2012年10月22日月曜日

2012.10.22 松浦弥太郎 『本業失格』


書名 本業失格
著者 松浦弥太郎
発行所 集英社文庫
発行年月日 文庫版:2007.02.25
         元版(単行本):2000.07
価格(税別) 419円

● 松浦さんは「著者あとがき」で次のように書いている。
 今になって読んでみると,あまりの悪文にからだ中から冷や汗が出る。文章の中で,これでもかとはしゃいでいる自分がこっ恥ずかしくて仕方がない。文章を学校でたとえれば,幼稚園の年少組に入園した子どもが,はじめて放たれた大勢の中で,ひとり生意気にぺちゃくちゃ意見しているようだ。
 松浦さんが文章を書き始めた時期の,1997年から2000年にかけて書かれたエッセイを集めたもので,今の彼から見ると,直したいところがたくさんあるのだろう。
 が,ぼくは楽しく読めた。文章って端正であればいいってものでもなくて,いろいろなスタイルがあって,そのそれぞれがそれぞれとして成立していれば,それでいいものだろう。
 少なくとも,本書の文章はその時期の著者でなければ書けなかったはずのものだ。若者の天衣無縫を載せるにはこの文体でなければならなかったと思わせる(文庫化にあたって,かなり修正加筆を施したそうだが)。

● だから「こっ恥ずかしくて仕方がない」のだとすれば,文章ではなくて当時の自分に対してってことになる。けれども,そんなことを感じる必要は髪の毛一本ほどもないと思いますけどね。
 はるかな昔,○○青春記といったタイトルの本が流行ったことがあるが,本書はまさに青春記としても読めるもので,しかも青春記として秀逸だ。

● ぼくが松浦さんの著書を読み始めたのはごく最近のことだ。最初に『松浦弥太郎の仕事術』を読み,次に『居ごこちのよい旅』を読み,『松浦弥太郎の新しいお金術』へと進んだ。
 でも,最初にこの『本業失格』を読んでおくべきだったと思わないでもない。今の落ち着いた風情のある松浦さんの文章ではなく,ね。

● たとえば,松浦さんは高校を中退してアメリカに渡るという,普通の人はまず経験しない経験をしているわけだが,「で,結果は? 正直,絶望した。英語も話せない。サンフランシスコに着いたはいいが,右も左もわからない。(中略)あの時ほど,夜になるのが怖くて不安になったことはなかった。僕を待っていたのはそんな冷たいアメリカだったのだ」(p80)という。
 また,若い頃の彼は喫煙者だったのだ。そうしたことも知ったうえで,現在の松浦さんのイメージを作れていれば。

● 嬉しいことに,まだ読んでいない彼の作品がたっぷり残っている。幸せなことだ。生きている喜びって,こういうささやかなことの内にある。

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