2012年10月20日土曜日

2012.10.19 養老孟司・隈 研吾 『日本人はどう住まうべきか?』


書名 日本人はどう住まうべきか?
著者 養老孟司・隈 研吾
発行所 日経BP社
発行年月日 2012.02.06
価格(税別) 1,200円

● 自分が何も知らないってことを教えられるね,こういう本を読むと。自分のバカさかげんを突きつけられるといいますかね。
 建築世界のアレコレを知らないのは当然だからこれは許すとしても,モノの見方がコンクリになっているとか,発想の貧しさとか,そもそも自分の頭で考えるとはどういうことかを知らなかったとか,根底的に自分はバカなのだなということを知らされる。

● 読みものとしても群を抜く面白さ。読みやすいしね。読み始めれば一気通貫で読了できる。

● 全編すべて引用したくなるが,いくつか引いておく。
 日本の大工さんは技術力が高くて,ベニヤを手早く組み立てることができた。それが逆説的にまずかったのかもしれませんが,建築家がどんなに勝手な造形で図面を描いても,日本の大工さんがいればたちまち世界で一番きれいなコンクリートが打ち上がるんです。建築家の妄想みたいなものを実際に形にしてくれる,素晴らしい職人さんがいたわけです。日本の建築と建築家は,丹下健三さん以来,黒川紀章さんも,安藤忠雄さんも,ベニヤをうまく組み立てられる日本の職人さんがいたおかげで世界に名前を知られた。まあ,甘やかされていたようなものなんですよ。もちろん,僕もその恩恵にあずかっています。それで,ものづくりの厳しさを,どこか忘れちゃったのかもしれない。(隈 p42)
 原理だけで建築を作ると,そのロジックが時代遅れになったときに,とんでもない負債を背負うことになります。(隈 p65)
 サラリーマン的であって一番よくないことと言えば,日本の場合は機能的じゃなくなることですね。現場にいる人は,機能的じゃないととても困るんです。(中略)現場というのはルールでは動かない。適当にごまかす方が早いしスムーズにいく。(養老 p73)
 都市というのは基本的に,賃貸という形を採用することで,家族形態の変化やライフスタイルの変化などに応じて,フラフラと移動しながら住むようにできているんです。経済状況だってしょっちゅう変わるし,それにつられていろいろなことが変わっていく。都市という生き物は,住宅を分譲して「資産だよ」と言った途端に,大きな病を抱え込むことになります。(隈 p99)
 プレハブはもう大変です。だって100年工法とか200年工法とか言われていても,その価値は100年なんか持たないもので,朽ち果てるだけですから。100年後には誰も住みたくないデザインのくせに,材料だけは200年持つということは,解体にお金がかかるだけ。手に負えません。(隈 p118)
 冷暖房を例に取ると,普通,人は寒いから暖かくして,暑いから冷やすんだと考えるわけ。これは機能論と言われますが,でも,本当はそうじゃないんです。人が冷暖房を使う理由をよくよく詰めて考えると,気温一定という秩序を意識が要求しているからなんですよ。要するに,人は暑くても寒くてもエネルギーを使っている。 (中略)その秩序を20世紀にどうやって手に入れたかというと,石油という分子をバラバラにして,無秩序を増やしたからです。秩序には,エントロピーという無秩序が付いてきて,それでもってつじつまを合わせています。都会で暮らしている人間は,頭で秩序を作り,秩序を要求しますが,それには必ず無秩序が伴うことを自覚した方がいい。そのためには,自分たちが要求しているのは秩序だということに,まず気が付いてもらわないといけない。で,次に,秩序ってそんなに望ましいものなのか,ということを考えてもらわなきゃいけない。(養老 p157)
 教育で一番大事なのは,向かない人に早くあきらめてもらうことだ。(隈 p170)
 国の診療制度だと今は出来高払いになっているから,あきらめた方がいい医者でも仕事を続けるし,あきらめた方がいい対象でも医療行為が続いてしまう。だから大変なことになっちゃったわけですよ。患者さんは,死ぬまで我慢の一生。(養老 p170)
 何もない平和なとき,人は何かをしたり,何かを考えたりはしないものらしい。大災害が起きたときに,人は新しいことをしたり,考えたりするのである。その意味で,人類史とは災害史である。(隈 p187)

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