2012年10月10日水曜日

2012.10.09 長谷川慶太郎 『2013年 長谷川慶太郎の大局を読む』


書名 2013年 長谷川慶太郎の大局を読む
著者 長谷川慶太郎
発行所 李白社
発行年月日 2012.10.07
価格(税別) 1,600円

● 長谷川慶太郎さんほど毀誉褒貶の振り幅が大きいエコノミストはいないかもしれない。毀誉褒貶の振り幅が大きいということは,しかし,一流の証しですな。長谷川さんほど,これはこれからこうなると具体的に断定する人はいない。
 加えて,その断定の仕方が小気味よいのですね。かくかくしかじか,これこれこうだから,こうなると,具体的な根拠とデータをあげて,明快に仕分けする。
 もちろん,外れることもある。具体的なほど外れる可能性も高くなる。あたりまえのことだ。百発百中だったら,長谷川さんは人間ではないってことになってしまう。

● 明日の天気だって,何時から何時までは晴れ,その後は何時まで曇と予想すれば,まぁ外れることも多くなる。晴か曇,ところによっては雨にもなり,ひょっとしたら雪の可能性もある,と言っていれば外れることはないけれど,それでは何も言っていないに等しい。
 この何も言っていないに等しい専門家の予測というのがマスコミに跋扈している中で,長谷川さんのように果敢に具体に踏みこんでこうなると断定する様は,潔いというか男らしいというか,すごいものだとぼくなんぞは思っている。

● おそらく長谷川さん,吠えるしか能のない佐高某などという手合いが何を言おうが,歯牙にもかけていないだろう。その程度には自ら恃むところがあればこそ,長谷川慶太郎という看板を張っていられるに違いない。

● あと,こういう人がいるかもしれない。長谷川さんのいうとおりに株を買ったのに,損をしたっていう人ね。どうしてくれるっていうわけね。アンチ長谷川になる。けっこういるんじゃないかなぁ。
 言うまでもなく,株は自己責任。長谷川さんであれ,故邱永漢さんであれ,大いに彼らの意見を参考にするのはいいとして,決定は自分の判断でするもの。それすらできないくせに株の周辺をウロウロしているのは,知能水準は猿以下なのに,欲の皮は象なみに肥大しているやつに違いない。

● さて,今回はアメリカ大統領選でオバマは再選されないと長谷川さんは言う。「アメリカ大統領選でロムニーが当選する可能性がきわめて高く,オバマは一期限りの大統領で終わると私は確信している」(p45)と。
 新聞報道ではオバマの方が僅差ながら支持率が高いようだが,さてさて。 

● ユーロが揺れているが,ユーロそのものについては長谷川さんは楽観的。
 第二次大戦でヒトラーは武力によるヨーロッパ支配体制の奪取に失敗した。しかし,今のドイツは経済市場での競争力という平和的な手段を通じてそれを達成しているのである。ヒトラーが銃剣を使ってできなかったことをメルケルはユーロを使い成し遂げたと考えていい。
 とすれば,どうしてそれをドイツが放棄するだろうか。あり得ないことだ。(p87)
 ユーロの崩壊の危機が迫っているなどという議論を国際金融の専門家の口から聞かされるのはまことに遺憾なことである。ドイツがヘゲモニーを握っている限り,ユーロ崩壊はあり得ないのだ。(p90)
● 中国との尖閣諸島,韓国との竹島問題がホットだ。これについての長谷川さんの意見。
 尖閣諸島に上陸したのは香港の連中であって中国本土の連中ではない。しかも,中華人民共和国の国旗である五星紅旗を持っていたので香港でも親中派の方だ。
 (中略) 親中派は存在感を示そうと尖閣諸島に上陸したのだが,上陸した者たちを褒めているのは香港の親中派だけで,香港の反中派は「何をくだらないことをしたのか」と思っている。
 (中略) 尖閣諸島への上陸については一四人全員を逮捕して簡単に撃退したのだから日本政府の勝利だ。上陸したとたんに逮捕されて追い返されるのでは親中派にとっても何の意味もない。(p110)
 日韓通貨スワップ協定の破棄も韓国に甚大な影響を与える。マスコミの中にはこの破棄は形式的なものだと報道しているところも見られるが,とんでもない。韓国の通貨ウォンの大暴落にもつながるものなのだ。
 (中略) 韓国は毎年巨額の対日赤字を出しているわけで,たとえば二〇一〇年の対日赤字額は今のレートに直すと三七〇億ドルになる。それと同じくらいの対日赤字が生まれても日韓通貨スワップの枠の範囲内だから赤字を補う資金を金利ゼロで調達できる。しかし七〇〇億ドルという枠がなければ国際金融市場で単発に調達しなければならなくなって,その場合,金利が非常に高いためにウォン暴落の呼び水になってしまうのだ。
 (中略) この点については韓国経済界もよく分かっているので,今回の李明博の竹島訪問には愕然としたのだった。もともとビジネスマン出身にもかかわらず,任期末期の自分の政権の求心力を維持したいという思惑から竹島訪問を強行したことについて韓国の経済界では「とうとう李明博も焼きが回ってしまった」という見方になっている。(p134)
● 中国の経済については,ほとんど論外というのが長谷川さんの意見。
 渤海湾の北側に秦皇島という港がある。ここは昔つくられた古い港だが,中華人民共和国が成立した後は鉄鉱石や石炭の輸出入を行う専用の港として機能してきた。 今,この港には二億トンを超える鉄鉱石の在庫がある。高炉にくべるコークスの原料となる粘結炭の在庫も一億二〇〇〇万トンを超えた。だから,せっかく輸送されてきた鉄鉱石を陸揚げしても置く場所がないのだ。石炭も同様である。そのため,オーストラリアから秦皇島向けの鉄鉱石,石炭の輸出も全部止まってしまった。(p103)
 日本にダンピングして売らなければならないほど中国では鋼材の在庫の山ができているのだ。それは同時に中国の企業が大量倒産していることを示している。企業が大量倒産しているとすれば失業者もまた大量に発生しているということである。
 企業の倒産がますます拡大し,失業者がどんどん増えているというのでは改革開放路線の破綻は明らかだ。これからも中国の経済が立ち直るということはあり得ない。(p105)
● 失政続きの民主党(鳩山&菅)に対しても手厳しい。特に原発問題については,次のように言う。
 定期点検で停止した原発が再稼働できなくなった原因は静岡県御前崎市にある中部電力の浜岡原発を法律的な手順を踏まずに止めたためである。
 当時の菅直人首相は二〇一一年五月六日夜に突然,緊急の記者会見を行って,「浜岡原子力発電所についてすべての原子炉を運転停止にするように中部電力に要請した」と発表した。この要請には経済産業省の原子力安全・保安院を通じた法的な手続きを伴っていないため何の法的な裏付けもなかったのだが,中部電力はそれに応じてしまい,浜岡原発を停止させてしまった。このように法的な手続きによらないで原発を停止させた結果,点検作業で停止中の原発を再稼働させるときの法的な手続きの方も軽視されるようになって,結局,どの原発も再稼働できなくなったのだった。(p139)
 一方,原発停止によって日本の電力会社の火力発電所はフル稼働状態になっている。その燃料の一つであるLNGの二〇一一年度の輸入量は前年度に比べて一八%増の八三一八万トンと過去最高を記録した。我が国の貿易収支は二〇一一年に三一年ぶりに赤字になってしまったが,LNG輸入の急増がその大きな要因である。
 核燃料に比べてLNGや石油は割高となるから,その負担はそのまま国民に重くのしかかってくる。なぜなら電力会社の電気料金は総括原価方式によって算定されているからだ。
 (中略) このような状況では電気料金の負担に耐えかねて操業を維持できなくなる中小企業も出てくるほか,安い電気料金を求めて海外に出て行く企業がさらに増えていくことも十分に予想される。その結果,国内では雇用減少などの問題が深刻の度を増していくだろう。燃料費の安い原発の稼働停止は日本の産業の足を引っ張るのである。(p141)
● 長谷川さん,とにかく細かいデータ,しかも対人依存性の高い口コミデータを大量に持っていて,そのデータを駆使して先を読むから,読んだ結果も具体的になる。
 たとえば,次のような情報だ。ま,知ってる人はとっくに知ってるんだろうけどさ。
 日本の鉄鋼業界で相場の先行きを占う重要な指標がある。阪和興業という鉄鋼の専門商社が東は船橋,西は大阪南港にそれぞれ広大な鋼材の積み場(ヤード)を持っている。そこにどんどん鋼材の在庫が増えていくと先安であり,在庫が減っていけば先高ということなのである。(p104)

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