から行動ができず,行動ができないから新たな問題発見にも至らず,したがって事態の進展は望めません。(p124)
 人間の好奇心には知的側面もあれば,性的側面もあります。知的好奇心だけが高くて性的好奇心が低いということはあまりないので,知的好奇心がなかなか湧いてこないときは,性的好奇心だけでも上げていって,好奇心全般のテンションを上げることで,知的好奇心も上がっていくということがあります。(p197)
● 最後に,いかにもありそうだなというエピソードを。
 新発売のVAIO(ソニー)typeRシリーズを購入したときのことです。最上位機種を選んだにもかかわらず,突然フリーズしたり,シャットダウンできなくなったりと,原因不明の不具合が続いてさんざんな目に遭いました。 最初はWondows VistaやWordを疑っていたのですが,調べているうちにハードディスクの問題だとわかり,修理に出しました。ところが,カスタマーセンターから戻ってきて4ヵ月後に,また故障です。泣く思いで再度修理に出したところ,同じ箇所が壊れているという診断でした。 同じ箇所が壊れるというのなら,前の修理が悪かった可能性も否定できません。これだけでも腹立たしいのに,さらに問題なのは,同じ箇所の故障であっても,「90日以上経っているので約7万円払え」と言われたことです。これには開いた口がふさがりませんでした。(p134)
 初期不良でしょうね。ロットの全製品に同じ不具合が出ていた可能性もあるんじゃないのかなぁ。不良品をユーザーに押しつけておいて,不良の解消はユーザーに負担させる。論外のメーカーってことになるんだけど,ソニーだけじゃないからなぁ,これ。
 これを避ける方法は,出たばかりの最新モデルは買わないこと。たぶん,それしかない。

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