2012年10月24日水曜日

2012.10.24 小田嶋 隆 『もっと地雷を踏む勇気』


書名 もっと地雷を踏む勇気
著者 小田嶋 隆
発行所 技術評論社
発行年月日 2012.10.25
価格(税別) 1,480円

● 面白い。どうしようもなく面白い。
 面白さの要素は大きく分けて3つ。ひとつめは文章。体を削るような思いで文章を紡ぎだしているのではあるまいか。この書き方ではたくさんは書けないでしょうね。
 しかし,そうして紡ぎだされた文章は若干の韜晦を含んだ洒脱に満ちている。単純に読む喜び,読む楽しさを,文章で味わわせてくれる。

● ふたつめは,溢れんばかりの知。なんて頭がいい人なんだろう,っていうね。
 冒頭の橋下大阪市長を扱った文章から,それは炸裂してて,かくも複雑なことをかくも深く考え,それを明快に腑分けして,ズバリの結論を明示する。読む側に自分も賢くなったんじゃないかっていう錯覚をプレゼントしてくれる。
 「むずしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく」とは井上ひさしの言葉だったと思うが,なんかね,それを思いだしましたよ。

● みっつめは,自分の足で立とうとする潔さっていいますか,読者に媚びないっていいますか,「赤信号みんなで渡れば怖くない」を徹底的に拒否するっていいますか,敵を作ってもかまわないと思い決めているといいますか,「風に立つライオン」(さだまさし)のようなっていいますか,孤高の感じがとてもいいんですね。

● ひとつだけ引用。橋下大阪市長が文楽の補助金を削減するという話題に関して,小田嶋さんは次のように言う。
 世界一のスーパーディレッタントであっても,世界中の文化芸術の半分すら味わい尽くすことはできないはずだ。芸術というのは,そういうふうに,「選ばれた少数者に向けて」作られているものだ。(中略) 私が言おうとしているのは,「ある芸術はある一群の人々にしか理解されず,別の芸術は別の少数者にしかわからない」ということだ。(中略)にもかかわらず,一部の人々にとっては「それなしには生きていけない」ほど貴重なものなのである。 ということはつまり,芸術の大半は,大半の人間にとって,理解不能だということになる。 しかしながら,にもかかわらず,あるいはそうであるからこそいやがうえにも,それらは,尊重されなければならない。自分から見れば意味不明でも,一部の人々にとっては,全人生を賭けるに値する価値を持っている。そこのところを尊重しないのであれば,人類に文化が必要な理由が根底から失われてしまうからだ。 逆の立場に立てば,自分が心から支持している何かを,世間の人は,ほとんどまったく評価していないということである。 だから,どんな作品であっても,単純な多数決を取れば,必ず,「必要ない」に投票する人間が多数を占める。そういうものなのだ。(p57)
 じつは,(中略)の部分に小田嶋さんの味わいがあるんですけどね。

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