2012年9月26日水曜日

2012.09.22 櫻井 寛 『ぞっこん鉄道今昔 昭和の鉄道撮影地への旅』


書名 ぞっこん鉄道今昔 昭和の鉄道撮影地への旅
著者 櫻井 寛
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2012.08.30
価格(税別) 2,300円

● 「中学生から高校,大学時代に撮影した思い出の地を再訪問する旅紀行」(あとがき)。30年も前のモノクロ写真と現在のカラー写真,同じ場所で同じ構図で撮影した2枚の写真を同時に見ることができる。
 時代を考証する貴重な資料にもなっているわけでしょう。だから,本にする値打ちもある。

● その頃から鉄道写真を撮る趣味があって,それを貫いてきたってすごいなぁと思ってしまう。それだけでとんでもない才能だよね。
 自分はそういうのがないまま,いたずらに年齢だけ重ねてしまった。だから,一層そう思うんだけどね。何だか,自分のダメさかげんを思い知らされる感じだね。でも,ほとんどの人は同じようなものだよね,ね。

● ただね,こういうことはあるなと思う。つまりですね,著者が育った家庭って中流なんですよ。アッパーミドルっていうか。
 当時は,農林漁業が産業の中心だった時代で,都市部のサラリーマン家庭と地方の農家の生活水準には相当な格差があった。サラリーマンって今でこそ大衆の代名詞だけど,当時は自分もああなりたいっていう憧れの対象だったんですよ。
 著者は両親とも国鉄に勤めていたっていう家庭で育っているから,いわばお金持ちのお坊ちゃんなんですよ。だからこそ,中学生のときからカメラを与えられて,国内のそちこちに撮影に行くこともできたんでしょうね。貧乏旅だと言いながらでもね。

● ちなみに,ぼくは田舎の農家育ちなんだけど,ぼくの中学の同級生の女子で,ピアノを習っていたなんて子はひとりもいなかったと思う。そんな時代でしたよ。
 カメラにしたって,ぼくが初めてカメラを買ってもらったのは中学3年のとき。それも,玩具に毛が生えた程度のもの。それでもカメラを持って修学旅行に行けたのは少数派だったな。

● 写真だからネガも残っているわけで,すごい財産ですよ,それって。日記を残している人はいるのかもしれないけれど,文章だと読む手間がいる。写真は瞬時に訴えかけ,同時に訴えが完了する。

● この本は,著者が若かりし頃を回想する青春記としても読める。そういうものとして読んでも,読みごたえがある。っていうか,楽しんで読める。

● 「そのとき,爆音が耳をつんざく。暴走族ではない。もちろん列車でもない。爆音の正体はジェット機,それも米軍の戦闘機だった。その瞬間,40年前の暑い夏の日の記憶がありありとよみがえった。蒸気機関車の雄姿もさることながら,頭上には軍用機が飛び交っていた。それは横田基地からベトナムへと出撃するB52戦略爆撃機だった。当時は反戦運動も盛んだったが,私は蒸気機関車にうつつを抜かしていた」(p81)

 これは八高線沿線の金子坂での文章なんだけど,いいでしょ,「私は蒸気機関車にうつつを抜かしていた」って。こういう人って信用するに足る。声高に平和や反戦を叫んでいる人なんかより,ずっと。

● この本は「アヒヒカメラ」の2006年1月号から2010年12月号までの60回の連載をまとめたものだが,地域別に北から南に並べている。連載順のままにした方がよかったかもしれないと,チラッと思った。

● ちなみに申しあげれば,ぼくもその昔,JR線全線完乗というのを目指したことがある。宮脇俊三さんの本に感化されたから。影響を受けやすいタチなんです。
 北海道と四国,九州はすべての路線に乗った。が,本州は7割くらいで頓挫したままになっている。ひたすら乗るだけってのを続けたわけなんだけど,どうもそれだけでは面白くなかったんでしょうね。根っからの鉄ちゃんではなかったんだろうな。

0 件のコメント:

コメントを投稿